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グローディアス王国編

闇の中の願い…甘いと美味しいをくれた光

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僕の名前はカイン…でもこの名前で呼ばれる事はない。
だいたいがチビもしくはノロマって呼ばれてる。
僕はまだ小さいとき人族の奴隷商人に拐われてこの闇に売られた。
この闇に来てから色々な事を習わされた。
そしてある程度大きくなってから首輪をはめられて仕事をするようになったんだ。
僕の仕事は人を殺す事…。
好きでやっているわけじゃないよ。
最初は怖かった…でも最近では何も感じなくなった。
どうやって殺すかは僕より大きい人達が考えてる。
僕は言われるままやるだけだから…何も考えない。
…でも、時々思うんだ…僕は死んだら楽になるのかなって…。
この前僕と同じチビだったコが死んだんだ…。
その顔は嬉しそうだった…やっと楽になったって顔だった…。
僕たちがしている首輪は僕が自分で死にたいと思っても死なせてくれないけど、いつか時間が来ると僕たちを殺すって。
僕たちは首輪がいつか僕を殺すのをずっとずっと待ってる。
今度殺す予定の人を見るために僕はアレンに切られた…。
思いっきり切ったのはアレンが優しいから…。
だって早く死ねるでしょ?
アレンも同じ…僕たちよりアレンは悲しい…彼は大きくなっても死ねないから…。
そして僕たちは行った…次に殺す人のところに…。
その人は小さい人だった。
僕と同じくらいの大きさだった。
僕を見て痛そうな顔をした。
そして、その両手から暖かい光を出したんだ。
初めて…ううん…ずっと昔に貰った事がある暖かい光…。
ずっとその光を探していたんだ…僕は…アレンもきっと同じ…その光は僕の酷い傷も身体中にあった傷も全部綺麗に消してしまった。
そして、甘い飴玉をくれた。
初めて…食べた…甘いって、美味しい…って初めて思った。
その人は僕だけじゃなくてアレンにも食べさせてた!
思わずアレンがポツリと言ったんだ、甘い…美味しい…って!
だから僕はこれが本当に甘くて美味しいって言う事なんだと分かったんだ。
そして僕達以外の子の人数を聞いて甘い飴玉を3個くれた…本当は昨日チビが死んだから2個で良かったんだけど…チビにも食べさせてやりたかったから…3個って言っちゃった。
アレンは何も言わなかったし…飴玉を取り上げなかった。
そして、僕たちは寝ぐらに戻った…飴玉をくれた人に言われた様に一緒にいる残りの2人に飴玉を食べさせた…。
2人とも美味しいって言って少し笑ったんだ…。
僕もあの時…笑ったのかな?
あの人を殺したくないな…その前に僕は死にたい僕に初めて甘いを教えてくれた人…。
暖かい光を出すあの人を僕は初めて殺したくないって思った。
暗闇から見るあの人は僕には眩しい人…だから…誰か僕たちからあの人を守って!
殺したくないけど…命令されたら僕たちにはどうしようもないから…。
誰か…誰でもいいから…そして僕を殺して欲しい…。
今ならきっと…笑えるから…甘い飴玉を思い出して笑って死ねるから…お願いだから…僕を…僕たちを殺して!





俺の名前はアレン…この名前は使わないけどね。
小さい時に攫われてこの闇ギルドに買われてから…何度か死に掛けたのに死ねなかった俺は身体が大きくなってもまだ生きてる。
首輪はだいたい15歳くらいまでに死をもたらすのに俺には来てくれなかった。
人を殺す技術は上がってたから処分されないでいる…それが幸せかと言われたら決してそうでは無いよ。
カインを思いっきり切った…これでカインは間もなく楽になるかもって思ったから。
だけど、今回依頼された相手を確認する為に訪れた冒険者ギルドの治療室の小さい先生が綺麗に治してしまった。
しかも俺の身体に刻まれた古傷まで…温かい綺麗な光は…本当に…なんて言っていいのか分からない。
そして、あの甘い飴玉…カインの嬉しそうな顔初めて見た。
そして俺にも食べさせてくれた飴をつい素で美味しいと言ってしまった。
暗闇に落ちて…もう光なんていらないって思っていた。
どんなに光を浴びても…この手は…いや俺はもう全身が赤黒く染まっている。
その色は消え去る事はない…そう俺が死ぬまで消えはしない。
もう何人見送ったか分からなくなってしまって…何も考えなくなって…ただただ早く死にたくて仕方なかったのに…。
あの綺麗な光を今度は消してしまうのか?
それはしたくないな…そう俺が思っていても命じられたら行くしかない。
でも、あの綺麗な光は俺達が何者なのか分かったみたいだった…顔に全部出ていたからね…そして強い何かに守られているのも分かった。
この仕事をして色々な気配に敏感になったから…大きく強い何かに守れれているんだって分かって俺は嬉しかった。
今度こそ俺は死ねるのかもしれない…そう思って。
闇ギルドのトップ以上に強い気配…恐ろしくて容赦ない男であるギルドのトップより強い存在がいるなんて…。
でも、それでいい…そんな存在がいるなら、きっとあの子を守ってくれる。
俺達みたいな黒く汚れた存在からきっと守ってくれるだろう…。
そして俺のたった一つの願いを叶えてくれる。
だから、俺は聞かれた事だけを答えた…あの子が俺達が何者か分かっているとか、背後に強い存在がいる事を言わなかった…だって聞かれなかったしな…。
聞かれない事は話さない、それが例え俺達の不安材料になったとしてもそれでいいんだ。
明日…冒険者ギルドに乗り込む事になったから闇ギルドのメンバー全員で行く。
俺もカインもみんなで行く…俺達はこれで解放されるだろうか?
今ならきっと甘い美味しかった飴玉を思い出して笑って死ねる…そんな気がするんだ。
カインも残っている2人も…甘い飴玉を食べたならきっと思い出して笑う。
だから、お願いだ…神なんて知らないからあの綺麗な光に祈るよ…どうかお願いだ俺を…俺達を殺して…。



続く…(;_;)
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