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第6話
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二人してドレスに着替えた後、パーティー会場へと移動する。
何でも何でもコッテンパー家の親戚一同が会する私的なパーティーらしいが、公爵家ともなればそれはもう大規模なものになる。……私の親戚なんて人数も少ないから飯屋で飯食って終わりなんだよねぇ。いいかそんな事。
さてとじゃあこいつの出番かな? 私は密かに練習していたマンドリンを取り出す、こいつで会場の雰囲気を温めてやろうじゃないか。
と思っていたのに何故かお嬢様に取られてしまった。
「何するんですか! 人がせっかく持ってきたのにぃ」
「どこに隠し持ってましたのこんなもの! ダメです没収ですわ。貴女に貴族の気品を学ばせる為にお呼びした事をお忘れですか? このような物で場を盛り上げようなどと、そのような考えを持ってもらっては困りますわ」
えーそれは横暴じゃない?
「えぇ~……。じゃあどうすれば良いって言うんです?」
「貴女に求めるのは優雅な貴族たる振る舞いですわ。それを今日しっかりと学び、そして今後に生かすのです」
「うぅむ。しかし私に出来るんでありましょうか?」
「大丈夫です。私の真似をすれば必ずやれます」
「本当でしょうか?」
「ええ勿論です」
「ええ本当に?」
「くどいですわね! とにかく周りを良く見て、そしてらしい振る舞いというもの覚えるのですわ。しかしただ合わせるだけでもダメ、しっかり自分を主張する事も貴族に求められた優美である事も知りなさい」
やっぱりめんどくさいなぁ、なんて思うけど仕方ないからここは素直に返事をしてあげようじゃないか。
「へいほいはい」
「はいは一回!」
「一回しか言ってませんが?」
「……んんああもう!!」
お嬢様は頭を抱えながら、それでも何とか持ち直すと、 パンッ! と手を叩く。
するとそこには、先程までのお怒り顔が嘘のような、淑女然としたお嬢様の姿があった。
なるほど、これがお嬢様の本当のお姿、とでも言うのだろうか? 我々はその真相を探るべくパーティー会場へ潜入することにした」
「貴女何を言ってますの? いいから早くついて来てくださいまし」
「あ、はい」
お嬢様の後に続いて、私達は会場の中へと足を踏み入れた。
「おおぉ……!」
そこはまさに別世界。
煌びやかなシャンデリアに照らされた室内は、まるで昼間のように明るい。
はえ~、こりゃ学園の体育館を貸し切った学生の舞踏会とは大違いだなぁ。
「さ、ロモラッドさん。まずはそこでわたくしの優雅な振る舞いを見て、しっかりとお勉強なさいな」
そう言うと、お嬢様はとあるテーブルに移動して何やら上品なマダムに会釈をして会話を始めた。
「お久しぶりですわ叔母様。ご機嫌はいかがかしら?」
「まぁルーゼンス、久しぶりね。こうして貴女の大きくなった姿を見られるだけでも、このパーティーに参加した甲斐があるというものよ」
「ふふ、わたくしの成長が叔母様を楽しませているとあれば、これに勝る喜びはそうありませんわ」
「あら嬉しいこと言ってくれるわね。……どうかしらこちらのジュース? 私の故郷で取れたマスカットから作られたものだけれど、是非感想を聞かせて貰いたいわ」
「では頂きます。……うん、とても美味しいですわ。甘みと酸味のバランスが絶妙です。それに香りは正しく叔母様の故郷の土壌が優れたものである事を示しています。しかしながら、当家の農地で栽培されたフルーツも決して負けるものではありません。本日はそれを是非、味わって頂きたいですわ」
「流石の弁舌ね。そちらの成長も体験出来て、私もまだまだ負けられない気分にさせられるわ。ふふ、やっぱり来て良かった」
(まあこのようなところでしょうか? さてロモラッドさん、貴女はこの華麗なやり取りを見てどう思うのかしら? ……って!!?)
「いやそれでですね? すっかり出来上がったその酒屋の旦那様が、田んぼの前でどっかり座って『この野郎は俺の酒をまーったく飲みやがらねぇふてぇ野郎だ!』と言いまして、それを見てあたしゃ言ってやったわけですよ『おたくさん、ウシガエルが酒を飲むわけないじゃないですか。下戸だけに』なんつって!」
「ほえぇ、随分と変わった話をお知りで」
「何をやってるんですのロモラッドさん!!」
パーティーに出席していた来賓の方と話をしていただけなのに……。何でかまたお嬢様は怒って私の方へと飛び出して来た。この人以外とアグレッシブだなぁ。
「え、何です? ウィットに富んだ会話で社交の場を盛り上げていたのに」
「何です? ではありません! 大体何ですのこの扇子は?! 没収!!!」
「あぁそんな……。ひど~い、さっきから人の私物を取り上げて」
「私の立ち振る舞いを見て、貴族令嬢らしさを学べとそう申しつけたはずでしょう!?」
「だからそれに倣って来賓の方を楽しませてですね……」
「一体わたくしの何を倣ったらあんな会話になるというんですの?!」
「やだなぁ、ちょっとした自己アレンジじゃないですか」
「原型が無いでしょうが!!!」
折角の和やかな雰囲気なのに、そんな大声出す必要無いじゃないか。私はただ、お嬢様の真似をすれば良いって言うからそうしただけだ。一体何が違うと言うんだろうか? しかしお嬢様は納得していないようで、 うーん。
「ふふ、まさかあの子のあんな姿を見る事になるなんてね。大人びたように感じていたけど、まだまだ年相応に楽しそうじゃない。そうよね、私達みたいな大人と話すより、ああして友達とはしゃいでいる方がずっと素敵だわ。あんなに面白い友達を持てるなんて、正直羨ましいわ」
何でも何でもコッテンパー家の親戚一同が会する私的なパーティーらしいが、公爵家ともなればそれはもう大規模なものになる。……私の親戚なんて人数も少ないから飯屋で飯食って終わりなんだよねぇ。いいかそんな事。
さてとじゃあこいつの出番かな? 私は密かに練習していたマンドリンを取り出す、こいつで会場の雰囲気を温めてやろうじゃないか。
と思っていたのに何故かお嬢様に取られてしまった。
「何するんですか! 人がせっかく持ってきたのにぃ」
「どこに隠し持ってましたのこんなもの! ダメです没収ですわ。貴女に貴族の気品を学ばせる為にお呼びした事をお忘れですか? このような物で場を盛り上げようなどと、そのような考えを持ってもらっては困りますわ」
えーそれは横暴じゃない?
「えぇ~……。じゃあどうすれば良いって言うんです?」
「貴女に求めるのは優雅な貴族たる振る舞いですわ。それを今日しっかりと学び、そして今後に生かすのです」
「うぅむ。しかし私に出来るんでありましょうか?」
「大丈夫です。私の真似をすれば必ずやれます」
「本当でしょうか?」
「ええ勿論です」
「ええ本当に?」
「くどいですわね! とにかく周りを良く見て、そしてらしい振る舞いというもの覚えるのですわ。しかしただ合わせるだけでもダメ、しっかり自分を主張する事も貴族に求められた優美である事も知りなさい」
やっぱりめんどくさいなぁ、なんて思うけど仕方ないからここは素直に返事をしてあげようじゃないか。
「へいほいはい」
「はいは一回!」
「一回しか言ってませんが?」
「……んんああもう!!」
お嬢様は頭を抱えながら、それでも何とか持ち直すと、 パンッ! と手を叩く。
するとそこには、先程までのお怒り顔が嘘のような、淑女然としたお嬢様の姿があった。
なるほど、これがお嬢様の本当のお姿、とでも言うのだろうか? 我々はその真相を探るべくパーティー会場へ潜入することにした」
「貴女何を言ってますの? いいから早くついて来てくださいまし」
「あ、はい」
お嬢様の後に続いて、私達は会場の中へと足を踏み入れた。
「おおぉ……!」
そこはまさに別世界。
煌びやかなシャンデリアに照らされた室内は、まるで昼間のように明るい。
はえ~、こりゃ学園の体育館を貸し切った学生の舞踏会とは大違いだなぁ。
「さ、ロモラッドさん。まずはそこでわたくしの優雅な振る舞いを見て、しっかりとお勉強なさいな」
そう言うと、お嬢様はとあるテーブルに移動して何やら上品なマダムに会釈をして会話を始めた。
「お久しぶりですわ叔母様。ご機嫌はいかがかしら?」
「まぁルーゼンス、久しぶりね。こうして貴女の大きくなった姿を見られるだけでも、このパーティーに参加した甲斐があるというものよ」
「ふふ、わたくしの成長が叔母様を楽しませているとあれば、これに勝る喜びはそうありませんわ」
「あら嬉しいこと言ってくれるわね。……どうかしらこちらのジュース? 私の故郷で取れたマスカットから作られたものだけれど、是非感想を聞かせて貰いたいわ」
「では頂きます。……うん、とても美味しいですわ。甘みと酸味のバランスが絶妙です。それに香りは正しく叔母様の故郷の土壌が優れたものである事を示しています。しかしながら、当家の農地で栽培されたフルーツも決して負けるものではありません。本日はそれを是非、味わって頂きたいですわ」
「流石の弁舌ね。そちらの成長も体験出来て、私もまだまだ負けられない気分にさせられるわ。ふふ、やっぱり来て良かった」
(まあこのようなところでしょうか? さてロモラッドさん、貴女はこの華麗なやり取りを見てどう思うのかしら? ……って!!?)
「いやそれでですね? すっかり出来上がったその酒屋の旦那様が、田んぼの前でどっかり座って『この野郎は俺の酒をまーったく飲みやがらねぇふてぇ野郎だ!』と言いまして、それを見てあたしゃ言ってやったわけですよ『おたくさん、ウシガエルが酒を飲むわけないじゃないですか。下戸だけに』なんつって!」
「ほえぇ、随分と変わった話をお知りで」
「何をやってるんですのロモラッドさん!!」
パーティーに出席していた来賓の方と話をしていただけなのに……。何でかまたお嬢様は怒って私の方へと飛び出して来た。この人以外とアグレッシブだなぁ。
「え、何です? ウィットに富んだ会話で社交の場を盛り上げていたのに」
「何です? ではありません! 大体何ですのこの扇子は?! 没収!!!」
「あぁそんな……。ひど~い、さっきから人の私物を取り上げて」
「私の立ち振る舞いを見て、貴族令嬢らしさを学べとそう申しつけたはずでしょう!?」
「だからそれに倣って来賓の方を楽しませてですね……」
「一体わたくしの何を倣ったらあんな会話になるというんですの?!」
「やだなぁ、ちょっとした自己アレンジじゃないですか」
「原型が無いでしょうが!!!」
折角の和やかな雰囲気なのに、そんな大声出す必要無いじゃないか。私はただ、お嬢様の真似をすれば良いって言うからそうしただけだ。一体何が違うと言うんだろうか? しかしお嬢様は納得していないようで、 うーん。
「ふふ、まさかあの子のあんな姿を見る事になるなんてね。大人びたように感じていたけど、まだまだ年相応に楽しそうじゃない。そうよね、私達みたいな大人と話すより、ああして友達とはしゃいでいる方がずっと素敵だわ。あんなに面白い友達を持てるなんて、正直羨ましいわ」
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