牢獄の天使は愛を知らない

momo6

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第一章

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 あれから、何も変わる事なく日々が過ぎていく。何年経っても慣れない匂い。

一つ変わった事といえば、私の成長。15歳になった私は周りから母親にそっくりだと言われる様になった。
 母親の顔は知らないが、サリーお姉さんに見せて貰った鏡で見た自分の姿は綺麗だった。

前世では、平凡な顔立ちだったけど。今の私は、パッチリと宝石の様にキラキラした金色の目。それに長いまつ毛。赤い唇に年齢の割に豊満な胸。細いくびれ。銀色の長い髪は、何度か切ろうとして、サリーお姉さんに泣きつかれたので切れず伸ばしている。キチンと手入れすればもっと綺麗なんだが、お風呂が未だに1週間に一度しか入れていない。うっすらくすんだ水で体を洗い流すだけのお風呂。前世での毎日のお風呂が恋しくなる。


サリーお姉さんが「今日仕事が終わったら、部屋においで」と言われ、洗濯場から急いで戻るとサリーお姉さんが待っていた。

「遅くなってごめんなさい。・・・サリーお姉さん?」
いつもと違う様子に戸惑う。
サリーお姉さんが泣いていたからだ。

「どうしたの?!何があったの?」

心配して側に寄るとぎゅっと抱きしめられた。
「私の・・・」
「なに?サリーお姉さん」
「……ううん。今日、あなたの就職先が決まったの。」
「うん。16には独り立ちするんだよね?」

うっうっ
静かに泣くサリーお姉さん。私だって離れるのは寂しいけど、いつまでもお姉さんに頼ってたらダメだと思ってる。
もう会えない訳じゃない。月に一度は休みが有り、戻ってくる事は出来る。
だけど、何の仕事か予想はしている・・・
「サリーお姉さん、私はどこに決まったの?」

「うっうっ私と同じ高燗(こうじゅん)。娼婦よ・・・」
「そう、」
予想通り。私の外見は、娼婦でも通用する。
でも、私は知らない人と関係を持つのは嫌。

闘技場だと自分の地位が持てる。飲食店でも良かったけど。私の身分は奴隷。お客に気に入れたら買われたりする。
だから、隠れて身体を鍛えていたんだ。闘技場に向けて。

「・・・娼婦になりたく無いのよね?隠れて鍛練しているのを見た時から知っていたわ。でも、闘技場に行って怪我すると思うと・・・うぅー、私の・・・ー」
サリーお姉さん、知っていたんだね。だから泣いてたの。大丈夫。怪我しても娼婦になるよりまし。
「心配してくれるのね、ありがとう。」

しばらく抱きしめて貰っていたら、落ち着いたサリーお姉さんが引き出しから袋を出した。

「これは?」
受け取ると中には、少しのお金と洋服が入っていた。
「闘技場に行くんでしょ?本当は嫌だけど、せめて大怪我はしないで。辛くなったらすぐ帰ってきてね。約束して。」

奴隷として、安易に戻れない事は知っていても不安なんだろう。
「うん。分かった、約束する。」
「っっっ!!」
「うん。サリーお姉さん。私は大丈夫だよ」


その夜、サリーお姉さんと一緒に寝て。昔に戻ったみたいだった。
明日から闘技場。娼婦には断りを入れる。職場は、一応奴隷達の意見も聞いてくれるから皆、自分に合った職場を選べる。お客も選びやすいと聞いたことがある。
ーーーノウボア一族は、奴隷がどうすれば高く売れるのか考えた結果だと言う事も聞いてしまい嫌な気持ちになる。


まだ薄暗い中、ゴーンと鐘の音がなる。

(朝か、もうサリーお姉さんとはお別れしないと)

まだ寝ているサリーお姉さんの手をそっと握り
「いってきます。お元気で」
小さくお別れをした。

「!!みや!!」
ガバッと起きたサリーお姉さんがぎゅーっと抱きしめてきた。
「みや!みや!!私のみや!」
「みや?」

私の名前は142番、っと喉からデカかった時にサリーお姉さんが口を塞いだ。
「ずっと、そう呼びたかったの。私の子供が生きていたらみやって名付けたかったから・・・みや。あなたを本当の娘の様に思っていたわ。」

サリーお姉さんの過去を初めて知り戸惑いながらも、他の子に比べて特に可愛がってくれていたのは知っている。私をここまで育ててくれてサリーお姉さん。
本当のお母さんだったらと、何度思った事か・・・胸の中で熱いものが込み上げてくる。

「…お母さん」
「!みや!!私の可愛い子!体に気をつけてっっ」
「うん。うん。お母さんも・・・ね?」

2人で涙を流しながら、別れを言うと荷物を取り手続きに向かう。

「さよなら、サリーお母さん」
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