異世界の花嫁?お断りします。

momo6

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挨拶も残りはザイルだけとなった。どうしても、エマも一緒にって誘ったけど…ザイルとギスギスしていれのを見ているのが辛かったからっていうのが本音。

後ろからついてくるエマがザイルの部屋に行くにつれて、顔が険しくなる。心配そうに見ると視線に気づいたエマがフニャリと笑いかけてくれた。
「無理言ってごめんね?大丈夫?」
「ふふ、何を心配しているのよ。私は全然平気よ?」
「ならいいけど・・・」
「心配性なんだから~」

言葉では大丈夫と言っているけど、目が笑っていない。
誘わない方が良かったかな?と思ったけど。黙って行くよりは話した方がいいと思ったからーー椿は自分に言い聞かせるようにした。

トントン
「誰だ?」
「椿とエマです。話があって来ました。」
「……入れ」
「失礼します。」

明らかに不機嫌な声の主は書類の山を確認している所だった。
ジロリとエマを見るがすぐに視線を逸らし、椿に話しかける。
「何かあったのか?」
「いえ、特別な事は無いんですが。お世話になったので挨拶に来ました。」
椿がそう話すとガタンッと椅子を倒しながら驚いたザイルが近づいてくる。
「それは、ここを出ていくのか?」
「はい。もう、2人で決めた事なんです。皆んなには挨拶は済んでいます。」
「お前も一緒なのか?俺と一緒は嫌なのか?」
動揺しているのか、ザイルの目には哀しみが宿っていた。
愛おしい人と離れるのは嫌だと目が訴えている。けれど、ザイルはそれを口にする事は無い。
「ザイル…世話になった。俺をまだ許せないだろうが、一緒に過ごせて良かったよ。」
エマが優しく話、「つばき、もう行こう。」と部屋を出ようとした。
ザイルを見ると目には涙が溜まっているのか、下をうつむきながら泣くのを耐えているように見える。
「じゃ、じゃあね。色々ありがとう」
お礼を言って部屋をでる。

なんだか寂しい挨拶になってしまったけど。エマを見ると複雑そうな顔をしていた。
「エマ…大丈夫?」
「ん?なに?大丈夫よ~」
私の前で、気丈に振る舞うエマが今は痛々しく見える。

それ以上は何も言わなかった。







荷物をしまい、ペガの所に行くと人集りが出来ていた。
別れをした人達だ。
「やっときた!!ほら!みんな!つばきちゃん達が来たよー!」
「ほんとだ!」
「また来てくれよな!」
口々に話してくれる言葉に胸が熱くなる。
「みんな、ありがとう」
涙が込み上げてくる。こんなに嬉しいお別れは無い。エマとギュッと手を握り人集りの中を進みながらペガに乗る。
「またっっまた来るからね!!」
言葉を詰まらせながら椿は最後の挨拶をする。
そして、ペガがバサリと翼を広げた時、「エマ!!!」大声で名前を呼ばれ振り向くとザイルが目を赤くしながら、エマに向かって何かを投げてきた。
エマが受け取ると、それは写真の入ったロケットだった。
「お前にやる!まだ許してないからな!!だからっっだから!絶対また帰ってこいよな!!絶対だぞ!!!」

言葉は乱暴だが、その顔は別れを惜しむ様に悲しく幼い顔をしていた。
エマはロケットをギュッと握りしめながら「あぁ!またくるよ!ありがとうザイル!!」
バサリバサッとペガが飛びだち、人々の歓声の中高く舞い上がった。
あっという間に雲の中を通り過ぎ、山々を通り過ぎていく。

椿を後ろから抱きしめるエマは泣いているのかいつもよりキツく抱きしめられた。
今はそっとしておこう。そう思い、ペガの背中に乗りながら遠い国を目指して進んでいく。

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