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第四章 ロゼリア10歳
第57話 魔物氾濫
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カイスの村の近くに到着して四日が過ぎた。
魔物氾濫の起きる地点には、ますます瘴気が集まり始めている。その余波は、近くに居るロゼリアたちにひしひしと感じさせるくらいには強まってきていた。
ロゼリアたちはその監視のためか、カイスの村には一切近付いていない。その代わり、カイスの村で試そうとする、畑を作るための防御壁の魔道具作りに没頭していた。
現状、この防御壁を作れるのはチェリシアだけなので、ロゼリアとペシエラは教えてもらいながらである。
手元にあるのは、未開の森で手に入れた十個程度の魔石だけである。新たに魔石を手に入れようと思っていても、魔物氾濫の前兆現象のせいで魔物が逃げてしまっている。そのせいで、野営地点の周りはとても平和であった。
その四日目の事、カイスの村に動きがあった。
「村が騒がしいわね。何があったのかしら」
真っ先に反応したのはロゼリアだった。その言葉に、チェリシアはエアリアルボードを使って上空から様子を窺う。
村には馬に乗ってきた数名の男性が見える。その中の一人を見て、チェリシアは驚いた。
すぐさま地上に降りたチェリシアは、
「大変、お父様が村に来られているわ」
大騒ぎで二人に伝える。
「思ったより早かったですわね」
「それはそうでしょ。大事な娘が子どもだけで出歩いてるんですもの。王都から領地までは早馬が出ているはずだし、途中で私たちを見ていなければ、こちらに向かうのは道理よ」
ロゼリアは落ち着き払っているが、実はロゼリアの方もヴァミリオの元に早馬が走っていた。現在は問い合わせの早馬が、コーラル子爵領に向かっているところである。
そうは言っても、怒られるのは仕方ないとして、どうやって言い繕うつもりかロゼリアは考え始めた。
この時点では、村に着いたばかりのプラウスが、娘を探して叫び回っているのだが、チェリシアもペシエラもそんな事はまったく知らない。村人たちは、必死の形相になっているプラウスに、完全に怯えている。しかし、いくら叫びまくっても、そこには娘たちは居ない事をプラウスは知らなかった。
その最中、実に突然の事だった。
ズンと、激しく地面が揺れた。
「えっ? 地震?」
チェリシアがそう疑問を呈した時、ロゼリアは慌てて凹地の方を見る。
「あれはっ!」
ロゼリアが叫ぶと、チェリシアとペシエラの二人も凹地の方へと視線を向ける。
すると、凹地に向けて、空からドス黒い瘴気がどんどんと吸い込まれていっているではないか。
……そう、魔物氾濫の前兆だ。
「前回を含めて初めて見たけど、これはなかなか恐ろしいものね」
ロゼリアは、凹地に集まる瘴気のせいで、全身に冷や汗をかいている。これはチェリシア、ペシエラも同じだ。魔法使いだからこそ現れる症状である。
「チェリシア、エアリアルボードを!」
「えっ、うん!」
ロゼリアに言われて、チェリシアはエアリアルボードを展開する。そして、ペシエラも乗せて素早く上昇して凹地へと急ぐ。
上から見た凹地はドス黒く染まりきっており、元の地形をまったく見る事ができなくなっていた。ロゼリアたちが見守る間も、次々と凹地には瘴気が集まっていく。その瘴気は、まるで生きているように脈打ちながら不気味に蠢いている。
「なんておぞましいのかしら……」
ロゼリアは思わず視線を背けた。
「お姉様、ロゼリア。早くなった理由は分かりませんが、作戦通りに参りましょう」
顔を青ざめさせつつも、ペシエラは二人に声を掛ける。よく見れば、ペシエラの体は小刻みに震えている。
「ええ、私たちはそのためにここに来たのよ。魔物氾濫による被害を最小限にして、大量の魔石を手に入れる。この目的は揺るがないわ」
ロゼリアが青ざめた顔で言うと、チェリシアとペシエラは黙って大きく頷いた。
その時、瘴気が大きく震える。
それを待ってましたと言わんばかりに、
「チェリシア!」
「はい!」
大きな声と共に、チェリシアから眩いばかりの光が放たれた。
魔物氾濫の起きる地点には、ますます瘴気が集まり始めている。その余波は、近くに居るロゼリアたちにひしひしと感じさせるくらいには強まってきていた。
ロゼリアたちはその監視のためか、カイスの村には一切近付いていない。その代わり、カイスの村で試そうとする、畑を作るための防御壁の魔道具作りに没頭していた。
現状、この防御壁を作れるのはチェリシアだけなので、ロゼリアとペシエラは教えてもらいながらである。
手元にあるのは、未開の森で手に入れた十個程度の魔石だけである。新たに魔石を手に入れようと思っていても、魔物氾濫の前兆現象のせいで魔物が逃げてしまっている。そのせいで、野営地点の周りはとても平和であった。
その四日目の事、カイスの村に動きがあった。
「村が騒がしいわね。何があったのかしら」
真っ先に反応したのはロゼリアだった。その言葉に、チェリシアはエアリアルボードを使って上空から様子を窺う。
村には馬に乗ってきた数名の男性が見える。その中の一人を見て、チェリシアは驚いた。
すぐさま地上に降りたチェリシアは、
「大変、お父様が村に来られているわ」
大騒ぎで二人に伝える。
「思ったより早かったですわね」
「それはそうでしょ。大事な娘が子どもだけで出歩いてるんですもの。王都から領地までは早馬が出ているはずだし、途中で私たちを見ていなければ、こちらに向かうのは道理よ」
ロゼリアは落ち着き払っているが、実はロゼリアの方もヴァミリオの元に早馬が走っていた。現在は問い合わせの早馬が、コーラル子爵領に向かっているところである。
そうは言っても、怒られるのは仕方ないとして、どうやって言い繕うつもりかロゼリアは考え始めた。
この時点では、村に着いたばかりのプラウスが、娘を探して叫び回っているのだが、チェリシアもペシエラもそんな事はまったく知らない。村人たちは、必死の形相になっているプラウスに、完全に怯えている。しかし、いくら叫びまくっても、そこには娘たちは居ない事をプラウスは知らなかった。
その最中、実に突然の事だった。
ズンと、激しく地面が揺れた。
「えっ? 地震?」
チェリシアがそう疑問を呈した時、ロゼリアは慌てて凹地の方を見る。
「あれはっ!」
ロゼリアが叫ぶと、チェリシアとペシエラの二人も凹地の方へと視線を向ける。
すると、凹地に向けて、空からドス黒い瘴気がどんどんと吸い込まれていっているではないか。
……そう、魔物氾濫の前兆だ。
「前回を含めて初めて見たけど、これはなかなか恐ろしいものね」
ロゼリアは、凹地に集まる瘴気のせいで、全身に冷や汗をかいている。これはチェリシア、ペシエラも同じだ。魔法使いだからこそ現れる症状である。
「チェリシア、エアリアルボードを!」
「えっ、うん!」
ロゼリアに言われて、チェリシアはエアリアルボードを展開する。そして、ペシエラも乗せて素早く上昇して凹地へと急ぐ。
上から見た凹地はドス黒く染まりきっており、元の地形をまったく見る事ができなくなっていた。ロゼリアたちが見守る間も、次々と凹地には瘴気が集まっていく。その瘴気は、まるで生きているように脈打ちながら不気味に蠢いている。
「なんておぞましいのかしら……」
ロゼリアは思わず視線を背けた。
「お姉様、ロゼリア。早くなった理由は分かりませんが、作戦通りに参りましょう」
顔を青ざめさせつつも、ペシエラは二人に声を掛ける。よく見れば、ペシエラの体は小刻みに震えている。
「ええ、私たちはそのためにここに来たのよ。魔物氾濫による被害を最小限にして、大量の魔石を手に入れる。この目的は揺るがないわ」
ロゼリアが青ざめた顔で言うと、チェリシアとペシエラは黙って大きく頷いた。
その時、瘴気が大きく震える。
それを待ってましたと言わんばかりに、
「チェリシア!」
「はい!」
大きな声と共に、チェリシアから眩いばかりの光が放たれた。
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