28 / 46
第28話 沖合の小島
しおりを挟む
数日後、田均命と波均命は、兄弟そろって神社から去っていってしまった。神無月ということで、出雲の国に出向かなければいけないからだ。
その間、私は海の中の調査を再開させる。
学校が終わって家に戻ると、おじいちゃん先生ではなく、働く看護師さんに声をかけて出かけていく。
海までやってくると、海斗に教えてもらった用水路の下までやってきて、私はマーメイドの姿に戻る。服はワンピースにしているから、服を脱いでも影響はない。我ながら考えたものね。
「用水路だとそこそこの深さがあるから、人目に触れず海に出ていけるのはいいわね。海斗に感謝しなきゃ」
用水路の陰になっている部分から潜って、私は海へと出ていく。
深さがあんまりないけれど、下半身を魚の状態にしてうろつくよりはマシ。民家が並んでいるから、目撃されにくいし、本当にいい場所だわ。
今回は沖合にある小島の方まで足を運んでみることにする。
噂では、小さな社があるとか聞いたことがある。でも、ボートでもないと近付くことができなかったので、私は見たことがない。
マーメイドとなった今なら泳いで到達できるから、いよいよ真相に近付くことができるわね。
なるべく人の目に触れないように、海底に近いところを泳いで、私は小島の方向へと泳いでいく。
人間時代は目を開けられなかった水中も、マーメイドの今なら平気。魔法で目の前の水を避けられるからね。おかげで方向がよく分かる。
まだ日の落ちるのが遅い時期だから、よく見えるわ。
(えっと、確かこっちの方だったわね)
ただ、盲点がひとつ。
海中だと方向がよく分からない。本当に正しい方向に進んでいるのかが分からないのよ。ああ、私ってばどこか抜けてるんだから。
仕方がなく、一度海面に上昇することにする。
「ぷはっ!」
海面に上がると、つい口をついてこの言葉が出てきてしまう。マーメイドなので海の中でも呼吸はできるんだけど、これって癖かしらね。
私は顔だけを海から出した状態で、周りを見回してみる。町の方からはだいぶ離れてきているけれど、目的である小島にはだいぶ近づいてきていた。
「ここまで離れれば、顔を出した状態で泳いでも問題ないかな?」
私はふとそう思って、海面から頭だけを出した状態で泳ぎ始める。
周囲を見回しても漁船がいる様子はないし、問題はないと考えていた。
「ギャーッ、ギャーッ!」
「わわっ、カラス!」
ところが、よりにもよってカラスが近寄ってきた。私の髪の毛はピンク色で、マーメイド族の特徴のせいでキラキラとしている。その輝きに魅せられて、カラスが反応してしまったみたい。
私は慌てて海中に潜る。少々浅い場所なら襲われそうになるので、もちろん少し深めだ。
深く潜ってどうにかやり過ごし、私は目的地である離れ小島にやって来た。
「うわぁ……、薄気味悪いわね……」
海岸から陸地に上がり、足を人間の状態にして陸地に上がっていく。
ほとんど人が来ないとあってか、波均命の神社よりも荒れている感じだ。
よく見てみると、道のようなものがある。私はそこを歩いて、小島の奥へと向かっていく。
しばらく歩くと、小さな祠のようなものがあった。長年人が来ていないことを示すかのように、かなり朽ちてきているようだ。
「可哀想ね。周りが深い海の中になるから、誰も来なくてこうなっちゃったのね」
私はひとまず、祠にかぶっている葉っぱなどだけでもどうにかしようと考えた。
ところが、ちょっと手が触れただけで、祠が崩れ落ちそうになっている。
「ダメだわ。朽ちてきているから触るだけでも壊れちゃう」
知ってしまったからには、ちょっとどうにかしたくなってしまうのは人の性だろうか。
「アクアヒール」
建物相手に効果があるか分からないけれど、私はマーメイド族のプリンセスとして持っている魔法を使って、回復を試みる。
だけど、やはり相手が生物ではないので、思った以上の効果は得られなかった。でも、少しマシになったような気がするわ。
マシになったと思ったので、私は祠にあたらないように気をつけながら、水魔法を放って周囲のごみを吹き飛ばしていく。コントロールあまりよくないけれど、一応、祠に当たらないようにしてできたと思うわ。
「ふぅ、こんなものかしらね。それにしても、こんな祠があるなんて知らなかったわ。こういうのは、誰に聞けばいいのかしらね。おじいちゃんなら分かるかしら」
少しきれいになった祠を見ながら、私はものすごく気になってしまっていた。なんだかこの祠の雰囲気、知っているような気がするんだもの。
「いっけない。もう時間がやばいわね。そろそろ帰らなくっちゃ」
辺りが暗くなってきたことで、私はスマートフォンを取り出す。時間はもう六時前と、ずいぶんと遅くなってしまっていた。
これ以上遅くなってしまっては、診察が続いているとはいえ、おじいちゃん先生を心配させかねない。私はすぐに家に帰ることにした。
「ごめんなさい。今日のところはこのくらいでね。また来るね」
私は祠に声をかけると、来た道を戻っていく。
マーメイドの状態に戻ると、何度か振り返りながら、私は陸地に向けて泳いでいったのだった。
その間、私は海の中の調査を再開させる。
学校が終わって家に戻ると、おじいちゃん先生ではなく、働く看護師さんに声をかけて出かけていく。
海までやってくると、海斗に教えてもらった用水路の下までやってきて、私はマーメイドの姿に戻る。服はワンピースにしているから、服を脱いでも影響はない。我ながら考えたものね。
「用水路だとそこそこの深さがあるから、人目に触れず海に出ていけるのはいいわね。海斗に感謝しなきゃ」
用水路の陰になっている部分から潜って、私は海へと出ていく。
深さがあんまりないけれど、下半身を魚の状態にしてうろつくよりはマシ。民家が並んでいるから、目撃されにくいし、本当にいい場所だわ。
今回は沖合にある小島の方まで足を運んでみることにする。
噂では、小さな社があるとか聞いたことがある。でも、ボートでもないと近付くことができなかったので、私は見たことがない。
マーメイドとなった今なら泳いで到達できるから、いよいよ真相に近付くことができるわね。
なるべく人の目に触れないように、海底に近いところを泳いで、私は小島の方向へと泳いでいく。
人間時代は目を開けられなかった水中も、マーメイドの今なら平気。魔法で目の前の水を避けられるからね。おかげで方向がよく分かる。
まだ日の落ちるのが遅い時期だから、よく見えるわ。
(えっと、確かこっちの方だったわね)
ただ、盲点がひとつ。
海中だと方向がよく分からない。本当に正しい方向に進んでいるのかが分からないのよ。ああ、私ってばどこか抜けてるんだから。
仕方がなく、一度海面に上昇することにする。
「ぷはっ!」
海面に上がると、つい口をついてこの言葉が出てきてしまう。マーメイドなので海の中でも呼吸はできるんだけど、これって癖かしらね。
私は顔だけを海から出した状態で、周りを見回してみる。町の方からはだいぶ離れてきているけれど、目的である小島にはだいぶ近づいてきていた。
「ここまで離れれば、顔を出した状態で泳いでも問題ないかな?」
私はふとそう思って、海面から頭だけを出した状態で泳ぎ始める。
周囲を見回しても漁船がいる様子はないし、問題はないと考えていた。
「ギャーッ、ギャーッ!」
「わわっ、カラス!」
ところが、よりにもよってカラスが近寄ってきた。私の髪の毛はピンク色で、マーメイド族の特徴のせいでキラキラとしている。その輝きに魅せられて、カラスが反応してしまったみたい。
私は慌てて海中に潜る。少々浅い場所なら襲われそうになるので、もちろん少し深めだ。
深く潜ってどうにかやり過ごし、私は目的地である離れ小島にやって来た。
「うわぁ……、薄気味悪いわね……」
海岸から陸地に上がり、足を人間の状態にして陸地に上がっていく。
ほとんど人が来ないとあってか、波均命の神社よりも荒れている感じだ。
よく見てみると、道のようなものがある。私はそこを歩いて、小島の奥へと向かっていく。
しばらく歩くと、小さな祠のようなものがあった。長年人が来ていないことを示すかのように、かなり朽ちてきているようだ。
「可哀想ね。周りが深い海の中になるから、誰も来なくてこうなっちゃったのね」
私はひとまず、祠にかぶっている葉っぱなどだけでもどうにかしようと考えた。
ところが、ちょっと手が触れただけで、祠が崩れ落ちそうになっている。
「ダメだわ。朽ちてきているから触るだけでも壊れちゃう」
知ってしまったからには、ちょっとどうにかしたくなってしまうのは人の性だろうか。
「アクアヒール」
建物相手に効果があるか分からないけれど、私はマーメイド族のプリンセスとして持っている魔法を使って、回復を試みる。
だけど、やはり相手が生物ではないので、思った以上の効果は得られなかった。でも、少しマシになったような気がするわ。
マシになったと思ったので、私は祠にあたらないように気をつけながら、水魔法を放って周囲のごみを吹き飛ばしていく。コントロールあまりよくないけれど、一応、祠に当たらないようにしてできたと思うわ。
「ふぅ、こんなものかしらね。それにしても、こんな祠があるなんて知らなかったわ。こういうのは、誰に聞けばいいのかしらね。おじいちゃんなら分かるかしら」
少しきれいになった祠を見ながら、私はものすごく気になってしまっていた。なんだかこの祠の雰囲気、知っているような気がするんだもの。
「いっけない。もう時間がやばいわね。そろそろ帰らなくっちゃ」
辺りが暗くなってきたことで、私はスマートフォンを取り出す。時間はもう六時前と、ずいぶんと遅くなってしまっていた。
これ以上遅くなってしまっては、診察が続いているとはいえ、おじいちゃん先生を心配させかねない。私はすぐに家に帰ることにした。
「ごめんなさい。今日のところはこのくらいでね。また来るね」
私は祠に声をかけると、来た道を戻っていく。
マーメイドの状態に戻ると、何度か振り返りながら、私は陸地に向けて泳いでいったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
デネブが死んだ
ありがとうございました。さようなら
恋愛
弟との思い出の土地で、ゆっくりと死を迎えるつもりのアデラインの隣の屋敷に、美しい夫婦がやってきた。
夫のアルビレオに強く惹かれるアデライン。
嫉妬心を抑えながら、妻のデネブと親友として接する。
アデラインは病弱のデネブを元気付けた。
原因となる病も完治した。それなのに。
ある日、デネブが死んだ。
ふわっとしてます
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる