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新章 青色の智姫
第257話 学園での洗礼
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翌日、学園に顔を出したシアンは、ヒスイの出迎えを受ける。剣をたしなむ魔法使いということで、シアンには親しみの感情があるものの、やっぱりヒスイのシアンを見る表情は厳しいままだった。
やはりこれまでモスグリネ王国の中で関係を築いてくることを怠ったためだろう。
「おはようございます、シアン王女殿下」
「おはようございます、ヒスイ様。王女殿下は長いですし、学園内では平等いう理念です。なので、王女殿下はおやめ下さい」
「……承知致しました、シアン様」
すごく渋ったような表情をしながらも、ヒスイは王女殿下の呼称を取り合下げくれた。仲良くなるには、まず呼び方からというわけである。
ただ、この日のシアンにはもうひとつの懸案があった。
それは、三つ下の弟であるモーフの入学式である。
王子という肩書きがあるために、新入生代表として挨拶をすることになる。その大役を無事にこなせるかというのが、シアンの気がかりなのだ。
父親であるペイルに確認したシアンだったが、「あいつなら大丈夫だ」というだけで、あまり心配していないようだった。
だが、シアンとしてはやはりシスコン気味である弟のことが気になって仕方がないのである。
「シアン様、教室に向かいましょう。今日から早速講義がございます」
ヒスイが声をかけるものの、シアンはぴくりとも反応しない。
このぼーっとした様子を見て、ヒスイはついカチンときてしまう。
「弟君が心配なのは分かりますが、まずはご自分の心配をなさってはいかがですかね」
シアンの目の前に立って、怒りの表情を浮かべながら迫る。
さすがに目の前で怒鳴られたとなると、シアンもびっくりして一歩下がってしまった。
「えっと、ごめんなさい。そうですね、まずは自分のことですね。分かっています、分かっていますから落ち着いて下さい」
焦った表情でヒスイに謝罪するシアンである。
両手で落ち着かせようとしている姿を見て、ヒスイは不満げにしながらも少し下がっていた。
「では、参りましょう。一応見取り図では確認してきましたが、教室までご案内頂けますでしょうか。現地が初めてでは迷いかねませんので」
「承知致しました。では、こちらでございます」
ヒスイはシアンを教室まで案内するために、さっさと歩き出した。
モスグリネ王国の学園ネフライト学園も、アイヴォリー王国のサンフレア学園同様に歴史は古い。なんでも建国当時からあるらしいのだ。
アイヴォリー王国と対照的なのは、精霊と友好的なこと。学園の建設にも精霊が関わっているらしく、学園のあちこちには精霊の紋様が刻まれているそうだ。
シアンが母国に戻って学ぶのは魔法を中心としたもの。アイヴォリー王国での学習内容を受けて決定されたのだという。
なので、シアンが今いるのは魔法学棟というわけだ。
「シアン様、こちらが私たちのクラスでございます」
「そうなのですね。では、早速入りましょうか」
ヒスイの紹介を受けて、シアンは教室の扉に手をかける。
扉を開けて中に入ると、すでに教室にいた学生たちが一斉に静まり返る。あまりにも一斉だったために、シアンはちょっとびっくりして表情を引きつらせていた。
「えっと……。みなさん、おはようございます」
昨日は特に変わった様子はなかったというのに、今日のこの反応にはさすがに驚いてしまった。
全員、黙ったまま頭を下げると、何事もなかったかのように話を再開していた。
「これは、一体……?」
とても王族相手に取るような態度ではなかっただけに、シアンは困惑しながらヒスイに声をかけている。
「これでおわかりいただけましたでしょうか。モスグリネの貴族にとって、シアン様への感情がどのようなものかということが」
「ええ、まあ……。私、嫌われてますでしょうかね」
「私だって、学園長の指示でなければ引き受けていませんでしたよ。シアン様はもう少し、自国に向き合ってはいかがでしょうかね」
「……そうですね。分かりました」
シアンはかなりショックだった。
自分の前世がアイヴォリー王国のアクアマリン子爵家ということに加え、ライト殿下との婚約も決まったこともあって、すっかり気持ちがモスグリネから離れてしまっていたのだ。
その現実を今こうやって見せつけられているのである。
(これはなんとも由々しき事態ですね。自分のやって来たことの結果とはいえ、これではモーフに対しても風当たりが強くなりかねません。どうにかしませんと……)
厳しい現実に、シアンは反省するしかなかった。
自分のやらかしが王族への反感に繋がらないか。シアンはそこを気にし始めていた。
ひとまずは今日の講義を受けるために、ヒスイと一緒に自分の席へと向かう。
(今日のところはこの状況に耐えましょう。対策は城に戻ってからスミレと一緒に考えて、すぐさま実行に移しませんと)
シアンは肩ひじを張って黙り込んでしまった。
学園の講義が始まる初日から、シアンにとっては新たな試練の日々が始まったのである。
やはりこれまでモスグリネ王国の中で関係を築いてくることを怠ったためだろう。
「おはようございます、シアン王女殿下」
「おはようございます、ヒスイ様。王女殿下は長いですし、学園内では平等いう理念です。なので、王女殿下はおやめ下さい」
「……承知致しました、シアン様」
すごく渋ったような表情をしながらも、ヒスイは王女殿下の呼称を取り合下げくれた。仲良くなるには、まず呼び方からというわけである。
ただ、この日のシアンにはもうひとつの懸案があった。
それは、三つ下の弟であるモーフの入学式である。
王子という肩書きがあるために、新入生代表として挨拶をすることになる。その大役を無事にこなせるかというのが、シアンの気がかりなのだ。
父親であるペイルに確認したシアンだったが、「あいつなら大丈夫だ」というだけで、あまり心配していないようだった。
だが、シアンとしてはやはりシスコン気味である弟のことが気になって仕方がないのである。
「シアン様、教室に向かいましょう。今日から早速講義がございます」
ヒスイが声をかけるものの、シアンはぴくりとも反応しない。
このぼーっとした様子を見て、ヒスイはついカチンときてしまう。
「弟君が心配なのは分かりますが、まずはご自分の心配をなさってはいかがですかね」
シアンの目の前に立って、怒りの表情を浮かべながら迫る。
さすがに目の前で怒鳴られたとなると、シアンもびっくりして一歩下がってしまった。
「えっと、ごめんなさい。そうですね、まずは自分のことですね。分かっています、分かっていますから落ち着いて下さい」
焦った表情でヒスイに謝罪するシアンである。
両手で落ち着かせようとしている姿を見て、ヒスイは不満げにしながらも少し下がっていた。
「では、参りましょう。一応見取り図では確認してきましたが、教室までご案内頂けますでしょうか。現地が初めてでは迷いかねませんので」
「承知致しました。では、こちらでございます」
ヒスイはシアンを教室まで案内するために、さっさと歩き出した。
モスグリネ王国の学園ネフライト学園も、アイヴォリー王国のサンフレア学園同様に歴史は古い。なんでも建国当時からあるらしいのだ。
アイヴォリー王国と対照的なのは、精霊と友好的なこと。学園の建設にも精霊が関わっているらしく、学園のあちこちには精霊の紋様が刻まれているそうだ。
シアンが母国に戻って学ぶのは魔法を中心としたもの。アイヴォリー王国での学習内容を受けて決定されたのだという。
なので、シアンが今いるのは魔法学棟というわけだ。
「シアン様、こちらが私たちのクラスでございます」
「そうなのですね。では、早速入りましょうか」
ヒスイの紹介を受けて、シアンは教室の扉に手をかける。
扉を開けて中に入ると、すでに教室にいた学生たちが一斉に静まり返る。あまりにも一斉だったために、シアンはちょっとびっくりして表情を引きつらせていた。
「えっと……。みなさん、おはようございます」
昨日は特に変わった様子はなかったというのに、今日のこの反応にはさすがに驚いてしまった。
全員、黙ったまま頭を下げると、何事もなかったかのように話を再開していた。
「これは、一体……?」
とても王族相手に取るような態度ではなかっただけに、シアンは困惑しながらヒスイに声をかけている。
「これでおわかりいただけましたでしょうか。モスグリネの貴族にとって、シアン様への感情がどのようなものかということが」
「ええ、まあ……。私、嫌われてますでしょうかね」
「私だって、学園長の指示でなければ引き受けていませんでしたよ。シアン様はもう少し、自国に向き合ってはいかがでしょうかね」
「……そうですね。分かりました」
シアンはかなりショックだった。
自分の前世がアイヴォリー王国のアクアマリン子爵家ということに加え、ライト殿下との婚約も決まったこともあって、すっかり気持ちがモスグリネから離れてしまっていたのだ。
その現実を今こうやって見せつけられているのである。
(これはなんとも由々しき事態ですね。自分のやって来たことの結果とはいえ、これではモーフに対しても風当たりが強くなりかねません。どうにかしませんと……)
厳しい現実に、シアンは反省するしかなかった。
自分のやらかしが王族への反感に繋がらないか。シアンはそこを気にし始めていた。
ひとまずは今日の講義を受けるために、ヒスイと一緒に自分の席へと向かう。
(今日のところはこの状況に耐えましょう。対策は城に戻ってからスミレと一緒に考えて、すぐさま実行に移しませんと)
シアンは肩ひじを張って黙り込んでしまった。
学園の講義が始まる初日から、シアンにとっては新たな試練の日々が始まったのである。
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