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第5話 第二号の誕生
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そうしてやってきた休み時間。俺は先に教室を出て行った比島の背中を追って歩く。黄畠には心配されたが、仕方ない。
比島みたいな聞かん坊には、口で言い聞かせるより体に言い聞かせるほうが早いからな。
校舎裏へとたどり着くと、早速比島の野郎が因縁をつけてきた。
「おとなしくやってくるとは素直じゃねえか。どうなるかなんて分かりきってるのによぉ。結局てめえも間抜けってわけだ。ヒャッハッハ!」
「はいはい。……それで一体どのような礼儀を教えてくれるのかねぇ?」
いかにもなヤンキー台詞を吐いてくる比島。どこまでも見た目通りの野郎だな。はっきり言って呆れながらも聞き返した。どうせこの後の台詞も決まってるんだろうな。
「この学校でお前みたいな野郎がまっとうに生活したかったらな、分かんだろ? 上納金っていうのが必要だよなぁ? 一ヶ月五千円俺に渡せ。これでもクラスメイトだからって控えめにしてやってるんだぜ? これが他所のクラスのヤンキーや先輩だったら倍は取られてるところをそれだけで勘弁してやるってんだからよぉ。俺の優しさに感謝してさっさと出しな!」
……ふぅん、この学校の不良連中はそういうことをしてるんだな。予想通りかと思ったら、それだけは意外だった。
「はぁ……。仕方ないちょっと待ってろ。えーと財布財布」
制服の懐に手を突っ込む俺。その仕草を見て満足そうにゲスな笑いを浮かべる比島。
「あったあった。……ほら受け取れよ」
俺は財布から五千円を抜き取り、比島へ見せた。
「へへ、そうそう。そうやって素直にするのがこの学校で楽しくやっていく何よりのコツだぜ?」
勝手な事をほざきながら俺の手から金を受け取る。
「あっそうだ」
「あん? なんだよ? 何か文句でもあるってのか?」
「別に文句はないさ。ただ、お前女の好みは一体何だ? 背は高い方がいいのか?」
「あ? 決まってんだろ、チビよりグラマーの方が……」
――じゃあ、お前の罰はこれがいい。
奴が言い切るよりも早く、俺は左掌を比島に向ける。当然何をされているかもわからない比島。
だがその一瞬の後、見るに堪えない不良の姿は様変わり。
「あん? お前何をし、て……?」
そいつは高い声を発しながら、俺の顔を見上げていた。
「な、なんでお前そんなにデカく……!?」
「俺は変わんねえよ。ただ、強いて言うなら……お前の方が変わったかもしれないな?」
一瞬何を言われたのかもわかんなかったであろう比島、は! と自分の体を見渡して身にまとっていた制服がブカブカになり、腕なんて隠れるほどに小さくなっていたことに気づく。
「……ぁ。一体、お前何を……? 俺の体に!」
「さてな? 何のことだか……。そういえば変な病気が流行ってるとは聞いた事があるなぁ。あ、この五千円は返してもらうぜ? お小遣いが欲しかったらママのお手伝いでもするんだな」
比島の近くに落ちていた俺の五千円。それを拾って、比島を鼻で笑いながら校舎裏から去っていく。
屈辱的だろうな。ただでさえ見た目は女になるのに、それも好みとは全く違う小学生レベルなんだから。いや、おつむと釣り合いが取れてむしろバランスは良くなったか?
でもその手の人間からはとてつもなく好かれるだろうぜ? 実は男というおまけ付きだから、もしもって事にはならないだろうから安心しろよ。
二時限目の始業開始ギリギリ、俺はクラスにやってきて自分の席に着く。
「江野君、大丈夫だったのか? 比島はクラスでも一番の乱暴者だ。顔は……大丈夫なようだけれど、腹部を何回か殴られたりとか」
予想通り、黄畠が心配そうに声をかけてきた。こいつの目線から言えば、入院明けの生徒が不良に絡まれてひどい目に遭ったと見えるからな。性格上心配もするよな。
安心させるために、なんてことないように答えた。
「いやいや大丈夫だ。話せば意外とわかる奴だったよ。ただ、どうにも体調を崩してしまったようだ。今日はもう授業に出ないかもしれないな」
「そうなのか? 今朝見た時は元気に見えたが……。あんな人物でもクラスメイトだ、心配だな」
「問題ないと思うぞ。……さあそろそろ授業だ、またわからないところがあったら教えてくれ」
「ああ。それはもちろん、構わないが……」
若干渋い顔をしながら了承する黄畠。人が良いっていうのにも程があると思うがな。
でも、ま。俺だってそういう奴は嫌いじゃない。そういう奴と二年間過ごした大事な記憶があるからな。
比島みたいな聞かん坊には、口で言い聞かせるより体に言い聞かせるほうが早いからな。
校舎裏へとたどり着くと、早速比島の野郎が因縁をつけてきた。
「おとなしくやってくるとは素直じゃねえか。どうなるかなんて分かりきってるのによぉ。結局てめえも間抜けってわけだ。ヒャッハッハ!」
「はいはい。……それで一体どのような礼儀を教えてくれるのかねぇ?」
いかにもなヤンキー台詞を吐いてくる比島。どこまでも見た目通りの野郎だな。はっきり言って呆れながらも聞き返した。どうせこの後の台詞も決まってるんだろうな。
「この学校でお前みたいな野郎がまっとうに生活したかったらな、分かんだろ? 上納金っていうのが必要だよなぁ? 一ヶ月五千円俺に渡せ。これでもクラスメイトだからって控えめにしてやってるんだぜ? これが他所のクラスのヤンキーや先輩だったら倍は取られてるところをそれだけで勘弁してやるってんだからよぉ。俺の優しさに感謝してさっさと出しな!」
……ふぅん、この学校の不良連中はそういうことをしてるんだな。予想通りかと思ったら、それだけは意外だった。
「はぁ……。仕方ないちょっと待ってろ。えーと財布財布」
制服の懐に手を突っ込む俺。その仕草を見て満足そうにゲスな笑いを浮かべる比島。
「あったあった。……ほら受け取れよ」
俺は財布から五千円を抜き取り、比島へ見せた。
「へへ、そうそう。そうやって素直にするのがこの学校で楽しくやっていく何よりのコツだぜ?」
勝手な事をほざきながら俺の手から金を受け取る。
「あっそうだ」
「あん? なんだよ? 何か文句でもあるってのか?」
「別に文句はないさ。ただ、お前女の好みは一体何だ? 背は高い方がいいのか?」
「あ? 決まってんだろ、チビよりグラマーの方が……」
――じゃあ、お前の罰はこれがいい。
奴が言い切るよりも早く、俺は左掌を比島に向ける。当然何をされているかもわからない比島。
だがその一瞬の後、見るに堪えない不良の姿は様変わり。
「あん? お前何をし、て……?」
そいつは高い声を発しながら、俺の顔を見上げていた。
「な、なんでお前そんなにデカく……!?」
「俺は変わんねえよ。ただ、強いて言うなら……お前の方が変わったかもしれないな?」
一瞬何を言われたのかもわかんなかったであろう比島、は! と自分の体を見渡して身にまとっていた制服がブカブカになり、腕なんて隠れるほどに小さくなっていたことに気づく。
「……ぁ。一体、お前何を……? 俺の体に!」
「さてな? 何のことだか……。そういえば変な病気が流行ってるとは聞いた事があるなぁ。あ、この五千円は返してもらうぜ? お小遣いが欲しかったらママのお手伝いでもするんだな」
比島の近くに落ちていた俺の五千円。それを拾って、比島を鼻で笑いながら校舎裏から去っていく。
屈辱的だろうな。ただでさえ見た目は女になるのに、それも好みとは全く違う小学生レベルなんだから。いや、おつむと釣り合いが取れてむしろバランスは良くなったか?
でもその手の人間からはとてつもなく好かれるだろうぜ? 実は男というおまけ付きだから、もしもって事にはならないだろうから安心しろよ。
二時限目の始業開始ギリギリ、俺はクラスにやってきて自分の席に着く。
「江野君、大丈夫だったのか? 比島はクラスでも一番の乱暴者だ。顔は……大丈夫なようだけれど、腹部を何回か殴られたりとか」
予想通り、黄畠が心配そうに声をかけてきた。こいつの目線から言えば、入院明けの生徒が不良に絡まれてひどい目に遭ったと見えるからな。性格上心配もするよな。
安心させるために、なんてことないように答えた。
「いやいや大丈夫だ。話せば意外とわかる奴だったよ。ただ、どうにも体調を崩してしまったようだ。今日はもう授業に出ないかもしれないな」
「そうなのか? 今朝見た時は元気に見えたが……。あんな人物でもクラスメイトだ、心配だな」
「問題ないと思うぞ。……さあそろそろ授業だ、またわからないところがあったら教えてくれ」
「ああ。それはもちろん、構わないが……」
若干渋い顔をしながら了承する黄畠。人が良いっていうのにも程があると思うがな。
でも、ま。俺だってそういう奴は嫌いじゃない。そういう奴と二年間過ごした大事な記憶があるからな。
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