運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと

文字の大きさ
18 / 31

第18話 逃げ先

しおりを挟む
 あの時、俺はまさかこうなるとは思っていなかった。

 ……

 …………

 棚見が信じられないものを見るような目で俺の手を凝視ししていた。
 気になって俺も目を向けると――両方の手にルビーが収まっていたのである。

「な、何だこれは!? 一体どうして……?」

「あ、分かった! これが香月くんの力なんだってば。石に変えれ~って思ったんじゃない? だからそれがそうなったんだよ。……あれ? ところでどっちが本物だっけ?」

「右手の方だ。でもしかし……」

(俺の能力は、やっぱりボロボロの武器を元に戻すだけじゃなかったのか)

 もしそれだけなら汎用性があまりに無いと思っていたが……。
 もし、これが今俺の考えている通りの力なら――とんでもない幅があるぞ。

「おい、俺達逃げ切れるかもしれんぞ!」

「やったじゃん! やっぱ香月くんスゲー!」

「おい抱き着くな馬鹿!」

 …………

 ……

 あの後そこら中の石を偽物ルビーに変えたおかげか、大分走ったのに追って来る様子が無い。今頃混乱しているころだろう。

「これで何とか逃げ切れるかな?」
「分からない。だけどあのまま殺されるのを待つよりはマシだ」

 再び松明を燃やしたおかげで辺りがしっかりと確認出来る。
 その際そこら辺の小石を拾っては偽物に変えて、そこら中に投げる。走って来た目印にならないように分岐した道の先にも投げつけるのを忘れない。

 しかし困ったことがある。走り続けながら能力を行使したせいか、尋常じゃなく疲れているのだ。

「はぁ……ぁっ……はぁ……。そ、そろそろ出口が見えてもいい頃だろう。全然見えてこないけれど」

「これ、もしかしなくてもさ……」

「やめてくれ! ただでさえ疲れ切ってるのに、その可能性を否定させてくれよ」

「そうは言ってもやっぱり……オレ達迷子になってるんじゃない?」

 疲れが溜まっている上に、道に迷ってしまった。
 ピンチから切り抜けたと思ったら、結局まだピンチなんてそんな。

 せめて……せめてどこか奴らにバレずに一息つける場所はないか?
 奴らから逃げ切れている訳でもないこの状況で何をとも思うが、このままでは俺の身が持たない。

 焦る気持ちで走り回り、何か手はないかと考えながらも何も思いつかない。

「ああ、どうすれば……」

「とりあえずさ、そこの道。奥の方まで行ってみない? どこに繋がってるかわかんないけど、一息つくぐらいはできるんじゃないかな」

 脇道を指さす棚見。
 その先は暗がりが広がって松明の光も届かない。
 ベストな選択かどうかは悩むところだが、このまま闇雲に走り回るよりはいいのかもしれん。

 俺は今いる道の先の方に向けて偽物ルビーを投げる。これで誘導されて向こうに方に行ってくれればいいなと祈りながら、俺達は脇道を移動し始める。

 しかしこの道、結構続くもので。


 そこそこの時間を歩き続けたものの、行き止まりが見えない。

 幸いなことに背後に気配を感じないから、このまま道を進むことにするが。

「しっかし災難だね、まっさか美人のお姉さん達に追いかけられることになってさ。香月くん的には逆ナンなら喜んだ感じ?」

「何だよそれ? 逆ナンされた経験が無いから分からん。……されても困ってただろうけど」

「うん?」

「そもそもそんな友好的な追いかけっこじゃないんだ。殺されない為には出口を目指さないと」

「別の出口があればいいんだけどね~。無いかな?」

「さぁな。あればいいが……あんまり期待はしない方がいいだろ。無かったら心理的に疲れる」

「まあ、そうなんだけどね。あ、突き当たりが見えてきたぜ。やっぱ外には出られそうにないなぁ」

 小声で会話をしながら進むこと数分。ついに道の終わりが姿を現した。
 後はここまで追ってこない事を祈りながら休憩するだけだ。

 時間はあまり取れない。どのみちここから脱出できなければ俺達は死ぬのだから。
 それでも心臓の音が落ち着く時間も取れないなら、いずれ追い付かれた事だろう。どれだけ気持ちが逸ろうと肉体は追いついていかないのだ。

「ふぅ……。香月くんも水飲んだら?」

「そうだな」

 そう言われて水筒を取り出し、棚見と同じように喉を潤して息をつく。
 このシンプルな動作にある程度の落ち着きが生まれたようだ。さっきほどの焦りは無い。
 問題は、ただでさえ疲れが残った足を酷使したせいでかなり辛い事だ。

(やっぱり一休みする選択は間違ってなかった。この足じゃそう遠くないうちにゲームオーバーだったろう)

 焼けるように熱い痛みが足全体を覆う。せめて溜まった熱を逃がす時間だけでも確保出来たらいいが。

「でもま、いざとなったら任せてよ。オレが香月くんおんぶしてめっちゃ走ってあげるからさ」

「それじゃあ共倒れする可能性が高いだろ。……気持ちだけは受け取ってやる」

「素直じゃないよね~」

 茶化して来る棚見の声にどこかで心理的な軽さを感じてしまう。
 狙ってやったのか? いや、まさかな。

 右手に握り込んだ本物のルビーを見る。いやこれがルビーとしての本物かどうかは知らんが。

 こんなものの為に追いかけられなきゃならんとは。とっとと手放したいが、炭鉱を出るまではむやみに扱うことも出来ない。

「しかし、宝石の輝きというものは確かに惹かれるものがあるな」

「でしょ? やっぱ綺麗な物っていいよね。オレもアクセでいくつか持ってるよん。ま、本物じゃなくてイミテなんだけどさ。ほら、学生の懐事情じゃ、ね?」

「ふん。ま、こういうものはお前の方が慣れてるんだろうな。俺よりはお似合いだ」

「宝石が似合うって? あ、そういう台詞は女の子的にはアリよりのアリめなんだけど……これがテッパンの文句にはならないんだよね。覚えておくといいぜ」

「そんな口説き文句を言う機会は無いさ、これからもな。しっかし、ほんとに光が……さっきより強くなってないか?」

「え?」

 そうだ、ルビーの放つ光が心なしか増していってるような……。

 次の瞬間だった。

「な!?」

「お!」

 ルビーが輝きを増し、一筋の光となって突き当たりを差す。
 するとその光を中心に穴のようなものが出来て、広がっていった。
 明らかに向こう側の空間が出来てしまったのだ。

「こ、これは一体……?」

「やったじゃん! こりゃラッキーだべ。オレ達の運も捨てたもんじゃないね!」

 喜ぶ棚見とは対照的に俺自信は素直には歓迎出来なかった。
 どう見ても穴が怪しすぎる。穴の先に何があるのか……。

 しかし、いつ奴らに発見されるかも分からない状況だ。選択肢は無い。とりあえず、この穴の向こう側に何があるかを確認するとしよう。

「ここは慎重に――」

「ほらほら行こうよレッツゴー!」

「おいちょっと待て!?」

 腕を引っ張られる形で、思いっきり飛び込む羽目になってしまった。

 謎の空間に飛び込んだ俺達。幸か不幸か、背後の穴は塞がり始めていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

神子の余分

朝山みどり
BL
ずっと自分をいじめていた男と一緒に異世界に召喚されたオオヤナギは、なんとか逃げ出した。 おまけながらも、それなりのチートがあるようで、冒険者として暮らしていく。 途中、長く中断致しましたが、完結できました。最後の部分を修正しております。よければ読み直してみて下さい。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐
BL
*あらすじを改稿し、タグを編集する予定です m(_ _)m後からの改稿、追加で申し訳ございません (>_<)  社交界での立ち回りが苦手で、よく夜会でも失敗ばかりの僕は、いつも一族から罵倒され、軽んじられて生きてきた。このまま誰からも愛されたりしないと思っていたのに、突然、ろくに顔も合わせてくれない公爵家の男と、婚約することになってしまう。  だけど、婚約なんて名ばかりで、会話を交わすことはなく、同じ王城にいるはずなのに、顔も合わせない。  それでも、公爵家の役に立ちたくて、頑張ったつもりだった。夜遅くまで魔法のことを学び、必要な魔法も身につけ、僕は、正式に婚約が発表される日を、楽しみにしていた。  けれど、ある日僕は、公爵家と王家を害そうとしているのではないかと疑われてしまう。  一体なんの話だよ!!  否定しても誰も聞いてくれない。それが原因で、婚約するという話もなくなり、僕は幽閉されることが決まる。  ほとんど話したことすらない、僕の婚約者になるはずだった宰相様は、これまでどおり、ろくに言葉も交わさないまま、「婚約は考え直すことになった」とだけ、僕に告げて去って行った。  寂しいと言えば寂しかった。これまで、彼に相応しくなりたくて、頑張ってきたつもりだったから。だけど、仕方ないんだ……  全てを諦めて、王都から遠い、幽閉の砦に連れてこられた僕は、そこで新たな生活を始める。  食事を用意したり、荒れ果てた砦を修復したりして、結構楽しく暮らせていると思っていたのだが…… *残酷な描写があり、たまに攻めが受け以外に非道なことをしたりしますが、受けには優しいです。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

処理中です...