59 / 83
59
しおりを挟む
突然、言われた言葉が椿の心に何度もくりかえす。
“異世界から呼んだ花嫁”
意味が分からなく、頭の中はパニックになり頭から煙が出るぐらい容量オーバー。
「ちょっと、あなたが言っていることが理解出来ないんですがーーー」
「あなた!もうそう呼んでくれるのかい?」
「は?」
「つばき。僕たち、上手くやれそうだね!」
椿の言った“あなた”がどうやら親しみを込めて呼ばれたと勘違いしたザイル。とても喜び満面の笑みでいる。
「あっ、間違えました。
銀髪でイケメンかと思いきや人の意見を聞こうとしないで勝手に話を進めてましてや花嫁とか急に言われても意味分かんないんですけどてか異世界から連れてきたとか何を言ってるのか理解不能だし人の顔を見てニヤケて若干気持ち悪いし本気で引いてるんですけど頭の中にお花畑が広がっている君。私にわかりやすく教えて下さい」
早口で捲し立て、椿はキッとザイルを睨みつけた。
態度では強がっているがぎゅうっと握りしめた拳はカタカタ震えている。それをみて、ザイルはブハッと吹き出してしまった。
「はっはっは!花嫁殿は気が強いんだな、嫌いではない。そうか、何から話せばいいかなーーーこちらへ来てくれ。」
椿の手を引きながら、ザイルは建物の外に出た。
そこには雲にかかった山々が見えていた。その事から、自分がいるのは山の頂上だと分かった。
そして、1番先に目に飛び込んで来たのは背中に羽が生えた人達だったのだ。
今まで、人間の他には獣人や妖精は見たことがあったが、翼を持った人間は見たことがなかったので驚いた。
「綺麗ーー翼も人も綺麗」
その姿は黄金比の様な美しさで、椿は見惚れてしまう。近づくといけない気がして、椿は静かに見つめていた。
「やっぱり。僕の思った通り、つばきは優しいんだな」
おいで。と中庭に置いてある長椅子まで椿の手を引く。
「ほら、ここからの景色が1番綺麗なんだ」
座って前を見ると、街並みが見渡せる場所だった。
建物が密集しているが、人々は楽しそうに笑顔で生活しているのが分かる。
「君たちは天使なの?」
「天使?違うよ。僕たちはーーーーー天上人なんだ、」
「天上人?」
「そう。天上人は、人よりも魔力が多くその容姿の美しさが人間から目をつけられているんだ。この山は、僕たちを隠してくれている。」
静かに話すザイルだが、その顔は怒りに満ちていた。
「君も天上人?翼が無いけど…」
「僕?ほら。」パチンと指を鳴らすと翼がバサっと出てきた。「うわっ!」と驚きつつもその純白の美しさに見惚れてしまう。
天上人とか言う種族は分かったが、それが何故わたしを?と疑問は消えないでモヤモヤしていたら続けて話してくれた。
「何故わたしが?って顔に出てるよ。ははっどうしてつばきだったのかは分からない。だけど、僕の呼びかけに答えてくれただろう?」
「呼びかけ?」
「そう。魔法陣から出てくる予定だったんだけど、君は暗闇に紛れてしまった。僕には暗闇から助け出す力が無かったから、以前知り合ったアルの空間へと扉を繋げたんだけど、アルも意地悪だ。僕の所に送ってくれたらいいのに離れた場所につばきを置いてしまうから、連れ戻すのに時間がかかってしまった…迎えに行くのが遅くなってごめんよ?」
金色の瞳には、椿しか見えていない。純粋な目で見られ、椿は視線を逸らしてしまった。
(アルってアルテミスの事?えっと…神さまだよね?神って知ってるの?いいえ、そんな事よりも帰れるなら帰りたい)
頭の中で整理しながらも感情が先に出てしまう。声を荒げてしまうが、ザイルは表情を変えず椿を見ていた。
「っわざわざ!…わざわざ、私を呼ばなくても女性は他にもいるでしょ?私を元の世界に返して!」
この人が元凶だった。地球に返してと悲願するも申し訳無さそうに、「それは出来ない」と断られてしまった。来れたなら帰れるでしょ!?と言い返すも首を横に振られてしまう。
「時空の行き来は、一度しかだめなんだ。でないと世界に歪みが出来てしまう。今回、成功したのは奇跡みたいなものなんだよ?大丈夫。僕が守ってみせる。僕の花嫁。」
「嫌よ!!私は誰の花嫁にもならない!家に帰して!!!私を元の場所にっっっ」
目から涙を流しながら訴える椿が突然ふらっと意識を無くした。
「おやすみ。今は分からなくても、そのうち自分がいる事の大事さが分かるよ。」
チュッと頬にキスをしながら椿を抱きかかえる。
チリーン
静かにザイルから鈴の音が聞こえてきたが、椿は夢の中だった。
“異世界から呼んだ花嫁”
意味が分からなく、頭の中はパニックになり頭から煙が出るぐらい容量オーバー。
「ちょっと、あなたが言っていることが理解出来ないんですがーーー」
「あなた!もうそう呼んでくれるのかい?」
「は?」
「つばき。僕たち、上手くやれそうだね!」
椿の言った“あなた”がどうやら親しみを込めて呼ばれたと勘違いしたザイル。とても喜び満面の笑みでいる。
「あっ、間違えました。
銀髪でイケメンかと思いきや人の意見を聞こうとしないで勝手に話を進めてましてや花嫁とか急に言われても意味分かんないんですけどてか異世界から連れてきたとか何を言ってるのか理解不能だし人の顔を見てニヤケて若干気持ち悪いし本気で引いてるんですけど頭の中にお花畑が広がっている君。私にわかりやすく教えて下さい」
早口で捲し立て、椿はキッとザイルを睨みつけた。
態度では強がっているがぎゅうっと握りしめた拳はカタカタ震えている。それをみて、ザイルはブハッと吹き出してしまった。
「はっはっは!花嫁殿は気が強いんだな、嫌いではない。そうか、何から話せばいいかなーーーこちらへ来てくれ。」
椿の手を引きながら、ザイルは建物の外に出た。
そこには雲にかかった山々が見えていた。その事から、自分がいるのは山の頂上だと分かった。
そして、1番先に目に飛び込んで来たのは背中に羽が生えた人達だったのだ。
今まで、人間の他には獣人や妖精は見たことがあったが、翼を持った人間は見たことがなかったので驚いた。
「綺麗ーー翼も人も綺麗」
その姿は黄金比の様な美しさで、椿は見惚れてしまう。近づくといけない気がして、椿は静かに見つめていた。
「やっぱり。僕の思った通り、つばきは優しいんだな」
おいで。と中庭に置いてある長椅子まで椿の手を引く。
「ほら、ここからの景色が1番綺麗なんだ」
座って前を見ると、街並みが見渡せる場所だった。
建物が密集しているが、人々は楽しそうに笑顔で生活しているのが分かる。
「君たちは天使なの?」
「天使?違うよ。僕たちはーーーーー天上人なんだ、」
「天上人?」
「そう。天上人は、人よりも魔力が多くその容姿の美しさが人間から目をつけられているんだ。この山は、僕たちを隠してくれている。」
静かに話すザイルだが、その顔は怒りに満ちていた。
「君も天上人?翼が無いけど…」
「僕?ほら。」パチンと指を鳴らすと翼がバサっと出てきた。「うわっ!」と驚きつつもその純白の美しさに見惚れてしまう。
天上人とか言う種族は分かったが、それが何故わたしを?と疑問は消えないでモヤモヤしていたら続けて話してくれた。
「何故わたしが?って顔に出てるよ。ははっどうしてつばきだったのかは分からない。だけど、僕の呼びかけに答えてくれただろう?」
「呼びかけ?」
「そう。魔法陣から出てくる予定だったんだけど、君は暗闇に紛れてしまった。僕には暗闇から助け出す力が無かったから、以前知り合ったアルの空間へと扉を繋げたんだけど、アルも意地悪だ。僕の所に送ってくれたらいいのに離れた場所につばきを置いてしまうから、連れ戻すのに時間がかかってしまった…迎えに行くのが遅くなってごめんよ?」
金色の瞳には、椿しか見えていない。純粋な目で見られ、椿は視線を逸らしてしまった。
(アルってアルテミスの事?えっと…神さまだよね?神って知ってるの?いいえ、そんな事よりも帰れるなら帰りたい)
頭の中で整理しながらも感情が先に出てしまう。声を荒げてしまうが、ザイルは表情を変えず椿を見ていた。
「っわざわざ!…わざわざ、私を呼ばなくても女性は他にもいるでしょ?私を元の世界に返して!」
この人が元凶だった。地球に返してと悲願するも申し訳無さそうに、「それは出来ない」と断られてしまった。来れたなら帰れるでしょ!?と言い返すも首を横に振られてしまう。
「時空の行き来は、一度しかだめなんだ。でないと世界に歪みが出来てしまう。今回、成功したのは奇跡みたいなものなんだよ?大丈夫。僕が守ってみせる。僕の花嫁。」
「嫌よ!!私は誰の花嫁にもならない!家に帰して!!!私を元の場所にっっっ」
目から涙を流しながら訴える椿が突然ふらっと意識を無くした。
「おやすみ。今は分からなくても、そのうち自分がいる事の大事さが分かるよ。」
チュッと頬にキスをしながら椿を抱きかかえる。
チリーン
静かにザイルから鈴の音が聞こえてきたが、椿は夢の中だった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる