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新章 青色の智姫
第275話 シアン(魔力)との戦い
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精霊の森で行われる試練は、なんとモーフのうちに眠りシアンの魔力との戦いだった。
少々性格は違うものの、見た目はシアンそのもの。モーフにとっては戦いづらい相手である。
しかし、これは試練である。嫌でもやらなければならないのだ。
「来ないなら、私から行きますよ!」
目の前のシアンが魔力を溜め始める。
そもそも魔力の塊であるはずのシアンなので、その気になればチャージなく魔法を放てそうである。言ってみれば手加減だろうか。
「エアブレイド!」
シアンが魔法を使えば、地面を風の刃が走り抜けていく。
「うわっ!」
シアンの魔法攻撃に、モーフは横っ飛びで回避する。
訓練場を模した背景に魔法が当たると、壁は音を立ててガラガラと崩れ去っていた。当たっていればどうなったか。それをまざまざと見せつけられたのだ。
「逃げていては、この試練は突破できませんよ。さあ、私を倒して、この魔力を自分のものとしなさい!」
この言葉を発すると同時に、シアンは手に持っていた杖をしまい丸腰で突っ込んできた。
かと思えば、風魔法を凝縮して新たな武器を生み出していた。
「む、鞭っ?!」
そう、風を固めた鞭である。
風は自由度が高い。それゆえ、このような芸当もできるのである。
「驚いている暇なんて、ありますかね?」
シアンはモーフに遠慮なく攻撃を仕掛けてくる。
モーフは持っていた剣で応戦するものの、風という自由なもの相手だけに、剣ではうまく攻撃を捌くことは難しかった。
「どうしたのですか。あなたの中の力をうまく使いなさい。このようにね!」
振りかぶったシアンから、強力な一撃が放たれる。
剣でうまく受け止めたと思ったモーフだったが、剣とぶつかった瞬間、鞭が風へと形を変えてモーフへと襲い掛かってきた。
「うわあっ!」
鋭い風が襲い掛かり、モーフは傷を負ってしまう。
だが、シアンはうまく急所は外すようにしていたらしく、せいぜいかすり傷程度で済んだようである。
「姉の姿だからといって遠慮はありません。私は魔力の塊、言ってしまえば精霊の類です。何も遠慮は要りません」
攻撃の手を止めて、モーフに説教を始める。こういうところは本当に姉といった感じなのだ。
「私に反撃しなければ、じわじわとケガが増えるだけです。苦しいのが自分だけだと思っていませんよね、モーフ!」
シアンは再び風を凝縮して武器を作り出す。今度は弓矢だ。
「スナイプアロー!」
モーフ目がけて風属性の乗った矢が放たれる。
避けなければ致命傷もあり得る軌道だ。
(お願いだから、戦ってよ、モーフ)
矢を放ちながらも、シアンはそんなことを思っている。弟に手を下すなど、本当はしたくはないのだ。
そう思った次の瞬間だった。
鋭い風がシアンの横を吹き抜けていく。
何が起こったのか確認してみれば、モーフが剣を思い切り振り抜いていた。
どうやら剣の風圧で矢を吹き飛ばして反撃してきたようだった。でも、さすがに迷いがあるみたいで攻撃は当たらなかったようだった。
「僕は、覚悟を決めましたよ、姉上」
「判断が遅いわよ、モーフ。遠慮なく私を斬りなさい。斬れるものならね!」
シアンは弓矢を使って再び攻撃を仕掛ける。だが、さすがに覚悟を決めたモーフには通じずに、矢は叩き落されてしまった。
その様子を見て、ようやくシアンは笑っていた。
シアンは風魔法を駆使して、モーフへと一気に襲い掛かる。
「スナイプアロー!」
二発目の風の矢である。
かと思えば、弓を素早く別の形に変えて、次の攻撃を仕掛けている。
「ウィンドエッジ!」
風の短剣を生み出し、追撃のようにモーフへと投げつける。
二段攻撃だ。
だが、覚悟が決まったモーフは難なくすべての攻撃を叩き落としていた。躱すではなく、剣でもって無力化したのだ。
ただの剣ではこうもいかない。よく見てみれば、剣にわずかに風がまとわりついているのが見える。
(風魔法、少しは身に付いてきましたか。ならば、そろそろ本気を出させてもらいましょうかね)
モーフの様子を見て、満足げに笑うシアン。一気に勝負をかけようとして、一度距離を取る。モーフが駆け寄る姿が見えたからだ。
「守れ風よ。唸れ風よ。汝の前にいるはあだなす敵!」
地面に手をついて、大技を繰り出そうとしている。
モーフはそうはさせまいとさらに勢いよく突っ込んでいく。
しかし、距離を取られてしまったために、シアンの魔法の発動の方が早かった。
「ジャッジメント・テンペスト!」
シアンを取り囲むようにして、大嵐が起きる。
「くっ!」
ぎりぎり効果範囲の中に入れなかったモーフは、風の勢いで外へと弾き出されてしまう。
弾き出されただけで済んだだけまだマシだ。あの風に突っ込んでいれば、間違いなく引き裂かれていただろう。そのくらいにシアンを囲む風が乱暴に渦巻いているのである。
この荒ぶる大旋風の中心にシアンがいる。
攻防を兼ね備えた大旋風を突破しなければ、おそらく試練に合格できないだろう。
覚悟を決めたとはいえ、目の前の風の勢いにどうしても怯んでしまう。
はたしてモーフは、シアンを打ち負かして試練を突破することはできるのだろうか。最大の局面を迎えたのだった。
少々性格は違うものの、見た目はシアンそのもの。モーフにとっては戦いづらい相手である。
しかし、これは試練である。嫌でもやらなければならないのだ。
「来ないなら、私から行きますよ!」
目の前のシアンが魔力を溜め始める。
そもそも魔力の塊であるはずのシアンなので、その気になればチャージなく魔法を放てそうである。言ってみれば手加減だろうか。
「エアブレイド!」
シアンが魔法を使えば、地面を風の刃が走り抜けていく。
「うわっ!」
シアンの魔法攻撃に、モーフは横っ飛びで回避する。
訓練場を模した背景に魔法が当たると、壁は音を立ててガラガラと崩れ去っていた。当たっていればどうなったか。それをまざまざと見せつけられたのだ。
「逃げていては、この試練は突破できませんよ。さあ、私を倒して、この魔力を自分のものとしなさい!」
この言葉を発すると同時に、シアンは手に持っていた杖をしまい丸腰で突っ込んできた。
かと思えば、風魔法を凝縮して新たな武器を生み出していた。
「む、鞭っ?!」
そう、風を固めた鞭である。
風は自由度が高い。それゆえ、このような芸当もできるのである。
「驚いている暇なんて、ありますかね?」
シアンはモーフに遠慮なく攻撃を仕掛けてくる。
モーフは持っていた剣で応戦するものの、風という自由なもの相手だけに、剣ではうまく攻撃を捌くことは難しかった。
「どうしたのですか。あなたの中の力をうまく使いなさい。このようにね!」
振りかぶったシアンから、強力な一撃が放たれる。
剣でうまく受け止めたと思ったモーフだったが、剣とぶつかった瞬間、鞭が風へと形を変えてモーフへと襲い掛かってきた。
「うわあっ!」
鋭い風が襲い掛かり、モーフは傷を負ってしまう。
だが、シアンはうまく急所は外すようにしていたらしく、せいぜいかすり傷程度で済んだようである。
「姉の姿だからといって遠慮はありません。私は魔力の塊、言ってしまえば精霊の類です。何も遠慮は要りません」
攻撃の手を止めて、モーフに説教を始める。こういうところは本当に姉といった感じなのだ。
「私に反撃しなければ、じわじわとケガが増えるだけです。苦しいのが自分だけだと思っていませんよね、モーフ!」
シアンは再び風を凝縮して武器を作り出す。今度は弓矢だ。
「スナイプアロー!」
モーフ目がけて風属性の乗った矢が放たれる。
避けなければ致命傷もあり得る軌道だ。
(お願いだから、戦ってよ、モーフ)
矢を放ちながらも、シアンはそんなことを思っている。弟に手を下すなど、本当はしたくはないのだ。
そう思った次の瞬間だった。
鋭い風がシアンの横を吹き抜けていく。
何が起こったのか確認してみれば、モーフが剣を思い切り振り抜いていた。
どうやら剣の風圧で矢を吹き飛ばして反撃してきたようだった。でも、さすがに迷いがあるみたいで攻撃は当たらなかったようだった。
「僕は、覚悟を決めましたよ、姉上」
「判断が遅いわよ、モーフ。遠慮なく私を斬りなさい。斬れるものならね!」
シアンは弓矢を使って再び攻撃を仕掛ける。だが、さすがに覚悟を決めたモーフには通じずに、矢は叩き落されてしまった。
その様子を見て、ようやくシアンは笑っていた。
シアンは風魔法を駆使して、モーフへと一気に襲い掛かる。
「スナイプアロー!」
二発目の風の矢である。
かと思えば、弓を素早く別の形に変えて、次の攻撃を仕掛けている。
「ウィンドエッジ!」
風の短剣を生み出し、追撃のようにモーフへと投げつける。
二段攻撃だ。
だが、覚悟が決まったモーフは難なくすべての攻撃を叩き落としていた。躱すではなく、剣でもって無力化したのだ。
ただの剣ではこうもいかない。よく見てみれば、剣にわずかに風がまとわりついているのが見える。
(風魔法、少しは身に付いてきましたか。ならば、そろそろ本気を出させてもらいましょうかね)
モーフの様子を見て、満足げに笑うシアン。一気に勝負をかけようとして、一度距離を取る。モーフが駆け寄る姿が見えたからだ。
「守れ風よ。唸れ風よ。汝の前にいるはあだなす敵!」
地面に手をついて、大技を繰り出そうとしている。
モーフはそうはさせまいとさらに勢いよく突っ込んでいく。
しかし、距離を取られてしまったために、シアンの魔法の発動の方が早かった。
「ジャッジメント・テンペスト!」
シアンを取り囲むようにして、大嵐が起きる。
「くっ!」
ぎりぎり効果範囲の中に入れなかったモーフは、風の勢いで外へと弾き出されてしまう。
弾き出されただけで済んだだけまだマシだ。あの風に突っ込んでいれば、間違いなく引き裂かれていただろう。そのくらいにシアンを囲む風が乱暴に渦巻いているのである。
この荒ぶる大旋風の中心にシアンがいる。
攻防を兼ね備えた大旋風を突破しなければ、おそらく試練に合格できないだろう。
覚悟を決めたとはいえ、目の前の風の勢いにどうしても怯んでしまう。
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