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第63話 帝都を見て回る元魔王
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雪はやんだはいいものの、さすがに降り積もった雪はすぐに消えるわけがなかった。
宮殿や帝都の中では、見慣れない雪にはしゃぐ子どもたちの声が聞こえてくる。
「やれやれ、一面真っ白ですね」
「雪って、意外と残るものなんですね」
アリエスが困ったように白い雪を見ていると、オーロラが雪についての感想を漏らしている。
移動先で見たことがあるだけというオーロラは、雪について詳しく知っているわけではなかったというわけである。
それにしても、自分の魔力暴走のせいで一面を真っ白にしてしまったというのに、アリエスはいまいち他人事のような反応をしている。
「暖かければそれほど長くは残りませんが、私の魔力の影響がまだ残っているようですのでね。まだ数日は残るかもしれませんね」
「そうですか。でも、さすがに新年祭の時までには融けていてほしいですね。行われる行事に支障が出てしまうんですよ」
「なるほど、それは確かに困りますね」
オーロラの悩みに、アリエスは同情しているようだった。
とはいえ、アリエスはこの状況をどうにかしたいと考えている。自分の暴走のせいでこんなことになっているのだから、責任を取りたいというわけである。
ついでにといえば、サハーが非常に動きづらそうにしているというのもある。フィシェギルという半魚人魔族なので、寒さにとにかく弱いのだ。このままではサハーが護衛としてまともに働けない。
どうにかできないかと、アリエスは考える。
「まったく、何を思い詰めているのですか」
悩むアリエスたちの前に、キャサリーンが出てくる。
「おはようございます、キャサリーン様」
アリエスとオーロラが揃って挨拶をする。カプリナとサハーも遅れながらに挨拶をしている。カプリナはびっくりして、サハーは嫌悪感から遅れてしまったのだ。
とはいえ、その程度などは気にしないくらい、心は寛大なキャサリーンである。
「それで、一体何を悩んでいますのかしら」
改めてキャサリーンが問い掛けると、アリエスとオーロラが顔を見合わせる。こくりと頷くと、話していた内容をキャサリーンに伝える。
話を聞いたキャサリーンは、呆れたようにため息をついている。
「なるほどですね。新年祭に雪があっては困るからどうにかしたいと、そういうわけですか」
二人はこくこくと頷いている。
「確かに、得意属性を考えると二人には難しいでしょう。分かりました、私がどうにかしておきますから、前日まではこのまま残しておきますよ」
「分かりました。本当にご迷惑をおかけいたします、キャサリーン様」
「何から何まで本当に申し訳ございません」
アリエスとオーロラは揃ってキャサリーンに頭を下げてお礼を言っている。
本来ならば、前世の自分を殺した相手になど頭を下げたくもないだろう。だが、アリエスはできた聖女なのでその程度はまったくもって平気なのである。むしろ、これでいい顔をしないのはサハーだろう。サハーはキャサリーンが魔王にとどめを刺したことを知っているからだ。
それでも今は、アリエスの立場を悪くするわけにもいかないので、ぐっとこらえて黙りこむサハーなのであった。
「さて、こんなところで突っ立っていますと、朝食に遅れます。そろそろ参りますよ」
「はい、キャサリーン様」
キャサリーンの呼び掛けに、アリエスたちは宮殿の食堂へと向かっていった。
新年祭まではあと二日である。
それまでの間、アリエスたちは帝都の中を視察することになっている。
朝食を終えたアリエスたちは、護衛を伴って帝都の中を見て回る。
さすが聖女オーロラが帝都の中に滞在しているだけのことはある。帝都の中はかなり平和で、至る所で子どもたちが初めて見る雪にはしゃいでいる様子が見受けられる。
「とても平和そうですね。さすがオーロラ様がいらっしゃるだけのことはありますね」
アリエスは素直に素晴らしいと感動しているようだった。
元が魔王とはいえども、今は聖女。聖女の先輩に対して尊敬の念を抱くのは実に普通のことである。
「私の住みますサンカサス王国も、このような平和な光景にあふれる場所にできるでしょうか」
「できると思いますよ、アリエス様なら」
アリエスの言葉を、オーロラがすぐに肯定している。
「そうですね。ですが、その前に魔力暴走を起こさないように、早く魔力訓練をしておいた方がいいですね。お城を頼れば、魔力の扱いを教えて下さる魔法使いがいらっしゃるでしょう。なるべく早い方がいいですね」
「そうですね。戻りましたらすぐにでも頼もうかと思います」
キャサリーンの提案に、アリエスは意気込みを見せている。
なんといっても魔力に遊ばれるなど、元魔王としてはあり得ない汚点だ。すぐにでも克服できるように、特訓を決意していたのである。
ようやく雪のやんだ晴れ空の下、子どもたちのはしゃぐ声を聞きながら、アリエスたちは雑談を交えながら帝都の視察を終える。
いよいよ、新年祭を迎えることになる。
翌日はその準備のために宮殿に閉じこもることになる。
一日の自由なひと時を、アリエスたちはしっかり楽しんだのだった。
宮殿や帝都の中では、見慣れない雪にはしゃぐ子どもたちの声が聞こえてくる。
「やれやれ、一面真っ白ですね」
「雪って、意外と残るものなんですね」
アリエスが困ったように白い雪を見ていると、オーロラが雪についての感想を漏らしている。
移動先で見たことがあるだけというオーロラは、雪について詳しく知っているわけではなかったというわけである。
それにしても、自分の魔力暴走のせいで一面を真っ白にしてしまったというのに、アリエスはいまいち他人事のような反応をしている。
「暖かければそれほど長くは残りませんが、私の魔力の影響がまだ残っているようですのでね。まだ数日は残るかもしれませんね」
「そうですか。でも、さすがに新年祭の時までには融けていてほしいですね。行われる行事に支障が出てしまうんですよ」
「なるほど、それは確かに困りますね」
オーロラの悩みに、アリエスは同情しているようだった。
とはいえ、アリエスはこの状況をどうにかしたいと考えている。自分の暴走のせいでこんなことになっているのだから、責任を取りたいというわけである。
ついでにといえば、サハーが非常に動きづらそうにしているというのもある。フィシェギルという半魚人魔族なので、寒さにとにかく弱いのだ。このままではサハーが護衛としてまともに働けない。
どうにかできないかと、アリエスは考える。
「まったく、何を思い詰めているのですか」
悩むアリエスたちの前に、キャサリーンが出てくる。
「おはようございます、キャサリーン様」
アリエスとオーロラが揃って挨拶をする。カプリナとサハーも遅れながらに挨拶をしている。カプリナはびっくりして、サハーは嫌悪感から遅れてしまったのだ。
とはいえ、その程度などは気にしないくらい、心は寛大なキャサリーンである。
「それで、一体何を悩んでいますのかしら」
改めてキャサリーンが問い掛けると、アリエスとオーロラが顔を見合わせる。こくりと頷くと、話していた内容をキャサリーンに伝える。
話を聞いたキャサリーンは、呆れたようにため息をついている。
「なるほどですね。新年祭に雪があっては困るからどうにかしたいと、そういうわけですか」
二人はこくこくと頷いている。
「確かに、得意属性を考えると二人には難しいでしょう。分かりました、私がどうにかしておきますから、前日まではこのまま残しておきますよ」
「分かりました。本当にご迷惑をおかけいたします、キャサリーン様」
「何から何まで本当に申し訳ございません」
アリエスとオーロラは揃ってキャサリーンに頭を下げてお礼を言っている。
本来ならば、前世の自分を殺した相手になど頭を下げたくもないだろう。だが、アリエスはできた聖女なのでその程度はまったくもって平気なのである。むしろ、これでいい顔をしないのはサハーだろう。サハーはキャサリーンが魔王にとどめを刺したことを知っているからだ。
それでも今は、アリエスの立場を悪くするわけにもいかないので、ぐっとこらえて黙りこむサハーなのであった。
「さて、こんなところで突っ立っていますと、朝食に遅れます。そろそろ参りますよ」
「はい、キャサリーン様」
キャサリーンの呼び掛けに、アリエスたちは宮殿の食堂へと向かっていった。
新年祭まではあと二日である。
それまでの間、アリエスたちは帝都の中を視察することになっている。
朝食を終えたアリエスたちは、護衛を伴って帝都の中を見て回る。
さすが聖女オーロラが帝都の中に滞在しているだけのことはある。帝都の中はかなり平和で、至る所で子どもたちが初めて見る雪にはしゃいでいる様子が見受けられる。
「とても平和そうですね。さすがオーロラ様がいらっしゃるだけのことはありますね」
アリエスは素直に素晴らしいと感動しているようだった。
元が魔王とはいえども、今は聖女。聖女の先輩に対して尊敬の念を抱くのは実に普通のことである。
「私の住みますサンカサス王国も、このような平和な光景にあふれる場所にできるでしょうか」
「できると思いますよ、アリエス様なら」
アリエスの言葉を、オーロラがすぐに肯定している。
「そうですね。ですが、その前に魔力暴走を起こさないように、早く魔力訓練をしておいた方がいいですね。お城を頼れば、魔力の扱いを教えて下さる魔法使いがいらっしゃるでしょう。なるべく早い方がいいですね」
「そうですね。戻りましたらすぐにでも頼もうかと思います」
キャサリーンの提案に、アリエスは意気込みを見せている。
なんといっても魔力に遊ばれるなど、元魔王としてはあり得ない汚点だ。すぐにでも克服できるように、特訓を決意していたのである。
ようやく雪のやんだ晴れ空の下、子どもたちのはしゃぐ声を聞きながら、アリエスたちは雑談を交えながら帝都の視察を終える。
いよいよ、新年祭を迎えることになる。
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一日の自由なひと時を、アリエスたちはしっかり楽しんだのだった。
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