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第6話 再開する旧友
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「おい聞いたか? 小学生ぐらいの女の子が男子生徒の服を着ながら泣きしゃくってたらしいぜ」
「え、ほんとかよ? わけのわからないシチュエーションだな。しかし何でまた?」
「そこまでは分からないけどさ。ただ、俺は比島だ! とか何とか言ってたみたいだ」
「比島? あいつに妹でもいたのか。しかし俺っ子かぁ……へぇ」
「う、うん?」
そんな会話を聞く昼休み。下手人が俺である事をしゃべる必要は無いし。言っても誰も信じないだろうし。
さてと飯にするか。鞄から弁当を取り出し、机に置いてさあ食べようとした時だ。
「おい耀司! お前、耀司だろ!」
急に俺の名前を呼んで近づく妙に高い声が一人。どこかで聞いたようなそうでもないような。誰だ?
顔を上げてみると、そこには見覚えのある男子生徒がいた。
こいつは確か……。
「おい忘れたぁ? 俺さ! 中学のクラスメイトの」
……ああそうだ、確か阿佐谷東助。そんな奴が頭の端に引っかかった。
中三の頃のクラスメイト。と言っても普段交流があった訳でもない、本当にクラスの一員として偶に会話する程度の関係だ。グループが違ったからな。
この男は容姿が中性的で、その上に明るい性格もあってか友人が多く、教師の覚えも良かったはず。
まさか同じ学校に進学していたとは。それもこのクラス。
「ああ、久しぶりだな。阿佐谷、お前もここに通ってたのか」
「東助でいいぜ? 同じ中学の好だろ」
「そうか、じゃあその内。……で? 一体何の用だ?」
わざわざ話しかけて来たという事は何か用があるんだろう。
高校でも同じクラスになっていたんだとたった今気づいた薄情な俺だ。二年間別の場所に居たとは言え、思い出せもしなくなっていた失礼な奴に話し掛けるなんて、余程の用に違いない。
「別にそんな大した用じゃないんだけださ」
「え? あ、そう……」
余程の用は無いらしい。じゃあ何なんだ?
「ついさっきやっとお前の事を思い出してさ。俺も失礼な奴だよなぁ。で、そのお詫びも兼ねて親交を深めようと思って」
「そ、そうか。……失礼なのはお互い様だと思うが」
「何か言った?」
「いや別に。しかしなんだな、高校上がって一か月以上経ってるってのに今更こんな会話するなんて、思ってもみなかったよ」
「お前はこの一か月入院してたじゃん? 気にすんなって!」
中学の頃は碌に話した事が無かったが、この男はこんなにグイグイ来る奴だったのか。しかし、まあ。こうして話しかけてくるという事は悪い奴ではないんだろう。
せっかくだし、こいつと仲良くしておくのもいいかもしれないな。
俺の机に弁当を二人で広げ、膝を突き合わせて食べることにした。
隣の席の黄畠は委員の用だなんだで、昼休みに入るとすぐに教室を出て行ってしまった。隣同士だし、勉強面で助けてもらうためにも色々と仲良くしておこうと思ったが……それは次の機会でもしよう。
「そういや耀司さ。お前、比島に絡まれてたけど大丈夫だったのか? 呼び出されてたみたいだし」
「ああ、そのことか。いやなに、きっちり話をつけたら分かってくれたぞ。もし次会っても別人のように変わってることだろう」
「お! もしかしてお前って結構ワルか?」
「俺が? まさか。ただ、荒っぽい事にはちょっとばかり慣れてるってだけ」
「とすると、もしかして事故で入院っていうのも……」
「いや、そのことに関しては本当に事故で入院だから」
家から持ってきた弁当のおかずを食べながら、そんな会話をする。時折、阿佐谷が俺の弁当に興味を示していた。今後、もしかしたら何かしらで助けてもらうことがあるかもしれないという事でちょっとした賄賂感覚でおかずを分けるなどして、ごく一般的な高校生としての友人との食事を終えるのだった。
こういう日常ってのを感じると、いよいよ持ってこっちに戻って来れたという実感が沸くな。
「さてと、ちょっと便所にでも行ってくるわ。……あ、そうそう。お前は入学早々に入院してたからよく知らないと思うけど、この学校で意外と不良が多いんだよな。変な因縁つけられないように気をつけろよ」
「ああ、そうさせてもらうさ」
ありがたい忠告をして、阿佐谷は空の弁当箱を持って席を離れる。
今朝も気弱そうなのが絡まれてたしな。この高校は進学校じゃないし、その手の連中がいても別におかしくはない。俺だって別に積極的にヤンキーに喧嘩を売りたいとかそんなことは考えてない。ただこれから先の高校生活、そんな連中のせいで不快な思いをするんであれば制裁だって必要だろう。
残念なことに物事というやつは、何事も話し合いで解決したりするわけじゃないんでね。時には分かりやすい見せしめだって必要だろう。
……というのが、俺が異世界で学んだ経験である。元勇者パーティーの人間がそれでいいのかと思わないでもないが、当初、碌な戦闘能力を持たなかった俺だからこそ汚れ役を買って出る必要があった。そのことは今も後悔していない。
「さてと、昼寝でもするか」
ゆっくりとそういう時間を取れる、これもこっちに戻ってきたからこそだな。
「え、ほんとかよ? わけのわからないシチュエーションだな。しかし何でまた?」
「そこまでは分からないけどさ。ただ、俺は比島だ! とか何とか言ってたみたいだ」
「比島? あいつに妹でもいたのか。しかし俺っ子かぁ……へぇ」
「う、うん?」
そんな会話を聞く昼休み。下手人が俺である事をしゃべる必要は無いし。言っても誰も信じないだろうし。
さてと飯にするか。鞄から弁当を取り出し、机に置いてさあ食べようとした時だ。
「おい耀司! お前、耀司だろ!」
急に俺の名前を呼んで近づく妙に高い声が一人。どこかで聞いたようなそうでもないような。誰だ?
顔を上げてみると、そこには見覚えのある男子生徒がいた。
こいつは確か……。
「おい忘れたぁ? 俺さ! 中学のクラスメイトの」
……ああそうだ、確か阿佐谷東助。そんな奴が頭の端に引っかかった。
中三の頃のクラスメイト。と言っても普段交流があった訳でもない、本当にクラスの一員として偶に会話する程度の関係だ。グループが違ったからな。
この男は容姿が中性的で、その上に明るい性格もあってか友人が多く、教師の覚えも良かったはず。
まさか同じ学校に進学していたとは。それもこのクラス。
「ああ、久しぶりだな。阿佐谷、お前もここに通ってたのか」
「東助でいいぜ? 同じ中学の好だろ」
「そうか、じゃあその内。……で? 一体何の用だ?」
わざわざ話しかけて来たという事は何か用があるんだろう。
高校でも同じクラスになっていたんだとたった今気づいた薄情な俺だ。二年間別の場所に居たとは言え、思い出せもしなくなっていた失礼な奴に話し掛けるなんて、余程の用に違いない。
「別にそんな大した用じゃないんだけださ」
「え? あ、そう……」
余程の用は無いらしい。じゃあ何なんだ?
「ついさっきやっとお前の事を思い出してさ。俺も失礼な奴だよなぁ。で、そのお詫びも兼ねて親交を深めようと思って」
「そ、そうか。……失礼なのはお互い様だと思うが」
「何か言った?」
「いや別に。しかしなんだな、高校上がって一か月以上経ってるってのに今更こんな会話するなんて、思ってもみなかったよ」
「お前はこの一か月入院してたじゃん? 気にすんなって!」
中学の頃は碌に話した事が無かったが、この男はこんなにグイグイ来る奴だったのか。しかし、まあ。こうして話しかけてくるという事は悪い奴ではないんだろう。
せっかくだし、こいつと仲良くしておくのもいいかもしれないな。
俺の机に弁当を二人で広げ、膝を突き合わせて食べることにした。
隣の席の黄畠は委員の用だなんだで、昼休みに入るとすぐに教室を出て行ってしまった。隣同士だし、勉強面で助けてもらうためにも色々と仲良くしておこうと思ったが……それは次の機会でもしよう。
「そういや耀司さ。お前、比島に絡まれてたけど大丈夫だったのか? 呼び出されてたみたいだし」
「ああ、そのことか。いやなに、きっちり話をつけたら分かってくれたぞ。もし次会っても別人のように変わってることだろう」
「お! もしかしてお前って結構ワルか?」
「俺が? まさか。ただ、荒っぽい事にはちょっとばかり慣れてるってだけ」
「とすると、もしかして事故で入院っていうのも……」
「いや、そのことに関しては本当に事故で入院だから」
家から持ってきた弁当のおかずを食べながら、そんな会話をする。時折、阿佐谷が俺の弁当に興味を示していた。今後、もしかしたら何かしらで助けてもらうことがあるかもしれないという事でちょっとした賄賂感覚でおかずを分けるなどして、ごく一般的な高校生としての友人との食事を終えるのだった。
こういう日常ってのを感じると、いよいよ持ってこっちに戻って来れたという実感が沸くな。
「さてと、ちょっと便所にでも行ってくるわ。……あ、そうそう。お前は入学早々に入院してたからよく知らないと思うけど、この学校で意外と不良が多いんだよな。変な因縁つけられないように気をつけろよ」
「ああ、そうさせてもらうさ」
ありがたい忠告をして、阿佐谷は空の弁当箱を持って席を離れる。
今朝も気弱そうなのが絡まれてたしな。この高校は進学校じゃないし、その手の連中がいても別におかしくはない。俺だって別に積極的にヤンキーに喧嘩を売りたいとかそんなことは考えてない。ただこれから先の高校生活、そんな連中のせいで不快な思いをするんであれば制裁だって必要だろう。
残念なことに物事というやつは、何事も話し合いで解決したりするわけじゃないんでね。時には分かりやすい見せしめだって必要だろう。
……というのが、俺が異世界で学んだ経験である。元勇者パーティーの人間がそれでいいのかと思わないでもないが、当初、碌な戦闘能力を持たなかった俺だからこそ汚れ役を買って出る必要があった。そのことは今も後悔していない。
「さてと、昼寝でもするか」
ゆっくりとそういう時間を取れる、これもこっちに戻ってきたからこそだな。
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