呪鬼 花月風水~月の陽~

暁の空

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第四話 早瀬警察署 四課

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次の日、千春が いつものように探偵事務所前で車を止めていると、百月がいつものように探偵事務所から出てくると、車に乗り込んできた。しかし、彼女はどこか浮かない表情をしていた。
 (ん?何かあったのか?)
 そう思いながら千桜は車を発進した。
「おはよう。ん?どうした?なんかあったか?」
 百月は口を開きまたつぐみ、千桜をバックミラー越しに見つめるが視線をそらした。
「⋯いえ、なんでもないですわ」
「そうか。なんかあったら絶対言えよ?」
 百月はチラッと千桜を見ると再び口を開くがすぐに下を向いてしまった。
 (なんだ?⋯でもここて無理矢理聞くのは違うよな)
 俯いたままの百月をチラリと千桜は見るがそのまま何も言わず車を走らせた。
 警察署に着いた2人が受付を済ませ警察ロビーで待っていると、しばらくして建物の奥から鴉飛が慌てた様子でこちらに走ってきた。
 「すみません。お待たせしました。こちらです」
 そう言い、鴉飛はエレベーターに案内すると2階のボタンを押した。2階に着くと鴉飛はいくつも部署名が書いた部屋を通り過ぎついには、廊下の端まで来た。そして、そのまま鴉飛の姿は壁をスルりと通り抜けた。
「えっ?!」
「はっ?!」
 百月も千桜も思わず驚き声が漏れると、再び壁からひょっこり鴉飛が顔だけ出した。
「大丈夫です。そのまま通って来てください」
 そう言うとまたひょこっと壁の向こうに消えていった。2人は顔を見合わせると、ゆっくりと壁に向かって歩いて行った。すると、2人の体は壁を⋯すり抜けた。すり抜けた先にはいくつもの机と椅子が並ぶ何の変哲もない部屋だった。
「これは⋯」
「あ、いらっしゃったんですね。ようこそ四課へ」
 聞き覚えのある声に2人が振り返るとそこには昨日と変わらない笑みを浮かべた甘美瑛がだっていた。
「さっ、いきましょう」
 甘美瑛に背中を押されて行った先には20代後半ぐらいに見える 青年が鴉飛と話をしていた。
「部長、お客さまです」
「甘美瑛、お疲れ様。やぁやぁ。わざわざ来てもらって悪いね」
 青年はニコニコと笑みを浮かべ言うと話を続けた。
 「はじめまして。俺の名前は鬼瓦元治おにがわらげんじ。この班の班長をさせてもらっている」
 千桜は胸元から警察手帳を取り出し開いて見せた。
「警察庁捜査一課の望月です」
「ほぉ。君も警察官だったのか。そこのべっぴんさんは?」
 そういうと鬼瓦は視線を向けた。
「えっ⋯と⋯百月探偵事務所の所長をしています、百月百華ですわ」
「ほぉ。その若さで探偵とはすごいね」
「いえ⋯それほどでも」
 百月は恥ずかしそうに俯いた。
「いやいや。すごいと思うよ。さて、そんなおふたりに今日来てもらったのは話とお願いがあってね。まず、君たちは、「異人」って知ってるかい?」
「昔は自分がいた村に来た「宗教者」や「行商人」を『異人』って呼んでいたというのは聞いた事がありますわ」
 顎に手を当て少し考えたあとに百月が言った。
「他にも他の国から来た人を『異人』と呼んでいた時期もありましたね」
「ほぉ。二人ともよく知ってるね」
「えぇ。で、それが⋯どうされたのです?」
 百月が首を傾げ尋ねた。
「たしかに君たちの言うのは「異人」だが、今回の場合の『異人』は「もののけ」とか「鬼」のことをさすんだ。⋯まぁ、これは見てもらった方が早いかな」
 頭をかきかき鬼瓦は言うと、細かった鬼瓦の体はみるみる屈強な物になり頭からはメキメキと角が頭から生えてきた。
 驚き一歩下がる2人を見た鬼瓦は苦笑いするとメキメキっと鬼瓦は元の青年の姿に戻った。
  「いやぁ、驚かせてごめんよ。こんな感じで人間に化けて生きているのが「異人」なんだ」
「そして異人」がやった殺人や強盗を取り締まるのが俺たち第四課討伐班の仕事です」
 そう言い鴉飛は甘美瑛を見た。
「最近も鬼が暴れていると報告があるんだけどこれが少し妙でね。君たち、これに見覚えはないかい?」
 そう言い鬼瓦が手にしていたのは白い紙から切り抜かれた人形だった。
「吾妻光輝という少年の部屋に同じ物がありました。そして、彼の学校で話を聞いたら「カタシロサマの使い」っていう人からある廃神社で配られているという話を聞けました」
「なるほど」
 鬼瓦は考え込んだ後に2人を見た
「ならば君たちにお願いがある。君たちもこの事件の捜査を手伝ってほしいんだ」
「⋯それはどんな事件ですの?」
 鬼瓦はチラリと鴉飛を見た。
「今年の7月26日に女性が路地裏で臓器を喰われた状態で発見されたのがはじまりです。その2日後の7月28日に男性会社員が殺され、そこからなぜか8月、9月と鳴りを潜め10月1日に1件、11月6、13、20と立て続けに起き、今月に入ってからも3日と11日と2件同様の手口の事件が起きています」
「⋯それは同じ曜日とか、それこそ満月だったとかありますの?」
 百月は首を傾げながら尋ねると、鴉飛は首を振った。
「曜日はバラバラでした」
「月も⋯違うみたいだな」
 そう言うと千桜は携帯から顔を上げた。
「そうですか。こうゆう連続殺人は犯人なりのこだわりがあったりするんですが⋯」
「それがなく日付も襲われた場所も年齢もバラバラですし、被害者に接点もありませんでした」
「このバラバラ具合⋯なんか似てるな」
「似てるとは?」
 ボソリと千桜が呟くと鬼瓦が問い返した。
「一課が追っている事件も被害者は皆、大学生という共通点ぐらいしかなく、大学も被害者に接点もないんです」
「詳しく話してくれませんか?」
 百月の言葉に千桜は困ったように頭を搔いた。
「んー。守秘義務ってのがあるんだよなぁ」
「ならば、彼女も協力して「警察」に一時的になればいいのではないかい?」
 ニコニコしながら鬼瓦は言った。百月は少し困惑した表情を浮かべた。
「そうですわね。凛さんに説明するためにも色々と知らないといけませんし。協力させていただきますわ」
「そうかそうか。ならばそしたらこれを」
 そう言うと鬼瓦は百月に警察手帳をわたした。
「さて、彼女も警察になったからこれで守秘義務はなくなったね」
 ニコッと笑い鬼瓦の言葉に千桜は苦笑いを浮かべ千桜は話しはじめた。
「7月12日に1人の大学生が行方不明になったのがはじまりです。その大学生が8月21日に腹を爆破され遺体で発見されます。その後、9月3日と21日に同様の手口の死体がそれぞれ別々のところで上がり、30日にまた大学生が行方不明になります。そして、10月になり立て続けに18日、21日と死体があがり、11月1日に大学生が行方不明になるが23日に死体で見つかりました。そして今月になり吾妻光輝と吾妻夫妻が行方不明になっています」
「なるほど⋯なんだか事件の雰囲気は似てますわね」
「雰囲気ね⋯たしかに似てるよな。起こっている時期も同じだし⋯何か繋がりがあるのか?」
「⋯四課としはどうお考えですの?」
 百月は鬼瓦を見た。
「我々しては新たな種類の鬼が現れそいつが暴れていると考えている。臓器を食べるのは鬼の補食の特徴だからな」
「⋯鬼瓦さんは⋯その人を食べたりは」
 すると、鬼瓦は豪快に笑いだした。
「いやいや、昔はそんな話もあったが、俺は人間なんかより日本酒と⋯そうだなタレの焼き鳥なんかが好きだ」
「昔?」
 千桜が問い返すと、甘美瑛がニコリと笑った。
「部長は人間そちらでは酒呑童子と呼ばれていた鬼ですよ」
 ギョッとした表情を浮かべ2人は鬼瓦を見た。
「しかし、酒呑童子は源頼光に首を落とされたと⋯」
 百月が言うと鬼瓦は「あぁ」と言いながらポンと手を打つと百月を見て続けた。
「懐かしなぁ。たしかにあいつは俺を倒しに来たが、俺は別に村も人も襲ってないことを淡々と話たら理解してくれたのさ。ただ手ぶらで帰したらやつが何か言われたら可愛そうだから、その時期に村を襲っていた鬼の首をむしとってきたから、それをわたしておいた。いやぁ、あの宴は楽しかったが、やつが酒が弱くてなぁ」
「いや、恐らく部長がとんでもなくお酒に強いだけだと思いますよ」
 まるでコントのような会話に千桜と百月は苦笑いを浮かべた。
「さて、そろそろ俺もお暇しようかな。君たちもそろそろ帰りなさい」
 そう言い「さぁて今日はどこで飲もうかなぁ」と呟きながはルンルンで壁を鬼瓦は抜けていった。
「ということなので、今日はこれで」
 鴉飛は少し苦笑い気味に笑みを浮かべながら言った。
 千桜と百月は四課をあとに車に乗り夜が迫る寒空中を車を走らせた。
「なぁ」
 探偵事務所前についた千桜は車をおりた百月を呼び止めた。
「⋯なんかあったら本当に連絡しろよ。分かったか?」
 百月は少し切ない表情を笑みと共に浮かべ扉を閉めると探偵事務所に向かって歩いていった。その背中が探偵事務所に入るのを見送ると千桜は車を発進させた。
 
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