上 下
118 / 189
レオニダス獣王国編

絶望と希望の狭間…そして君は消えてしまった…

しおりを挟む
ああ~ぽるくす様ごめんなさいm(__)m
先に謝っとく…姑息な作者でございます…。
さて、今回は唯殿下目線でございます!
では、本編どうぞ~~!
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


俺の名前は獅子王唯ししおうゆいレオニダス獣王王国第2王子…今は兄が居なくなったから立場的には王太子になるが…まだ、立太子の式は受けていない。
長兄が亡くなって2年…それは悲しくて不安で…そして力の無い自分自身が情けなくて…失意と絶望が繰り返す毎日で…たった1人残された弟のそらを魔石を持った者達から守る事が、俺の唯一の仕事…義務だと思っていた。
明るい笑顔の絶えなかった弟の笑顔が消え、押し寄せて来る様々な事から俺はもう疲れ果てていたんだ。
16歳の誕生日に成人の儀式だと言って青の魔石を胸に付けられた時も、王弟であり国の宰相で俺達の叔父貴でもある獅子王凱ししおうがい公爵から出された条件に抵抗する事も出来なかった。

「唯、宙を守りたいのならお前はこの魔石を頂け!そうしたら、宙は魔石を免除してやる。」
「叔父貴…本当だな?」
「ああ、約束してやるぞ!」

この時、もう俺は諦めていたんだ…。
天下兄者が自分の命を賭けて国を守った事も、弟の宙を守るためと言いながら心の中で諦めていた。
何も出来ない自分…何かしたところで何も変わらない王宮に諦めていた。
天下兄者の様に黒獅子でも無い、魔力も普通よりは多いくらいで叔父貴には敵わない!
獣王王国の王子であっても弱い自分を言い訳にして逃げていたんだ!
何もかもが嫌で義務も責任からも逃げていた。
青の魔石を付けられた後、アイリッシュ教会の白の枢機卿であるサクラ婆に魔石の進行を止めて貰ってはいたが、心は諦めていたから効果が小さくても何とも思わなかった。
それが半年近く続いて、青の魔石を持つ者は王宮の7割を占めていた。
特に王宮の守護である近衛隊は隊長を含め、その殆んどの騎士達が青の魔石を付けられていた。
騎士達の次は王宮の上位の侍従達と女官、侍女達に迄及び、どんどん暗く澱んでいく王宮の空気をどうする事も出来なくて…そんな王宮に突然、神の愛し子様の光魔法極大の黄金の光が届いたんだ!
丁度、城の中庭で園遊会が開催していた時だった、あの光を受けて父王と宰相である王弟の叔父貴の表情が変わったんだ!
俺を見た父王の顔が昔の…父上の顔に…叔父貴もそうだ!優しかった叔父貴の顔に戻ったんだ!!
血相を変えた叔父貴の妻であるルクレシアが何かをした様に見えたが…その時はそれどころじゃなくて、混乱する王宮を落ち着かせるのに精一杯で…でも、どこか父王と叔父貴が元に戻ったのではと期待したが、次の日には今と同じ顔に戻っていた…。
あの光も一時的な事で、結局は変わらないのかと思っていた時、天下兄者の幼馴染であり近衛隊でまだ魔石を付けられていない睡蓮姉が俺達に言ったんだ…国を出て助けを求めて来るって!
あの時、遠いグローディアス王国からの光で魔石の効果が薄れたのなら獣王王国で神の愛し子様を呼んで光魔法を掛けて貰ったら、父王もそれに今魔石を付けられた者達も魔石から解放されるのではないか?と言った睡姉の言葉に一縷の望みを賭けて近衛を抜けて国を出た睡姉を見送ったが…それから何の連絡も無い状態で…そしてある日王宮の舞踏会で叔父貴の妻であるルクレシアが言ったんだ!

「あら殿下、ご機嫌麗しゅうございます!そう言えば国を出奔した裏切り者の獅子の娘…死んだそうですよ!良かったですわね~裏切り者が死んで!」
「!!」
「最後は手足を失って、緊縛の呪いを受けたそうですわ~裏切り者の末路としては相応しい死に方ですわね!」
「そんな…酷い…!」
「ホホホホホっ!その顔!その顔が見られて幸せですわ!では、ご機嫌よう!」

怒りと悲しみでぐちゃぐちゃな感情に突き動かされて俺は王宮最北端で王家の血族しか入れない獅子王家の廟の大氷山の前で泣き叫んだ!
そんな俺を背中から抱きつく様に宙も泣いていた…。
その2、3日後に父王から呼び出されたのは、グローディアス王国の姫との結婚の話しだった。
滅多に王宮には来ない白の枢機卿サクラ婆がアイリッシュ教会の正装で王に謁見しアイリッシュの教皇からの親書を獣王に渡した。
最近の王宮議会の話しは今混乱し弱っている人間の国を攻め、獣王王国の領土を広げるチャンスだと宰相である叔父貴が提案していると聞いた。
人間の国との戦争回避の為にもと教皇の提案があり、塩の輸入に関して便宜を図って貰っている教国の提案を無碍に出来ない事もあり、その人間の姫の輿入れを受け入れる事が決まった。
その時俺達はサクラ婆から睡姉が生きているからこそ、この話しが来たんだと思うと聞いて少しホッとした…それが本当ならいいなって…。
でも、やっぱりどこか安心出来ずにいる自分もいる。
鏡を見ると胸の真ん中で光る青い魔石を見る度に不安な気持ちがのし掛かるんだ。
こんな毎日に心は浮いては沈み…そして、そんな俺達を救う運命の出会いが待っていたんだ!
それはある日突然だった!
天下兄者が氷柱に降りて来たのを見た俺達の心はグチャグチャだった…。
弟の宙は、久し振りに見られた何も言わない兄者の顔を見つめるばかりで、食事も取らない自分の部屋に戻る事もしない…ただひたすら兄者の顔を見続けていた。
このままだと弱るだけになる…そう思って宙を無理矢理引っ張り出して教会に行ったんだ…そこにはサクラ婆だけじゃなく可愛い黒猫の獣人チーさんがいた!
そしてチーさんは、サクラ婆の身内で光魔法使いだった!
彼女は可愛い外見とは裏腹にしっかりした受け答えと優しさと強さを持った人だった。
俺だけじゃなく俺が知らない間に弟が付けられていた魔石を見つけ弟の事も救ってくれた!
ずっと心にのしかかる恐怖を取り除いてくれたんだ!
そして、安心した俺達兄弟が鳴らしたお腹の音に笑ってカツ丼っていう美味しい食べ物を作ってくれた。
後で丼の下の白い粒は何かと聞いたら米だと言って更に驚いた!
米は確かに我が国でも生産されているけど、それは酒や酢などの加工品の原料としてだ。
その米がこんなに柔らかく美味しい、そして腹持ちもいい食べ物になるなんて驚いた!
魔石を取って貰うためにアイリッシュ教会に通うたびに美味しい昼食を用意してくれて…近衛隊では教会に俺達と一緒に行く事が争奪戦になっているそうだ。
魔石持ちを王宮から連れ出しては魔石を外して貰い、美味しいお昼ご飯を食べさせて貰う…彼女は必ず俺達だけじゃなく近衛隊の騎士、そして教会で働く人達にも食事を作って食べさせるんだ。
そして、いつも美味しそうに食べる人々を嬉しそうに笑って見てる。
そんな彼女を眩しい思いで俺達兄弟も見ていた。
サクラ婆とチーさんのお陰で魔石もどんどん外して貰っている。
近衛隊の騎士達の魔石を全て外し魔石に似た石を今はダミーとして付けて貰い、今は侍従や女官達の魔石を外して貰っている。
それと、叔父貴とは反対勢力に当たる貴族達もサクラ婆やチーさんが出向いて外しているんだ!
こうして魔石の脅威を少しずつ外している時に、あの事件に俺達は遭遇した!

クマモト屋の主人が王都近くで襲撃されて瀕死の状態で運ばれているのを偶然見た俺達は主人を助ける為にチーさんに助力を頼んだ…クマモト屋の主人は一度息を引き取ったが光魔法の力で復活したんだ!
そこに来たミカワヤは、クマモト屋の主人が死んだと思い言い掛かりに近い事を言っていたが、思惑が外れて逃げ帰った。
ミカワヤは王弟の妻であるルクレシアの縁戚である事で前から違法な商売をしていると噂だけがあり、何度か逮捕までされたが証拠不十分とされて釈放されていた。
裏で王弟である宰相が手を回していたから…それが分かっていてミカワヤは増長していた!
今回偶然にもクマモト屋襲撃の件で、まさかクマモト屋の主人が亡くならずにピンピンしている事を想定していなかったミカワヤがボロを出したのがきっかけで、そしてミカワヤに違法に奴隷として売られた兄弟の兄が自分の命を賭けて弟の命を助けて欲しいと言って来たのもミカワヤを追い詰める事になった。
この時もチーさんの力があったからこそ助ける事が出来たんだ。
彼女の側にはブラックカードを持つ冒険者が2人もいて、そして叡智ある者が協力してくれたのも事件解決の大きな力になった。
流石の宰相である叔父貴も今回ばかりはミカワヤを擁護する事が出来ずミカワヤの刑は決定された!
だが、ルクレシアの不気味な笑顔が崩れる事は無く…余裕のある態度で…それが今も崩れていないのが俺には不安材料だ…。

王家の廟の大氷柱に佇む天下兄者に俺と宙で今回の事、チーさんの事、魔石の事を報告した。
何も語らない兄者だが…なんとなく喜んでいる様に感じたよ…。
今回の件で、兄者が居なくなってから疎遠にならざるを得なかった守備隊隊長のトウ兄とも久し振りに話す事が出来た。
睡姉の事も、サクラ婆から今は安全なところにいるから安心していいと言われて泣きそうになった。
兄者が居なくなってから…絶望と失望…そして悲しみだけが支配していた世界で、俺は光に出会った!
たった1週間の間に彼女が俺達にくれた光は優しくて…泣きたくなる…。

そんな日々がずっと続くって思っていた。
まもなくグローディアス王国から花嫁が到着する…そう報告を受けた日、俺達はいつもと同じ様にアイリッシュ教会へ行ったが、そこにチーさんの笑顔は無かった…。

「サクラ婆!チーさんは?今日はいないの??」
「チーは国に帰ったよ…元々長居はしない予定だったんや…チーは嫁入りが決まっていたからな…。」
「「!!」」
「その前に光魔法の修行に来てたんや…。」
「そんな…嫁入りって…?」
「親が決めた輿入れじゃ…チーにはどうする事も出来ない事だ…チーもそれを受け入れたんや…。」
「そ…なんだ…。」
「そう、チーからコレを預かっていた!お弁当じゃ!皆で味わって食べてくれ…。」
「「……」」

まだ、少し暖かいお弁当に俺は俺達は走り出した!
チーさんが住んでいると言った家に全力で走った!
大きな家の玄関を開けると、そこには何も無くなっていた…。
人の気配も、そこにあった明るい光の様な笑顔も…。

「チーさん…。」
「チーちゃん…。」

項垂れる俺達に、誰も何も言ってはくれなかった…。





続く。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です

sai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,435pt お気に入り:4,188

妹に全てを奪われるなら、私は全てを捨てて家出します

恋愛 / 完結 24h.ポイント:262pt お気に入り:5,009

甘い婚約~王子様は婚約者を甘やかしたい~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:404pt お気に入り:387

絶対零度の悪役令嬢

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:2,943

魔王さんのガチペット

BL / 連載中 24h.ポイント:674pt お気に入り:3,368

処理中です...