4 / 11
第4話 さらなるトラブル
しおりを挟む
「おい聞いたか? スゲー可愛い女の子が廊下に座り込んで泣きじゃくってたらしいぜ」
「え、ほんとかよ? 何年の何組の女だ?」
「そこまでは分からないけどさ、何故か男子の制服着てたってさ」
「へぇ男装の美少女ってか。俺そういうの好き」
早速俺の成果に盛り上がってるな。名乗り出るつもりはないが、こうしてひとつの悪が裁かれたと思うと気分がいい。
内心ほくそ笑んでいると隣の席から声をかけられた。
「君、そこの席に座ってるということは……君が入院していた江野君、で合ってるかな?」
声をかけてきたのは、きっちりとした身形の如何にも模範生徒といった感じの男だ。誰だったか? 体感で二年も経ってしまうとよく思い出せない。
「あぁ確かに俺は江野だが、誰だったか? ちょっと思い出せないんだよ」
「無理もない、君はこの学校に入学して十日も経たずに事故に遭ったんだ。それから一ヶ月も意識を失っていたんだから、クラスメイトの顔もよくわからないだろう」
俺はまだ高校一年生。
入学して間もないことに事故にあって入院。確かにこの境遇ならクラスの人間の顔を把握しなくても恥ずかしくはないか。
「僕はこのクラスの学級委員で、黄畠修禄という。困ったことがあるなら、遠慮なく頼ってほしい」
「ああ、じゃあ、その時が来たらよろしく頼む」
俺は軽く手を振って、適当な返事をした。
確かに頼るに越したことはないが、今のところは様子見だな。
授業が始まる前にスマホで時間を確認する。まだほんのちょっとだけ時間はあるがトイレに行くほどの余裕はないな。このままボーっと過ごさせてもらおうか。
「おいおい、お前が入学して早々病院送りされた江野って間抜けかぁ? なんだ生きてたのかよ、つまんねーな」
「……あん?」
唐突に背後から下品な声をかけられた。
「何だお前は?」
「誰に向かってそんな口聞いてんだ、あ?」
「比島! 君こそ一体江野君に何の用だ?!」
隣の席の黄畠が比島とかいう不良に向かって威嚇する。さすがは学級委員とでも言うべきか、この手の生徒には臆さないようだ。ちとステレオタイプのような気もしないでもないが。
「うるせえ! お偉い学級委員様なんざお呼びじゃねえんだよ。俺は今からこのアンラッキーな間抜け野郎にこの学校での礼儀ってやつを優しくも教えてやろうってんだ」
「ふざけたことを……! そう言って君は、またこの前のようにひ弱な生徒に因縁をつけて暴力を振るおうとしてるんだろう!」
「おいおい、俺がいつ暴力を振るったんだよ? つまらない言いがかりはやめてほしいもんだぜ」
比島が黄畠を嘲笑する。
なるほど、うちのクラスにもこんなどうしようもないのがいるのか。
仕方ない、あんまり騒がれるのも嫌だしここは穏便に事を収めるとしよう。
「まあまあ落ち着けよ黄畠。それでなんだ、比島? とかいったか? ご丁寧に礼儀を教えてくれるそうだが、具体的に何をして下さるのかな?」
「江野君!? 一体君は何を?」
「だから落ち着けって。ここは俺に任せておくれよ」
「ほう、江野ぉ。お前は案外素直じゃねえか。だったら次の休み時間に校舎裏まで面かしな、新入りのマナーをありがたくレクチャーしてやるよ。けっひゃっひゃ」
それだけいうと、下品な不良は元の席へと戻っていった。
しかしねぇ、嫌味を軽く飛ばしたはずなんだが、それに気づかないとは所詮その程度のおつむか。
「江野君、君は何を考えているんだ! あんな不良にわざわざ自分から突っかかっていくなんて!」
「向こうから勝手に因縁つけてきただけだ。大丈夫だって、軽くお話してくるだけさ」
「うぅむ……」
黄畠は納得のいかない顔で渋々と引き下がった。まあ、俺がこれからやろうとしていることを考えれば当然か。
チャイムと同時に担任が入って来て、入院していた俺についてクラスの軽く紹介。その後はつつがなく一時限目の教師とバトンタッチして授業が行われた。
体感二年のブランクがあって大変だったが、その度に黄畠に助けてもらって乗り越えられた。ま、あいつから見れば一か月意識不明だった人間を学級委員らしく面倒を見たってところだろうが。
そういう責任感のある奴は嫌いじゃないが、苦労しそうな性格だとも思う。
「え、ほんとかよ? 何年の何組の女だ?」
「そこまでは分からないけどさ、何故か男子の制服着てたってさ」
「へぇ男装の美少女ってか。俺そういうの好き」
早速俺の成果に盛り上がってるな。名乗り出るつもりはないが、こうしてひとつの悪が裁かれたと思うと気分がいい。
内心ほくそ笑んでいると隣の席から声をかけられた。
「君、そこの席に座ってるということは……君が入院していた江野君、で合ってるかな?」
声をかけてきたのは、きっちりとした身形の如何にも模範生徒といった感じの男だ。誰だったか? 体感で二年も経ってしまうとよく思い出せない。
「あぁ確かに俺は江野だが、誰だったか? ちょっと思い出せないんだよ」
「無理もない、君はこの学校に入学して十日も経たずに事故に遭ったんだ。それから一ヶ月も意識を失っていたんだから、クラスメイトの顔もよくわからないだろう」
俺はまだ高校一年生。
入学して間もないことに事故にあって入院。確かにこの境遇ならクラスの人間の顔を把握しなくても恥ずかしくはないか。
「僕はこのクラスの学級委員で、黄畠修禄という。困ったことがあるなら、遠慮なく頼ってほしい」
「ああ、じゃあ、その時が来たらよろしく頼む」
俺は軽く手を振って、適当な返事をした。
確かに頼るに越したことはないが、今のところは様子見だな。
授業が始まる前にスマホで時間を確認する。まだほんのちょっとだけ時間はあるがトイレに行くほどの余裕はないな。このままボーっと過ごさせてもらおうか。
「おいおい、お前が入学して早々病院送りされた江野って間抜けかぁ? なんだ生きてたのかよ、つまんねーな」
「……あん?」
唐突に背後から下品な声をかけられた。
「何だお前は?」
「誰に向かってそんな口聞いてんだ、あ?」
「比島! 君こそ一体江野君に何の用だ?!」
隣の席の黄畠が比島とかいう不良に向かって威嚇する。さすがは学級委員とでも言うべきか、この手の生徒には臆さないようだ。ちとステレオタイプのような気もしないでもないが。
「うるせえ! お偉い学級委員様なんざお呼びじゃねえんだよ。俺は今からこのアンラッキーな間抜け野郎にこの学校での礼儀ってやつを優しくも教えてやろうってんだ」
「ふざけたことを……! そう言って君は、またこの前のようにひ弱な生徒に因縁をつけて暴力を振るおうとしてるんだろう!」
「おいおい、俺がいつ暴力を振るったんだよ? つまらない言いがかりはやめてほしいもんだぜ」
比島が黄畠を嘲笑する。
なるほど、うちのクラスにもこんなどうしようもないのがいるのか。
仕方ない、あんまり騒がれるのも嫌だしここは穏便に事を収めるとしよう。
「まあまあ落ち着けよ黄畠。それでなんだ、比島? とかいったか? ご丁寧に礼儀を教えてくれるそうだが、具体的に何をして下さるのかな?」
「江野君!? 一体君は何を?」
「だから落ち着けって。ここは俺に任せておくれよ」
「ほう、江野ぉ。お前は案外素直じゃねえか。だったら次の休み時間に校舎裏まで面かしな、新入りのマナーをありがたくレクチャーしてやるよ。けっひゃっひゃ」
それだけいうと、下品な不良は元の席へと戻っていった。
しかしねぇ、嫌味を軽く飛ばしたはずなんだが、それに気づかないとは所詮その程度のおつむか。
「江野君、君は何を考えているんだ! あんな不良にわざわざ自分から突っかかっていくなんて!」
「向こうから勝手に因縁つけてきただけだ。大丈夫だって、軽くお話してくるだけさ」
「うぅむ……」
黄畠は納得のいかない顔で渋々と引き下がった。まあ、俺がこれからやろうとしていることを考えれば当然か。
チャイムと同時に担任が入って来て、入院していた俺についてクラスの軽く紹介。その後はつつがなく一時限目の教師とバトンタッチして授業が行われた。
体感二年のブランクがあって大変だったが、その度に黄畠に助けてもらって乗り越えられた。ま、あいつから見れば一か月意識不明だった人間を学級委員らしく面倒を見たってところだろうが。
そういう責任感のある奴は嫌いじゃないが、苦労しそうな性格だとも思う。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します
かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。
追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。
恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。
それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。
やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。
鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。
※小説家になろうにも投稿しています。
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる