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第五章 学園編
第91話 アイリス嬢
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学期末試験が近付いたので、ペシエラも久しぶりに学園へと顔を出した。春の時期をほぼ不登校で過ごしたので噂も下火となり、追いかけ回されるような事は無くなっていた。
「やっと安心して二度目の学生生活が送れますわ」
ペシエラはとても安心した様子だった。
交友関係は、初日のお茶会の面々が中心で、それ以外にはそれぞれの取り巻きが各数名ずつといった感じになっていた。
ストーカーのせいで不登校となっていたペシエラだが、チェリシアたちの知り合いとはすぐに打ち解けたようである。
「あ、あのっ!」
「な、なに?!」
チェリシアたちと友人となった女子学生に、ペシエラは突然声を掛けられた。
「どうすれば、あれだけの魔法が使えるようになるのでしょうか」
どうやら彼女は、魔法科を目指す学生らしい。ロゼリアとチェリシアにも同じ質問をしたが、答えが抽象過ぎてうまく上達しないようで、再登校したペシエラに質問してきたというわけだ。
(お姉様はともかくとして、ロゼリアまで……。あれだけ私に具体的にお小言してきた割に、なんて事なの……)
魔力は個人差があるのだが、それをうまく扱えるかは想像力にかかっている。なので、説明が抽象的になってしまいがちだった。
ペシエラは、目の前の令嬢を見る。二日目の試験で目にしているはずなので、名前を思い出そうとしたのだ。あの試験は三十人程度が受けて、いる。
(確か、アイリス・パープリア男爵令嬢だったはず。パープリアの名前は、女王の時の護衛に確か居たはずですわ)
さすがは女王も務めたペシエラの記憶力。すぐさま数ある名前から一つの名前を引き出した。
「えっと、アイリス様でしたわよね?」
確認するように名前を訪ねる。
「あ、はい。その通りです」
合っていたようだ。
「アイリス様は魔法が上手く扱えるようになりたい、そう仰っておられるのですわね?」
アイリスはこくりと頷く。
(アイリス様は確か、土の魔法を操っていたはず。土魔法は地味な上にイメージも作りにくい。これは難儀ですわね)
もう三ヶ月も前になる試験の情報を、正確に引き出すペシエラ。さすが三十年前の事もしっかり思い出せるだけの事はある。
というわけで、ペシエラはまずは簡単な土壁を発生させる。チェリシアとペシエラは、珍しい全属性への適性を持っている。その上、魔力量も膨大。土壁など朝飯前である。
ペシエラがアイリスの方を見ると、アイリスが驚いた顔で固まっていた。
「えっと、どうしたのかしら?」
不思議に思ってペシエラが尋ねる。
「そんな、一瞬でこんなに大きな土壁ができるなんて……。しかも、無詠唱……」
アイリスの言葉でハッとするペシエラ。
常人では魔力と想像力が足りないので、杖と詠唱を用いて補助している。
今回の土壁は、モスグリネ王国との戦いで度々使った防壁魔法の一つだ。主に矢を防ぐ事と足止めを目的とした魔法だ。あの戦いがあった事で、すっかり無詠唱で使える上、発動も早くなっていた。
ペシエラはいろいろと規格外になっていた事を、すっかり忘れていたのだった。
「……おほん、慣れればこれくらいはできるようになりますわよ。土魔法は地味ですし、イメージも掴みにくいですから、ただただ練習あるのみですわ」
ペシエラは、アイリスの顔の様子を見ながら説明をする。
「それ以外にはこういった事もできますわよ」
そう言ってペシエラは、地面に落ちていた石を浮かせて、魔法でお手玉のように扱ってみせた。
あまりの高等技能に、アイリスの口は開いたまま塞がらなかった。
「もしよろしければ、夏の休暇期間にご一緒しませんこと? 合宿もございますし、その後は領地の視察に行く予定ですの。見聞を広げる事も重要と思いますわよ」
ペシエラは、アイリスを誘ってみる。
初めは困惑していたアイリスだったが、
「こういった機会は物にすべきですわよ。何より魔法が上達したいのでしょう?」
このペシエラの誘い文句を聞いて、ぐっと決意を固める。
「ペシエラ様、お誘いをお受け致します」
「決まりですわね。私たちが教えるのですから、後世に名の残る魔法使いにして差し上げますわ」
アイリスの決意の瞳に、ペシエラは不敵に笑ってみせたのだった。
「やっと安心して二度目の学生生活が送れますわ」
ペシエラはとても安心した様子だった。
交友関係は、初日のお茶会の面々が中心で、それ以外にはそれぞれの取り巻きが各数名ずつといった感じになっていた。
ストーカーのせいで不登校となっていたペシエラだが、チェリシアたちの知り合いとはすぐに打ち解けたようである。
「あ、あのっ!」
「な、なに?!」
チェリシアたちと友人となった女子学生に、ペシエラは突然声を掛けられた。
「どうすれば、あれだけの魔法が使えるようになるのでしょうか」
どうやら彼女は、魔法科を目指す学生らしい。ロゼリアとチェリシアにも同じ質問をしたが、答えが抽象過ぎてうまく上達しないようで、再登校したペシエラに質問してきたというわけだ。
(お姉様はともかくとして、ロゼリアまで……。あれだけ私に具体的にお小言してきた割に、なんて事なの……)
魔力は個人差があるのだが、それをうまく扱えるかは想像力にかかっている。なので、説明が抽象的になってしまいがちだった。
ペシエラは、目の前の令嬢を見る。二日目の試験で目にしているはずなので、名前を思い出そうとしたのだ。あの試験は三十人程度が受けて、いる。
(確か、アイリス・パープリア男爵令嬢だったはず。パープリアの名前は、女王の時の護衛に確か居たはずですわ)
さすがは女王も務めたペシエラの記憶力。すぐさま数ある名前から一つの名前を引き出した。
「えっと、アイリス様でしたわよね?」
確認するように名前を訪ねる。
「あ、はい。その通りです」
合っていたようだ。
「アイリス様は魔法が上手く扱えるようになりたい、そう仰っておられるのですわね?」
アイリスはこくりと頷く。
(アイリス様は確か、土の魔法を操っていたはず。土魔法は地味な上にイメージも作りにくい。これは難儀ですわね)
もう三ヶ月も前になる試験の情報を、正確に引き出すペシエラ。さすが三十年前の事もしっかり思い出せるだけの事はある。
というわけで、ペシエラはまずは簡単な土壁を発生させる。チェリシアとペシエラは、珍しい全属性への適性を持っている。その上、魔力量も膨大。土壁など朝飯前である。
ペシエラがアイリスの方を見ると、アイリスが驚いた顔で固まっていた。
「えっと、どうしたのかしら?」
不思議に思ってペシエラが尋ねる。
「そんな、一瞬でこんなに大きな土壁ができるなんて……。しかも、無詠唱……」
アイリスの言葉でハッとするペシエラ。
常人では魔力と想像力が足りないので、杖と詠唱を用いて補助している。
今回の土壁は、モスグリネ王国との戦いで度々使った防壁魔法の一つだ。主に矢を防ぐ事と足止めを目的とした魔法だ。あの戦いがあった事で、すっかり無詠唱で使える上、発動も早くなっていた。
ペシエラはいろいろと規格外になっていた事を、すっかり忘れていたのだった。
「……おほん、慣れればこれくらいはできるようになりますわよ。土魔法は地味ですし、イメージも掴みにくいですから、ただただ練習あるのみですわ」
ペシエラは、アイリスの顔の様子を見ながら説明をする。
「それ以外にはこういった事もできますわよ」
そう言ってペシエラは、地面に落ちていた石を浮かせて、魔法でお手玉のように扱ってみせた。
あまりの高等技能に、アイリスの口は開いたまま塞がらなかった。
「もしよろしければ、夏の休暇期間にご一緒しませんこと? 合宿もございますし、その後は領地の視察に行く予定ですの。見聞を広げる事も重要と思いますわよ」
ペシエラは、アイリスを誘ってみる。
初めは困惑していたアイリスだったが、
「こういった機会は物にすべきですわよ。何より魔法が上達したいのでしょう?」
このペシエラの誘い文句を聞いて、ぐっと決意を固める。
「ペシエラ様、お誘いをお受け致します」
「決まりですわね。私たちが教えるのですから、後世に名の残る魔法使いにして差し上げますわ」
アイリスの決意の瞳に、ペシエラは不敵に笑ってみせたのだった。
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