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ダンダリオ魔道王国編

【閑話】いつかのメリークリスマス 前編

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お待たせ致しました!閑話です!尊お兄ちゃんです!
前後編です!ストーカーも出るし、お久しぶりの彼も出ます!
楽しんで頂けると幸いです!ではでは、どうぞ~!※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

斑目は一回り細くなった尊の背中を見て、尊には分からないように溜め息をついた。
本人は大丈夫だと言っているが11月を過ぎた辺りから少しずつ尊は食べなくなっていて、ゼミの仲間や寮の同級生に先輩達と食事に誘う様にして何かと食べる様にしていたが12月に入ってからは、その誘いも断っているようで、ますます痩せていく王子に学校中が心配している状況だ。
尊が食事が取れなくてなった理由を本人から聞いた訳ではないのだが…多分、大学中どころか日本中が知っている。
日本…いや世界でもありふれた子供への虐待による殺人は…残念ながら毎年ニュースに挙げられる。
最初、尊もその虐待を見て見ぬ振りをした冷たい兄だとネットでは本名で晒されていたそうだ。
しかし、その後の捜査で尊もまた虐待され入院する程の大怪我を受けていた事がニュースに挙げられ、その時尊に掛けられた保険金が降りた事で、今度は千尋くんに多額の保険金が掛けられていた事が分かり虐待死から保険金殺人へと容疑が切り替えられ、しかも、それが義父の実家ぐるみであったとかで暫くニュースやワイドショーではその事を毎日放送していた。
そして捜査関係者の談話で、そんな大怪我を負わされた尊が弟を救う為に東京から離れた大学を受験して弟を連れて行くために頑張っていた事を聞いたマスコミは手のひら返した様に美談だと話題にして取り上げた。
またネットでは尊の綺麗な顔に注目が集まっていたのもあって、暫くはアイドル扱いだったそうだ…。
勝手に顔出しした写真がネットで拡散した…勿論、本人には無許可だ。
あれから1年…流石に新たなニュースが次から次へと流れて世間的には話題には出て来なくなった。
だが、実際の家族にとっては、まだ1年なのだ…。
心に受けた傷跡からは、まだまだ血を流しているのかもしれない。

そんな中で今年最後の授業が終了し明日から冬期休暇になるとなれば、教室はいつも以上に賑やかになる。
隣で荷物をバッグへ詰め込んでいる尊に斑目が声を掛けた。

「尊…明日から冬休みだが何か予定があるか?」
「ああ…叔母の店が忙しいらしいから早めに帰って手伝うつもりだ。」
「じゃあ高山に帰るのか?」
「ああ…チーにも会えるしね。」
「チーは元気か?」
「うん…この前写真が来たけど見るか?」
「ああ、見たい。」
「ええと…ほら可愛いだろ?」
「ああ…一回り大きくなってるな…。」
「店でも、すっかり看板猫になっているって!この前タウン誌が取材に来たって!」
「そうか…これだけ可愛いと人気者になるだろう。」
「うん…。」

そんな会話をしている俺たちを囲んでゼミの仲間が集まって来たのだが…全員携帯持って話しをしている。

「あ!先輩!お疲れ様でーす!はい!高山リベンジが決まりました!はい!今回は高山で宿取れそうです!はい!…それでぇ~…」
「もしもし…うん…そっちのイベントには行けないや…うん…もう生物なまものに目覚めちゃったから…覚醒?うん!でも例の新刊は高山で書き上げる!うん!大晦日の大きなイベに間に合うと思う!うん…うん…オーケー!いいネタ必ずもぎ取って来るから!…部外者の参加出来る様に言えって?う~ん…一応打診するけどぉ~ほぼ欠席無しだと思うから無理かも…うん…うん…。」
「ああ…はい!教授…温泉?平湯?そっちも取れ??ええ~神谷教授のゼミも合同って!バス2台になるじゃないですか~ええ~王子は1人なんですよ~!女子が怒りますよ~そんな事したら~ええ~そこは教授が言って下さいよ~…」

「………斑目。」
「お前が高山に早々に帰るとか言うから…。」

そう言って目を反らす斑目だった…。



その頃、千尋くんの目の前に主神様が現れこう言った…。

「ポイントが…ポイントが足らないんだ…。」
「ええ~この前のじゃダメだったの?」
「地球の子達に割り振ったり色々したけど…あと10ポイント足りないんだ…。」
「じゃあ…このまま…落ちちゃうの?」
「嫌だ~!カレーが!カレーが食べられなくなったら…俺は俺は…全てを壊すしかなくなっちゃう…。」
「ええ~!!お、落ち着いて!いつまでに10ポイント必要なの?」
「今日…。」
「今日!?」
「どどどどうするの~!白雪~…あ!真白も光輝も魔導王国へ行ってるんだった!」
「…そういう訳で~千尋くんのお願いを聞きます!地球に行って来て下さい!」
「ええ~この前ので行けなくなったんじゃないの!?」
「この前はこの前で~この前みたいににゃんこに入ってもらいます!光魔法はダメだけど治癒魔法くらいなら1回サービスしますんで!」
「ええ~!!」
「はい!では今回も1週間行ってらっしゃい!」
「うにゃ~~~!!」

こうして気が付いたら千尋は再び白猫チーたんになっていた…。

『ああ~ここは何処なんだ?あ!美南叔母ちゃん!!じゃあ、ここは美波叔母ちゃんの店なんだ!』

美波のカフェは古民家である自宅を改装している。
カウンターが5席と4人座れる席が4つに丸テーブルが2つ…古い家のノスタルジックな雰囲気とシックな家具がマッチしていて大人の店だ。
サイフォンで入れたコーヒーのいい香りがする。
出窓に置かれた白猫チーたんの専用なのか暖かなペット用のアンカが入れてあるペットベットの横には、綺麗な陶器に水が入れてあって、結構至れり尽くせりだ。
店の殆どの席にお客さんが座っていて、美波叔母ちゃんは忙しそうに働いていた。

「お待たせ致しました、ブレンドコーヒーとシフォンケーキです!」
「ありがとうございます!美南さん!」
「ごゆっくりどうぞ。」

そう言って微笑んだ美南叔母ちゃんを、周りの人達がうっとりした顔で見てる。
よく見たら店のお客さんは全員男の人だよ!

「あら、チーちゃん起きたの?」
「にゃ~ん!」
『叔母ちゃん!』

千尋猫の頭を優しく撫でる手にスリスリすると美南叔母ちゃんは笑顔で…。

「チーちゃん明日、尊が帰って来るよ!早くチーちゃんに会いたいって!」
「にゃ!にゃ~ん!!」
『尊兄ちゃんが!やった!』
「ウフフ…嬉しい?良かったね~!」
「にゃ~」
「もう可愛い~!ウチの子1番!!」
「にゃ~ん!」

叔母ちゃんにスリスリしてたら強い視線を感じて周りを見たら、黒い服に長めの黒い髪を後ろで束ねた男の人が僕をジッと見てたんだ…。
ちょっと怖いと思っていたら、その人は僕を見て笑ったんだ!
綺麗な顔で…どこか見た事のある顔なんだけど…思い出せない…。
そして、その黒い人はお金を払って店を出て行った。

「ふ~!やっと帰って行ったか~お客様にこんな事言うのダメなんだけど…凄く嫌な気持ちになるのよね~さっきの人…。」
「にゃ~ん…」
『美南叔母ちゃんもそう感じるんだ…。』
「最近よく来てくれるんだけど…ずっとチーちゃん見てる…猫好きなのかしら?そんな雰囲気じゃないんだけどね…う~ん…。」
「にゃ~ん」
「おっと!仕事仕事!!もうひと頑張りよ!」

そう言って微笑んで美南叔母ちゃんはカウンターに入ってコーヒーを淹れはじめた。
しかし…さっきの人…知ってる人に似ているんだけど…思い出せない…その事が千尋の心に小さく波紋を残していたが…美南の忙しそうでいて楽しそうな笑顔を見ているうちに忘れていった。

次の日、尊兄ちゃんと斑目さんとゼミの仲間達御一行が店に訪れた!
ゼミの教授も含めた大勢の人に僕は囲まれて、何故か拝まれているよ…。

「白猫神さま!あの時は助けてくれて、ありがとうございました!」
「にゃ!?」
『白猫神!?』
「有難や~有難や~!」
「にゃにゃにゃ!」
『拝まないで下さい~!』

僕は思はず尊兄ちゃんの方に逃げて肩に登って兄ちゃんにスリスリした!

「チー…久しぶりだね…ふふふ…甘えん坊なのは変わらないんだ…。」
「にゃ~ん!」
『兄ちゃん!』

それを見たゼミの一行が何かホッとした顔をしてた。
そこに斑目さんが僕に言ったんだ!

「チー久し振りだ…お前の兄さんは、ここの所食欲無くて食べないし痩せる一方でな…いつ倒れるかって皆で心配していたんだ…ちゃんと食べろって叱ってくれ。」
「にゃにゃ!」
『そうなの!』
「斑目…チーに言ってどうする…それに倒れたりしないから…。」
「どの口が言うんだ…チーに怒って貰うのが1番だからな。」
「にゃ!にゃにゃにゃ!」
『兄ちゃん!ダメだよ!ちゃんと食べなきゃ!また痩せてる!!』
「…ごめん…ちゃんと食べるから…。」
「やっぱりチーに怒られるのが1番効くな。」

何故か会話が成立してるのを周りは微笑ましく見てる。
一部のお腐れ様がグッジョブ!って言って拳を上げていたんだけど…見えない見えない。

「さあ~皆さん!飛騨牛のお店の下僕ゴホンゴホン!友人に席を押さえて貰って居ますから行きましょう!」
『はぁ~い!!!』
「にゃ~ん!!」
『ええ~いいなぁ~いいなぁ~!』
「ふふふ…チーちゃんも特別に連れて行くわよ!お店の店長(下僕)さんに許可して貰ったからね!」
「にゃにゃ!」
『やった!』
「良かったね!チー!飛騨牛はドラゴン肉に匹敵するくらい美味しいよ!」
「にゃ~ん!」
『うん!兄ちゃん!』

僕はまた兄ちゃんにスリスリして、キャリーに入れられて運ばれました!
飛騨牛はドラゴン肉に勝るとも劣らない美味しさだった事を明記します!




続く!
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