異世界の花嫁?お断りします。

momo6

文字の大きさ
33 / 83

33

しおりを挟む
小さな小屋に着くと、衛兵は椿とエマに座る様話す。
「いくつか、質問してもよろしいでしょうか?」
「はい、」
淡々と話す衛兵に素直に答える椿。

「最後の質問ですが、あなたは妖精・精霊と契約していますか?」

えっ?妖精?精霊?
契約なんてしてないけど、なんでそんな事を聞くんだろ?
「契約なんて、してませんけどーーー」
「契約していない?」
椿の問いに頭を捻る衛兵は、何やら考え込みながら椅子の周りをウロウロしている。


「ねぇ、何で足元がひび割れたのかな?」
「私が知る訳ないでしょ~?ーーーつばきちゃん、本当に契約してないの?前に妖精王とか話してなかった?」
「えっ?妖精王?」

エマに言われて、ふと妖精王と会った事があったっけ?と思い出すが、すっかり忘れていた椿は「う~ん?」と考え込む。
「ほら、初めてギルドで依頼を受けた時よ!」
「ーーーぁあ!そういえば、そんな事あったね~すっかり忘れてたよ。あはは」
「あははって、まったくお気楽なんだから。」
「だって~興味無いし~それに、少し話したっけ?かな?ぐらいの人なんて、忘れるでしょ~~」


〔我を呼んだか?〕
お気楽に話していた椿の後ろに、いつのまにか妖精王が立っていた。
ギョッとした椿は「うひぃ~~」変な声が出てしまった。
相変わらずの整った顔が椿の眼を見つめる。

〔愛しの伴侶、しばらくぶりだな。寂しかったか?〕
妖精王は優しく話しかけると椿を両手で包み込む。が、椿はそれを拒否しながらささっとエマの後ろに隠れる事にした。
その行動を不思議そうに見つめていると、〔何故離れるのだ?〕疑問だと言わんばかりの妖精王。

「無理です。気持ち悪いです。帰ってください。」

〔何を言っているのだ?今会ったばかりであろう?〕

「無理です。受け付けません。お引き取り願います」

〔愛しの我が伴侶。こちらへおいで?〕

「言葉が通じない?!そんな馬鹿な!妖精王って人の話を聞かないの?」

妖精王に対して、酷い対応の椿。笑いを堪えていたエマがブハッ!っと吹き出してしまい、ケラケラ笑いだした。
「つばきちゃん、あんたって最高だわ!妖精王に対して、凄いわね!普通では考えられないわ~~」
頭をポンポンしながら、まだ笑いを堪えている。
部屋の隅には、衛兵がピシリと姿勢良くしていた。どうやら、エマと衛兵の1人は、妖精王の姿がわかるようだ。



「失礼ながら、つばきさんはそちらにおります妖精王の伴侶でございましたか。では、結界がひび割れたのは【伴侶】に反応したんでしょう。」

「違いますから!会話を聞いてたでしょ?!」
「はい!伴侶と聞き存じました!いま、上に報告しますので、もうしばらくお待ち下さい。」

「だーかーらー!!違うって言ってるの!あっ!こら!報告するんじゃないーーーって、何で人の話を聞かないのよ。ーーん?結界なんてありました?」
「はい。門より街に行く間の通路に結界が施されております。」
「通路って、ガラス張りの道のことかな?それより!なんで、私の足元がひび割れしたんですか?」
「結界を施したのが、我が国のクリュス様であります。クリュス様や我が国に対し何か敵対心がある方や関わる方が反応する様になってます」

まさか、通路が結界とは知りもしない椿は目をまん丸にしながら話を聞いていた。しかも、ひび割れた原因が敵対心だとか、不穏しか感じない。何かの間違いであって欲しい。
問題に巻き込まれるのはもうお腹いっぱいです。

頭を抱えている椿に妖精王が会話に入ってきた。
〔それは、我の所為かもしれん〕
えっ?っと顔を妖精王に向けると、真顔で〔我はあ奴が嫌いだ〕言い放った。
その内容は、結界を作ったクリュスさんて人が嫌いだから、結界が反応したと言う。っと言うことは。
「全部あんたが原因かーーーーい!!!」
突っ込みをするも、キョトンとする妖精王に何を言ってもだめだった。
ガックリと項垂れる椿。

「あははっもう、笑いすぎてお腹痛いーー」

さくさくと報告する衛兵と原因となった妖精王に怒りを覚える椿。横ではお腹をかかえて笑っているエマ。
何故かピッタリ隣にいる妖精王に嫌気がさし、椿は無視する事にした。



〔ところで、愛しの伴侶や。何故こんな場所にいるのだ?ここは、寒いだけで何も無い所ではないか。おまけに煩い奴の土地だ。ここでは無く、我の所に来れば良いではないか?〕
「エマ~最初は何を見に行く?お腹空いたから、何か買って食べよう?」

〔ほう?腹が減ったのか。では、美味しい実がある場所へ行こうか?あれは甘くて美味しいから一口食べれば忘れなくなる味だ〕

「あっ!装飾品とかも見てみたいね~」
〔光り物か?我は好かんが愛しの伴侶が好きならば探してこようぞ〕

「早く、ここから出れないかな~?煩い人がいるからね。」
〔では我の所に行こうぞ。煩い奴が来たら面倒だ〕

見事に妖精王を無視し、エマに話しかける椿だが。話しかけられているエマは、どう答えて良いのやら曖昧な返事しか出来ずにいた。
すぐ、横で会話に入っているのか際どい妖精王に突っ込みなど出来るはずもなかった。


「あーあ、早く終わらないかな~隣の人がいい加減煩いし~」
〔そうだな、もう我と一緒に行こうではないか。直ぐに出られるぞ?〕

〔ブハッ!お前どんだけ嫌われているんだよ!いい加減諦めて帰れ!〕
気まずい雰囲気に終止符を打った声を見ると、先程までいなかった人が立っていた。
青い髪を1つに纏めてニヤニヤ笑いながら妖精王の肩をポンポンしていた。
そして、椿の事をじっくり観察している。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...