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21.聞きたいこと 3
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昼休みが終わったのだろう、授業開始を告げるベルの音が遠くに聞こえる。
「……うぅん、ん、……ライッ!授業が……!」
「ん? そんなことよりも、重要なことがあるだろう?」
「私には授業もじゅうよ……んんっ……!」
もう苛めっていう表現がぴったりくるくらい。
くすぐったくて、それでいて仄かな官能をもたらす口づけが延々と続く。首元や胸元に落とされる微かな痛みを伴うキスマークの嵐も相まって、私は本当に泣きが入っていた。
「もう、本当に……! ダメだって、ばぁ……」
知らずにまた滲んでくる涙とともに、ライを見つめ、息も絶え絶えに訴えた。
「……」
はぁ~~と大きなため息をつかれる。……なんで?
「……お前は、その仕草がどんなに俺を煽っているか、一度知っておいた方がいいな……」
ベンチに押し倒された……! ライの黄金の瞳がまた目前に近づいてくる。え、本当にこんな所じゃ嫌ぁ!!
「えぇ!? ちょ、や……っ!」
「……こんな所で、真昼間から何をしているんです? 君たちは」
「ライ、その子、嫌がっているから、離して」
そこに、ため息交じりの声が響いた。
突然の声に顔を上げると、教官棟の出入り口に鮮やかな青い髪と黒いローブ……、キースとオーランドだ。
(えぇえぇえ! こんな所で攻略対象3人揃うの!?)
途端、ライは私を抱き上げて、ベンチに座り直し、私の顔がキース達に見えないように、ぐっとライの胸に抱き寄せられた。
「いえ、彼女の具合が悪いようだったので、様子を見ていたのですよ?」
「――むしろ君が彼女の具合を悪くしているように見えましたが」
「まさか。これはれっきとした純然たる看病ですよ。勇敢なるキース・アナトリア様に、偉大なる魔道士オーランド様」
いけしゃあしゃあという表現がぴったりの様子にライが言う。
ライの声色はキース達の神経を逆なでしているとしか思えない、揶揄するような音を多分に含んだものだ。
「……」
オーランドの面倒くさそうなため息が聞こえる。
「……前にも言ったでしょう?ここでは君と私は一学生同士です。敬称などは必要ありませんよ?」
「ハハッ、私のような粗野な育ちの輩とはお話するのも憚られるでしょう? 近衛騎士様ともあろうお方ですから」
「……何か随分と語弊があるようですねぇ……。ライ・アスカルト」
「語弊だなんて滅相もございません。それよりも、これ以上私のようなものとお話なんてなされたら、貴族様のお嫌いになるこの肌の穢れが移ってしまうのでは?」
「おや、誇り高い竜使いの一族が、一族の特徴ともいえる肌の色をそんな風に卑下されていいのですか?」
「なんと、私は我らの色を卑下などしておりません。蔑むのはいつもお高いところから見下すお貴族様でしょう。まぁ、そのお高さも虚構の嵩上げでしょうが。」
「……さっきから言わせておけば、お前はよくも……!」
「ふん、ようやく素が出たか」
「ちょっと!? ライってば!! いくらなんでも、--……え」
あまりの言葉の応酬に顔を上げて二人を見回すと、一触即発、口元は笑みを浮かべてるのに、目は全く笑ってない。
一瞬で私の背に寒気が走る。
二人の間にゴゴゴ……と睨みあう虎と竜が見えるかのよう……。殺気立った目線からはバチバチと火花が散っている……そして物理として魔力の放出も感じる。
キースの周りは氷の魔力の放出で、白くけぶって身体の輪郭がおぼろげに見える程だ。そしてその白い雪の結晶の中に拳ほどの鋭利な形の氷の結晶が浮かび、それは見ている間に増えていく。
ライの後ろには、炎……黒い炎が渦を巻いている。そしてライの身体を這い回るようにして、これもまたどんどん増えていく。
何故こんなことに……?
え、ここで炎VS氷 のガチンコ勝負……? なんで? なんのために……?
ちょっと待ってよ、こんなことで死ぬのは本当に嫌!
ライの私を包む腕の力は緩まない。仕方なく半泣きのまま二人の様子を窺う。
「……君とは一度ゆっくり話をしたいと思っていたんですよ……」
ちょ、完璧キースの目が据わってる。怖すぎ。あれヤンデレMAXの監禁スチルでみたことあるやつ……。ライって、怒らせる天才過ぎる。ちょ、これからどうするの?
「はぁ……、キース、もうやめて。学園が、壊れる。今騒ぎを起こすのは、得策じゃない。ライも、わかってるでしょ? いいから、その子離して。……その子の甘い魔力は、ライだけのものじゃ、ない」
オーランド!! 止めて!! 二人を止めて!!
「……甘い魔力だと……?」
ビクぅッ!
いきなりこっちに水を向けられて焦る。っていうか、ライ殺気出しっぱなし! 私に殺気向けないで!
いきなりの殺気こもる視線にあてられて、奥歯がガチガチと震える。
「ちが……っ、オーランド先生が勝手に言ってるだけだって!」
「ほぉ……、あいつまでお前のことを、な。やはりお前が誰のものかきちんと知らしめる必要があるな……」
そう言ってライは黒い笑みを深くする。
こんわっ!
(うぅ……もう勝手にしてください……。止めたら正に火に油になりそう……)
「さぁセラ、こんなところにいても碌なことになりませんよ。タイをきちんと締めて、一度寮にもどりましょう? 先生には今日は体調不良だと伝えておきますから」
(そうだ、タイ……ッッ!!)
私は真っ赤になって慌てて胸元を整える。
その後なんとか魔力を抑えてくれて、私に対してはにこやかさを取り戻したキースと、いつも通り何を考えているのかわからないオーランド、不承不承といった様子のライに連れ立たれて、寮に戻ることになったのだった。
「……うぅん、ん、……ライッ!授業が……!」
「ん? そんなことよりも、重要なことがあるだろう?」
「私には授業もじゅうよ……んんっ……!」
もう苛めっていう表現がぴったりくるくらい。
くすぐったくて、それでいて仄かな官能をもたらす口づけが延々と続く。首元や胸元に落とされる微かな痛みを伴うキスマークの嵐も相まって、私は本当に泣きが入っていた。
「もう、本当に……! ダメだって、ばぁ……」
知らずにまた滲んでくる涙とともに、ライを見つめ、息も絶え絶えに訴えた。
「……」
はぁ~~と大きなため息をつかれる。……なんで?
「……お前は、その仕草がどんなに俺を煽っているか、一度知っておいた方がいいな……」
ベンチに押し倒された……! ライの黄金の瞳がまた目前に近づいてくる。え、本当にこんな所じゃ嫌ぁ!!
「えぇ!? ちょ、や……っ!」
「……こんな所で、真昼間から何をしているんです? 君たちは」
「ライ、その子、嫌がっているから、離して」
そこに、ため息交じりの声が響いた。
突然の声に顔を上げると、教官棟の出入り口に鮮やかな青い髪と黒いローブ……、キースとオーランドだ。
(えぇえぇえ! こんな所で攻略対象3人揃うの!?)
途端、ライは私を抱き上げて、ベンチに座り直し、私の顔がキース達に見えないように、ぐっとライの胸に抱き寄せられた。
「いえ、彼女の具合が悪いようだったので、様子を見ていたのですよ?」
「――むしろ君が彼女の具合を悪くしているように見えましたが」
「まさか。これはれっきとした純然たる看病ですよ。勇敢なるキース・アナトリア様に、偉大なる魔道士オーランド様」
いけしゃあしゃあという表現がぴったりの様子にライが言う。
ライの声色はキース達の神経を逆なでしているとしか思えない、揶揄するような音を多分に含んだものだ。
「……」
オーランドの面倒くさそうなため息が聞こえる。
「……前にも言ったでしょう?ここでは君と私は一学生同士です。敬称などは必要ありませんよ?」
「ハハッ、私のような粗野な育ちの輩とはお話するのも憚られるでしょう? 近衛騎士様ともあろうお方ですから」
「……何か随分と語弊があるようですねぇ……。ライ・アスカルト」
「語弊だなんて滅相もございません。それよりも、これ以上私のようなものとお話なんてなされたら、貴族様のお嫌いになるこの肌の穢れが移ってしまうのでは?」
「おや、誇り高い竜使いの一族が、一族の特徴ともいえる肌の色をそんな風に卑下されていいのですか?」
「なんと、私は我らの色を卑下などしておりません。蔑むのはいつもお高いところから見下すお貴族様でしょう。まぁ、そのお高さも虚構の嵩上げでしょうが。」
「……さっきから言わせておけば、お前はよくも……!」
「ふん、ようやく素が出たか」
「ちょっと!? ライってば!! いくらなんでも、--……え」
あまりの言葉の応酬に顔を上げて二人を見回すと、一触即発、口元は笑みを浮かべてるのに、目は全く笑ってない。
一瞬で私の背に寒気が走る。
二人の間にゴゴゴ……と睨みあう虎と竜が見えるかのよう……。殺気立った目線からはバチバチと火花が散っている……そして物理として魔力の放出も感じる。
キースの周りは氷の魔力の放出で、白くけぶって身体の輪郭がおぼろげに見える程だ。そしてその白い雪の結晶の中に拳ほどの鋭利な形の氷の結晶が浮かび、それは見ている間に増えていく。
ライの後ろには、炎……黒い炎が渦を巻いている。そしてライの身体を這い回るようにして、これもまたどんどん増えていく。
何故こんなことに……?
え、ここで炎VS氷 のガチンコ勝負……? なんで? なんのために……?
ちょっと待ってよ、こんなことで死ぬのは本当に嫌!
ライの私を包む腕の力は緩まない。仕方なく半泣きのまま二人の様子を窺う。
「……君とは一度ゆっくり話をしたいと思っていたんですよ……」
ちょ、完璧キースの目が据わってる。怖すぎ。あれヤンデレMAXの監禁スチルでみたことあるやつ……。ライって、怒らせる天才過ぎる。ちょ、これからどうするの?
「はぁ……、キース、もうやめて。学園が、壊れる。今騒ぎを起こすのは、得策じゃない。ライも、わかってるでしょ? いいから、その子離して。……その子の甘い魔力は、ライだけのものじゃ、ない」
オーランド!! 止めて!! 二人を止めて!!
「……甘い魔力だと……?」
ビクぅッ!
いきなりこっちに水を向けられて焦る。っていうか、ライ殺気出しっぱなし! 私に殺気向けないで!
いきなりの殺気こもる視線にあてられて、奥歯がガチガチと震える。
「ちが……っ、オーランド先生が勝手に言ってるだけだって!」
「ほぉ……、あいつまでお前のことを、な。やはりお前が誰のものかきちんと知らしめる必要があるな……」
そう言ってライは黒い笑みを深くする。
こんわっ!
(うぅ……もう勝手にしてください……。止めたら正に火に油になりそう……)
「さぁセラ、こんなところにいても碌なことになりませんよ。タイをきちんと締めて、一度寮にもどりましょう? 先生には今日は体調不良だと伝えておきますから」
(そうだ、タイ……ッッ!!)
私は真っ赤になって慌てて胸元を整える。
その後なんとか魔力を抑えてくれて、私に対してはにこやかさを取り戻したキースと、いつも通り何を考えているのかわからないオーランド、不承不承といった様子のライに連れ立たれて、寮に戻ることになったのだった。
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