異世界の花嫁?お断りします。

momo6

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ギルドは朝だからか、昨日よりも人で賑わっていた。
人混みをすり抜ける様にして受付まで行くとレイルが居て、身分証明書・カードを渡された。無くさないように鞄に仕舞う振りをして、無限空間に仕舞う。エマに聞いたら、人前で使わない方がいいと言われたからだ。
勿論、この鞄はエマが作った物。何でも作れて凄いと感心する。

最後に身分証明書を作る事で、ギルドが出すクエストを受注する事が出来ると教えて貰い、せっかくなのでボートを見る事にした。その間、エマは自分の仕事・納品すると言う。

ボートにはランク毎にクエストがある。椿は∞の為何でも良いと言われたが、戦うのはお断りだ。

紙には色々な事が書いてある。
主に討伐、アイテム納品。どれも戦うのがメインの為、スルーすると他の紙に比べてボロボロの紙が目に入る。気になり見てみると〔1ヶ月の掃除を頼む〕と書いてあった。
詳しくは面接する時にとあったので、掃除なら出来るな。と紙を取りレイルの所に持っていく。
「これ、お願いします。」

ボロの紙を見ると、レイルは歓喜の笑みを浮かべ「ありがとうございます!」とお礼を言われた。
エマは苦笑いしながら見ている。(ん?何だろか、この2人の差は?)首を傾げていると、レイルが受注先に確認してくれたら直ぐにでも来て欲しいと言われた。
「では、この場所へお願いします。行けば分かりますので、クエスト完了はココに印・もしくは、サインを貰って来て下さいね!では、受付金を頂きます。クエスト完了しましたら、受注書と引き換えに報酬金をお渡ししますね。」
エマは用事があるからまたね!と行ってしまった。一人で行く事になったけど、うん。仕事だから頑張ろうと意気込む。

「えっとーーーレオ・ダビッツ?大通りから離れた場所かな?」
まだ、道が不安だけど人に聞きながら行けば大丈夫。
地図を見ながら進んで行く。




◇◇◇◇◇◇◇



「ーーー凄く、不安。」
目の前には鬱蒼と茂った庭があり、お化け屋敷の様な洋館が佇んでいた。
場所が分からなく、道を聞いたら「えっ!?」「あそこに行くのか!!?」「辞めといた方がいいぞ~」など、非難の嵐だったのだ。うん。確かに早まったかも。
遠い目をしながらも、門の前で立ちすくんでいるとギーー・・っと門が開いた。

「ーーーよし!仕事を受けたんだ!頑張れわたし!」
意気込み、敷地内へ足を踏み入れる。

辛うじて、石畳があるから道だと分かるが雑草…っと言うよりも木になるんじゃないか?!と言う草が椿の行く手を阻んでいる。

「この!く~さ~!!もう!何で刈って無いのよ!!歩きにくい!!」
イライラしながら、やっとの思いで玄関まで辿り着く。
チャイムが無い為ドンドンと叩く。手に力が入ってしまうのは決してイライラしていたからではない。

返事が無く、またドアを叩こうとしたらスーッと開いた。
「失礼します、ーーレオ・ダビッツさん?」
誰もいない広間を見渡しながら、依頼主の名前を呼ぶが返事が無く。もう一歩中に踏み出すとドアが閉まり、部屋の灯りがつき始めた。

「わっ、魔法?かな?」
明るくなった部屋を見渡すと、あちこちに蜘蛛の巣があったり埃が溜まっているのが分かる。

「汚!えっ?人が住んでるの!?これで??」
余りの汚さについ、暴言が出てしまう。「随分ハッキリ言うんだな」階段の上から重低音ボイスが響いて来た。

バッと上を向くと、男性が降りてくる。
背が高く、ボサボサの赤い髪は腰まである。深緑の瞳と目があった、年寄りだと思っていたら予想外に若くて驚いた。
「あっ、初めまして、椿と申します。ギルドで依頼を見て来ましたーー」
「ふん。何日続くか、これまでに何十人も掃除に来たが誰一人やり切った者はいない。お前も明日から来ないさ。」
あまりの上から目線でムッとするが、依頼主と喧嘩はダメだと自分に言い聞かせながら平然を装い話をする。

「では、仕事内容を教えて下さい。まず、何から行えば良いのでしょうか?」
冷静な対応に男性は目を見開くが、ニヤリと口角を上げながらジットリと椿を下から上に見定める。失礼な人だと眉間に皺がよるが、我慢我慢。
「華奢なお前がこの屋敷全て綺麗にするんだ。それが、お前の仕事だ。俺は部屋にいる。勝手に始めて構わないぞ」
そう言うと、二階へ上がって行ってしまった。

姿が見えなくなると、「なんなの!?あの俺様は!!ムカつく」暴言を吐いてしまったが、気持ちを切り替えて仕事モードになる。

「・・この服だと、汚れちゃうからーーー着替えよう」
今来ているのはゆったりしたワンピース。掃除には不向きだ。
昨日、エマにブレスレットの使い方を聞いたら魔力を通せば良いと教えて貰い、ブレスレットに手を当てて「更衣室~」と呼ぶとフッと視界が変わり部屋の中になった。
椿は《魔力=念じる事》と勝手に認識しており、異空間のイメージが思い付かなく、着替えるのは更衣室。と考えた結果だった。

「ん~ズボンにTシャツっぽいのがあったようなーーーあった!」
タンスからガサゴソ出して、目当ての服に着替える。
髪も1つにまとめてしばる。もう一度ブレスレットに「元の部屋」と念じる事で戻れるのだ。

屋敷の中に戻ると、ズラーッと並ぶドアを一つずつ開けて確認したら、1番酷かった台所を掃除する事にした。

「これはーーー腐海が広がっている。」
シンクには山積みになった、汚い食器達。
コンロ周りも油なのか食べカスなのか分からない黒く、ベタベタしていたものがこびり付いていた為、コンロが使えない状態だった。
足元に落ちている?置いてあるのは、食べ物だったのか腐っていたり腐臭が酷い。

「ーー時間がかかりそうね、よし!やってやろうじゃない!!」
腕まくりしながら台所へと入っていく。

椿の初仕事。1日目が始まろうとしていた。
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