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第5話 救う女
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人々の強欲が渦巻くこの場所には、実に多くの感情の起伏があります。
ドロドロと勝利と敗北に喘ぐ様は、まさしく人間という生き物の性がこれでもかと発現され消費されて……跡形もなく散って行く。
「ははっ! やった! 俺は天才だ!!」
「いやあっ!? そ、そんな! 私のお金、私のお金がっ!?」
「ふふ、実に……ぶ・ざ・ま」
幼い頃に過ごした修道院よりも醜く人間がらしさを現す場所があるなどと、旅をするまで知りませんでした。
わたくしが聖職者になった理由を思い出してなりません。
人というものの頭蓋の奥には、愚かさで満たされた脳があるのだと。
救い難きものを救うふりをする。ただそれだけで尊敬を集め、地位を高める事が出来るなんて。
これぞわたくしの天職……!
「しかし……ふふっ。あの時のあの方の絶望に満ちた顔、あれほどの逸材は流石に見れませんか。まあよいでしょう」
かつてのわたくしの仲間。
出来損ないのサポーターでいらした方。
ちょっと褒めさえすれば馬車馬もかくやという働きを見せた方。
あの方からは本当に、人の一生の儚さを教えていただきましたわ。
「こんな事を思い出すなんて、酔った証拠でしょうか? まだ一杯しか飲み干してはいないのですが……。この空気に当てられたのでしょうかね」
ああ。今は大変に気分が良い。
それからもまた一杯、そしてまた一杯と。
普段のわたくしからは想像も出来ない程にはしたなくお酒を嗜んでしまいました。
――そうか、そういう女だったんだな……――
お店から出て夜風に当たり、ホテルへと戻ろうとする帰り道。
「あら?」
気付けば周りに人陰が無く、さて何処ぞへと迷いこんでしまったのでしょうか。
ですが、酔ったとはいえ頭の働きを急速に衰えさせる程ではありません。
暴漢の類が現れようと、むしと返り討ちにして神の道を説いて差し上げるくらいは……。
「おかしい、と思わないか? いくら夜でも、こんな賑やかな街に人が一人もいない通りがあるなんてな」
「……え?」
不意に聞こえてきたのは、どこかで聞いた男性の声。どこで……?
背後から話し掛けたその人物へ向けて振り返った時――。
「――っ!!?」
「ここまで生臭い尼ってのは普通、破門だよな? 悪趣味な聖職者に下す罰は――あの世で神に裁かれる事だと思わないか?」
振り返った時、わたくしの体を何かが貫いて。
それが”あの方”の拳だと気づいた時、何故と分からないまま、内側から身を焼かれる思いを一瞬した後に見下ろしてくる瞳を最後に……――。
「まずは一人。次は――お前だっ」
ドロドロと勝利と敗北に喘ぐ様は、まさしく人間という生き物の性がこれでもかと発現され消費されて……跡形もなく散って行く。
「ははっ! やった! 俺は天才だ!!」
「いやあっ!? そ、そんな! 私のお金、私のお金がっ!?」
「ふふ、実に……ぶ・ざ・ま」
幼い頃に過ごした修道院よりも醜く人間がらしさを現す場所があるなどと、旅をするまで知りませんでした。
わたくしが聖職者になった理由を思い出してなりません。
人というものの頭蓋の奥には、愚かさで満たされた脳があるのだと。
救い難きものを救うふりをする。ただそれだけで尊敬を集め、地位を高める事が出来るなんて。
これぞわたくしの天職……!
「しかし……ふふっ。あの時のあの方の絶望に満ちた顔、あれほどの逸材は流石に見れませんか。まあよいでしょう」
かつてのわたくしの仲間。
出来損ないのサポーターでいらした方。
ちょっと褒めさえすれば馬車馬もかくやという働きを見せた方。
あの方からは本当に、人の一生の儚さを教えていただきましたわ。
「こんな事を思い出すなんて、酔った証拠でしょうか? まだ一杯しか飲み干してはいないのですが……。この空気に当てられたのでしょうかね」
ああ。今は大変に気分が良い。
それからもまた一杯、そしてまた一杯と。
普段のわたくしからは想像も出来ない程にはしたなくお酒を嗜んでしまいました。
――そうか、そういう女だったんだな……――
お店から出て夜風に当たり、ホテルへと戻ろうとする帰り道。
「あら?」
気付けば周りに人陰が無く、さて何処ぞへと迷いこんでしまったのでしょうか。
ですが、酔ったとはいえ頭の働きを急速に衰えさせる程ではありません。
暴漢の類が現れようと、むしと返り討ちにして神の道を説いて差し上げるくらいは……。
「おかしい、と思わないか? いくら夜でも、こんな賑やかな街に人が一人もいない通りがあるなんてな」
「……え?」
不意に聞こえてきたのは、どこかで聞いた男性の声。どこで……?
背後から話し掛けたその人物へ向けて振り返った時――。
「――っ!!?」
「ここまで生臭い尼ってのは普通、破門だよな? 悪趣味な聖職者に下す罰は――あの世で神に裁かれる事だと思わないか?」
振り返った時、わたくしの体を何かが貫いて。
それが”あの方”の拳だと気づいた時、何故と分からないまま、内側から身を焼かれる思いを一瞬した後に見下ろしてくる瞳を最後に……――。
「まずは一人。次は――お前だっ」
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