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新章 青色の智姫
第286話 緊迫の晩餐
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その日の晩餐が振る舞われる。
トパゼリアの城の食堂には豪華な料理が並べられている。
「急きょ集めたものだから、あまり豪華なものは出せずにすまないな」
「急に訪問したのはこちらです。慎ましやかなものであってもまったく問題ありませんよ」
「まったく、もう少しトパゼリアの威信というものを見せたかったのだが、なかなか口惜しいものよな」
少々ばかり質素になってしまったものだから、ティールはちょっと残念そうだった。
露骨に残念そうにしているので、これにはロゼリアたちもついにっこりである。
デーモンハートの影響がなければ自分たちとあまり変わりがないというのは、なんとも新鮮な感じだったからだ。
トパゼリアの女王も自分たちと同じ人間だったのである。
歓談にふけるシアンたちの前に、次々と料理が運ばれてくる。
シアンたちがやって来てから準備してきたとあって、種類や量などが豊富である。女王の力を使えば、このくらいは造作もないことなのだ。
「うわぁ~……。とてもおいしそう」
「ヒスイ様って侯爵家の令嬢ですよ……ね?」
「魔法一門の料理が普通だなんて、思います?」
「あっ、なるほど……」
ヒスイの言い分に、なぜか納得がいってしまうシアンである。
「シアン、アクアマリンはそんなにひどくないと思うわよ?」
シアンの様子を見たロゼリアは、つい指摘してしまっていた。
「そうですかね、お母様。確かに合宿など、対外的な時にはまともな食事を出してますけど、自分たちだけの食事はそうでもないんですよ。私が前世で家を飛び出した原因でもあるんですからね……」
シアンは大きくため息をついていた。
どうやら、アクアマリン家の食事もかなり酷い様子。ロゼリアは対外的に振る舞われる食事しか見たことがないので、その実態を知らなかったようだ。
「ふふふっ、どこにもそういうこだわりのようなものがあるのだな」
「笑いごとではありませんよ。何が悲しくてあんなまずいものを食べさせられるのか……」
シアンは子どもっぽく頬を膨らませていた。
話をしている間に、料理の配膳が完了したようだ。
「ふむ、注文しておいたもののようだが……。そこのお前、料理人を呼べ」
「はっ? 何か問題点でも?」
運んできた給仕が困惑している。
「妾の目と鼻をごまかせると思うなよ。あと大臣もだ。今すぐ呼べ、台無しにしてくれるつもりか!」
ティールが声を荒げている。
「何があったのですか?」
「……毒でございます」
「うわぁ、スミレ?!」
知らない間に後ろに立っていたスミレに、シアンが驚いている。
「私ども使用人たちにも仕込まれておりました。ただ、私がいる場に持ってこさせたのは失敗ですね。運ばれてきた瞬間に気が付きましたから」
「じゃあ、コハクたちも?」
「食べる前に無毒化しておきましたから、大丈夫です。時の力を持つ私の前に毒など無意味ですからね」
スミレは淡々と語っている。
「時の、力?」
よく分からない単語に首をこてんと傾げるヒスイである。
「知らなくて結構です。どうせ常人に分かるようなものではありませんから」
スミレは相変わらず無表情である。
しばらくすると騒がしくなってくる。
「なんだ、なぜ俺が呼ばれねばならん!」
「女王陛下のご命令です。おとなしく従って下さい」
どうやら大臣が騒いでいるようだ。
扉が開いて料理人と大臣が現れる。
料理人は怯えたような表情を見せ、大臣は不快感を露わにしている。
「おや、料理人はあの者ではないのか」
「はい、料理長を探したのですが、見当たりませんでした。代わりに副料理長を連れて参りました」
「ふむ、まあよい。副料理長、この料理の説明をしてみよ」
ティールは副料理長に問いかける。
「あの……。お言葉ですが、説明とは一体どのような説明を?」
副料理長はおそるおそる質問をし返している。
「問うておるのは妾だ。お前はさっさと答えろ」
だが、そんな態度を許すわけもなく、きっぱりとはねつける。
言葉遣いからも分かるが、ティールはかなり怒っている。
おそらく以前のティールなら、副料理長はとっくに粛清されていただろう。丸くなったことで生きながらえているのである。
「まったく、友人たちの前で恥をかかせてくれおって……。責任をどう取ってくれる?」
ティールはますます圧力をかけていく。
副料理長は足をがくがくとさせて、立っているのがやっとという様子だった。
「ふん、料理の問題なら俺は必要ないだろう。戻らせてもらうぞ」
大臣はその場を去ろうとするが、ティールが逃すわけがなかった。
「悪いが、今日の料理の総責任者はお前だ。それであるなら、お前にも説明責任はある。さっさと料理について説明致せ」
「ふん、俺は女王陛下たちが満足できるだけの料理を出せといっただけだ。用意したのは料理人どもだ。知らんしらん、とっとと帰せ」
あくまでも料理人が勝手にやったことだと、しらを切るつもりのようである。
「そうはいかんな。料理人が勝手にやったとしても、責任者はお前だ。お前には責任を取る義務があるのだ、逃げるでない」
「知らんといっておるだろうが!」
解放されないことにいら立ちを隠せない大臣。ティールを睨み付けるような素振りを見せている。
「やれやれ、あくまでもしらを切るか。あやつを呼べ」
「はっ!」
らちが明かないと見たティールは、新たな証人を呼び出すようだ。
一体誰が出てくるというのか。
晩餐の場は緊張状態が続いている。
トパゼリアの城の食堂には豪華な料理が並べられている。
「急きょ集めたものだから、あまり豪華なものは出せずにすまないな」
「急に訪問したのはこちらです。慎ましやかなものであってもまったく問題ありませんよ」
「まったく、もう少しトパゼリアの威信というものを見せたかったのだが、なかなか口惜しいものよな」
少々ばかり質素になってしまったものだから、ティールはちょっと残念そうだった。
露骨に残念そうにしているので、これにはロゼリアたちもついにっこりである。
デーモンハートの影響がなければ自分たちとあまり変わりがないというのは、なんとも新鮮な感じだったからだ。
トパゼリアの女王も自分たちと同じ人間だったのである。
歓談にふけるシアンたちの前に、次々と料理が運ばれてくる。
シアンたちがやって来てから準備してきたとあって、種類や量などが豊富である。女王の力を使えば、このくらいは造作もないことなのだ。
「うわぁ~……。とてもおいしそう」
「ヒスイ様って侯爵家の令嬢ですよ……ね?」
「魔法一門の料理が普通だなんて、思います?」
「あっ、なるほど……」
ヒスイの言い分に、なぜか納得がいってしまうシアンである。
「シアン、アクアマリンはそんなにひどくないと思うわよ?」
シアンの様子を見たロゼリアは、つい指摘してしまっていた。
「そうですかね、お母様。確かに合宿など、対外的な時にはまともな食事を出してますけど、自分たちだけの食事はそうでもないんですよ。私が前世で家を飛び出した原因でもあるんですからね……」
シアンは大きくため息をついていた。
どうやら、アクアマリン家の食事もかなり酷い様子。ロゼリアは対外的に振る舞われる食事しか見たことがないので、その実態を知らなかったようだ。
「ふふふっ、どこにもそういうこだわりのようなものがあるのだな」
「笑いごとではありませんよ。何が悲しくてあんなまずいものを食べさせられるのか……」
シアンは子どもっぽく頬を膨らませていた。
話をしている間に、料理の配膳が完了したようだ。
「ふむ、注文しておいたもののようだが……。そこのお前、料理人を呼べ」
「はっ? 何か問題点でも?」
運んできた給仕が困惑している。
「妾の目と鼻をごまかせると思うなよ。あと大臣もだ。今すぐ呼べ、台無しにしてくれるつもりか!」
ティールが声を荒げている。
「何があったのですか?」
「……毒でございます」
「うわぁ、スミレ?!」
知らない間に後ろに立っていたスミレに、シアンが驚いている。
「私ども使用人たちにも仕込まれておりました。ただ、私がいる場に持ってこさせたのは失敗ですね。運ばれてきた瞬間に気が付きましたから」
「じゃあ、コハクたちも?」
「食べる前に無毒化しておきましたから、大丈夫です。時の力を持つ私の前に毒など無意味ですからね」
スミレは淡々と語っている。
「時の、力?」
よく分からない単語に首をこてんと傾げるヒスイである。
「知らなくて結構です。どうせ常人に分かるようなものではありませんから」
スミレは相変わらず無表情である。
しばらくすると騒がしくなってくる。
「なんだ、なぜ俺が呼ばれねばならん!」
「女王陛下のご命令です。おとなしく従って下さい」
どうやら大臣が騒いでいるようだ。
扉が開いて料理人と大臣が現れる。
料理人は怯えたような表情を見せ、大臣は不快感を露わにしている。
「おや、料理人はあの者ではないのか」
「はい、料理長を探したのですが、見当たりませんでした。代わりに副料理長を連れて参りました」
「ふむ、まあよい。副料理長、この料理の説明をしてみよ」
ティールは副料理長に問いかける。
「あの……。お言葉ですが、説明とは一体どのような説明を?」
副料理長はおそるおそる質問をし返している。
「問うておるのは妾だ。お前はさっさと答えろ」
だが、そんな態度を許すわけもなく、きっぱりとはねつける。
言葉遣いからも分かるが、ティールはかなり怒っている。
おそらく以前のティールなら、副料理長はとっくに粛清されていただろう。丸くなったことで生きながらえているのである。
「まったく、友人たちの前で恥をかかせてくれおって……。責任をどう取ってくれる?」
ティールはますます圧力をかけていく。
副料理長は足をがくがくとさせて、立っているのがやっとという様子だった。
「ふん、料理の問題なら俺は必要ないだろう。戻らせてもらうぞ」
大臣はその場を去ろうとするが、ティールが逃すわけがなかった。
「悪いが、今日の料理の総責任者はお前だ。それであるなら、お前にも説明責任はある。さっさと料理について説明致せ」
「ふん、俺は女王陛下たちが満足できるだけの料理を出せといっただけだ。用意したのは料理人どもだ。知らんしらん、とっとと帰せ」
あくまでも料理人が勝手にやったことだと、しらを切るつもりのようである。
「そうはいかんな。料理人が勝手にやったとしても、責任者はお前だ。お前には責任を取る義務があるのだ、逃げるでない」
「知らんといっておるだろうが!」
解放されないことにいら立ちを隠せない大臣。ティールを睨み付けるような素振りを見せている。
「やれやれ、あくまでもしらを切るか。あやつを呼べ」
「はっ!」
らちが明かないと見たティールは、新たな証人を呼び出すようだ。
一体誰が出てくるというのか。
晩餐の場は緊張状態が続いている。
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