テディベア

倉地秋穂

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まずは、妹を事故に見せかけて殺すことにした。夏は水辺の事故が増えるからか、誰も不自然には思わなかった。

母は落ち込んでやつれた。妹の死の悲しみからか、以前のように私への愛情の比重を増やしてきた。
すり寄って来た母の姿に、私は嫌悪感しかなかった。

自殺するように追い込むのは、気持ちが良かった。効果的に母が自分を責めるように言葉を選びつつ、優しく接した。

雪が散らつく頃に母は死んだ。

父は妹と母の死から仕事に打ち込んでいた。私とどう関わって良いかわからないようだった。

そんなに逃げたいのなら、遠くに行けるようにしてあげよう。そう思ってより一層仕事に打ち込めるようにサポートしてあげながら機会をうかがった。父と顔を合わせて話すことはほぼなくなっていった。


「ごめんな」


珍しく顔を合わせたと思ってたら、父から謝罪の言葉をかけられた。

何に対しての謝罪なんだろうか。私の今までの悲しみや辛さより、自分が一番不幸だと思っているのだろうか。なんてひどい人なんだろう。

父はその日会社に出かけて、二度と自宅には帰って来なかった。
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