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最終章 乙女ゲーム後
第348話 結婚式の余波
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サプライズイベントも無事に終わり、レイニもシルヴァノとペシエラを祝福すると、アイリスたちにも挨拶をしてカイスの村の近くの湖へと戻っていった。元妖精のライともひとことふたこと会話をしていたようだ。
「いやまぁ、シルヴァノ殿下がご結婚とは、卒業に続いて実におめでたい事ですな」
「ええ、ペシエラ様も本当にお綺麗で素晴らしかったですわ」
「しかし、十五歳とは思えないな」
「年齢的には結婚はできないが、学園を卒業しているから結婚できるという判断だったのだろうかね」
「そうでございましょうね。十三歳以前に学園に入学されたのは、ペシエラ様が初めてですもの。前例がございませんわ」
貴族たちの会話が聞こえてくる。シルヴァノとペシエラの結婚は、概ね肯定的に受け入れられているようである。逆行前でも名君レベルに称賛されていたわけだし、これはとても納得いく話だろう。
「本日の料理も大満足ですわね」
「あの丸い塊もおいしかったな。食べてみたら肉と野菜をこねて丸くした物のようだったぞ」
「結婚式の際に振舞われたケーキというものでしょうか、甘くておいしかったですわ」
「殿下と妃殿下が切り分けられていたのは驚いたがね」
「あの魔法の使い方にも驚いたものだよ」
料理に対する評価も聞こえてくる。これには腕によりをかけて作ったチェリシアも大満足のようで、両手を腰に当ててドヤ顔を決めていた。ロゼリアとアイリスがその横で呆れて引いていたが、チェリシアは気にしていないようだった。
ペシエラはシルヴァノと一緒にお祝いの挨拶の対応のために、国王たちと一緒に居る。とても今は挨拶に行けない状況のようだ。小さい頃からずっと一緒だった妹だけに、直にお祝いを言ってあげたいチェリシアだったが、今はとにかく我慢である。
それに加えて、親とも合流できない状況が続いており、ロゼリアとチェリシアとアイリスは、自分たちの侍女と一緒に部屋の隅の方へ移動して椅子に座ってくつろいでいる。幸い、自分たちの方に挨拶しに来る貴族が居ないので、三人は黙々と料理を味わっていた。
「はぁ、やっぱりペシエラはきれいだったわね。今度は私たちの番かぁ」
「ええ、そうね。ただ、アイリスの相手を早く見つけないといけないわよ」
「私ですか?」
チェリシアとロゼリアの話の中で、アイリスの相手の話に及ぶ。
「うん、やっぱりそうよね。アイリスはお母さんの事もあったから、どうしても相手探しには慎重になっちゃうわよね」
「コーラル家の存続のために婿入りになるものね。お家存続のためにさらに慎重にならざるを得ないものね」
ロゼリアとチェリシアで盛り上がる。それも仕方ないかも知れない。何と言っても国の東側の大部分がコーラル伯爵領なのだから。そもそもは大した産業もない広い土地だったが、今は産業も豊かで地味に狙っている貴族が多い。万一コーラル家が消滅ともなれば、その土地を巡って争いの元にもなりかねないのだ。
ちなみに逆行前は、ペシエラが死んだ時も父親のプラウスが治めていた。貧乏だったがゆえに戦争には駆り出されずに済んだのだった。
めでたい席ではあるが、貴族たちが集まる宴の席ではこういった水面下の駆け引きが激しいのである。結婚式があった事もあって、特に婚姻関係の話が盛り上がりを見せているようだ。
「主人、ただいま戻りました」
ゆらりと黒い影が揺れて、ニーズヘッグが現れた。レイニを一時的に召喚する代わりにカイスの辺りの警備を任せていたのだ。
「ご苦労様、ニーズヘッグ」
アイリスは労う言葉を掛けると、近くのテーブルから適当に料理をかき集めてニーズヘッグに与えた。
「ありがとうございます、主人」
すっとお辞儀をしてから料理を受け取るニーズヘッグ。そのニーズヘッグをジーっと見るロゼリアとチェリシア。その視線に気づいたニーズヘッグは頭を上げる。
「……どうかされましたか?」
ニーズヘッグが首を傾げている。
「アイリスを慕っているという点では、これはありかも知れませんね」
「そうね。やっぱりロゼリアもそう思う?」
ロゼリアとチェリシアがこそこそと話している。侍女三人はすまし顔のまま立っているが、アイリスとニーズヘッグは首を傾げて二人を見ている。
「ニーズヘッグ、アイリスと結婚しませんか?」
「はぁ?!」
チェリシアが言い放った言葉に、ニーズヘッグの顔がとても愉快な事になっている。
「ええ、そうね。アイリスの事は好きなのでしょう?」
「ぐ、ぐぬぬぬ……。だが、俺は幻獣で厄災の暗龍とまで言われた存在だぞ。人間と結婚なんぞできるか!」
必死になって言い訳をするニーズヘッグの顔は真っ赤である。この暗龍、実に非常に分かりやすいものだ。
しかしながら、アイリスの顔を見てみると、こちらもこちらでまんざらではない様子。ニーズヘッグは意外とイケメンなのである。
「ニーズヘッグ、諦めた方がいいわよ。あなたがアイリス様を好いている事はみんなが知ってる事なんですから」
「何だと?!」
「ええ、滅多に居ないとはいえ、たまにお見かけする姿といったら、それはそれは微笑ましい限りです」
「ぐ……が……」
ライとキャノルから目撃証言をされて、あえなく撃沈するニーズヘッグ。結婚式の余波は、思わぬところで再び厄災の暗龍を撃破する運びとなったのである。
アイリスとニーズヘッグはお互いにまんざらではないようなので、あとはプラウスとサルモアを説得できるかだけの問題のようだ。
こうして、ロゼリア十八歳の年末パーティーの時間は過ぎていったのだった。
「いやまぁ、シルヴァノ殿下がご結婚とは、卒業に続いて実におめでたい事ですな」
「ええ、ペシエラ様も本当にお綺麗で素晴らしかったですわ」
「しかし、十五歳とは思えないな」
「年齢的には結婚はできないが、学園を卒業しているから結婚できるという判断だったのだろうかね」
「そうでございましょうね。十三歳以前に学園に入学されたのは、ペシエラ様が初めてですもの。前例がございませんわ」
貴族たちの会話が聞こえてくる。シルヴァノとペシエラの結婚は、概ね肯定的に受け入れられているようである。逆行前でも名君レベルに称賛されていたわけだし、これはとても納得いく話だろう。
「本日の料理も大満足ですわね」
「あの丸い塊もおいしかったな。食べてみたら肉と野菜をこねて丸くした物のようだったぞ」
「結婚式の際に振舞われたケーキというものでしょうか、甘くておいしかったですわ」
「殿下と妃殿下が切り分けられていたのは驚いたがね」
「あの魔法の使い方にも驚いたものだよ」
料理に対する評価も聞こえてくる。これには腕によりをかけて作ったチェリシアも大満足のようで、両手を腰に当ててドヤ顔を決めていた。ロゼリアとアイリスがその横で呆れて引いていたが、チェリシアは気にしていないようだった。
ペシエラはシルヴァノと一緒にお祝いの挨拶の対応のために、国王たちと一緒に居る。とても今は挨拶に行けない状況のようだ。小さい頃からずっと一緒だった妹だけに、直にお祝いを言ってあげたいチェリシアだったが、今はとにかく我慢である。
それに加えて、親とも合流できない状況が続いており、ロゼリアとチェリシアとアイリスは、自分たちの侍女と一緒に部屋の隅の方へ移動して椅子に座ってくつろいでいる。幸い、自分たちの方に挨拶しに来る貴族が居ないので、三人は黙々と料理を味わっていた。
「はぁ、やっぱりペシエラはきれいだったわね。今度は私たちの番かぁ」
「ええ、そうね。ただ、アイリスの相手を早く見つけないといけないわよ」
「私ですか?」
チェリシアとロゼリアの話の中で、アイリスの相手の話に及ぶ。
「うん、やっぱりそうよね。アイリスはお母さんの事もあったから、どうしても相手探しには慎重になっちゃうわよね」
「コーラル家の存続のために婿入りになるものね。お家存続のためにさらに慎重にならざるを得ないものね」
ロゼリアとチェリシアで盛り上がる。それも仕方ないかも知れない。何と言っても国の東側の大部分がコーラル伯爵領なのだから。そもそもは大した産業もない広い土地だったが、今は産業も豊かで地味に狙っている貴族が多い。万一コーラル家が消滅ともなれば、その土地を巡って争いの元にもなりかねないのだ。
ちなみに逆行前は、ペシエラが死んだ時も父親のプラウスが治めていた。貧乏だったがゆえに戦争には駆り出されずに済んだのだった。
めでたい席ではあるが、貴族たちが集まる宴の席ではこういった水面下の駆け引きが激しいのである。結婚式があった事もあって、特に婚姻関係の話が盛り上がりを見せているようだ。
「主人、ただいま戻りました」
ゆらりと黒い影が揺れて、ニーズヘッグが現れた。レイニを一時的に召喚する代わりにカイスの辺りの警備を任せていたのだ。
「ご苦労様、ニーズヘッグ」
アイリスは労う言葉を掛けると、近くのテーブルから適当に料理をかき集めてニーズヘッグに与えた。
「ありがとうございます、主人」
すっとお辞儀をしてから料理を受け取るニーズヘッグ。そのニーズヘッグをジーっと見るロゼリアとチェリシア。その視線に気づいたニーズヘッグは頭を上げる。
「……どうかされましたか?」
ニーズヘッグが首を傾げている。
「アイリスを慕っているという点では、これはありかも知れませんね」
「そうね。やっぱりロゼリアもそう思う?」
ロゼリアとチェリシアがこそこそと話している。侍女三人はすまし顔のまま立っているが、アイリスとニーズヘッグは首を傾げて二人を見ている。
「ニーズヘッグ、アイリスと結婚しませんか?」
「はぁ?!」
チェリシアが言い放った言葉に、ニーズヘッグの顔がとても愉快な事になっている。
「ええ、そうね。アイリスの事は好きなのでしょう?」
「ぐ、ぐぬぬぬ……。だが、俺は幻獣で厄災の暗龍とまで言われた存在だぞ。人間と結婚なんぞできるか!」
必死になって言い訳をするニーズヘッグの顔は真っ赤である。この暗龍、実に非常に分かりやすいものだ。
しかしながら、アイリスの顔を見てみると、こちらもこちらでまんざらではない様子。ニーズヘッグは意外とイケメンなのである。
「ニーズヘッグ、諦めた方がいいわよ。あなたがアイリス様を好いている事はみんなが知ってる事なんですから」
「何だと?!」
「ええ、滅多に居ないとはいえ、たまにお見かけする姿といったら、それはそれは微笑ましい限りです」
「ぐ……が……」
ライとキャノルから目撃証言をされて、あえなく撃沈するニーズヘッグ。結婚式の余波は、思わぬところで再び厄災の暗龍を撃破する運びとなったのである。
アイリスとニーズヘッグはお互いにまんざらではないようなので、あとはプラウスとサルモアを説得できるかだけの問題のようだ。
こうして、ロゼリア十八歳の年末パーティーの時間は過ぎていったのだった。
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