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先客がいるぞ
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「ということで、ここに宿泊してもよろしいでしょうか」
「なんだ、あんた宿無しだったのか?」
「あなたが弟子を取れとか言うからでしょう」
本来ならバイト終わりに今夜、及びその後の宿泊施設を決めているはずだったのだ。にもかかわらず、この酒場の主人が『弟子を取れ』なんていうからさぁ……
まぁ割と楽しかったからいいけれど。
ということで、私が宿泊先第一候補に決めたのは、私がバイトしている酒場、である。
ここなら宿泊施設ではないので、もしかしたらタダで泊めてもらえるかもしれない。従業員なのだから、ちょっとくらい泊めてくれてもいいだろう。
「ふむ。まぁ泊まるくらい構わないぞ。ただ、あんまり物壊すなよ」
「承知しております」
これはありがたい。これにて無料の宿泊先を手に入れたのだ。やはりなんでも言ってみるものだな。
そもそも、私無一文だから、無料の宿泊施設に泊まるしかなかったのだ。私の言う無料の宿泊施設は、主に野宿のことを指すのだが、たまには屋根の下で眠りたい。
ということで、今夜の宿が決まったが、
「一つ言っておくが、先客がいるぞ」
「先客?」
「ああ。この酒場の倉庫で寝泊まりしてるやつが、もう一人いる。といっても、倉庫は二つあるから問題ないけどな」
なるほど。トイレとかで起きてきたときに、鉢合わせる可能性があるということか。
しかし、この酒場で寝泊まりしている人、ねぇ……それはあの人だろうか。
「その人って、ソラさん、ですか?」
「ああ。心配すんな。あいつは、間違っても襲ってきたりしない」
「私が襲う可能性は考慮しないんですか?」
「心配すんな。黙って襲われるような奴じゃない」
夜に奇襲をかけても、察知されるということか。主人の言う襲う、と、私の言う襲うは違うような気がするけれど。まぁどちらにせよ、似たような意味だ。私にとっては、だけれど。
「ついでに一つだけ言っておく。あいつは喋れないからな」
「喋れない……ああ……なんとなくそんな気はしてました」
「良い勘してんな……」
勘の鋭さには、ある程度の自信がある。運が良い、とも言い換えられるだろう。
ソラさんが喋れないんじゃないか、というのは私の心中にあった推測の一つだ。他の候補は極度の人見知り、あるいは人嫌い。
だが、人が苦手で喋らない様子でもなかったし、人が嫌いだから言葉を発さないようにも見えなかった。ただの勘だけれど、とにかくそう見えたのだ。
別にソラさんが喋れようが喋れまいが、関係ない。仮に盲目であっても隻腕であっても問題はない。
重要なのはソラさんが面白そうな人物だということである。それ以外は大した問題ではない。
しかし……この宿……じゃなくて酒場にソラさんがいるのか。それはツイている。本当に私は運が良い。興味のある接触対象が、偶然にも同じ宿にいるとは。
明日の朝にでも、さっそく接触してみよう。
「なんだ、あんた宿無しだったのか?」
「あなたが弟子を取れとか言うからでしょう」
本来ならバイト終わりに今夜、及びその後の宿泊施設を決めているはずだったのだ。にもかかわらず、この酒場の主人が『弟子を取れ』なんていうからさぁ……
まぁ割と楽しかったからいいけれど。
ということで、私が宿泊先第一候補に決めたのは、私がバイトしている酒場、である。
ここなら宿泊施設ではないので、もしかしたらタダで泊めてもらえるかもしれない。従業員なのだから、ちょっとくらい泊めてくれてもいいだろう。
「ふむ。まぁ泊まるくらい構わないぞ。ただ、あんまり物壊すなよ」
「承知しております」
これはありがたい。これにて無料の宿泊先を手に入れたのだ。やはりなんでも言ってみるものだな。
そもそも、私無一文だから、無料の宿泊施設に泊まるしかなかったのだ。私の言う無料の宿泊施設は、主に野宿のことを指すのだが、たまには屋根の下で眠りたい。
ということで、今夜の宿が決まったが、
「一つ言っておくが、先客がいるぞ」
「先客?」
「ああ。この酒場の倉庫で寝泊まりしてるやつが、もう一人いる。といっても、倉庫は二つあるから問題ないけどな」
なるほど。トイレとかで起きてきたときに、鉢合わせる可能性があるということか。
しかし、この酒場で寝泊まりしている人、ねぇ……それはあの人だろうか。
「その人って、ソラさん、ですか?」
「ああ。心配すんな。あいつは、間違っても襲ってきたりしない」
「私が襲う可能性は考慮しないんですか?」
「心配すんな。黙って襲われるような奴じゃない」
夜に奇襲をかけても、察知されるということか。主人の言う襲う、と、私の言う襲うは違うような気がするけれど。まぁどちらにせよ、似たような意味だ。私にとっては、だけれど。
「ついでに一つだけ言っておく。あいつは喋れないからな」
「喋れない……ああ……なんとなくそんな気はしてました」
「良い勘してんな……」
勘の鋭さには、ある程度の自信がある。運が良い、とも言い換えられるだろう。
ソラさんが喋れないんじゃないか、というのは私の心中にあった推測の一つだ。他の候補は極度の人見知り、あるいは人嫌い。
だが、人が苦手で喋らない様子でもなかったし、人が嫌いだから言葉を発さないようにも見えなかった。ただの勘だけれど、とにかくそう見えたのだ。
別にソラさんが喋れようが喋れまいが、関係ない。仮に盲目であっても隻腕であっても問題はない。
重要なのはソラさんが面白そうな人物だということである。それ以外は大した問題ではない。
しかし……この宿……じゃなくて酒場にソラさんがいるのか。それはツイている。本当に私は運が良い。興味のある接触対象が、偶然にも同じ宿にいるとは。
明日の朝にでも、さっそく接触してみよう。
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