異世界の花嫁?お断りします。

momo6

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突然、言われた言葉が椿の心に何度もくりかえす。

“異世界から呼んだ花嫁”

意味が分からなく、頭の中はパニックになり頭から煙が出るぐらい容量オーバー。


「ちょっと、あなたが言っていることが理解出来ないんですがーーー」
「あなた!もうそう呼んでくれるのかい?」
「は?」
「つばき。僕たち、上手くやれそうだね!」

椿の言った“あなた”がどうやら親しみを込めて呼ばれたと勘違いしたザイル。とても喜び満面の笑みでいる。

「あっ、間違えました。
銀髪でイケメンかと思いきや人の意見を聞こうとしないで勝手に話を進めてましてや花嫁とか急に言われても意味分かんないんですけどてか異世界から連れてきたとか何を言ってるのか理解不能だし人の顔を見てニヤケて若干気持ち悪いし本気で引いてるんですけど頭の中にお花畑が広がっている君。私にわかりやすく教えて下さい」
早口で捲し立て、椿はキッとザイルを睨みつけた。
態度では強がっているがぎゅうっと握りしめた拳はカタカタ震えている。それをみて、ザイルはブハッと吹き出してしまった。


「はっはっは!花嫁殿は気が強いんだな、嫌いではない。そうか、何から話せばいいかなーーーこちらへ来てくれ。」
椿の手を引きながら、ザイルは建物の外に出た。

そこには雲にかかった山々が見えていた。その事から、自分がいるのは山の頂上だと分かった。
そして、1番先に目に飛び込んで来たのは背中に羽が生えた人達だったのだ。

今まで、人間の他には獣人や妖精は見たことがあったが、翼を持った人間は見たことがなかったので驚いた。
「綺麗ーー翼も人も綺麗」
その姿は黄金比の様な美しさで、椿は見惚れてしまう。近づくといけない気がして、椿は静かに見つめていた。

「やっぱり。僕の思った通り、つばきは優しいんだな」
おいで。と中庭に置いてある長椅子まで椿の手を引く。

「ほら、ここからの景色が1番綺麗なんだ」
座って前を見ると、街並みが見渡せる場所だった。
建物が密集しているが、人々は楽しそうに笑顔で生活しているのが分かる。

「君たちは天使なの?」
「天使?違うよ。僕たちはーーーーー天上人なんだ、」
「天上人?」
「そう。天上人は、人よりも魔力が多くその容姿の美しさが人間から目をつけられているんだ。この山は、僕たちを隠してくれている。」

静かに話すザイルだが、その顔は怒りに満ちていた。
「君も天上人?翼が無いけど…」
「僕?ほら。」パチンと指を鳴らすと翼がバサっと出てきた。「うわっ!」と驚きつつもその純白の美しさに見惚れてしまう。

天上人とか言う種族は分かったが、それが何故わたしを?と疑問は消えないでモヤモヤしていたら続けて話してくれた。

「何故わたしが?って顔に出てるよ。ははっどうしてつばきだったのかは分からない。だけど、僕の呼びかけに答えてくれただろう?」
「呼びかけ?」

「そう。魔法陣から出てくる予定だったんだけど、君は暗闇に紛れてしまった。僕には暗闇から助け出す力が無かったから、以前知り合ったアルの空間へと扉を繋げたんだけど、アルも意地悪だ。僕の所に送ってくれたらいいのに離れた場所につばきを置いてしまうから、連れ戻すのに時間がかかってしまった…迎えに行くのが遅くなってごめんよ?」
金色の瞳には、椿しか見えていない。純粋な目で見られ、椿は視線を逸らしてしまった。

(アルってアルテミスの事?えっと…神さまだよね?神って知ってるの?いいえ、そんな事よりも帰れるなら帰りたい)
頭の中で整理しながらも感情が先に出てしまう。声を荒げてしまうが、ザイルは表情を変えず椿を見ていた。

「っわざわざ!…わざわざ、私を呼ばなくても女性は他にもいるでしょ?私を元の世界に返して!」
この人が元凶だった。地球に返してと悲願するも申し訳無さそうに、「それは出来ない」と断られてしまった。来れたなら帰れるでしょ!?と言い返すも首を横に振られてしまう。


「時空の行き来は、一度しかだめなんだ。でないと世界に歪みが出来てしまう。今回、成功したのは奇跡みたいなものなんだよ?大丈夫。僕が守ってみせる。僕の花嫁。」

「嫌よ!!私は誰の花嫁にもならない!家に帰して!!!私を元の場所にっっっ」
目から涙を流しながら訴える椿が突然ふらっと意識を無くした。

「おやすみ。今は分からなくても、そのうち自分がいる事の大事さが分かるよ。」
チュッと頬にキスをしながら椿を抱きかかえる。

チリーン

静かにザイルから鈴の音が聞こえてきたが、椿は夢の中だった。
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