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第五章 学園編
第90話 水着を売り出そう
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「じゃーん!」
チェリシアが唐突に何かを取り出した。
「何なの、その薄っぺらい布切れは……」
チェリシアの笑顔に、ロゼリアが顔を引き攣らせていた。
「水着よ、水着。密かに体型を割り出して、服飾の得意なドール商会の職人に、生地の指定をして作ってもらったのよ」
「何をしているのよ、まったく……」
チェリシアの屈託のない笑顔に、ロゼリアが頭を抱えている。
「水に濡れても透けない生地というのが大変だったわ。でも、さすがはそういう素材系の扱いに長けたドール商会、探し出してきてくれたわ」
水着を体に当てて、くるくると回るチェリシア。しかし、ペシエラがツッコミを入れる。
「お姉様、合宿中はそれほど自由な時間はございませんわよ。ほとんど自由なのは日の暮れた後だけですから、泳ぐなんて事はできませんわよ」
前回の記憶から、スッパリとチェリシアの思惑を切り捨てた。
「それに、先日言いましたでしょう? 神聖な地で泳ぐなんて罰当たりだと」
「そうですわよ。泳ぐんでしたらシェリアに行けばよろしいでしょう。観光地化に取り組んだのはお姉様ではありませんか!」
チェリシアは、ロゼリアとペシエラにこっ酷く言われて、また凹む。どれだけ湖で泳ぎたいのだろうか。
「ううう、分かったわよ。でも、試着だけでもしてくれない? 合宿の後でも、視察を兼ねてシェリアに行きましょうよ」
チェリシアは魂の泣きを見せながら、サファイア湖で泳ぐ事を諦めた。
「まあ、試着くらいなら構わないわよ。ねえ、ペシエラ」
「そうですわね」
二人は試着は了承してくれた。
しかし、この水着は数パターン用意されていたが、ワンピース、上着丈の長いセパレートと短いセパレートの三種類だ。あとはパーカーとパレオも用意してある。
使った生地は水を弾く繊維から作られた物で、無理を言って取り寄せた物だ。水着のデザインはチェリシアが前世を思い出しながら描いたもので、貴族らしくフリルの多いものとなっている。
「意外と体にピッタリと合うものなのね」
ロゼリアはワンピースタイプの物を着て、感想を呟いている。ロゼリアのイメージに合う赤色を基調とした水着だ。
「肌の露出が多いのは気になりますが、悪くはありませんわね」
ペシエラは丈の長いセパレートを着ている。淡い黄色にお花模様の可愛い水着である。
チェリシアの水着はほぼ白の丈の短いセパレートである。
本当はビキニも作ろうとしていたのだが、貴族の令嬢としてははしたないと、ドール商会の裁縫師に止められた。チェリシアが残念がったのは言うまでもない。
「シェリアに行くとしたら、友人も何人か誘いたいわね。以前とは違ったコーラル伯爵領を、みんなにも見てもらいたいわ」
「そうですわね。カイスの村もすっかり肥沃な農作地となってますし、前回とは大違いですわよ」
そう、広大な土地であるコーラル領も、伯爵に陞爵された事も相まって、徐々に王国内でもその評価は上がってきている。コーラル伯爵となったプラウスの経営手腕は、極貧時代からも変わらないようで、密かにその手腕を学ぼうとする者も多いようである。
最初は塩と魚から始まったコーラル領の改革は、王国の食糧庫になるまでに発展していた。これも、魔物氾濫の際に契約した精霊レイニのおかげである。そのレイニは、普段はカイスの村の近くの凹地だった湖に住んでいる。
「うん、海はあるし、湖もあるし、この水着を次の目玉として売りに出しましょう。男性用も作らなきゃいけないし、ドール商会と交渉しなきゃ」
チェリシアは目を輝かせて意気込んだ。その姿を見たロゼリアとペシエラは、もう呆れて言葉も出ないようだった。
「お姉様、水着もよろしいですけれど、夏合宿の事を忘れないで下さいませ」
ペシエラに怒鳴られて、チェリシアはしゅんと落ち込んだ。
「そうね。楽しむにしても、やる事を済ませてからの方が楽しいわよ、チェリシア」
「そうですね……」
ロゼリアにも説得されて、改めて夏の合宿に向けた対策会議が開かれたのであった。
チェリシアが唐突に何かを取り出した。
「何なの、その薄っぺらい布切れは……」
チェリシアの笑顔に、ロゼリアが顔を引き攣らせていた。
「水着よ、水着。密かに体型を割り出して、服飾の得意なドール商会の職人に、生地の指定をして作ってもらったのよ」
「何をしているのよ、まったく……」
チェリシアの屈託のない笑顔に、ロゼリアが頭を抱えている。
「水に濡れても透けない生地というのが大変だったわ。でも、さすがはそういう素材系の扱いに長けたドール商会、探し出してきてくれたわ」
水着を体に当てて、くるくると回るチェリシア。しかし、ペシエラがツッコミを入れる。
「お姉様、合宿中はそれほど自由な時間はございませんわよ。ほとんど自由なのは日の暮れた後だけですから、泳ぐなんて事はできませんわよ」
前回の記憶から、スッパリとチェリシアの思惑を切り捨てた。
「それに、先日言いましたでしょう? 神聖な地で泳ぐなんて罰当たりだと」
「そうですわよ。泳ぐんでしたらシェリアに行けばよろしいでしょう。観光地化に取り組んだのはお姉様ではありませんか!」
チェリシアは、ロゼリアとペシエラにこっ酷く言われて、また凹む。どれだけ湖で泳ぎたいのだろうか。
「ううう、分かったわよ。でも、試着だけでもしてくれない? 合宿の後でも、視察を兼ねてシェリアに行きましょうよ」
チェリシアは魂の泣きを見せながら、サファイア湖で泳ぐ事を諦めた。
「まあ、試着くらいなら構わないわよ。ねえ、ペシエラ」
「そうですわね」
二人は試着は了承してくれた。
しかし、この水着は数パターン用意されていたが、ワンピース、上着丈の長いセパレートと短いセパレートの三種類だ。あとはパーカーとパレオも用意してある。
使った生地は水を弾く繊維から作られた物で、無理を言って取り寄せた物だ。水着のデザインはチェリシアが前世を思い出しながら描いたもので、貴族らしくフリルの多いものとなっている。
「意外と体にピッタリと合うものなのね」
ロゼリアはワンピースタイプの物を着て、感想を呟いている。ロゼリアのイメージに合う赤色を基調とした水着だ。
「肌の露出が多いのは気になりますが、悪くはありませんわね」
ペシエラは丈の長いセパレートを着ている。淡い黄色にお花模様の可愛い水着である。
チェリシアの水着はほぼ白の丈の短いセパレートである。
本当はビキニも作ろうとしていたのだが、貴族の令嬢としてははしたないと、ドール商会の裁縫師に止められた。チェリシアが残念がったのは言うまでもない。
「シェリアに行くとしたら、友人も何人か誘いたいわね。以前とは違ったコーラル伯爵領を、みんなにも見てもらいたいわ」
「そうですわね。カイスの村もすっかり肥沃な農作地となってますし、前回とは大違いですわよ」
そう、広大な土地であるコーラル領も、伯爵に陞爵された事も相まって、徐々に王国内でもその評価は上がってきている。コーラル伯爵となったプラウスの経営手腕は、極貧時代からも変わらないようで、密かにその手腕を学ぼうとする者も多いようである。
最初は塩と魚から始まったコーラル領の改革は、王国の食糧庫になるまでに発展していた。これも、魔物氾濫の際に契約した精霊レイニのおかげである。そのレイニは、普段はカイスの村の近くの凹地だった湖に住んでいる。
「うん、海はあるし、湖もあるし、この水着を次の目玉として売りに出しましょう。男性用も作らなきゃいけないし、ドール商会と交渉しなきゃ」
チェリシアは目を輝かせて意気込んだ。その姿を見たロゼリアとペシエラは、もう呆れて言葉も出ないようだった。
「お姉様、水着もよろしいですけれど、夏合宿の事を忘れないで下さいませ」
ペシエラに怒鳴られて、チェリシアはしゅんと落ち込んだ。
「そうね。楽しむにしても、やる事を済ませてからの方が楽しいわよ、チェリシア」
「そうですね……」
ロゼリアにも説得されて、改めて夏の合宿に向けた対策会議が開かれたのであった。
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