牢獄の天使は愛を知らない

momo6

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第一章

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「明日の優勝者には、オレからプレゼントがある!みんな精一杯やりきれよ!!」

うぉーー!っとバロフの喝に会場が揺れる。

バロフが高くジャンプするとそのまま、奥の建物に消えていった。
バロフがいなくなった後、熱気が益々ヒートアップして会場は盛り上がりを見せる。
支配人が演目を話すと待っていました!と煌びやかな奴隷達がステージに上がって来た。
今日一日、催し物で賑わう様だ。

「バロフ様って凄いんですね」
「あぁ、バロフ様のお陰で今の俺たちがいる。こんなに自由に出来ているのは有難い事だ。奴隷だと忘れさせてくれる。」
「・・・そうですね、外とは大違いです。」

「ティア?」

消え入りそうな声は、会場の声にかき消されてしまう。ティアはジッとステージを見ていた。
数日前まで、酷い悪臭の中で生活し、食べ物も匂いが酷く噛み切れない物だった。
イワンセスに連れて行かれた高潤ではむせ返る甘ったるい匂いに吐き気がしたが、ここは比べ物にならないほどだ。汗臭いのは皆が生きて頑張っている証拠。食事も美味しい、前世の記憶が薄れているけど、それに比べたら味は劣るがあの場所よりは良い。

前世、私は本当に死んだのかな?もしかしたら、これは夢なんじゃーーーいや、そんな事は無い。
サリーお母さんも、アマンサもランガもいる。
私は奴隷として生きていくしかないんだ。

隣を見るとランガと目があった。
優しい目。
恋はしないと決めたのに、この人を見ると気持ちが揺らいでしまう。
ダメだ、私は絶対に恋をしては行けない。この世界で生きるには、奴隷では無く自由を手に入れないとーーー恋をして、離れ離れになるのは辛すぎるから・・・私は恋をしない。


ズキン


「っっ」
突然の頭痛に頭を押さえる。
「どうかしたのか?」

ランガがティアの頭に触れるとバチッと静電気に驚く。
「・・・大丈夫です、どうかしました?」
静電気が起きたのをティアは気付いていないようで、ランガは静電気には触れず「どこか痛いのか?」と問いかけた。

「ーー朝から頭痛が少しあって、疲れが出たのかも知れないです。」
「そうか、ここだと騒がしいからな。別の場所に移動するか?」
「ランガさんは見ないんですか?」
「俺はバロフ様が見れたから他は興味ない。」
「ふふ、そうですか。では移動しましょ」

人混みの中をかき分けながら闘技場を出ようとする。
中々前に進めないランガは、人混みに押されているティアを抱き寄せて、強引に進んでいく。




やっとの思いで抜け出した2人はどっと疲れが出た。
「何か飲もうか」
そうですね。と答えると核の方へ歩いていく。
バロフの演説が終わったからかまばらに人が歩いている。
チラチラとティアを見る人にランガは睨み威圧する。当の本人は気にも止めていないようで困る。
心の中で深いため息をするも目を離すとワザとティアにぶつかろうと近づく者がいるから気が休めない。

「ティア、甘いのは好きだったよな?」
ランガの質問に耳がピクっとなるティアは「甘いのでも何でも好きです。」と顔を赤くしながら答えた。恥ずかしいのか目を合わせてくれない。
そんな姿が可愛くて、意地悪をしたくなる。

「なら、ここで飲み物を買おうか。苦いのもあるがどうする?何でも好きなんだろ?」
「!!そ、そうです。苦いのも飲めますよ?・・・でも、甘い方が飲みやすいです。」

ククッと可愛らしい答えに笑いが溢れてしまう。
何て愛らしい生き物なんだ。

「ここで待ってて。今買ってくるから」
「え、お金は持ってきましたよ!私も買えます!」
「このぐらい大丈夫だ。すぐ戻る」
プーと膨れるティアにランガは頭をポンと撫で店に入っていく。
周りには人がいないから大丈夫だと判断したのだ。
残されたティアは椅子に座り、空を見る。
この国はいつも晴れている。
天候が悪いと客足が途絶え、儲けが無いとこの国自体にバリアがかけられていると聞いた事がある。元々雨は降らないようで、あまり意味はない様だ。
四季は無く、年中砂漠の様な暑さだ。夜はヒヤッと寒い時がありサリーお母さんが抱き寄せて人肌が温かかった。

そんな事を考えていたら、視界が暗くなる。
「あれ~?こんな所で1人で何してんの?」
首からキラッと光りタグが見えた。

「・・・」
「女の子なんて珍しいじゃん!オレも1人だから一緒に回ろうぜ?」

知らない顔の男性は、ティアに詰め寄るとベタベタと肩に手を回してきた。
話したくないティアは無言でいると気に障ったのか男は「話せないなんて言わないぜ?喋れるのは知っているんだぜ?ランガといつもいる女の子ってお前だろ?」

不意にランガの名前が出て顔を上げてしまい、
ニヤリと不敵な笑みをする男と目が合ってしまう。額に大きな傷があり痛々しい。緑色のふわふわした髪をかき上げながら黒い目は獲物を捕らえた眼光でティアを見つめる。

ぞくっと背筋が震えるもティアはだんまりする。
「おいおい、本当に話せないのか?そんなはずないよな?」
男の手がティアの顔に触れるとバチッと静電気が起きた。
「いて!何だ今の?」
何が起きたのか分からずキョトンとしてると、
「おい、何やってんだ!」
ドンっと男が椅子から落ちる。ティアの後ろからルイが手で男を押し倒したのだ。

「大丈夫か?変態に何かされなかったか?ランガはどうした、いつもいるバカはどこ行ったんだ?」
ルイが助けてくれた。嫌いな赤い髪のルイが今は心強い。それは、倒れた男のタグが赤だったからだ。

「ーー今、飲み物を買いにお店にいます。」
カタカタと小さく震える声にルイは、キュンと胸が締め付けられる。
「はぁぁ、可愛い。やっぱりオレにしとけよ~ランガより可愛がってあげるのにな~」
いつものルイに強張っていた手から力が抜ける。

「おいおいおい、ルイがいるなんて聞いてないぜ~?ランガだけじゃないのかよ~って!やっぱり話せるじゃーん!可愛い声だった~もう一回話してよ!!ね?いいよね?」
飛び上がった男はティアに近づき、またルイにドンっと押されて尻餅を付いた。
「もー!邪魔するなよな!ルイには関係ないだろ~!!」
「うっせーな、お前には崇拝してるアシュリーがいるだろーが!」

ピクっ
聞いた事のある名前に反応する。

「さま!アシュリー様!様を付けろ!失礼だろ!」
「ほらほら、アシュリーに浮気してるってバラしちゃうぞ~?いいのか~?」
「!!そ、それじゃぁおれは用事が出来たから行くとするか。ルイ!覚えていろよ!!」

サササッと逃げる様に走って行く男は、ちくしょーと捨て台詞を言っている。

「はん!カス野郎が、2度と近づくんじゃーねーぜ」
「ーーありがとう。」
「ん?あぁ、別にいいさ。バロフ様は見たか?他は興味ないから核で何か食べようと思ったらお前が目に入っただけの事だ気にすんな。」
ぶっきらぼうに話すルイは、ティアの隣に座りギーコーギーコー椅子を揺らす。

沈黙の中「あの、さっき話してたアシュリー様って?」気になった事を質問すると、ルイはあぁと言いながら話してくれた。
「Aランクのアシュリーは、男なんだけどよ。女みたいに髪や服をしていてさ、化粧までしてるんだぜ?まぁ、女より女らしいが。それに男達を側に置いてハーレムにしてるって言うが、俺は男なんて嫌いだし女の方が好きだ。お前みたいに可愛いなんて最高じゃんか。」
ジッと熱い瞳でティアを見つめる。
視線を逸らすティアは店から出て来るランガに気が付いた。

ランガは、手にコップを持ちながら戻ってくると
「ルイ?いつ来たんだ?」
ティアの隣に座るルイにランガは不思議そうに見る。
「おっせーよ!可哀想に男に絡まれてたのをオレが助けたんだぜ?」

「!!何?すまなかった、ティア?大丈夫だったか?」
「あ、はい、大丈夫ですよ。」
本当は怖かったけど、心配させたくない一心で答える。

「すまない。次からは一緒に買いに行こう。ほら、これがさっき話した甘い飲み物だよ。」
ランガに手渡された飲み物はうっすらとピンク色をしていた。

一口飲むと「!」口の中に甘い味が広がる。
「美味しい」
ふにゃっと笑うティアに2人が胸を撃ち抜かれた。
「ティアは甘いのが本当に好きなんだな」
「え?そーなの?じゃぁ俺も甘いの買ってくるから!そこで待ってろよ!絶対だぞ!」
ルイが急いでお店に行ったのを確認すると、ランガは「飲み終わったか?じゃぁ行くか」と席を立ってティアの手を取る。

「またないんですか?」
甘いのが気になるんだけど。せっかくなら甘いのが食べたいなと思っていたら顔に出ていたのか、
「まさか、俺より甘いのがいいのか?」
ランガの顔が急に目の前にきてドキッとする。

「えっと、、」
ティアの困った顔にランガはグイッと腕を掴み抱き寄せると耳元で囁いた。


「俺だけをみてくれ」
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