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episode10 ~小林夏菜side~
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女の子の世界は嘘が上手い子が生き残る。
そんな風に思い始めたのはいつからだろうか。
私は小さい頃から女の子に好かれないタイプだった。
理由は明確だ。
私は人に対して悪い顔を出来ない。
誰にでも都合のいいように返答してしまう。
所謂、「いいこぶりっこ」だからだ。
自分が好かれない理由も嫌われる理由も分かってても簡単に性格は変えられなかった。
中学生になってそんな私を分かってくれる大切な人たちができた。
蓮と恭平と盛田だ。
蓮と恭平は私が彼らの事を救ったと言う。
だから今度は俺らが守ってやる。と。
私はただ憶測で人を責めるクラスの状況に耐えきれなかっただけだった。
クラスの雰囲気を遮るような発言したあとは本当に後悔した。
あぁ、また「いいこ」ぶってしまった。と。
でも彼らはそんな私に救われたと言ってくれた。
私はそんな彼らの言葉にどれほど救われたのか、きっと誰にも分からない。
盛田はこんな私に好意を持ってくれていた。
学校でも塾でもそれはそれは有名で私の耳にも簡単に入ってきた。
私は「いいこ」ぶってる訳じゃなくていいこなんだと。
私の計算高いところも長所だと言ってくれた。
今まで認めてもらえない気がしていた私の性格を認めてくれる人がいることが
私にとってどれだけ幸せなことかも、きっと誰にも分からない。
彼らと話すときは一番心地よかった。
周りの悪口にぎゅっと黙ることも顔色を伺うこともしなくてよくて、
間違ってると思ったことをちゃんと口に出せるし
そんな私を正しいと言ってくれるから。
ただ彼らといると周りの目が痛かった。
理由は分かってる。
私は心の安らぎを取るか、周りの人の気持ちを優先するか葛藤し続けた。
女の子の世界を生き抜くためには後者を選ぶしかなかった。
だからと言って心に安らぎをくれる彼らの優しさを無視することも出来ず、
次第に周りの視線が厳しくなっていくことに気づいてしまった。
私はだんだん孤独を感じ始めた。
学校でも塾でも一緒の久保倉が私のことを嫌ってることはすぐ気付いた。
悪魔だとか計算だとか散々言われてることも気付いていた。
私は何故か何となくそんな久保倉を不快には思わなかった。
言葉はキツいが、彼がどれだけ友達思いな優しい人か分かってたから。
彼を否定できないとなると否定すべきなのは私自身だった。
私が悪いから仕方ない、私のせいだ。と。
心は少しずつ傷を重ね、痛みを増していくのに、
どうやって治療するのか、癒すのか、私には分からなかった。
泣き方も怒り方も何も分からなかった。
本当に辛いときほど人に頼ることが出来なかった。
私は壊れた人形のようにただ微笑むしか出来なかった。
鏡に映る自分の顔が怖くて仕方なかった。
高校生になって女の子の世界で生き抜くことを諦めた。
本当に心を許した人と一緒にいることを選んだ。
でも、「いいこぶりっこ」な性格は変わらなかった。
仲良しグループから外された真姫や麻美ちゃんを放っておけなかった。
蓮や恭平にどんなに止められても
ちゃんと自分で分かっていても
私の中の正義が許さなかった。
真姫と麻美ちゃんが仲良くなっていくうちに気が付く胸の痛みが
限界に達し始めたとき、蓮に声をかけられた。
涙が止まらなかった。
自分でも何で涙が出るのか分からなかった。
真姫と麻美ちゃんが仲良くなっていくのは嬉しい。
嬉しいはずなのに、苦しかった。
そしてそんな風に思ってしまう自分が一番嫌だった。
自分のために泣いている自分に嫌気が差しそうだ。
蓮の腕の中から逃げなきゃ行けないのに
弱さを見せたらダメなのに
涙の止め方も突き放し方も分からず蓮の優しさにもたれかかった。
自分の感情さえ自分で殺してしまう
自分の気持ちさえ自分で分からない
こんな私のそばにいて楽しいと思う人がいるわけがない。
自分の不甲斐なさが身に染みる。
どこで間違えた?どこを間違えた?
私はどの選択をすれば自分を好きになれた?
過去の自分も今の自分も悪寒が走るほど嫌いだ。
そう完全に思えれば私は変われたかもしれない。
でも出来なかった。
誰かのために無理して我慢して耐えてきた。
誰かのために優しくある努力をした。
でもそれは誰かのためだけじゃなかった。
自分を好きになれるように。
自分を認めてあげられるように。
自分を誇れるように。
優しさも我慢も全部自分のためだった。
そう思ったらふと気持ちが軽くなった。
それなら無駄じゃない。
私は間違ってなんかない。
優しくある努力を否定しなくていいんだと。
例えそれが「いいこぶりっこ」だとしても。
私は急に現実に引き戻された。
まって、私今、泣いてる?
蓮に抱きしめられながら!?
私は蓮の体を押して、さっと涙をぬぐった。
「いやー、最近の花粉はすごいね!
鼻水が止まらない!あ、蓮の服鼻水でびちゃびちゃ!
ごめん!ごめん!」
私らしく意味不明な言葉を並べる。
私は泣いてないよ?と至って冷静な顔をして。
「うん。分かってる。」
蓮のその言葉の意味に気づかないふりをして私は笑う。
「え!蓮も花粉調べるタイプの人間?
おー!同志だ!今まで一緒にいてはじめて知ったよ!」
蓮はそんな私を見ていつものように優しく笑った。
そんな風に思い始めたのはいつからだろうか。
私は小さい頃から女の子に好かれないタイプだった。
理由は明確だ。
私は人に対して悪い顔を出来ない。
誰にでも都合のいいように返答してしまう。
所謂、「いいこぶりっこ」だからだ。
自分が好かれない理由も嫌われる理由も分かってても簡単に性格は変えられなかった。
中学生になってそんな私を分かってくれる大切な人たちができた。
蓮と恭平と盛田だ。
蓮と恭平は私が彼らの事を救ったと言う。
だから今度は俺らが守ってやる。と。
私はただ憶測で人を責めるクラスの状況に耐えきれなかっただけだった。
クラスの雰囲気を遮るような発言したあとは本当に後悔した。
あぁ、また「いいこ」ぶってしまった。と。
でも彼らはそんな私に救われたと言ってくれた。
私はそんな彼らの言葉にどれほど救われたのか、きっと誰にも分からない。
盛田はこんな私に好意を持ってくれていた。
学校でも塾でもそれはそれは有名で私の耳にも簡単に入ってきた。
私は「いいこ」ぶってる訳じゃなくていいこなんだと。
私の計算高いところも長所だと言ってくれた。
今まで認めてもらえない気がしていた私の性格を認めてくれる人がいることが
私にとってどれだけ幸せなことかも、きっと誰にも分からない。
彼らと話すときは一番心地よかった。
周りの悪口にぎゅっと黙ることも顔色を伺うこともしなくてよくて、
間違ってると思ったことをちゃんと口に出せるし
そんな私を正しいと言ってくれるから。
ただ彼らといると周りの目が痛かった。
理由は分かってる。
私は心の安らぎを取るか、周りの人の気持ちを優先するか葛藤し続けた。
女の子の世界を生き抜くためには後者を選ぶしかなかった。
だからと言って心に安らぎをくれる彼らの優しさを無視することも出来ず、
次第に周りの視線が厳しくなっていくことに気づいてしまった。
私はだんだん孤独を感じ始めた。
学校でも塾でも一緒の久保倉が私のことを嫌ってることはすぐ気付いた。
悪魔だとか計算だとか散々言われてることも気付いていた。
私は何故か何となくそんな久保倉を不快には思わなかった。
言葉はキツいが、彼がどれだけ友達思いな優しい人か分かってたから。
彼を否定できないとなると否定すべきなのは私自身だった。
私が悪いから仕方ない、私のせいだ。と。
心は少しずつ傷を重ね、痛みを増していくのに、
どうやって治療するのか、癒すのか、私には分からなかった。
泣き方も怒り方も何も分からなかった。
本当に辛いときほど人に頼ることが出来なかった。
私は壊れた人形のようにただ微笑むしか出来なかった。
鏡に映る自分の顔が怖くて仕方なかった。
高校生になって女の子の世界で生き抜くことを諦めた。
本当に心を許した人と一緒にいることを選んだ。
でも、「いいこぶりっこ」な性格は変わらなかった。
仲良しグループから外された真姫や麻美ちゃんを放っておけなかった。
蓮や恭平にどんなに止められても
ちゃんと自分で分かっていても
私の中の正義が許さなかった。
真姫と麻美ちゃんが仲良くなっていくうちに気が付く胸の痛みが
限界に達し始めたとき、蓮に声をかけられた。
涙が止まらなかった。
自分でも何で涙が出るのか分からなかった。
真姫と麻美ちゃんが仲良くなっていくのは嬉しい。
嬉しいはずなのに、苦しかった。
そしてそんな風に思ってしまう自分が一番嫌だった。
自分のために泣いている自分に嫌気が差しそうだ。
蓮の腕の中から逃げなきゃ行けないのに
弱さを見せたらダメなのに
涙の止め方も突き放し方も分からず蓮の優しさにもたれかかった。
自分の感情さえ自分で殺してしまう
自分の気持ちさえ自分で分からない
こんな私のそばにいて楽しいと思う人がいるわけがない。
自分の不甲斐なさが身に染みる。
どこで間違えた?どこを間違えた?
私はどの選択をすれば自分を好きになれた?
過去の自分も今の自分も悪寒が走るほど嫌いだ。
そう完全に思えれば私は変われたかもしれない。
でも出来なかった。
誰かのために無理して我慢して耐えてきた。
誰かのために優しくある努力をした。
でもそれは誰かのためだけじゃなかった。
自分を好きになれるように。
自分を認めてあげられるように。
自分を誇れるように。
優しさも我慢も全部自分のためだった。
そう思ったらふと気持ちが軽くなった。
それなら無駄じゃない。
私は間違ってなんかない。
優しくある努力を否定しなくていいんだと。
例えそれが「いいこぶりっこ」だとしても。
私は急に現実に引き戻された。
まって、私今、泣いてる?
蓮に抱きしめられながら!?
私は蓮の体を押して、さっと涙をぬぐった。
「いやー、最近の花粉はすごいね!
鼻水が止まらない!あ、蓮の服鼻水でびちゃびちゃ!
ごめん!ごめん!」
私らしく意味不明な言葉を並べる。
私は泣いてないよ?と至って冷静な顔をして。
「うん。分かってる。」
蓮のその言葉の意味に気づかないふりをして私は笑う。
「え!蓮も花粉調べるタイプの人間?
おー!同志だ!今まで一緒にいてはじめて知ったよ!」
蓮はそんな私を見ていつものように優しく笑った。
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