人が折角パーティーの中核を担っていたのに、それを一方的に追い出した勇者。間違っていたと気付くも後の祭り ~とかいう都合の良いたわけた妄想~

こまの ととと

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第1話 浪漫を掴むゼ!

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『デっカい事こそが良い事に決まってんだろうがテメェらァッ!!!』

 ~自称、不当解雇されてしまった追放者:E氏による魂の主張~

「いいか聞け! よく聞けテメェらッ!! 昨今、巷じゃあやれ貧乳だやれ無乳だと崇め奉るような連中も珍しくなくなったこの情勢がっ、いかに危険かわかってんのか?! 旧来の原初たる巨乳派閥がその発言権を抑え込まれようとしているんだぞ!!? しかも、しかもだっ。声高々に叫ぼうものなら批判を食らい、その息の根を止めんとするまで罵倒を続ける層が幅を利かせて大らかさが失われ始めているこの現代ッ!! 俺はこのままではいかんとっ、いかんと立ち上がらねばならんのだからならんのだッ!!! もうそうなってしまっているんだよ!! テメェらも志を同じくする徒であるならば、黙って俺の後ろを走れッ! 死なば諸共にィ! 玉砕してもその果ての栄光の礎となれ! それがァッ――」

 ――男ってもんだろォがァーーッ!!! 拳を突き上げて、渾身の魂の叫び。
 演説を締め括ると同時に、会場からは男達の割れんばかりの歓声が巻き起こった。

 女の目線なんか知った事かッ! 俺は魂から叫びたかったんだ!!

 場所は街の中央広場。
 時刻は朝十時。
 俺は壇上でマイク片手に熱弁を振るっていた。
 それもこれも昨日の宿屋での出来事が原因だった。


 回想、始めッ!!

「エレトレッダ。キミをこのパーティーから追放する」

 そんな事をほざくのは、俺の幼馴染。ショートのオレンジ髪のティリート。
 身長もあり、甘いマスクで世の淑女の見覚えがムカつく程良いエリート剣士だ。

 傍から見たら、飽くまでも傍から見た評価として月とスッポンの差があるらしいコイツと俺は同じパーティーに所属する。

「テんメェ、一体どうゆう了見でこの俺を追い出そうってんだ。あああん!!?」

「いいかい? 一度だけ言うから良く聞くんだ。ボク達はね、自惚れるわけでは無いけど王と国民からも期待されているパーティーなんだ。当然、求められるのは単なる戦力だけじゃない。それだけじゃ許されない程に有名になってしまったんだ。分かるね?」

 まるで、子供にでも言い聞かせるように、女を即落ちさせる甘い声で語りかける。

 こいつはいつもそうだ。まるで俺の事を出来の悪い生徒かのようにしか扱わない。そのキザったらしい態度が昔から気に入らない。

 大体このパーティーだって、元々はコイツに誘われたから仕方なーく入ってやったんだぜ?
 それがどうだ? 出て行けだぁ? このヤロウ、俺を舐めくさりやがって!

 俺の心情を知らないヤロウは、構わず続ける。

「つまるところ、品性だよ。キミとくれば、旅先に美しい女性、それも胸の大きい女性を見ればすぐに口説きにかかる。挙げ句の果てにはフラレてもめげずにストーキングする始末。その苦情を真っ先に受けるのは誰だと思ってるんだい? 外でもないボクじゃないか」

「そりゃリーダーとしての仕事だろ? 団員のケツを拭くのも立派なリーダーの条件だ。俺はお前にその経験を積ませてやってるんだよ。感謝しろい」

「そうかいそうかい。それは済まなかったね、余計な手間を掛けさせてしまって! しかしだ、現実問題として苦情が入っている以上、キミをこのままにしておく訳にもいかない。他の団員にも示しがつかないからね。大体他の団員だってみんな女性だよ? 周りからの目をもう少し気にするべきじゃないのかい?」

 何言ってやがる。他の団員つったって……。

「全員貧乳だろうが。お前の趣味か知らねぇが、どっちが前か後ろ分かんないような鉄板女ばっかり集めやがって。そのうっ憤を外で発散しようってんだから止めるんじゃねぇっての!」

「……今の暴言は聞かなかった事にしておいてあげる。でもね? 迷惑しているんだよみんな。これ以上は限界だ。剣士としての役割もボクと被っているし、キミとしてもちょうどいい時期だろう」

 役割が被ってるだって、そんなの分かってて誘ったクセにコイツ!

「ここ出て行ったら俺はどうなる? このパーティーのブランドがあったから女との縁もあったのに、それが無くなったらただの不審者として通報されかねねェだろうがよォ!!」

「自覚はあったんだなぁ。……いや、普通にさ。その性格を治しなよ。それにボクだって鬼じゃないんだ。路頭に迷う事がないようにちゃんと故郷の母君にも連絡を入れておくから、帰って畑の面倒を見ておくといい。ボクも故郷に戻った後、キミの成長を楽しみにしておくからさ」

 冗談じゃない。また、母ちゃんに小遣い|ねだりながら畑に桑を突き立てる日々に戻れって言うのかコイツは! それに、俺の成長は俺が決めるもんであってテメェのお楽しみじゃねえんだよ!!

「ケ、お断りに決まってんだろ! 今更イモ臭い生活なんて御免だね。折角田舎を飛び出してきたんだ、色っぽい姉ちゃんとまともに遊ぶ事も無く戻れるものかよ!!」

「もう、いつまでもそういう了見だからキミを追い出さなくちゃならなくなったんだ」

 知ったことかってんだ! 俺はこういう男で、生き様なんだ。変わりゃしないんだよ!
 ……うし、決めた!! 温厚な俺も怒った!!

「ただね、キミがどうしてもこのパーティーを出て行きたくないと言うのであれば、今直ぐ心を入れ替えてボクの指導を受けるんだ。そうしたら他のメンバーとの仲も取り次ぐよ。大体、胸の大きい女性を追いかけるのを止めてもっと身近な……、た、例えばずっと昔からキミとの関係を「そこまで言うならこんなパーティー出ていってやらァ!! 後で吠え面かくんじゃねえぞッ!!」あ、ちょっと!!?」

 ヤロウが何か言っていたような気がするが、それに構わず俺は出ていった。
 こうなりゃ俺も男だ! 身ィ一つで成り上がってやらァ!!


 回想、終了ッ!!

 女共のトゲを刺すような視線に見送られながら、広場を後にする俺。

 もちろん、パーティーに戻るつもりは毛頭ない。
 俺は胸の大きい女が好きなんだ。それなのに勝手に勘違いしてくれた団員共に、俺の好感度はダダ下がり。
 所詮奴らは”持たざる者”。

 さて、これから先のことを考えねばならないが、まずは俺の今後についてだ。

 俺は浪漫を愛している。

 当然だろう? 俺は一人の男だ。男という性に生まれ、浪漫を捨てて生きられるのか。否。断じて否なのだ。
 そう、男という生き物は夢を追い求めなければ生きていけない哀しき生物……。

 浪漫――。
 一口に浪漫と言ってもいろいろあるだろう。冒険に情熱を燃やすのも、武芸を極めるのも、はたまた技術に命を懸けるものもいい。

 だが、そもそも浪漫の原点とは何だ?
 哲学的で答えを出すのに膨大な時間が求められる問いだろう。
 だが、だがであるっ。俺はそれでも一つの答えをだした。

 俺は、人間だ。生まれた時には母親の胸で育てられた。

 そう胸。おっぱいだ!

 赤子として生を受け、その味を堪能しなかった男なんてそうそういるもんじゃない! つまりだっ、おっぱいこそが原初の浪漫。男の浪漫の原点であり究極形と呼んで間違いなどあろうはずがないッ!!

 何? 女だって生まれた時は飲んでるだろう? うるせえ!!

 この世に生誕してかれこれ十数年。
 ……まぁ、それは置いといて。
 とにかく、俺にとって最大の浪漫とは女の胸に抱かれて眠ることなのだ。
 異論は認めよう。断固として認める。


 そいつが貧乳派閥でなかったらなァ!!!! 
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