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新章 青色の智姫
第200話 水から雪へ
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合宿から戻ったシアンは、すぐさまスノールビーへと向かうことになった。
戻ってきた時にはペシエラたちの準備は万端で、あれよあれよという間の出発だった。
「いくら何でもすぐすぎませんかしら」
「仕方ございません。ペシエラ様がかなり楽しみにされていたようですので」
「それでは仕方ありませんわね」
淡々と答えるスミレに、シアンもすんなりと受け入れざるを得なかった。
スノールビーはマゼンダ侯爵領の北部にある氷山地域にある村。まだペシエラが一介の学生だった頃にアイヴォリー王国の保養地のひとつとして整備された経緯がある。
日数的に余裕が取れなかったので、馬車に護衛騎士というわけにはいかず、ペシエラたちのエアリアルボードによって移動している。そうでもないと、往復だけで残りの夏休みが消えかねないから仕方がない話なのである。
一路スノールビーへ向けて、ペシエラたちはすぐさま城を出発する。
「いやぁ、快適な空の旅はいいわね」
「お姉様、あまりはしゃぐのではありませんわよ」
そう、今回の旅行にはチェリシアも参加していた。この二人のエアリアルボードなら、一度に乗れる人数が格段に多くなる。なにせ、本来なら大量の荷物も載せないといけないのに、収納魔法でその分の余裕ができるからだ。
おかげで、ペシエラにチェリシア、シアンとライトとダイア、それぞれの使用人に護衛騎士と乗っても余裕なのである。
「お母様たちの魔法による移動は、何度乗っても快適ですね」
「本当に。僕たちではこの魔法が使えないので、とても羨ましいかぎりです」
ライトとダイアは喜ぶと同時に羨ましがっていた。
ペシエラが闇以外の全属性を使えるのに対して、ライともダイアも父親であるシルヴァノと同じで氷と光の魔法しか使えない。そのために、風魔法であるエアリアルボードに対して、非常に憧れを持っているのだ。
今いる面々の中では、シアンも一応エアリアルボードは使える。だけど、まだまだ安定が悪いし、かなり速度を出すために今回は同乗する形になっていた。速度不利なのである。
「私は使えますけれど、まだまだ不安定ですからね。このくらい使えるようになってみたいですよ」
「ふふっ、シアンも魔力は多いのですから、その少し努力すればできるようになりますわよ。わたくしだって、まともに使えるようになるまでには少しかかりましたからね」
「ペシエラ様でもですか……。むむっ、私も努力しませんと」
ペシエラですら時間がかかったと聞かされて、シアンは少し気合いを入れていた。
その姿に、ペシエラは微笑みを浮かべていた。
一方のチェリシアが操るエアリアルボードの方では……。
「チェリシア様がご参加とは、予想外でございました」
「いや、私はそもそも参加予定だったわよ。スノールビーでの商談を予定していたからね。乗っかってきたのはペシエラの方よ」
使用人たちが乗るエアリアルボードの上で、スミレがチェリシアとこそこそ話をしていた。
「そうなのですね。なにゆえこのタイミングでペシエラ様はスノールビーへ私たちを誘ったのでしょうか」
スミレがチェリシアに問いかける。
「それは、あなたの方が知ってるんじゃないかしらね、スミレ」
真面目な表情で答えるチェリシアに、スミレはつい驚いてしまう。
「私は空気が読めないとは言われいるけれど、あなたたちについてはこれでも配慮してきたつもりよ。ペシエラにもかなり強く言われてたしね」
「それは、どういう……?」
チェリシアの言い分が理解できないスミレは、つい質問をしてしまう。
何かを言いかけようとするチェリシアだったが、他にも使用人が乗っている状況ではさすがにいけないと思ったのか、開きかけた口を閉じていた。
「いけないわね。ついつい思ったことを口に出してしまいそうになってしまうわ。あれだけペシエラに口酸っぱく注意されてるのね」
チェリシアは困ったような顔をして首を軽く左右に振っていた。
「その話はとりあえず、向こうに着いてからにしましょう。あと、ペシエラと相談しないとね」
「は、はあ……。とりあえず分かりました」
何が言いたいのかはっきりとつかみ取れないスミレは、ひとまずその話題を打ち切ることにしたのだった。
こうして、馬車では相当な日数がかかるスノールビーまで、その半分以下の日数で到着してみせるペシエラたち。
スノールビーに到着すると、そこには予想もしていなかった人物が姿を見せていた。
「やあやあ、ようやく来たね」
「ケットシー、なんであなたがいるのですか」
ペシエラとチェリシアが揃ってツッコミを入れている。
「はっはっはっ、ボクだって商業組合の組合長だよ? 仕事で来たっていいじゃないか。はっはっはっはっ」
笑うケットシーの姿に、ペシエラもチェリシアも困惑している。
人を振り回す側のチェリシアさえこの反応なのだ。ケットシーがどれだけ神出鬼没かが理解できるというものだ。
「ペシエラ様、ようこそおいで下さいました。宿までご案内致します」
「アリー、すっかりなじんでいるわね」
「はい、おかげさまで」
あとからやって来た妖精アリーのおかげで、どうにか我に返るペシエラたち。
ひとまずケットシーは放っておいて、この旅行で泊まる宿へと移動することにしたのだった。
戻ってきた時にはペシエラたちの準備は万端で、あれよあれよという間の出発だった。
「いくら何でもすぐすぎませんかしら」
「仕方ございません。ペシエラ様がかなり楽しみにされていたようですので」
「それでは仕方ありませんわね」
淡々と答えるスミレに、シアンもすんなりと受け入れざるを得なかった。
スノールビーはマゼンダ侯爵領の北部にある氷山地域にある村。まだペシエラが一介の学生だった頃にアイヴォリー王国の保養地のひとつとして整備された経緯がある。
日数的に余裕が取れなかったので、馬車に護衛騎士というわけにはいかず、ペシエラたちのエアリアルボードによって移動している。そうでもないと、往復だけで残りの夏休みが消えかねないから仕方がない話なのである。
一路スノールビーへ向けて、ペシエラたちはすぐさま城を出発する。
「いやぁ、快適な空の旅はいいわね」
「お姉様、あまりはしゃぐのではありませんわよ」
そう、今回の旅行にはチェリシアも参加していた。この二人のエアリアルボードなら、一度に乗れる人数が格段に多くなる。なにせ、本来なら大量の荷物も載せないといけないのに、収納魔法でその分の余裕ができるからだ。
おかげで、ペシエラにチェリシア、シアンとライトとダイア、それぞれの使用人に護衛騎士と乗っても余裕なのである。
「お母様たちの魔法による移動は、何度乗っても快適ですね」
「本当に。僕たちではこの魔法が使えないので、とても羨ましいかぎりです」
ライトとダイアは喜ぶと同時に羨ましがっていた。
ペシエラが闇以外の全属性を使えるのに対して、ライともダイアも父親であるシルヴァノと同じで氷と光の魔法しか使えない。そのために、風魔法であるエアリアルボードに対して、非常に憧れを持っているのだ。
今いる面々の中では、シアンも一応エアリアルボードは使える。だけど、まだまだ安定が悪いし、かなり速度を出すために今回は同乗する形になっていた。速度不利なのである。
「私は使えますけれど、まだまだ不安定ですからね。このくらい使えるようになってみたいですよ」
「ふふっ、シアンも魔力は多いのですから、その少し努力すればできるようになりますわよ。わたくしだって、まともに使えるようになるまでには少しかかりましたからね」
「ペシエラ様でもですか……。むむっ、私も努力しませんと」
ペシエラですら時間がかかったと聞かされて、シアンは少し気合いを入れていた。
その姿に、ペシエラは微笑みを浮かべていた。
一方のチェリシアが操るエアリアルボードの方では……。
「チェリシア様がご参加とは、予想外でございました」
「いや、私はそもそも参加予定だったわよ。スノールビーでの商談を予定していたからね。乗っかってきたのはペシエラの方よ」
使用人たちが乗るエアリアルボードの上で、スミレがチェリシアとこそこそ話をしていた。
「そうなのですね。なにゆえこのタイミングでペシエラ様はスノールビーへ私たちを誘ったのでしょうか」
スミレがチェリシアに問いかける。
「それは、あなたの方が知ってるんじゃないかしらね、スミレ」
真面目な表情で答えるチェリシアに、スミレはつい驚いてしまう。
「私は空気が読めないとは言われいるけれど、あなたたちについてはこれでも配慮してきたつもりよ。ペシエラにもかなり強く言われてたしね」
「それは、どういう……?」
チェリシアの言い分が理解できないスミレは、つい質問をしてしまう。
何かを言いかけようとするチェリシアだったが、他にも使用人が乗っている状況ではさすがにいけないと思ったのか、開きかけた口を閉じていた。
「いけないわね。ついつい思ったことを口に出してしまいそうになってしまうわ。あれだけペシエラに口酸っぱく注意されてるのね」
チェリシアは困ったような顔をして首を軽く左右に振っていた。
「その話はとりあえず、向こうに着いてからにしましょう。あと、ペシエラと相談しないとね」
「は、はあ……。とりあえず分かりました」
何が言いたいのかはっきりとつかみ取れないスミレは、ひとまずその話題を打ち切ることにしたのだった。
こうして、馬車では相当な日数がかかるスノールビーまで、その半分以下の日数で到着してみせるペシエラたち。
スノールビーに到着すると、そこには予想もしていなかった人物が姿を見せていた。
「やあやあ、ようやく来たね」
「ケットシー、なんであなたがいるのですか」
ペシエラとチェリシアが揃ってツッコミを入れている。
「はっはっはっ、ボクだって商業組合の組合長だよ? 仕事で来たっていいじゃないか。はっはっはっはっ」
笑うケットシーの姿に、ペシエラもチェリシアも困惑している。
人を振り回す側のチェリシアさえこの反応なのだ。ケットシーがどれだけ神出鬼没かが理解できるというものだ。
「ペシエラ様、ようこそおいで下さいました。宿までご案内致します」
「アリー、すっかりなじんでいるわね」
「はい、おかげさまで」
あとからやって来た妖精アリーのおかげで、どうにか我に返るペシエラたち。
ひとまずケットシーは放っておいて、この旅行で泊まる宿へと移動することにしたのだった。
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