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第五章 学園編
第89話 アクアマリンは水の領地
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シアンの持ってきた調査経過報告書を確認したロゼリアたち。さすがに隣国のペイル王子に関しては、少々内容が希薄だった。
「隣国ともなると、やはり情報が足りないわね。将来の嫁ぎ先の候補にはしているから、少し探りを入れてみたいわね」
「ごめんなさい。ゲームでもあまり語られませんでしたから、お役に立てなくて」
「いいのよ、チェリシア。この商会を立ち上げられただけでも、役に立っているわ。おかげで正式ルートだけではなく、出入りする商人から情報を仕入れる事もできるわ」
ロゼリアがいろいろ提案しているが、自分からは何もできないチェリシアは、申し訳なさそうにしている。
「お姉様、そろそろ学期末ですわよね? となると、夏季休暇に合宿が行われますわ」
「合宿? あっ!」
違う話題を振ったペシエラの言葉で、チェリシアは何かを思い出したようだ。
「そっか、三年前の魔物氾濫の話が出る、夏の合宿ね」
そう、本来チェリシアが魔法に目覚めるきっかけとなった魔物氾濫の話が出る合宿である。
「私は三年前に思い出してからというもの、今もしっかり思い出したままですわ。ロゼリアはどうかしら?」
「確か、魔物の出ない湖畔の地で行われた合宿ね。結局魔物が出て、殿下たちと一緒に騒動を治めたはず」
「そうそう、攻略対象と仲を深める一番最初の選択式のイベントだわ」
ペシエラの問い掛けにロゼリアが答えると、続くようにチェリシアもゲーム知識を披露する。
「その中でシルヴァノ殿下と行動すると発生するのが、その魔物氾濫の話題なんです。他の攻略対象を選んでも、確か何かしらイベントが起きたんですけど……、いろいろありすぎて、思い出せなくなってきてるわ」
チェリシアが顎に手を当てて首を捻っている。さすがにチェリシアとして五年も活動していると、前世の記憶を引っ張り出すのも苦労するようだった。
「一応、以前書いて頂いた本があるから、困った時にはそれを確認しましょう」
「そうね」
ロゼリアとチェリシアは頷き合った。
「でも、湖畔の地となると、王国内ではあそこしかないわね」
「ええ、あそこしかありませんわ」
ロゼリアとペシエラには、どうやら思い当たる節があるようである。
「二人とも場所が分かるの?」
チェリシアは不思議に思った。それもそうだろう。ゲーム内では湖畔の地での合宿とだけ語られていて、場所の詳細はまったく無かったのだ。なので、転生者であるチェリシアだけが、場所の心当たりが無いというわけだ。
「当たり前ですわ。この合宿、実際に体験するのは二度目なのですから」
「あ、そっか……」
ペシエラの返答に、チェリシアは思わず納得がいった。だが、ペシエラの年齢を考えれば、実に二、三十年前の話なので、しっかり覚えているのなら大したものである。
「で、それはどこなの?」
「アクアマリン子爵領のサファイア湖よ」
「あ、シアンさんの故郷の……」
なんと、ロゼリア付の侍女であるシアンの故郷で行われるらしい。
「アクアマリン子爵の一族は、魔法に詳しいですし、更には扱いにも長けているのよ」
「前回の合宿の際には、魔法の先生も務められていたわ」
ロゼリアとペシエラが、アクアマリン子爵家の事を口々に説明する。それに加えるとするならば、治める地域は自然が豊かで、砂糖の原料のサトウキビが採れる地域だという事くらいだろうか。
「湖があるというなら、水着を持っていって泳ぎたいわね」
チェリシアが能天気な事を言う。
「やめておきなさい。サファイア湖は周囲こそ浅いけど、途中から急に深くなるわ。それに、水竜か水神か、水を司る者の住む聖地となっているのだから、バチが当たるわよ」
ロゼリアがそう言うと、チェリシアは残念そうに項垂れた。
「それにしても、前回も今回も、シアンが魔法を使っているところを見た事が無いのよね。いくら四女という末席とはいえ、アクアマリン家の子女なのだから変な話だわ」
「何か理由があるのかも」
「アクアマリン子爵家は聡明とも言われるし、使う必要がなかったのかも知れませんわ」
ロゼリアがふと思い出したかのように言うと、チェリシアとペシエラはそれぞれに理由を推測する。思い出したところで本人に聞こうにも、ちょうど調査の続きに出てしまっていて、夜まで戻って来そうにない。
「とりあえず、私たちの記憶とチェリシアがメモしてくれたイベント内容を精査して、どういう行動を取るべきか明日にでも考えましょう」
ロゼリアがこう言って、この日はお開きとなったのだった。
「隣国ともなると、やはり情報が足りないわね。将来の嫁ぎ先の候補にはしているから、少し探りを入れてみたいわね」
「ごめんなさい。ゲームでもあまり語られませんでしたから、お役に立てなくて」
「いいのよ、チェリシア。この商会を立ち上げられただけでも、役に立っているわ。おかげで正式ルートだけではなく、出入りする商人から情報を仕入れる事もできるわ」
ロゼリアがいろいろ提案しているが、自分からは何もできないチェリシアは、申し訳なさそうにしている。
「お姉様、そろそろ学期末ですわよね? となると、夏季休暇に合宿が行われますわ」
「合宿? あっ!」
違う話題を振ったペシエラの言葉で、チェリシアは何かを思い出したようだ。
「そっか、三年前の魔物氾濫の話が出る、夏の合宿ね」
そう、本来チェリシアが魔法に目覚めるきっかけとなった魔物氾濫の話が出る合宿である。
「私は三年前に思い出してからというもの、今もしっかり思い出したままですわ。ロゼリアはどうかしら?」
「確か、魔物の出ない湖畔の地で行われた合宿ね。結局魔物が出て、殿下たちと一緒に騒動を治めたはず」
「そうそう、攻略対象と仲を深める一番最初の選択式のイベントだわ」
ペシエラの問い掛けにロゼリアが答えると、続くようにチェリシアもゲーム知識を披露する。
「その中でシルヴァノ殿下と行動すると発生するのが、その魔物氾濫の話題なんです。他の攻略対象を選んでも、確か何かしらイベントが起きたんですけど……、いろいろありすぎて、思い出せなくなってきてるわ」
チェリシアが顎に手を当てて首を捻っている。さすがにチェリシアとして五年も活動していると、前世の記憶を引っ張り出すのも苦労するようだった。
「一応、以前書いて頂いた本があるから、困った時にはそれを確認しましょう」
「そうね」
ロゼリアとチェリシアは頷き合った。
「でも、湖畔の地となると、王国内ではあそこしかないわね」
「ええ、あそこしかありませんわ」
ロゼリアとペシエラには、どうやら思い当たる節があるようである。
「二人とも場所が分かるの?」
チェリシアは不思議に思った。それもそうだろう。ゲーム内では湖畔の地での合宿とだけ語られていて、場所の詳細はまったく無かったのだ。なので、転生者であるチェリシアだけが、場所の心当たりが無いというわけだ。
「当たり前ですわ。この合宿、実際に体験するのは二度目なのですから」
「あ、そっか……」
ペシエラの返答に、チェリシアは思わず納得がいった。だが、ペシエラの年齢を考えれば、実に二、三十年前の話なので、しっかり覚えているのなら大したものである。
「で、それはどこなの?」
「アクアマリン子爵領のサファイア湖よ」
「あ、シアンさんの故郷の……」
なんと、ロゼリア付の侍女であるシアンの故郷で行われるらしい。
「アクアマリン子爵の一族は、魔法に詳しいですし、更には扱いにも長けているのよ」
「前回の合宿の際には、魔法の先生も務められていたわ」
ロゼリアとペシエラが、アクアマリン子爵家の事を口々に説明する。それに加えるとするならば、治める地域は自然が豊かで、砂糖の原料のサトウキビが採れる地域だという事くらいだろうか。
「湖があるというなら、水着を持っていって泳ぎたいわね」
チェリシアが能天気な事を言う。
「やめておきなさい。サファイア湖は周囲こそ浅いけど、途中から急に深くなるわ。それに、水竜か水神か、水を司る者の住む聖地となっているのだから、バチが当たるわよ」
ロゼリアがそう言うと、チェリシアは残念そうに項垂れた。
「それにしても、前回も今回も、シアンが魔法を使っているところを見た事が無いのよね。いくら四女という末席とはいえ、アクアマリン家の子女なのだから変な話だわ」
「何か理由があるのかも」
「アクアマリン子爵家は聡明とも言われるし、使う必要がなかったのかも知れませんわ」
ロゼリアがふと思い出したかのように言うと、チェリシアとペシエラはそれぞれに理由を推測する。思い出したところで本人に聞こうにも、ちょうど調査の続きに出てしまっていて、夜まで戻って来そうにない。
「とりあえず、私たちの記憶とチェリシアがメモしてくれたイベント内容を精査して、どういう行動を取るべきか明日にでも考えましょう」
ロゼリアがこう言って、この日はお開きとなったのだった。
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