素人配信者さん、初回でうっかり伝説級の大バズりを披露してしまう(願望)~あれ? モンスターってS級でもこんなものなの?(他人任せ)~

こまの ととと

文字の大きさ
8 / 11

第8話 凄絶たる勝利の一撃。そしてタイトルの回収

しおりを挟む
「という事なんで、どうか皆さん宜しくお願ぇしやす」

<しょうがないなぁ。でもここまで深く視聴者が参加出来る配信なんて他に知らないのも事実なんだよね>

<君の配信でしか経験出来ないのなら、強力するのも悪くないか>

<しゃあない、みんなでお前に投げ銭したるわ> 

<俺達の手で、あのモンスターを倒すんだ!!> 

<任せろ、俺達がお前を守ってやる!!>

<頑張れよ、治郎!!>

<負けるな治郎!!>

<男を見せろよ治郎!!>

 …………。

「で、ですからね? そんな治郎治郎って本名を言わず、ちゃんと配信用に名前を用意してるのだからそっちの方で呼んで頂けないかなぁって」

<そんな事はどうでもいい。さっさとドローンの操縦権を渡せ>

 えぇ、そんな事って……。
 でも、もう課金を終えたのか。思った以上に速かったな。

「あ、ありがとうございまぁす! では早速……。ドローン! セミマニュアルモォォォドッ!!」

<いや、そんなカッコつけるような事じゃ無いと思うけど……>

 でもこういうのは叫んだ方がカッコいいじゃん?

 という訳で、ドローンの操縦を一番課金してくれた視聴者に渡して、俺は再び長谷山の加勢に戻る事にした。
 さすがにあの野郎、額に汗が浮かんでやがる。とっとと決めないと体力が尽きるなありゃ。

「大丈夫か長谷山?! 俺に一つ考えがあるんだ。とにかく今のまま頑張ってくれ、隙が出来しだい俺が合図を出すそうしたら一気に離れるんだ」

「それだけでいいの? よくわからないけど分かった君を信じるよ!」

 おうおう信じてくれよ。そうすりゃあお前にも勝利っていう甘い汁を吸わせてやるからよ。へっへっへ。

 それから先は長谷山が切り込む。当然相手はなかなか通してくれないが、あいまあいまに俺がその辺の石を投げるなどして注意をそらす。手持ちのバタフライナイフがあの鎧相手に効くとは思えないから仕方ない。

「ソラァ! ソリャァアア!!」

 勢いよく叫び声を上げながら鎧野郎に切りかかる長谷山。
 しかしこいつ、声を上げると意外と女みたいに高い声を出すんだなぁ。よく考えたら地声も言うほど低くないしな。

 ま、そんなことはどうでもいいか!

 長谷山が切る、俺が注意を逸らす。即席ながらそこそこのコンビネーションを発揮する俺たち。
 そうこうしているうちに、鎧野郎の手元が狂って剣を落とした。

 ここだ! ここしかない!

「今だ離れろ長谷川ッ!!」

「わ、わかった!」

 俺の指示に素直に従って、二人同時に鎧野郎から離れる。
 そこを、待ってましたと言わんばかりにドローンの電撃発射口がバチバチと火花をあげていた。

<よし! 行くよみんな!!>

<沈めぇぇぇ!!!>

<往生しいやダボがッ!!!>

 何か叫んでるけど、ローボリュームに設定したままだから少し離れると何言ってんのか全然分かんないや。

 ともかく、視聴者達の投げ銭により膨大な威力となった電撃がドローンより発射された。
 それは、言ってしまえばまばゆいビーム。それも極太の。
 ドローンの数倍の大きさを誇る巨大な電撃が一直線にブラックナイトに直撃。

 一瞬にしてヤツの全身を飲み込んだ。

「やったか!?」

「え? 何? どうなってるの?」

 思わず声を出した俺と、状況を全く把握できない長谷山。
 期待と不安が入り混じりながらその時を待つ。
 やがて舞い上がった埃が晴れた、その先には……。

「は!? 何もない!!」

 長谷川が驚いてそう言うが、厳密に言えば黒ずみになったであろう跡が地面に描かれていたのだ。

 つまるところ……。

「や、やったぜええええ!!!!! 俺の勝ちだあああああ!!!!!!」

 そう、倒したのだ!
 S級に指定されている(らしい)モンスターを俺はやっつけて見せたのだ。
 何ということだ、俺は配信初日にして伝説的な活躍をしてしまった。
 ああ! 自分の才能が恐ろしい……!

<いや、やったのは僕たちなんだけどね>

<今は言わせておけ。どこまで調子に乗るのかを見るのも、それはそれで面白い>

<まあ色々と思うとこあるけどお疲れさん。これでチャンネル登録者が増えるとええな>

 ボソボソと何か言ってるが。きっと俺の凄さを褒め称えているんだろう。
 長谷川を巧みに操り、視聴者を扇動する手腕。そして、このドローンを買う判断を下したこの俺の先を見通す目! そう、全てが俺の力なのだ。

 やっぱ俺って強い! 天才!!
 今日確信した、やはり配信業は俺の天職だぜ!!

「がぁっはっはっはっは!! だがこの伝説も所詮は足がかりよ! ここから始まるんだ! 俺のッ! バラ色の人生!! セクシーな女を侍らせながら札束の扇子で顔を仰ぐ特権階級の人生がなぁ!! はぁはっはっはっはっはっはぁ!!!!」

 た、高笑いが止まらねえ! うひ、うひひひ。うひゃひゃひゃ!!

「な、何? どうしたの急に? というか何がどうなってるの? 僕一個もわからないんだけど」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

追放された荷物持ち、【分解】と【再構築】で万物創造師になる~今更戻ってこいと言われてももう遅い~

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーから「足手まとい」と捨てられた荷物持ちのベルク。しかし、彼が持つ外れスキル【分解】と【再構築】は、万物を意のままに創り変える「神の御業」だった! 覚醒した彼は、虐げられていた聖女ルナを救い、辺境で悠々自適なスローライフを開始する。壊れた伝説の剣を直し、ゴミから最強装備を量産し、やがて彼は世界を救う英雄へ。 一方、彼を捨てた勇者たちは没落の一途を辿り……。 最強の職人が送る、痛快な大逆転&ざまぁファンタジー!

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香
ファンタジー
 いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。

処理中です...