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第49話 王都を発つ
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さて、今回王都に戻ってきた用事はすべて終わらせました。
アマリス様ともルーチェとも話ができましたからね。
ですが、私はこれ以上王都に長居はできません。特に会いたくない方がいらっしゃいますからね。
「お姉様、本当にもう戻られてしまうのですか?」
玄関先でルーチェに声をかけられてしまいます。
「はい。私は公爵領で療養中なのです。療養中であるのにこんなに元気に動いているところを、他人に見られるわけには参りませんからね。一部の方は絶対よからぬ方に話を盛ろうとします」
これは前世でも見聞きしてきたことです。
他人をよく思わない人は、貶めるためならいくらでも話を作り出すのです。そのくせして、発覚した場合は絶対に責任を取ろうとしません。面倒この上ないので、発生させずに済むのなら、その方がいいのです。
「分かりました、お姉様。引き留めようとして申し訳ありません」
「いいのですよ、ルーチェ。遠くにいても、私はルーチェたちのことを思っています。私の役目をすべて押し付けてしまった責任も感じていますし、私は私のできることで公爵家に貢献してみせますわ」
「お姉様……」
「レイチェル……」
私の言葉に、お父様もルーチェも泣きそうな顔をしています。
「ああ、そうです、ルーチェ」
「なんでしょうか、お姉様」
私はふと思い出して、ルーチェに声をかけます。
「今年のお誕生日、一緒に祝えなくてごめんなさいね」
そう、ルーチェの誕生日の件です。私と誕生日が一日違いなんですよね、一歳しか違いませんのに。
私はイリスやギルバートに祝ってもらいましたが、私はうっかり忘れてしまっていたのです。
「いいんですよ、お姉様。バターサンドを頂きましたし、ラッシュバードとも触れ合わせて頂きましたもの」
ルーチェはにっこりと笑って、不甲斐ない姉のことを許してくれました。本当にいい妹ですよ。
こんな自慢の妹ですから、きっと殿下とも良好な関係を築いていけるでしょうね。なんとしても姉として支えてあげなければいけません。
「さて、あまり遅くなると人通りが増えます。人の少ない間に、私は王都から脱出しませんと」
「お姉様、また来て下さいますよね?」
ラッシュバードにまたがり、出発の支度をした私に、ルーチェが近寄ってきます。
「はい。来年は誕生日を一緒にお祝いしましょう」
私はにっこりと微笑んで言葉を返します。
「約束ですよ、お姉様」
ルーチェは私をじっと見つめてきます。
私はこくりと頷いて返事をしておきます。
「それでは、私は公爵領に戻ります。お父様、お母様、ルーチェ、それとみなさん、またお会い致しましょう」
私とイリスはラッシュバードを駆り、公爵邸を後にしました。
背中からは、ルーチェの私を呼ぶ声が聞こえてきました。
ルーチェの声に、私は唇をぎゅっとかみしめたのでした。
ラッシュバードを走らせると、あっという間に公爵領まで戻ってきてしまいました。
小屋が見えてくると、畑ではギルバートがノームと一緒に作業をしている姿が見えます。
でも、ギルバートからしたら自分一人で作業しているつもりなのでしょうね。だって、ギルバートにはノームが見えませんもの。
「ただいま戻りました」
私が声をかけると、ギルバートとノームたちが一斉にこちらを見ます。
「レチェ様、イリス。戻られたのですね」
一人で寂しかったのか、一緒に行動できなかったのがつらかったのか、ギルバートはどこかつらそうな表情ですね。
「はい、無事に戻って参りました」
「よかった……。変なのに絡まれないか心配しましたよ」
「大丈夫ですよ。この子たちがいるのですから、下手に手を出して来られる方はいらっしゃいませんでした」
私が乗っているスターの首筋を撫でてあげますと、どんなもんだと首を垂直に持ち上げていました。
『主、お帰りなさい』
『主、畑は大丈夫。褒めて』
足元ではノームが私たちに訴えかけてきます。
「ええ、ノームたちもありがとうございます」
私がお礼を言うと、ノームたちはぴょんぴょんと飛び跳ねていました。
ひと通り挨拶を済ませますと、スピードとスターは小屋へと入れて、体をきれいに拭いてあげます。
全体的につやがありますので、より立派に見えますね。
ラッシュバードの世話を終えると、私はギルバートたちの方を見ます。
「さて、夕食でも頂きながら、私たちがいない間の報告をして頂きましょうか」
「承知致しました」
ギルバートは一足先に小屋へと戻り、夕食の支度を始めます。先にお風呂に入るようには伝えておきましたけれど、あの様子では入りそうにありませんね。
イリスも小屋に向かわせて、その間に私は畑の状態を確認します。ノームがいるので大丈夫だとは思いますが、念のためですね。
「どうでしたか、ギルバートの様子は」
『真剣だった』
『畑仕事はもう完璧』
「そうですか。それはいいことですね」
ノームからの評価は高いようですね。
でも、肝心の作物の生育状況はきちんと確認しませんとね。
鑑定魔法の結果は良好ですね。ノームがいましたからやっぱり問題はなかったようです。
畑の確認を終えた私は、ようやく久しぶりの我が家に足を踏み入れたのでした。
そういえば、長かった一年間ももうそろそろ終わりですね。
魔法学園に入学できずに退場となってしまいましたが、私は物語から外れた状態で暮らせているようです。
これから先も絡まずに、このまま気ままに過ごせていけるといいですね。
アマリス様ともルーチェとも話ができましたからね。
ですが、私はこれ以上王都に長居はできません。特に会いたくない方がいらっしゃいますからね。
「お姉様、本当にもう戻られてしまうのですか?」
玄関先でルーチェに声をかけられてしまいます。
「はい。私は公爵領で療養中なのです。療養中であるのにこんなに元気に動いているところを、他人に見られるわけには参りませんからね。一部の方は絶対よからぬ方に話を盛ろうとします」
これは前世でも見聞きしてきたことです。
他人をよく思わない人は、貶めるためならいくらでも話を作り出すのです。そのくせして、発覚した場合は絶対に責任を取ろうとしません。面倒この上ないので、発生させずに済むのなら、その方がいいのです。
「分かりました、お姉様。引き留めようとして申し訳ありません」
「いいのですよ、ルーチェ。遠くにいても、私はルーチェたちのことを思っています。私の役目をすべて押し付けてしまった責任も感じていますし、私は私のできることで公爵家に貢献してみせますわ」
「お姉様……」
「レイチェル……」
私の言葉に、お父様もルーチェも泣きそうな顔をしています。
「ああ、そうです、ルーチェ」
「なんでしょうか、お姉様」
私はふと思い出して、ルーチェに声をかけます。
「今年のお誕生日、一緒に祝えなくてごめんなさいね」
そう、ルーチェの誕生日の件です。私と誕生日が一日違いなんですよね、一歳しか違いませんのに。
私はイリスやギルバートに祝ってもらいましたが、私はうっかり忘れてしまっていたのです。
「いいんですよ、お姉様。バターサンドを頂きましたし、ラッシュバードとも触れ合わせて頂きましたもの」
ルーチェはにっこりと笑って、不甲斐ない姉のことを許してくれました。本当にいい妹ですよ。
こんな自慢の妹ですから、きっと殿下とも良好な関係を築いていけるでしょうね。なんとしても姉として支えてあげなければいけません。
「さて、あまり遅くなると人通りが増えます。人の少ない間に、私は王都から脱出しませんと」
「お姉様、また来て下さいますよね?」
ラッシュバードにまたがり、出発の支度をした私に、ルーチェが近寄ってきます。
「はい。来年は誕生日を一緒にお祝いしましょう」
私はにっこりと微笑んで言葉を返します。
「約束ですよ、お姉様」
ルーチェは私をじっと見つめてきます。
私はこくりと頷いて返事をしておきます。
「それでは、私は公爵領に戻ります。お父様、お母様、ルーチェ、それとみなさん、またお会い致しましょう」
私とイリスはラッシュバードを駆り、公爵邸を後にしました。
背中からは、ルーチェの私を呼ぶ声が聞こえてきました。
ルーチェの声に、私は唇をぎゅっとかみしめたのでした。
ラッシュバードを走らせると、あっという間に公爵領まで戻ってきてしまいました。
小屋が見えてくると、畑ではギルバートがノームと一緒に作業をしている姿が見えます。
でも、ギルバートからしたら自分一人で作業しているつもりなのでしょうね。だって、ギルバートにはノームが見えませんもの。
「ただいま戻りました」
私が声をかけると、ギルバートとノームたちが一斉にこちらを見ます。
「レチェ様、イリス。戻られたのですね」
一人で寂しかったのか、一緒に行動できなかったのがつらかったのか、ギルバートはどこかつらそうな表情ですね。
「はい、無事に戻って参りました」
「よかった……。変なのに絡まれないか心配しましたよ」
「大丈夫ですよ。この子たちがいるのですから、下手に手を出して来られる方はいらっしゃいませんでした」
私が乗っているスターの首筋を撫でてあげますと、どんなもんだと首を垂直に持ち上げていました。
『主、お帰りなさい』
『主、畑は大丈夫。褒めて』
足元ではノームが私たちに訴えかけてきます。
「ええ、ノームたちもありがとうございます」
私がお礼を言うと、ノームたちはぴょんぴょんと飛び跳ねていました。
ひと通り挨拶を済ませますと、スピードとスターは小屋へと入れて、体をきれいに拭いてあげます。
全体的につやがありますので、より立派に見えますね。
ラッシュバードの世話を終えると、私はギルバートたちの方を見ます。
「さて、夕食でも頂きながら、私たちがいない間の報告をして頂きましょうか」
「承知致しました」
ギルバートは一足先に小屋へと戻り、夕食の支度を始めます。先にお風呂に入るようには伝えておきましたけれど、あの様子では入りそうにありませんね。
イリスも小屋に向かわせて、その間に私は畑の状態を確認します。ノームがいるので大丈夫だとは思いますが、念のためですね。
「どうでしたか、ギルバートの様子は」
『真剣だった』
『畑仕事はもう完璧』
「そうですか。それはいいことですね」
ノームからの評価は高いようですね。
でも、肝心の作物の生育状況はきちんと確認しませんとね。
鑑定魔法の結果は良好ですね。ノームがいましたからやっぱり問題はなかったようです。
畑の確認を終えた私は、ようやく久しぶりの我が家に足を踏み入れたのでした。
そういえば、長かった一年間ももうそろそろ終わりですね。
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