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ーーーーー馬車から見る外の景色が変わり、何もない道になった。遠くにはチラホラ家が見える。
この世界に来てから、すぐ街に来た為 他の場所を知らない椿にとって窓の外に広がる景色はとても興味深い。
窓の外をずっと見ている椿。
その姿をうっとりしながら見つめるシュバーツ王子。
ーー思い出して欲しい。今、席順はシュバーツ・椿・エマとなっている。椿は、エマ側にある窓の外を見ているのだ。
もう、お分かりだろうか?
そう。2人の顔はエマの方に向いているのだ。話もせず、無言で。
沈黙に耐えかねたエマが2人に向かいキレた。
「ちょっと!いい加減にしてよね!!んもう!私はこっちに座るからあなた達2人で座りなさいよ!!」
突然怒り出したエマに、2人はキョトンとする。何で怒っているのか気付いていないのだ。
プンプンしているエマに首を傾げながら、2人は顔を見合わせるとプッと笑い出し、先程までの沈黙が嘘のように会話が始まったのだった。
呆れたエマはそのまま、長椅子にもたれながらコクリコクリと居眠りを始めた。
その様子にシーっと静かに話していると、あっという間に時は過ぎ、時刻は夕方になっていた。
まだ、先にいる部隊と合流はしていないが、夜には合流出来るように話は付いているという。
「北の森で調査って、何をするんですか?」
そういえば、肝心な事を聞いていなかったとシュバーツに聞くと「うーん、どこから話せばいいのか…北の森に新しいダンジョンが発見されたと報告があったので、そのダンジョンを調べに行くんだよ」
「新しいダンジョン・・・」
えっ?ダンジョンって、ゲームに出てくる様なの?モンスターがウジャウジャいるのを倒すとか?
待って、そしたら私も戦うとか?
「私も戦うんですか?」不安げに聞くと、シュバーツは首を振りながら
「つばきは私が守るから大丈夫。それに、炊事係はダンジョン中には入らないよ?外で待機だからね!」
優しく話す王子に椿は安心する。
本物の王子に守るとか言われちゃったよー!ヒャッホーウと浮かれ気分でいた。
そんな心情とは知らないシュバーツは、心の中でガッツポーズをしていた。(よし!上手く言えたよな?うんうん、自然に言えたはずー)などと、シュバーツの想いは椿に届いておらず 空振りしているとは気付いていない。
「もうすぐで先に行った部隊と合流出来る筈だ。お腹は空いただろう?馬車は走らせたままだから、これを食べよう」
シュバーツが鞄の中から出したのは、見るからにカチカチの黒いパンとなんだかよく分からない緑のキューブの塊。「はい、どうぞ」と手渡せられたが、見た目がまず美味しくなさそう。パクっと普通に食べているシュバーツが「ん?食べないの?」と聞かれた。「エマも起こした方が良いと思って、エマ、エマ起きて」
食べる勇気が出なくエマを起こす。
眠そうに背伸びをしながら、起き出したエマにシュバーツから渡された黒いパンと緑のキューブを渡す。
一瞬、エマは嫌そうな顔をするがモグモグと食べている。だが、その顔は渋い顔をしている。
(美味しくないんだな、)そう思うのも無理はない。
意を決してパクっと黒いパンにかぶり付くが、予想通り硬い。
中々噛みキレないし、味がパサパサ。緑のキューブも・・・うん。青汁を食べてる感じだ。
普通に食べているシュバーツを見ると、これが携帯食だと思った。栄養はありそう?だが、不味い。と顔に出てしまう。
(不味い・・・よく食べれるな、あっ!そうだ!)
自分の鞄を開けて、無限空間を展開すると昨日の夜に作っておいた、サンドイッチを取り出した。
ふわふわの白いパンに味付けした厚焼き玉子を挟んだサンドイッチ。ゆで卵を潰して作る方が美味しいのだが、場所の中は揺れてこぼれ落ちるかな?と思い、厚焼き玉子にしたのだった。
パンも自家製。
この世界のパンは、皆黒く硬い。初めて知った時は衝撃を受けた程。
それで、小麦粉はあるが酵母(イースト)を入れていない事を知りフルーツを使って、天然酵母を作ったのだ。
2人にサンドイッチを渡すと、その白さと柔らかさに驚いていた。恐る恐る口に入れると美味しさに顔が緩む。
「美味しいゎ~つばきちゃん!おかわりちょうだい!」
ペロリと食べてしまったエマに苦笑しながら、2つ手渡す。
「私にも、頂いて良いだろうか?こんなに美味しいパンは初めてだ」
「お口に合って良かったです」
ニコニコしながら食べるのは、良いよね。飲み物も茶っ葉を見つけて自分でブレンドした紅茶をだす。
流石に水筒のまま、どうぞって渡せないのでコップに注ぎ渡すと「冷たいな!美味しい」っとコクコク飲んでくれた。
氷も魔法で出して水筒に入れておいたから、冷たくなっている。
椿もコポコポと注ぎ、口に含む。
「ふー、美味しい」一息ついた所で、外がガヤガヤと騒がしくなってきた。先の部隊と合流したようだ。
馬車が止まり、降りてみると周りは木々に囲まれた森の中。
焚き火をしながらテントを張り、野営している人たちが目に入る。ざっと30人ぐらいだろうか?
シュバーツが先に降りて、椿をエスコートしてくれる。
「凄い人ですね」
「皆、私の信頼出来る者たちばかりだよ」
殆ど男性で腕の筋肉や体格が良い人ばかり。鎧を付けていたり、上半身裸になっていたり様々だ。
シュバーツに気付くと皆、姿勢を正し挨拶をしてくる。慕われているのが分かる。
「皆の者聞いてくれ、今日から炊事係をしてくれる人を紹介する。つばきにエマだ。」
「初めまして、椿です。これから、皆さんの炊事を担当します。よろしくお願いします」
「エマよ。よろしくね」
緊張気味に話す椿とさっさと自己紹介したエマ。対照的な2人に男性たちは歓声を上げる。
何故か腰に手を回し椿を支えているシュバーツに疑問を抱きながら、その手を逃れエマにしがみ付く。
北の森への道のりはまだ先の話。
この世界に来てから、すぐ街に来た為 他の場所を知らない椿にとって窓の外に広がる景色はとても興味深い。
窓の外をずっと見ている椿。
その姿をうっとりしながら見つめるシュバーツ王子。
ーー思い出して欲しい。今、席順はシュバーツ・椿・エマとなっている。椿は、エマ側にある窓の外を見ているのだ。
もう、お分かりだろうか?
そう。2人の顔はエマの方に向いているのだ。話もせず、無言で。
沈黙に耐えかねたエマが2人に向かいキレた。
「ちょっと!いい加減にしてよね!!んもう!私はこっちに座るからあなた達2人で座りなさいよ!!」
突然怒り出したエマに、2人はキョトンとする。何で怒っているのか気付いていないのだ。
プンプンしているエマに首を傾げながら、2人は顔を見合わせるとプッと笑い出し、先程までの沈黙が嘘のように会話が始まったのだった。
呆れたエマはそのまま、長椅子にもたれながらコクリコクリと居眠りを始めた。
その様子にシーっと静かに話していると、あっという間に時は過ぎ、時刻は夕方になっていた。
まだ、先にいる部隊と合流はしていないが、夜には合流出来るように話は付いているという。
「北の森で調査って、何をするんですか?」
そういえば、肝心な事を聞いていなかったとシュバーツに聞くと「うーん、どこから話せばいいのか…北の森に新しいダンジョンが発見されたと報告があったので、そのダンジョンを調べに行くんだよ」
「新しいダンジョン・・・」
えっ?ダンジョンって、ゲームに出てくる様なの?モンスターがウジャウジャいるのを倒すとか?
待って、そしたら私も戦うとか?
「私も戦うんですか?」不安げに聞くと、シュバーツは首を振りながら
「つばきは私が守るから大丈夫。それに、炊事係はダンジョン中には入らないよ?外で待機だからね!」
優しく話す王子に椿は安心する。
本物の王子に守るとか言われちゃったよー!ヒャッホーウと浮かれ気分でいた。
そんな心情とは知らないシュバーツは、心の中でガッツポーズをしていた。(よし!上手く言えたよな?うんうん、自然に言えたはずー)などと、シュバーツの想いは椿に届いておらず 空振りしているとは気付いていない。
「もうすぐで先に行った部隊と合流出来る筈だ。お腹は空いただろう?馬車は走らせたままだから、これを食べよう」
シュバーツが鞄の中から出したのは、見るからにカチカチの黒いパンとなんだかよく分からない緑のキューブの塊。「はい、どうぞ」と手渡せられたが、見た目がまず美味しくなさそう。パクっと普通に食べているシュバーツが「ん?食べないの?」と聞かれた。「エマも起こした方が良いと思って、エマ、エマ起きて」
食べる勇気が出なくエマを起こす。
眠そうに背伸びをしながら、起き出したエマにシュバーツから渡された黒いパンと緑のキューブを渡す。
一瞬、エマは嫌そうな顔をするがモグモグと食べている。だが、その顔は渋い顔をしている。
(美味しくないんだな、)そう思うのも無理はない。
意を決してパクっと黒いパンにかぶり付くが、予想通り硬い。
中々噛みキレないし、味がパサパサ。緑のキューブも・・・うん。青汁を食べてる感じだ。
普通に食べているシュバーツを見ると、これが携帯食だと思った。栄養はありそう?だが、不味い。と顔に出てしまう。
(不味い・・・よく食べれるな、あっ!そうだ!)
自分の鞄を開けて、無限空間を展開すると昨日の夜に作っておいた、サンドイッチを取り出した。
ふわふわの白いパンに味付けした厚焼き玉子を挟んだサンドイッチ。ゆで卵を潰して作る方が美味しいのだが、場所の中は揺れてこぼれ落ちるかな?と思い、厚焼き玉子にしたのだった。
パンも自家製。
この世界のパンは、皆黒く硬い。初めて知った時は衝撃を受けた程。
それで、小麦粉はあるが酵母(イースト)を入れていない事を知りフルーツを使って、天然酵母を作ったのだ。
2人にサンドイッチを渡すと、その白さと柔らかさに驚いていた。恐る恐る口に入れると美味しさに顔が緩む。
「美味しいゎ~つばきちゃん!おかわりちょうだい!」
ペロリと食べてしまったエマに苦笑しながら、2つ手渡す。
「私にも、頂いて良いだろうか?こんなに美味しいパンは初めてだ」
「お口に合って良かったです」
ニコニコしながら食べるのは、良いよね。飲み物も茶っ葉を見つけて自分でブレンドした紅茶をだす。
流石に水筒のまま、どうぞって渡せないのでコップに注ぎ渡すと「冷たいな!美味しい」っとコクコク飲んでくれた。
氷も魔法で出して水筒に入れておいたから、冷たくなっている。
椿もコポコポと注ぎ、口に含む。
「ふー、美味しい」一息ついた所で、外がガヤガヤと騒がしくなってきた。先の部隊と合流したようだ。
馬車が止まり、降りてみると周りは木々に囲まれた森の中。
焚き火をしながらテントを張り、野営している人たちが目に入る。ざっと30人ぐらいだろうか?
シュバーツが先に降りて、椿をエスコートしてくれる。
「凄い人ですね」
「皆、私の信頼出来る者たちばかりだよ」
殆ど男性で腕の筋肉や体格が良い人ばかり。鎧を付けていたり、上半身裸になっていたり様々だ。
シュバーツに気付くと皆、姿勢を正し挨拶をしてくる。慕われているのが分かる。
「皆の者聞いてくれ、今日から炊事係をしてくれる人を紹介する。つばきにエマだ。」
「初めまして、椿です。これから、皆さんの炊事を担当します。よろしくお願いします」
「エマよ。よろしくね」
緊張気味に話す椿とさっさと自己紹介したエマ。対照的な2人に男性たちは歓声を上げる。
何故か腰に手を回し椿を支えているシュバーツに疑問を抱きながら、その手を逃れエマにしがみ付く。
北の森への道のりはまだ先の話。
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