逆行令嬢と転生ヒロイン

未羊

文字の大きさ
73 / 731
第四章 ロゼリア10歳

第71話 凹地の謎

しおりを挟む
 話は再びカイスの村。
 結局、チェリシアとペシエラの作った光の防御壁は、一週間形を保ち続けた。しかし、一週間経つと魔石が光を失って灰色となり、そのまま砕け散った。
「フォレストバードの魔石で一週間なのね。一年三百日で四十三週間あるから、一棟につき年間四十三個必要って事ね」
 ロゼリアとチェリシアはあっという間に計算して、必要数を導き出していた。ペシエラは全体的に勉強はできなかった方なので、まったくもって理解できている様子ではなかった。
 それにしても、魔力の尽きた魔石というものは、弾け飛ぶように砕けるものではないようだ。弾けるように砕けるのであれば、安全性としては問題が大ありなのだが、崩れるように砕け散るのなら安全だ。今回の事象を目撃したロゼリアは、今出回っている万年筆の安全性に思考を巡らせていた。
 だが、そんな思考も長くは続かなかった。
 時期は夏の時期に入り、少しずつカイスの村にも熱波が押し寄せ始めた。
 風が流れ込んでくる東側は林すら見当たらない状態で、これでは熱風が村に直撃するのは当たり前の話だ。
「北東の凹地周りにも木が生えている様子はなかったし、この辺りは植物が育ちにくいのかしら」
 ロゼリアたちは、どうにも気になる模様。近くに水場らしきものも見受けられない。一応、何ヶ所か井戸があり、地下水はあるようだ。しかし、それで賄うには厳しい状況である。
 ロゼリアが気にしていると、ペシエラが何かを思い出したかのように話しかけてきた。
「ふと思い出したけれど、逆行前にあの凹地で魔物氾濫を抑えた時、気を失う前に誰かに呼ばれた気がしましたわ」
 ロゼリアとチェリシアが、目を見開いてペシエラを見る。
「そうよ、ペシエラは乙女ゲームのヒロインだったわ。もしかしたら、それは精霊の声かも知れないわ」
「ちょっと、お姉様?!」
 チェリシアががっつくように、ペシエラの肩を掴んで前後に揺らす。
「すぐに凹地に向かうわよっ!」
「お、お姉様?!」
「二人とも待ちなさい!」
 チェリシアがペシエラの腕を引いて、凄いスピードで駆け出していった。ロゼリアも必死に追いかける。しかし、チェリシアは風魔法を使っているのか、まったく追いつけなかった。
 そして、やって来たカイス北東の凹地。ほんの一週間くらい前に魔物氾濫が起きたとは思えないくらい、静かな様子を湛えていた。
「まったく……、お姉様ったら、いきなり、走り出すんですもの……」
 ペシエラは七歳の体を思いっきり引っ張られた事で、息が完全に上がっていた。しかし、チェリシアはまったく気にかけていない。魔力を使い果たして寝込んでいたとは思えないくらい、元気一杯に凹地を眺めている。
「お姉様、精霊なんて本当に存在しているの?」
 息を整えたペシエラが、チェリシアに質問する。するとチェリシアは、
「ええ、居るわ。ゲームでは攻略対象と精霊の力を借りて、困難に立ち向かっていたんだもの」
 と、自信たっぷりに答えた。完全に確信している。
 一方で、ペシエラは半信半疑というよりかは、ほとんど信じていなかった。逆行前に精霊を見た覚えがないのだ。記憶に曖昧に残る、声を聞いたかもという程度だった。
「ちょっと……、二人とも……速すぎ」
 ロゼリアがようやく追いついてやって来た。
 その時だった。
 三人が揃ったところで、急に凹地の雰囲気が変わったのだ。
「なに? ピリピリするわ」
 魔力が波打つ感覚がして、少し気分が悪くなる。髪はまるで静電気を帯びたかのように浮き上がり、何か強大な力の流れを感じ取った。
「……何か来るわ!」
 ロゼリアが叫ぶと、目の前の空間が不意に歪む。
『やぁ、運命に抗いし、導かれし者たち。よく来たね』
 頭の中に直接響く声が聞こえる。
「誰? 誰なの?」
 取り乱したのは、一番身構えていたロゼリアだった。
『誰かって? 君たちはボクの事を噂していたはずだよ?』
 響く声の言葉に、ペシエラがハッとする。
「精霊……?」
『そうだよ。ボクは精霊さ』
 その言葉が響くと、チェリシアたち三人の前に、羽の生えた小さな存在が現れた。
「やはりいらしたのですね。あぁ、この目で精霊を見られるなんて……。スマホがあればこの様子を写真に収めたのに」
「チェ、チェリシア?」
 うっとりするチェリシアが発した言葉が意味不明すぎて、ロゼリアとペシエラが困惑している。
『ふふっ、君は“世界の渡り子“なのかい? 久しぶりに見たね』
 目の前の精霊は驚く単語を言い放ったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

処理中です...