夏風はショートカットを撫でるように

あ゙あ゙あ゙あ゙(仮)

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第8話 ストレッチは危険地帯 ①

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 部活後の誰もいない部室。

 夕暮れのオレンジ色が差し込む中、俺は幼なじみの『王子様』こと薫の太ももをつかんでいた。

「あー、そこ。そこヤバい。マジでキてる……うぅくぅっぅう」

 ロッカー前のベンチにうつ伏せで倒れ込み、薫が汚れたユニフォーム姿のまま足を投げ出している。

「投げ込みすぎだ。肩壊すぞ」

 彼女は今日、朝練でも放課後の部活動でもハードなピッチング練習に没頭していた。

 甲子園に向けて球児の目が変わる時期だ。エースとして仕方ないのだけど……。

 ケアを怠れば明日に響く。だからこうして、俺がマッサージ係を買って出ているわけだが……。

(……なんで俺が……)

 ――と相反する感情も湧く。

 小さい頃の夢……『甲子園に行く』

 その夢はもう無い。

 無いのに目の前にはある――

 幼なじみの女の子の……この小さい体に……。

「大事な体なんだから」

 健康的な小麦色の太ももを丹念に揉みほぐす。

 俺の手の平には、怒りや、嫉妬や、情念や、思いやり、様々な感情がこもっている。

「くぅっぅっどんどん美味くなっていくなぁ姫」

「姫いうなっ」

 ユニフォームのズボンを膝上まで捲り上げ、引き締まった太ももが露わになっている。

 見えている部分は健康的な小麦色の肌。 ――けれど、ズボンの裾を少し押し上げると、そこには太陽を知らない真っ白な肌の境界線が走る。

 薫の白い肌を見る度にビクンと股間に電流が走る。

(ダメだダメだ)
 
 俺は頭を振り、邪念を振り払い、境界を越えて、彼女のハムストリングス(太ももの裏)を親指でグイグイと押し込む。

「んっ、あ……! りょ、涼、そこ……強すぎ……っ」

「我慢しろ。ここが固まってるんだよ」

 薫がビクンと足を跳ねさせる。

 その拍子に、汗ばんだ彼女の太ももの裏が、俺の手のひらに吸い付くように触れる。

 じわりと伝わる熱さと、弾力のある柔らかさ。 筋肉質なのに餅のような感触。やっぱり女子なんだと思い知らされる。

 もう一度頭を振り、邪な気持ちを払う。

 体重を乗せて親指を押し込むと顔も薫の体に近づく。
 鼻をくすぐるのは、制汗スプレーの爽やかな香りと、その奥にあるツンとした甘酸っぱい汗の匂い。 部活特有の、熱気を含んだその匂いが、俺の理性をじわじわと削っていく。

(……まずい)

 ムクムクと肥大化する股間のバット。薫がうつ伏せで寝ていて後ろを見ていない。だから気付かない。
 バレたら、ぶっ飛ばされそうだ。
  
 夢の中の薫なら、受け入れてくれそうだけど……。

 これは夢じゃない。

「次は股関節だ。開くぞ」

「ういーっす……お手柔らかに頼むよ、姫ぇ」

「姫言うな」

 軽口を叩く薫の足首を持ち、膝を曲げさせて、外側へと開いていく。

 野球選手にとって重要な股関節のストレッチ。 今まで何百回とやってきた、ただのルーティンワークのはずだった。

 ――ググッ。 俺が体重をかけて、彼女の股関節を限界まで開いた。その時。

「ひぁっ……!?」

 薫の口から、グラウンドでは絶対に聞かないような、妙に甲高い、濡れたような声が漏れた。

「へっ変な声出すなよ」

「だって……」

 俺の手は、彼女の内太ももの、かなり際どい付け根付近を押さえている。
 でも、それはいつものことだ。

 薫の耳……。

 赤い……。

 まさか……最初からずっと……。

「ばっバカ、いつもやってることだろ」 

「そ……そうだけど……」

 こんなリアクションされると、俺だっておかしくなる。
 いま触れてる場所……ユニフォームのズボンの生地越しとはいえ、あまりにも柔らかく、そして熱い場所だ。 いわゆる薫の大事な場所の数㎝横……。

 筋肉質で硬い太ももの外側とは違う。

 そこは、皮膚が薄く、血管がドクドクと脈打っているのが分かるほどデリケートな秘密の場所……。

「ごくっ……」

 薫のせいで、俺まで動きがぎこちなくなる。

 手のひらに、蒸れたような湿り気が伝わってくる。
 練習後の汗と体温がこもったズボンは、驚くほど熱く手の平と心を焼く。

「あ……う……んんっ……」

「変な声出すなって」 

「だって……んんっ」

 薫が自分の口を手で覆い、甘い声を抑える。

 その顔が、さらに赤く染まっていく。

 夕日のせいじゃない。

 耳たぶや首筋まで真っ赤だ。

 変だ……あの夢を見た日から、何かが変だ。

 普段通りの二人なのに。

 ちょっとしたことで、心臓がドキドキして……。

 顔が熱くなる……。

 俺の感情が、薫に伝わってるのか?

 薫まで、ぎこちなくなってる。

 一生懸命、普通を装ってる。
 
 ドキドキが焦りを生み、焦りが裏目に出る。

 押し込んだ指先が、汗で湿ったズボンですべり、ズルリとさらに奥――股間の中心へ滑ってしまったのだ。

 ズボン越しに浮かぶ、女の凹み。
 凹みにはまるように指がグリグリと、めり込む。

「ひゃうッ!!」

 さっきよりも大きく、艶っぽい悲鳴があがった。
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