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新章 青色の智姫
第242話 王族だけのお茶会
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王城内にある庭園。
ここはシアンにとって懐かしい場所である。
ロゼリアが城に呼ばれた際に、自分も一緒について行った場所だからだ。
あの時は一介の使用人だったのだが、今回は王女として、もてなす側として足を踏み入れている。
(本当に懐かしいですね。塩を作って喜んでいた小さい頃のお母様の姿が、目に浮かんできます)
つい思い出してしまって、くすりと笑ってしまうシアンである。
今日のお茶会で出すお菓子などは、前日にスミレを通して厨房に伝えてある。
シアンがやってくる頃には、給仕の使用人がてきぱきと準備をしていた。
「これはシアン様、おはようございます」
シアンがやって来たことに気が付いた使用人が声を掛けてくる。
普通は目の上の人の許可がないと話し掛けてはならないものだが、シアンは特に気にしていない。前世で使用人をしていたせいか、その辺がちょっとおろそかになっているようだ。
「ええ、おはよう。早くから準備、ご苦労さま」
にっこりと笑って労うと、使用人たちはシアンに向かって頭を下げている。
シアンが先に椅子に座って待っていると、ようやくライトの姿が見えてきた。
(うん?)
その姿を見つけたシアンは、目を細めてじっとライトの方を見直している。
驚いたことに、隣にはダイアもいるではないか。
今回シアンがお茶会に招いたのはライトだけである。なのにどうしてダイアまでいるのか。シアンは気になって仕方がない。
「ライト殿下、お待ちしておりました」
「やあ、シアン王女、お待たせしてしまったね」
シアンが立ち上がって挨拶をすると、ライトはさわやかな笑顔で挨拶を返す。
なんともシルヴァノの幼い頃によく似てきたものである。
「ちょっとお聞きしてよろしいでしょうか、ライト殿下」
「なにかな、シアン王女」
「どうして、ダイア王女殿下がいらっしゃるのでしょうか。お誘いをしたのはライト殿下だけなのですが」
シアンは、ダイアがいる理由をライトに確認している。
「いや、僕だけで来ようかと思ったんだけど、ダイアに見つかってしまってね。問い詰められてつい喋ってしまったらこうなったというわけだよ」
「なるほど……」
事情を聞いて、シアンは納得をしてしまう。
「では、改めまして。ダイア王女殿下もようこそお越し下さいました」
「はい、シアン様。畏まらずに、いつも通りにお呼び下さい」
両手を前で握りながら、ダイアはにっこりと微笑んでいる。無理やりついて来たからか、最初にスルーされたことはなんとも思っていないようだ。
ここで、シアンはあることに気が付いた。
(なんで椅子が三脚あるのか、今分かりましたよ。使用人たちはダイア様のことを知っていたんだわ)
そう、そもそもシアンとライトだけで話をする予定だったので、椅子は二脚で十分のはずだ。三脚ある時点で気付かなかったのはシアンの落ち度である。
まあ仕方がないかと、シアンはため息をついていた。
「それでは、お二方ともお掛け下さい」
仲のいいダイアがやって来たので、無下に追い返すわけにもいかない。なので、シアンはおとなしく二人を相手にお茶会をすることにしたのだ。
ライトとダイアが椅子に腰掛けると、シアンも腰を下ろす。
本来の目的はライトと話をして交流を深めることだったが、やはり双子である以上はダイアは避けられないようだ。
(モーフの話もする予定でしたから、ちょうどいいですかね)
自分の弟の話もあるので、婚約者であるダイアがいるのは話をするには都合がよかったと、シアンは開き直っている。
「お二人とも、わざわざ時間を作って頂いてありがとうございます。よく思えばあまりお話をしたことがなかったので、国に戻る前に少しでも仲を深めておきたいと思いまして、この場を設けさせて頂きました」
わざわざ本来の目的をあっさりと喋ってしまう。
これには、ライトとダイアが顔を見合わせて笑っている。
「シアン様ってば、正直に仰いますのね」
「普通、そういう本音は隠しておくものだと思いますがね。本当に変わった方だ」
大ウケしているらしく、いつまでも笑っている。
二人の思ってもみなかった反応に、シアンは唖然とした表情を見せている。
「あ、いえ……。これは失礼しました」
あまりにも笑われるものだから、シアンはつい謝罪をしてしまう。
「いや、別に僕たちは構わないよ。むしろ本音を言ってくれてありがたいと思ってるくらいだから」
「ええ、そうですよ、シアン様。これで私たちも本音で話ができますから」
ライトとダイアもかなり寛容だった。
このおかげか、三人の緊張はすっかりなくなってしまい、なんとも和やかな感じでお茶会が始まった。
ほんわかとした空間のおかげか、話すことに少し躊躇していたモーフのこともあっさりと話ができてしまう。
「ふふっ、シアン様のことが好きだなんて、可愛い弟さんですね」
「今まで数えるくらいしか会ったことがないし、長期休みの時にでも会っておきたいな。留学は後半の三年間だったよね?」
「はい、どうしても私と一緒に学園に通うんだとうるさくて、前半三年間は私と一緒にモスグリネの学園に通うことになっています」
「可愛らしい弟さんね」
ライトもダイアも、お茶会の間、終始笑顔を絶やさなかった。
心配はしていたものの、終わってみればあまり懸念するようなことは起こらず、実に楽しいお茶会となった。
これならば、ダイアとモーフもうまくやっていけるのかなと、ちょっと自信をつけたシアンなのである。
モスグリネに戻るまでもう少し。
シアンはできる限りの交流をしようと誓ったのだった。
ここはシアンにとって懐かしい場所である。
ロゼリアが城に呼ばれた際に、自分も一緒について行った場所だからだ。
あの時は一介の使用人だったのだが、今回は王女として、もてなす側として足を踏み入れている。
(本当に懐かしいですね。塩を作って喜んでいた小さい頃のお母様の姿が、目に浮かんできます)
つい思い出してしまって、くすりと笑ってしまうシアンである。
今日のお茶会で出すお菓子などは、前日にスミレを通して厨房に伝えてある。
シアンがやってくる頃には、給仕の使用人がてきぱきと準備をしていた。
「これはシアン様、おはようございます」
シアンがやって来たことに気が付いた使用人が声を掛けてくる。
普通は目の上の人の許可がないと話し掛けてはならないものだが、シアンは特に気にしていない。前世で使用人をしていたせいか、その辺がちょっとおろそかになっているようだ。
「ええ、おはよう。早くから準備、ご苦労さま」
にっこりと笑って労うと、使用人たちはシアンに向かって頭を下げている。
シアンが先に椅子に座って待っていると、ようやくライトの姿が見えてきた。
(うん?)
その姿を見つけたシアンは、目を細めてじっとライトの方を見直している。
驚いたことに、隣にはダイアもいるではないか。
今回シアンがお茶会に招いたのはライトだけである。なのにどうしてダイアまでいるのか。シアンは気になって仕方がない。
「ライト殿下、お待ちしておりました」
「やあ、シアン王女、お待たせしてしまったね」
シアンが立ち上がって挨拶をすると、ライトはさわやかな笑顔で挨拶を返す。
なんともシルヴァノの幼い頃によく似てきたものである。
「ちょっとお聞きしてよろしいでしょうか、ライト殿下」
「なにかな、シアン王女」
「どうして、ダイア王女殿下がいらっしゃるのでしょうか。お誘いをしたのはライト殿下だけなのですが」
シアンは、ダイアがいる理由をライトに確認している。
「いや、僕だけで来ようかと思ったんだけど、ダイアに見つかってしまってね。問い詰められてつい喋ってしまったらこうなったというわけだよ」
「なるほど……」
事情を聞いて、シアンは納得をしてしまう。
「では、改めまして。ダイア王女殿下もようこそお越し下さいました」
「はい、シアン様。畏まらずに、いつも通りにお呼び下さい」
両手を前で握りながら、ダイアはにっこりと微笑んでいる。無理やりついて来たからか、最初にスルーされたことはなんとも思っていないようだ。
ここで、シアンはあることに気が付いた。
(なんで椅子が三脚あるのか、今分かりましたよ。使用人たちはダイア様のことを知っていたんだわ)
そう、そもそもシアンとライトだけで話をする予定だったので、椅子は二脚で十分のはずだ。三脚ある時点で気付かなかったのはシアンの落ち度である。
まあ仕方がないかと、シアンはため息をついていた。
「それでは、お二方ともお掛け下さい」
仲のいいダイアがやって来たので、無下に追い返すわけにもいかない。なので、シアンはおとなしく二人を相手にお茶会をすることにしたのだ。
ライトとダイアが椅子に腰掛けると、シアンも腰を下ろす。
本来の目的はライトと話をして交流を深めることだったが、やはり双子である以上はダイアは避けられないようだ。
(モーフの話もする予定でしたから、ちょうどいいですかね)
自分の弟の話もあるので、婚約者であるダイアがいるのは話をするには都合がよかったと、シアンは開き直っている。
「お二人とも、わざわざ時間を作って頂いてありがとうございます。よく思えばあまりお話をしたことがなかったので、国に戻る前に少しでも仲を深めておきたいと思いまして、この場を設けさせて頂きました」
わざわざ本来の目的をあっさりと喋ってしまう。
これには、ライトとダイアが顔を見合わせて笑っている。
「シアン様ってば、正直に仰いますのね」
「普通、そういう本音は隠しておくものだと思いますがね。本当に変わった方だ」
大ウケしているらしく、いつまでも笑っている。
二人の思ってもみなかった反応に、シアンは唖然とした表情を見せている。
「あ、いえ……。これは失礼しました」
あまりにも笑われるものだから、シアンはつい謝罪をしてしまう。
「いや、別に僕たちは構わないよ。むしろ本音を言ってくれてありがたいと思ってるくらいだから」
「ええ、そうですよ、シアン様。これで私たちも本音で話ができますから」
ライトとダイアもかなり寛容だった。
このおかげか、三人の緊張はすっかりなくなってしまい、なんとも和やかな感じでお茶会が始まった。
ほんわかとした空間のおかげか、話すことに少し躊躇していたモーフのこともあっさりと話ができてしまう。
「ふふっ、シアン様のことが好きだなんて、可愛い弟さんですね」
「今まで数えるくらいしか会ったことがないし、長期休みの時にでも会っておきたいな。留学は後半の三年間だったよね?」
「はい、どうしても私と一緒に学園に通うんだとうるさくて、前半三年間は私と一緒にモスグリネの学園に通うことになっています」
「可愛らしい弟さんね」
ライトもダイアも、お茶会の間、終始笑顔を絶やさなかった。
心配はしていたものの、終わってみればあまり懸念するようなことは起こらず、実に楽しいお茶会となった。
これならば、ダイアとモーフもうまくやっていけるのかなと、ちょっと自信をつけたシアンなのである。
モスグリネに戻るまでもう少し。
シアンはできる限りの交流をしようと誓ったのだった。
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