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第八章 二年次
第161話 正式決定
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とまぁ、二年次も充実した日々を送っている。
そんなある日の事、久しぶりに王宮から茶会の誘いがあった。女王からの誘いであるので断れるものではない。気は進まないが、ロゼリアたちはその日、王宮の例の花園へと赴いた。
茶会集まった面々は、ロゼリア、チェリシア、ペシエラ、アイリス、シアンの五人以外には、プラティナとシェイディアだけであった。二人には侍女がついて来ていない。なんとも不思議な状況である。よく見れば、男性陣もまったく居ないのだ。
「よく来てくれたな。とりあえず座りなさい」
女王はそう告げて、全員を席に着かせる。
「今回呼び立てたのは、我が息子シルヴァノの婚約者の事だ。プラティナは正式な婚約者が決まっておるが、なにぶん公爵家の者なのでな、この場に来てもらった」
女王がちらりとプラティナを見れば、プラティナは小さく頭を下げる。
女王は視線を戻し、今度はペシエラを見た。その視線に、ペシエラはピクッと強張った。
「去年までの行動と今のシルヴァノの様子を見ていて思ったのだが、どうもあやつは一人の淑女にご執心のようだ」
女王の言葉が重い。名前を出していないが、女王の雰囲気と視線が、それが誰なのかを如実に物語っている。
その人物に対して、周りから視線が集中する。さすがに全員から見られては、黙っているのは難しいものである。
「な、何なんですの?」
そう、ペシエラだった。
「そういう事だ、ペシエラよ」
「お言葉ではございますが、何が「そういう事」なのでございますでしょうか、女王陛下」
すましたように言う女王に、ペシエラがくってかかる。だが、女王はそれを一笑して、
「シルヴァノの婚約者を、正式にペシエラ・コーラルに決定する。後日、大々的に発表するのからな。光栄に思うがよいぞ」
キッパリと言い切って見せた。
当のペシエラは、珍しく大口を開けて固まっている。その横でチェリシアは大喜びで、アイリスは控えめにおめでとうと祝福している。アイリスはいいとして、「チェリシア、ここは女王の御前なので控えた方がいい」と、ロゼリアは横でハラハラしていた。
シルヴァノの婚約者の座は、ペシエラが望んでいた事ではあるが、時期的にまだ早いかなと思っていた。しかし、シルヴァノの方が今年は十四となるので、実はむしろ遅い部類なのである。
ちなみに、お茶会に誘った面々を王族とペシエラの両方と親しい女性陣に絞ったのは、公式発表前に外部への情報流出を防ぐためだ。それとどうあれ心から祝福する事ができるとの、女王からの信頼の証でもある。一番困惑しているのは、婚約者に指定されたペシエラというのが現実である。
実際、普段では見る事のできない表情を、これでもかと披露している。この人、これでも乙女ゲームでヒロイン張ってた人なのだ。それが今では、気が強くてお節介焼きな上に、どちらか言えば悪役令嬢に近い性格になってしまっている。経験は人を変えるのだ。
それに加えて、魔力は膨大で扱いは上手い。更には王子を簡単にあしらうくらいには剣術の腕も立つ。これで女王にならないと言われたら、なんでと聞かれそうなものだ。仕方がない。
周りも完全にお祝いムードになってしまっているので、ペシエラの予定からすれば早いが、
「みなさんにこう祝われてしまえば、仕方ありませんわね。女王陛下、婚約者の件、お受け致します」
淑女の挨拶というより、騎士の挨拶で了承を伝えるペシエラ。その姿に女王は大変満足している。
そういうわけで、シルヴァノの婚約者が正式決定した事で、王宮の問題はひとつ片付いたと言える。しかし、ここで女王がアイリスに目を向けた。
「して、アイリスよ」
急に呼び掛けられたアイリスは、体が強張る。
「今の生活はどうじゃな?」
「は、はい。少々無茶な事は言われますが、概ねは満足しております」
「そうか」
アイリスの返答に、女王は含みを持たせた反応をする。
「すまぬな。パープリアの件は秘密裏に調査はしておるのだが、なかなか情報が出てこぬ。安心できる日はまだ遠いようじゃ」
女王が表情を曇らせた。
「時に、ノワール家で保護しておるお主の兄が、ちょうど騎士団の訓練に参加しておる。後で見に行くか?」
ひとつ咳払いをした女王がそのように問い掛けると、
「はい、会いとうございます」
アイリスは表情を変えずに即答する。だが、その声はどこか嬉しそうに聞こえた。その様子に、プラティナとシェイディアの二人もにこりと微笑んでいた。
こうして、久しぶりの女王とのお茶会は和やかな雰囲気の中で行われたのであった。
そんなある日の事、久しぶりに王宮から茶会の誘いがあった。女王からの誘いであるので断れるものではない。気は進まないが、ロゼリアたちはその日、王宮の例の花園へと赴いた。
茶会集まった面々は、ロゼリア、チェリシア、ペシエラ、アイリス、シアンの五人以外には、プラティナとシェイディアだけであった。二人には侍女がついて来ていない。なんとも不思議な状況である。よく見れば、男性陣もまったく居ないのだ。
「よく来てくれたな。とりあえず座りなさい」
女王はそう告げて、全員を席に着かせる。
「今回呼び立てたのは、我が息子シルヴァノの婚約者の事だ。プラティナは正式な婚約者が決まっておるが、なにぶん公爵家の者なのでな、この場に来てもらった」
女王がちらりとプラティナを見れば、プラティナは小さく頭を下げる。
女王は視線を戻し、今度はペシエラを見た。その視線に、ペシエラはピクッと強張った。
「去年までの行動と今のシルヴァノの様子を見ていて思ったのだが、どうもあやつは一人の淑女にご執心のようだ」
女王の言葉が重い。名前を出していないが、女王の雰囲気と視線が、それが誰なのかを如実に物語っている。
その人物に対して、周りから視線が集中する。さすがに全員から見られては、黙っているのは難しいものである。
「な、何なんですの?」
そう、ペシエラだった。
「そういう事だ、ペシエラよ」
「お言葉ではございますが、何が「そういう事」なのでございますでしょうか、女王陛下」
すましたように言う女王に、ペシエラがくってかかる。だが、女王はそれを一笑して、
「シルヴァノの婚約者を、正式にペシエラ・コーラルに決定する。後日、大々的に発表するのからな。光栄に思うがよいぞ」
キッパリと言い切って見せた。
当のペシエラは、珍しく大口を開けて固まっている。その横でチェリシアは大喜びで、アイリスは控えめにおめでとうと祝福している。アイリスはいいとして、「チェリシア、ここは女王の御前なので控えた方がいい」と、ロゼリアは横でハラハラしていた。
シルヴァノの婚約者の座は、ペシエラが望んでいた事ではあるが、時期的にまだ早いかなと思っていた。しかし、シルヴァノの方が今年は十四となるので、実はむしろ遅い部類なのである。
ちなみに、お茶会に誘った面々を王族とペシエラの両方と親しい女性陣に絞ったのは、公式発表前に外部への情報流出を防ぐためだ。それとどうあれ心から祝福する事ができるとの、女王からの信頼の証でもある。一番困惑しているのは、婚約者に指定されたペシエラというのが現実である。
実際、普段では見る事のできない表情を、これでもかと披露している。この人、これでも乙女ゲームでヒロイン張ってた人なのだ。それが今では、気が強くてお節介焼きな上に、どちらか言えば悪役令嬢に近い性格になってしまっている。経験は人を変えるのだ。
それに加えて、魔力は膨大で扱いは上手い。更には王子を簡単にあしらうくらいには剣術の腕も立つ。これで女王にならないと言われたら、なんでと聞かれそうなものだ。仕方がない。
周りも完全にお祝いムードになってしまっているので、ペシエラの予定からすれば早いが、
「みなさんにこう祝われてしまえば、仕方ありませんわね。女王陛下、婚約者の件、お受け致します」
淑女の挨拶というより、騎士の挨拶で了承を伝えるペシエラ。その姿に女王は大変満足している。
そういうわけで、シルヴァノの婚約者が正式決定した事で、王宮の問題はひとつ片付いたと言える。しかし、ここで女王がアイリスに目を向けた。
「して、アイリスよ」
急に呼び掛けられたアイリスは、体が強張る。
「今の生活はどうじゃな?」
「は、はい。少々無茶な事は言われますが、概ねは満足しております」
「そうか」
アイリスの返答に、女王は含みを持たせた反応をする。
「すまぬな。パープリアの件は秘密裏に調査はしておるのだが、なかなか情報が出てこぬ。安心できる日はまだ遠いようじゃ」
女王が表情を曇らせた。
「時に、ノワール家で保護しておるお主の兄が、ちょうど騎士団の訓練に参加しておる。後で見に行くか?」
ひとつ咳払いをした女王がそのように問い掛けると、
「はい、会いとうございます」
アイリスは表情を変えずに即答する。だが、その声はどこか嬉しそうに聞こえた。その様子に、プラティナとシェイディアの二人もにこりと微笑んでいた。
こうして、久しぶりの女王とのお茶会は和やかな雰囲気の中で行われたのであった。
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