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第51話 期末テスト、そして……
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翌日、理恵は完全回復して元気に登校してきた。あんなに熱が出ていたのに一日で回復なんて若いものだ。いつものようにわっけーが大声で迎えて、そしてみんなで盛り上がっていた。理恵とは距離を取っている詩音も心配していたのか、ホッとした様子を見せていた。
「あーはっはっはーっ! りぃが元気になってよかったぞ。あたしなんて、風邪の『か』の字も経験した事ないぜーっ、はーっはっはっはーっ!」
いちいちわっけーがうるさいのも相変わらずだ。
しかし、体調が戻ったとはいえ、いつまでも安心していられない。何と言っても期末テストまでもう少しだ。
テスト前一週間は部活は禁止。しかし、体を動かさないと気の済まない栞は、早朝や放課後に校舎周りを堂々と走り込んでいた。
理恵が復活した日の昼休み。栞はふと思い出した事を理恵に尋ねてみる。
「そういえば、理恵ちゃん。コンクールに出す絵ってどうなったの?」
「あーうん、あの事件で部室が使えなくなっちゃったから、みんな家で仕上げて出したみたいだよ。私もそうだったし。あ、ちなみにコンクールの結果はもう出てるんだよ」
「あ、そうなんだ」
はにかみながら答える理恵の姿に、栞は気がかりの一つが解消されてホッとした。うん、あれだけ大騒ぎになった事件だったのに、今の今まで忘れていた事はとりあえず置いておこう。とりあえずこれで期末テストに集中する事ができるのだ。栞もしっかりテスト勉強に打ち込んだ。
そして迎えた期末テストの日。
最初の中間テストはほとんど習いたてで簡単なものだったが、さすがに今回はだいぶ難易度が上がっている。
栞に限って言えば、干支が一回りするような昔とは習う内容が様変わりしている部分があったので、そこにいかに対応するかというのも課題だった。油断すると以前習った内容で答えかねないのだ。つまり、ある種の引っ掛け問題だ。出題者側ではなく解答者側で起きる引っ掛けなのだ。
ともかく期末テストの3日間を、栞は何とか乗り切ってみせた。
期末テストが終わると、週末を挟んで月曜にテスト結果が返ってきた。
テストの結果が返ってくると、予測可能回避不可能な事案が発生する。
「わーはっはっはーっ! しおりん、いざ尋常に勝負じゃーっ!」
そう、わっけーとの成績対決である。期末テストの成績表を貰った直後、わっけーはずかずかと栞の席へ歩いてきたのだ。そのわっけーの手には成績表がしっかりと握られている。
「今回は負けんぞーっ! さぁ、成績を見せろーっ!」
「あのさ、負けないってね……。前回は引き分けでしょうが」
「うるさーいっ! とっとと見せるのだーっ!」
「はぁ、別にいいんだけど」
いつもの通り大声で喚くわっけーに、栞は大きなため息を吐きながらも応対する。わっけーはとにかく自信たっぷりににこにこしており、栞はそれに仕方ないわねという表情で迎えうつ。さあ、今回の勝負はどちらに軍配が上がるのだか。
「せーのっ!」
掛け声で一斉に成績を見せ合う二人。栞の成績を見たわっけーはしばらく固まっており、次第にわなわなと震え始め、大声で叫んだ。
「くっそーっ! 化け物か、しおりん!」
わっけーがこう叫ぶのも無理はなかった。わっけーの声に真彩たちも栞の成績表を覗き込む。すると、そこには驚愕の数値が書かれていた。
そう、栞の成績は中間テストに続いてまたもや満点。期末テストは九教科なので、なんと900点満点だったのだ。
騒ぎたてるわっけーにお返しとばかりに、
「えーっとわっけーの成績は……と」
栞はその成績を読み上げようとする。
「わー、言うなーっ! やめろーっ!」
するとわっけーは大声で妨害しようとする。しかし、栞の成績表を見ていた真彩と理恵が、そのわっけーの成績表を奪い取って覗き込んだ。
「891点……。わっけー、十分すごいじゃないの」
真彩と理恵は感心しているのだが、
「くぅ、そんな点数でもしおりんに負けたら意味がないんじゃーっ!」
といった感じで、わっけーは大騒ぎをしていた。
このわっけーによる一方的な勝負の事は、すでにクラス全体知れ渡っている。そのせいでうるさく負けた事を悔しがるわっけーを見ながら、クラスメイトたちはしみじみと見守っていた。
このわっけーの声は実に近所迷惑レベルなのだが、クラスの中がほのぼのとするくらいには1年5組の名物と化していたのであった。わっけーが騒ぐ事は小学校同じなら知っている事だからといっても、みんな慣れるのが早過ぎである。
今日も今日とて1年5組は平和なのである。
しかし、この賑やかな学校生活も、そろそろ長き休息に入ろうとしていた。言わずと知れた夏休みである。
この草利中学校の長期休暇は、実はこれといった宿題が出ない。強いて言うなら自由研究的なものだけが出される。夏休み中の事をレポートみたいにして出せばいいのだ。だからといっても提出しなくても怒られない。完全に自由課題なのだ。それでも提出率に限ればほぼ100%らしい。これも草利中学校の大いなる謎の一つである。
草利中学校に渦巻くどんよりとした謎とは裏腹に、今日も雲一つない夏の青空が広がっている。
夏休みはもう目前である。今年は一体どんなドラマが待ち受けているのであろうか。実に楽しみである。
「あーはっはっはーっ! りぃが元気になってよかったぞ。あたしなんて、風邪の『か』の字も経験した事ないぜーっ、はーっはっはっはーっ!」
いちいちわっけーがうるさいのも相変わらずだ。
しかし、体調が戻ったとはいえ、いつまでも安心していられない。何と言っても期末テストまでもう少しだ。
テスト前一週間は部活は禁止。しかし、体を動かさないと気の済まない栞は、早朝や放課後に校舎周りを堂々と走り込んでいた。
理恵が復活した日の昼休み。栞はふと思い出した事を理恵に尋ねてみる。
「そういえば、理恵ちゃん。コンクールに出す絵ってどうなったの?」
「あーうん、あの事件で部室が使えなくなっちゃったから、みんな家で仕上げて出したみたいだよ。私もそうだったし。あ、ちなみにコンクールの結果はもう出てるんだよ」
「あ、そうなんだ」
はにかみながら答える理恵の姿に、栞は気がかりの一つが解消されてホッとした。うん、あれだけ大騒ぎになった事件だったのに、今の今まで忘れていた事はとりあえず置いておこう。とりあえずこれで期末テストに集中する事ができるのだ。栞もしっかりテスト勉強に打ち込んだ。
そして迎えた期末テストの日。
最初の中間テストはほとんど習いたてで簡単なものだったが、さすがに今回はだいぶ難易度が上がっている。
栞に限って言えば、干支が一回りするような昔とは習う内容が様変わりしている部分があったので、そこにいかに対応するかというのも課題だった。油断すると以前習った内容で答えかねないのだ。つまり、ある種の引っ掛け問題だ。出題者側ではなく解答者側で起きる引っ掛けなのだ。
ともかく期末テストの3日間を、栞は何とか乗り切ってみせた。
期末テストが終わると、週末を挟んで月曜にテスト結果が返ってきた。
テストの結果が返ってくると、予測可能回避不可能な事案が発生する。
「わーはっはっはーっ! しおりん、いざ尋常に勝負じゃーっ!」
そう、わっけーとの成績対決である。期末テストの成績表を貰った直後、わっけーはずかずかと栞の席へ歩いてきたのだ。そのわっけーの手には成績表がしっかりと握られている。
「今回は負けんぞーっ! さぁ、成績を見せろーっ!」
「あのさ、負けないってね……。前回は引き分けでしょうが」
「うるさーいっ! とっとと見せるのだーっ!」
「はぁ、別にいいんだけど」
いつもの通り大声で喚くわっけーに、栞は大きなため息を吐きながらも応対する。わっけーはとにかく自信たっぷりににこにこしており、栞はそれに仕方ないわねという表情で迎えうつ。さあ、今回の勝負はどちらに軍配が上がるのだか。
「せーのっ!」
掛け声で一斉に成績を見せ合う二人。栞の成績を見たわっけーはしばらく固まっており、次第にわなわなと震え始め、大声で叫んだ。
「くっそーっ! 化け物か、しおりん!」
わっけーがこう叫ぶのも無理はなかった。わっけーの声に真彩たちも栞の成績表を覗き込む。すると、そこには驚愕の数値が書かれていた。
そう、栞の成績は中間テストに続いてまたもや満点。期末テストは九教科なので、なんと900点満点だったのだ。
騒ぎたてるわっけーにお返しとばかりに、
「えーっとわっけーの成績は……と」
栞はその成績を読み上げようとする。
「わー、言うなーっ! やめろーっ!」
するとわっけーは大声で妨害しようとする。しかし、栞の成績表を見ていた真彩と理恵が、そのわっけーの成績表を奪い取って覗き込んだ。
「891点……。わっけー、十分すごいじゃないの」
真彩と理恵は感心しているのだが、
「くぅ、そんな点数でもしおりんに負けたら意味がないんじゃーっ!」
といった感じで、わっけーは大騒ぎをしていた。
このわっけーによる一方的な勝負の事は、すでにクラス全体知れ渡っている。そのせいでうるさく負けた事を悔しがるわっけーを見ながら、クラスメイトたちはしみじみと見守っていた。
このわっけーの声は実に近所迷惑レベルなのだが、クラスの中がほのぼのとするくらいには1年5組の名物と化していたのであった。わっけーが騒ぐ事は小学校同じなら知っている事だからといっても、みんな慣れるのが早過ぎである。
今日も今日とて1年5組は平和なのである。
しかし、この賑やかな学校生活も、そろそろ長き休息に入ろうとしていた。言わずと知れた夏休みである。
この草利中学校の長期休暇は、実はこれといった宿題が出ない。強いて言うなら自由研究的なものだけが出される。夏休み中の事をレポートみたいにして出せばいいのだ。だからといっても提出しなくても怒られない。完全に自由課題なのだ。それでも提出率に限ればほぼ100%らしい。これも草利中学校の大いなる謎の一つである。
草利中学校に渦巻くどんよりとした謎とは裏腹に、今日も雲一つない夏の青空が広がっている。
夏休みはもう目前である。今年は一体どんなドラマが待ち受けているのであろうか。実に楽しみである。
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