異世界の花嫁?お断りします。

momo6

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「つばき、つばきちゃん、着いたわよ~」
ユサユサとエマに起こされた。どうやら、いつのまにか寝ていたようだ。
「うー、もう着いたの?って!寒!!急に寒いんですけどーー」

腕をさすりながら、先程まで感じなかった寒さに震えながら窓の外を見て絶句した。
先程の景色とは違い、白銀の世界だったのだ。

「ーーー雪?この星にも雪があるの?」
自分がこちらに来た時はまだ夏だったのに、もう冬なのかとジンワリする。
雪は降っていなかったが、日本では豪雪地帯に行かないとここまで積もる事も無い雪景色に椿は見惚れていた。

「どう?綺麗よね~、この街は特別でね。王様が氷の精霊を代々受け継いでいるから平均で気温が低いのよ~今の時期は特に綺麗なのよね~~しばらく滞在しましょう」
「うんーーー」
エマの言葉に言葉ここにあらずで聞き流していた。

街を出ると話した時、記憶のない椿を色々な場所に連れて行き、何か思い出せれば。とエマが提案してくれたのだ。
本当は違うけど、言っても信じて貰えないと思い黙っていた。


無言で景色を見る椿に、「気に入ったのね。」とそっとしておくエマだった。




街に近づくと、外壁は氷で出来ているのか太陽に反射してキラキラと光っていた。氷の壁から透けて見える街はとても幻想的だ。

衛兵が一人一人確認しているので、とても時間がかかる。椿とエマは順番まで馬車で待つことにした。

「ブルブル、それにしても寒いーーエマは平気そうだね」
ガタガタ震える椿に対して、エマは平気な顔をしている。
服装は同じ薄着なのに、寒くないのかな?と思ってしまう。


「あら?つばきちゃんは寒いの?」
「寒いよ~~!こんなに寒いなら上着を用意するんだった。エマはよくその格好でいられるねー」
「ふふ、私だって寒いわよ?今はこれを飲んでるから寒さが和らいでるのよ~良かったら飲む?」
そういえば、さっきから暖かそうなの飲んでたな。気づかなかったけど。
ニコニコしながら飲み物を注ぎ、椿に手渡すと更にニコニコしている。
もしかして、この飲み物に何か入っているのかしら?
疑惑の目を向けると「毒なんていれてないわよ」と言われてしまった。
意を決してグイッと飲むと、意外にも蜂蜜とジンジャーの味で美味しかった。
「美味しい、エマが用意したから絶対まずいって思ったのに、予想外だゎ」
「あんたねーー人を何だと思ってんのよ」

つい、心の声が漏れてしまった。でも、本当に美味しい。それになんだかポカポカしてきたかも、これなら上着が無くても大丈夫。

ゴクゴクと飲み干して、空になったコップをエマに返すとニンマリしたエマが片付けながら椿の隣に座る。
「全部飲んだのね?これが何だか分からなかったの?」
「えっ?蜂蜜とジンジャーの味でしたけどーーやっぱり毒が!?」
「馬鹿ね!入れてないって言ってるでしょ!?まったく、失礼しちゃうわね。これには、ほんの一滴だけ媚薬が入っているのよ。一滴なら体が温まるだけ。でも、沢山入れたらーーどうなるか分かるでしょ?」
怪しげに話すエマにいまいち話が分かっていなかったが、媚薬と聞いて青ざめた。

「!!!やっぱり毒じゃないですか!?どうしてくれるんですか?媚薬なんて……ムラムラな気分になるじゃない!」
カッと赤くなりながら話す椿に、落ち着きなさいよ。っと冷静に話すエマ。

「何で今、この飲み物を飲ませたと思う?この街は氷の精霊が守っているから常に寒いの。だから、皆これを普通に飲んでるゎ。
この街の住民は媚薬に対して抗体が出来ているけど、私達のように慣れていない人間には危険なの。この意味は分かるわね?」
真剣に話すエマにコクリと頷く。

「いい子ね。だから、街で出された飲み物は飲んだらダメよ?何に入れて飲んでるか分からないからね。1週間ほど観光したら次の街に行きましょう。」
なんて恐ろしい街なんだ。怖すぎる。
椿が絶句していると、あははと笑いながら頭を撫でてくれた。


「怖がらせちゃったわね~、飲み物に気をつければいい町よ?街は綺麗だし、装飾品もお勧めよ」
「わざわざ、寄らなくても良かったんじゃない?」
「あら!それはダメよ。次の街まで、また何日もかかるのよ?少し休憩しながらじゃないと体が持たないわ」

それもそうかと、納得した。
飲み物か……飲まないって事は出来ないから、自分で作ればいいか。
無限空間から取り出すと見せかけて、飲み物を出せばいいと考えていたが、エマが既に用意してくれたので大丈夫そうだ。

他にも、街について話していたら順番が来たようで外から降りるように声をかけられた。

「身分証明書、ギルドカードを見せて1週間ぐらい滞在って言えば大丈夫よ」
と、エマに教えて貰ったとおりにするとすんなり「許可する」と門を開けてくれた。
滞在なら、馬車は門の近くで預かる仕組みで馬さんとはしばしのお別れ。



馬車と馬を預けてから街に入る。
煉瓦で作った道の上にガラスを覆った作りになっている。キラキラしている道に椿は一歩踏み出す。

ピキィーーーッ

氷が割れる様な音が響き渡る。
椿の足元から亀裂が起きたのだ。
「えっ?」
訳が分からず、戸惑っていると衛兵が近寄ってきた。

「あんた、何したのよ?」
「えっ?えっ?私?私は何もしてないよ!?」

椿があたふたしていると、衛兵が椿に詰め寄ってきた。
「失礼ながら、あちらでお話を伺えますか?」
何かの間違いと思いながらも衛兵の後をついて行く度に、ピキィベキッと足元がひび割れている。
振り返ると椿の歩いた部分がひび割れていた。

(そんなに重くないんだけど、)
自分の重みでひび割れたのか心配する椿だった。


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