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憂鬱な転生【カノンの場合】

40.大切に重ねること.2

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 温かい湯の上を揺蕩っているようで、ふわふわと思考がまとまらない。城野院が触れるたびに、ビクビクと身体を震わせて、彼がもたらす感覚を追うことで精いっぱいだ。
 ちゅ、ちゅと軽いキスを交わしながらベッドに横たえられた。その時はまだドクドクと耳の奥で鳴る鼓動がうるさいなとか、汗臭くないかな、もっとしっかり身体を洗っておけばとかそんなことを考える余裕があった。

「ん、んぅ……んん」

 だが今は、ひたすら堪えても漏れ出てしまう甘い声を恥ずかしがる余裕もない程に、翻弄されていた。
 深く交わされる口づけは、最初はカノンの様子を窺いながら、そして徐々に激しく深められていく。
 舌をやわやわと絡めとられ、頬の内側を舐め上げ、上あごをくすぐられる。そうしてそれに夢中になっている間に、ワンピースのチャックはすっかりと下ろされていた。

 素肌が露わになった背中を撫でられて、ぞわりと肌が粟立った。
 その肌をまた優しく暖めほぐすように、ゆっくりと撫であげられ、気が付くとブラジャーのホックが外され、カノンの真珠色の肌が浮き上がる。
 ぴったりと密着しているとはいえ、するすると脱がされ露わになっていく羞恥に、カノンは胸を隠すようにして腕を組んだ。
 ふ、と愉悦を含んだ吐息が落とされたかと思うと、城野院の大きな手がそのカノンの胸を隠している腕を上下に撫でた。そして隠そうとしていたふくらみの脇をくすぐるように柔らかく触れてくる。

「あ、ぁあ……ッ」

 深く交わされていた口づけが、徐々に頬に、首へと移動する。耳たぶを舐められて思わず大きな声が漏れた。初めて感じる耳の熱さに身を震わせていると、そっと耳元で囁かれた。

「大丈夫? 怖くない?」
「んっ……は、い」
「ほんとに? 続けて、いい?」
「んぅっ」

 短い言葉すら嬌声に溶けてしまう。なんとかコクコクと頷くことで、合意を示した。
 城野院の指先は、カノンのことを本当に大切そうに、優しく優しく触れてくれる。
 カノンすら知らなかった自分自身の形をなぞるように、温かく、優しく。その慎重さと優しさに、まるで自分が貴い宝物にでもなったかと錯覚してしまう。
 カノンの返事を待って、城野院の唇は首元を伝い口づけをしながら段々と乳房へと続いた。やわやわと中心を避けるように、口づけをする。指先は乳輪をくるりとなぞり、熱い吐息が頂を掠めた。

「あっ……!」
 声をあげるのと同じくして、ぺろりという感触と共に頂を口に含まれた。飴玉を舐め転がすように、舐めまわし吸い上げられる。
「きゃ、あぁあん!」
 もう片側の胸も、ほぐすように指先で摘ままれ、まるでそこに火がついたように甘い疼きが止まらない。知らずその快感を逃がそうと身をよじっても、柔らかいシーツの上では足が滑っていくだけで。

「あ、あぁっ……んぅ!」

 あまりに大きなはしたない声を出していることに気がついて、胸を隠すために抑えていた腕で慌てて口許を抑えた。
 自分からこんな声が出るなんて、自分自身ですら聞いていられない。

 そうして意図せず顕になった胸元に、城野院はますます大胆に触れてくる。
 ぢゅっ、ぺちゃ……

「ふぅ……うっ、くぅん……!」

 卑猥な水音にきつく閉じていた目をうっすらと開けて、思わず見てしまった。
 自分の肌の上に、城野院の黒髪が散っているところを。
 自分の胸が城野院の手のなかでくにくにと形を変え、その薄桃色の先端に赤い舌が這わされているところを。
「やぁん……っ」
 そのあまりの淫靡な光景に、お腹の下の方がとろりと熱く痺れた感触が走って、足をきつくよじらせた。
 そうしないと何かがこぼれ落ちてしまいそうで。
 カノンのその仕草を合図かのように、浮いた腰の下からワンピースが引き抜かれた。

 火照った肌に外気が冷たく感じる。
 止まらない疼きに息を荒くしていると、軽くなった腰回りから、するりと熱い手がカノンのショーツに触れた。
 その時、カノンは自分のショーツがぐっしょりと濡れ、張り付いていることに気が付いた。

「あ、」

 セックスが何をするかなんて、当然知っている。でも、性的なことはなんとなく自分には縁がないことだと、遠ざけてきた。
 それでも自慰の真似事をしてはみることがあったが、自分では怖くてナカを触れたこともなかったし、達することもできなかった。
 濡れるとか、感じるとか、そういうのは向き不向きがあって、自分には向いていないんだと納得していた。

 それなのに今、足を動かすたびに、熱く蕩けそうに蜜を湛えているそこから、ぬるつきを感じる。
(こんな風になっちゃうなんて……)
 感じると濡れる、理屈は知っていたのに、自分が体現してしまっていることに、改めて羞恥が走る。
 声を抑えていた手で思わず顔を覆ってしまうと、城野院から「さわるよ?」と耳元で囁かれた。聞いてくれて嬉しいし、慮ってくれるのも有難い。でも、いちいち聞かれるのも、すごく恥ずかしい。

「あっ、あの先輩……! 嫌な時は嫌って言うんで、あの、続けてくださぃ……」
「ん」

 ちゅ、と顔を覆うカノンの手にキスが落とされる。そしてはむっと指をあまがみされた。
「わかったよ」
 その言葉と同時に城野院の指先がしっとりとぬかるんだそこに触れた。

「ひゃあんっ」

 ぷちゅっと音がたった。
 そして動きに合わせて、くちゅくちゅという音と共に快感が走る。
 蜜を纏わせて滑るように、襞を丁寧に割り開き撫で上げる。下から上に丹念に何度もその動きを繰り返されている内に、存在感を増した突起に指先が引っ掛かった。その瞬間、思わずそのビリっと走った強い刺激に腰が跳ねた。

「あ! や、あ、あ……そこ、やぁ……」
「ん? やだ?」

 そう少しだけ意地悪に問いかけながらも、城野院はまた胸元の頂に吸い付いた。
 今度は少し強く、吸い上げるように舌で転がす。そして、その舌の動きとリズムを合わせるようにして、敏感な尖りを苛む手を強める。
 中指を蜜口にくぷりと浅く沈ませて蜜をすくい、そのまま二本の指で挟むように尖りを上下にゆるゆると、それでいて存在を教え込むように、しっかりと撫で上げる。

「あっあっ、やじゃな、いい……っ」
「ふふ」

 嫌じゃないと伝えようとしたら、何だかひどく卑猥なことを口走ってしまった。それに気が付くよりも先に、嬉しそうな城野院の声がして、少し力が抜けた。

「それは嬉しいな」
「ひゃんっ!」

 その瞬間、力が緩んだそこを狙いすまされたように、蜜口ににゅるりと指が差し入れられ、固く充血し始めた尖りを、ぎゅっと押し潰された。
 痛みを感じないその絶妙すぎる刺激にあげようとした声は、息が出来ないような深い口づけに、塞がれた。

「んぅっ……!!」

 ぐちゅぐちゅぐちゅ

 そうして突起を親指で圧しながら、ナカの指が二本に増やされた。
 少しの異物感のあと、ぐにゅぐにゅと蠢く指先と、行き場を塞がれた熱とで一気に押し上げられていく。

「んっ、んぅ、んぅ~~!!」

 その時、腰の奥に熱く溜まっていた何かが、これまで感じたことのない快感となってカノンのなかで弾けた。
 自然にしなる背中を駆け抜けた衝撃は、ビクンビクンと大きく身体を震わせた。

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