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BSS
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ベッドに眠っている子供たちを見届けて、僕たち夫婦の寝室に向かう。ベッドに先に入っている彼女は今日も魅惑的な表情で積極的に迫ってくるだろう。
その前に少しだけお酒を飲むことにした。アルコール度数の高いワインは彼女の生まれた年に作られたもので数が多く出回っている。きっと豊穣の女神様も彼女が産まれたことに対して喜んでいたのだろう。
――長かった。彼女を手に入れるまで、とても時間がかかった。
協力的ではない父に鉱山の名義を渡して彼と離してしまったことが少しだけ後悔している。ロランジュはいい奴だった。8歳の時に戦場にやってきた時から親友で私たちは家族に話せないことも沢山話していた。
彼が戦争が終わって、孤児院の訪問をした時一人の少女を好きになってしまったと聞いたとき一緒に喜んだ。10歳も年下のルビーと言う名前の少女は賢くて美しいと話していた。
「結婚をすればいいだろう。戦争の褒賞で娶ればいい。男爵は断る方ではない」
その時、僕は女性に興味がなく結婚したら呼んでくれと言っていた。
少し前に貴族学校の卒業式に侯爵令嬢のパートナーとして仕方なく参加した時。彼女は第二王子の婚約者だが、第二王子が男爵令嬢に夢中になってパートナーを断られていた。
卒業パーティーの終盤、訳の分からない婚約破棄騒動は時間の無駄にしか思えなかった。17歳の少年少女が何をやっているのだろうか。高位貴族の癖に他人の時間ばかり奪う寸劇。
戦場から戻ってきて寝ていない。身体のふらつきを我慢して立っていた。弱さを見せるといけないと母から言われた言葉を思い出した。
『お前のように愛を知らない愚かな人間は朽ちるといい』
侯爵令嬢に放たれた魔法を剣で受け取ったが身体に降りかかった。何事も身体に起こらず王子が捕まって拘束された。この魔法は時間をかけて徐々にかかる魔法だと気がつかなかった。
屋敷に戻ると母から何があったのか事務的に聞かれて問題が起こらないのか質問されて答えた。それだけのはずなのに胸のモヤモヤが消えなかった。思えばこれが始まりだった。
半年近く検査をしても症状が出なかった事で、僕は普通の生活に戻ることが出来た。平和になった世界で、両親に囲まれた生活は憧れていた生活のはずだった。
母が毎日結婚しろと領地の事をもっと気にかけろと繰り返す。近衛騎士団に戻り、時間がない中で領地経営や婚約者の釣書を見てため息を繰り返す日々。僕は母のように一度見たら忘れられない能力はない。これまで努力して手に入れてきた物ばかりだ。
10年前戦場に送った母は僕を見て「兄に似てきた」と言っていた。意味が分からず聞こうとすると母が気持ちの悪い顔をしてこちらを見ている気がした。
***
それは長い年月をかけて蝕んでいた。
身体は5年の月日をかけて身体を小さくさせて魔力を奪うわれてしまった。
身体が小さくなったことで始まった母の暴力は、自分の兄が母に暴力を奮っていたみたいに同じことを僕にしていた。毎日恐ろしくて怖くて仕方がない。父は息子が小さくなっても知らない振りをしていた。
何度も繰り返して脱走しても無意味だと思った僕は、隙をついて逃げることに成功した。二度と家に戻りたくない。しかしそれは一瞬で終わりを告げる。
男たちに捕まって奴隷のような生活が待っていた。立て付けの悪い部屋で集団で生活して病気に怯えながら過ごす日々。戦争が終わったはずなのにここでは当たり前に同じ生活をしていた。
「お父さんに会いたいよぉ」
話を聞いて見ると戦争で両親を亡くした子供たちが住む場所を求めてやってきた。僕のように掴まってくる子もたまにいるみたいだ。
5年間沢山の暴力を奮われて、元の人格が残っていなかったら彼らが教えた通り犯罪行為を繰り返すことになっていただろう。指が折れ曲がり、何度も繰り返し殴られて強制された。彼らに言葉なんて通じない。
逃げ出した時は必死だった。公爵家を自分の意思で抜け出したわけと全く違った。戦争孤児全員で一気に脱出して助けを求める計画だった。後ろで一人また一人捕まって、僕はついに倒れてしまった。
もう疲れ切った身体はお腹が空いて一歩も動けない。追いかけてきた男たちの声が聞こえた。もうこのまま死んでもいいんじゃないかと思っていた時、呑気な声が聞こえてきた。
「まあ、なんて可愛い子」
浅く呼吸をして声の方向を向くとピンクの髪の毛で大きな宝石のような瞳の少女が目の前にいた。頭から水をかけられて服を脱がされた。その場で服を捨てられて全裸にされたまま馬車に乗ると子供用のローブを着せられて温かい紅茶が口元に運ばれた。口の中が虫歯だらけで飲み込むだけで痛みが走ったけれど、久しぶりの紅茶の味を堪能したくて少しずつ飲み込んだ。
「可愛いねぇ 可愛いですねぇ」
女の子に抱き寄せられて肩に触れられても助けられた実感は湧かなかった。
王子と一緒にいた男爵令嬢も同じようなピンクの髪の毛で苛立ちが止まらず生意気な態度を取っていた。あの時に戻れるならルビーに最初に言う言葉は感謝の言葉だと理解している。
その前に少しだけお酒を飲むことにした。アルコール度数の高いワインは彼女の生まれた年に作られたもので数が多く出回っている。きっと豊穣の女神様も彼女が産まれたことに対して喜んでいたのだろう。
――長かった。彼女を手に入れるまで、とても時間がかかった。
協力的ではない父に鉱山の名義を渡して彼と離してしまったことが少しだけ後悔している。ロランジュはいい奴だった。8歳の時に戦場にやってきた時から親友で私たちは家族に話せないことも沢山話していた。
彼が戦争が終わって、孤児院の訪問をした時一人の少女を好きになってしまったと聞いたとき一緒に喜んだ。10歳も年下のルビーと言う名前の少女は賢くて美しいと話していた。
「結婚をすればいいだろう。戦争の褒賞で娶ればいい。男爵は断る方ではない」
その時、僕は女性に興味がなく結婚したら呼んでくれと言っていた。
少し前に貴族学校の卒業式に侯爵令嬢のパートナーとして仕方なく参加した時。彼女は第二王子の婚約者だが、第二王子が男爵令嬢に夢中になってパートナーを断られていた。
卒業パーティーの終盤、訳の分からない婚約破棄騒動は時間の無駄にしか思えなかった。17歳の少年少女が何をやっているのだろうか。高位貴族の癖に他人の時間ばかり奪う寸劇。
戦場から戻ってきて寝ていない。身体のふらつきを我慢して立っていた。弱さを見せるといけないと母から言われた言葉を思い出した。
『お前のように愛を知らない愚かな人間は朽ちるといい』
侯爵令嬢に放たれた魔法を剣で受け取ったが身体に降りかかった。何事も身体に起こらず王子が捕まって拘束された。この魔法は時間をかけて徐々にかかる魔法だと気がつかなかった。
屋敷に戻ると母から何があったのか事務的に聞かれて問題が起こらないのか質問されて答えた。それだけのはずなのに胸のモヤモヤが消えなかった。思えばこれが始まりだった。
半年近く検査をしても症状が出なかった事で、僕は普通の生活に戻ることが出来た。平和になった世界で、両親に囲まれた生活は憧れていた生活のはずだった。
母が毎日結婚しろと領地の事をもっと気にかけろと繰り返す。近衛騎士団に戻り、時間がない中で領地経営や婚約者の釣書を見てため息を繰り返す日々。僕は母のように一度見たら忘れられない能力はない。これまで努力して手に入れてきた物ばかりだ。
10年前戦場に送った母は僕を見て「兄に似てきた」と言っていた。意味が分からず聞こうとすると母が気持ちの悪い顔をしてこちらを見ている気がした。
***
それは長い年月をかけて蝕んでいた。
身体は5年の月日をかけて身体を小さくさせて魔力を奪うわれてしまった。
身体が小さくなったことで始まった母の暴力は、自分の兄が母に暴力を奮っていたみたいに同じことを僕にしていた。毎日恐ろしくて怖くて仕方がない。父は息子が小さくなっても知らない振りをしていた。
何度も繰り返して脱走しても無意味だと思った僕は、隙をついて逃げることに成功した。二度と家に戻りたくない。しかしそれは一瞬で終わりを告げる。
男たちに捕まって奴隷のような生活が待っていた。立て付けの悪い部屋で集団で生活して病気に怯えながら過ごす日々。戦争が終わったはずなのにここでは当たり前に同じ生活をしていた。
「お父さんに会いたいよぉ」
話を聞いて見ると戦争で両親を亡くした子供たちが住む場所を求めてやってきた。僕のように掴まってくる子もたまにいるみたいだ。
5年間沢山の暴力を奮われて、元の人格が残っていなかったら彼らが教えた通り犯罪行為を繰り返すことになっていただろう。指が折れ曲がり、何度も繰り返し殴られて強制された。彼らに言葉なんて通じない。
逃げ出した時は必死だった。公爵家を自分の意思で抜け出したわけと全く違った。戦争孤児全員で一気に脱出して助けを求める計画だった。後ろで一人また一人捕まって、僕はついに倒れてしまった。
もう疲れ切った身体はお腹が空いて一歩も動けない。追いかけてきた男たちの声が聞こえた。もうこのまま死んでもいいんじゃないかと思っていた時、呑気な声が聞こえてきた。
「まあ、なんて可愛い子」
浅く呼吸をして声の方向を向くとピンクの髪の毛で大きな宝石のような瞳の少女が目の前にいた。頭から水をかけられて服を脱がされた。その場で服を捨てられて全裸にされたまま馬車に乗ると子供用のローブを着せられて温かい紅茶が口元に運ばれた。口の中が虫歯だらけで飲み込むだけで痛みが走ったけれど、久しぶりの紅茶の味を堪能したくて少しずつ飲み込んだ。
「可愛いねぇ 可愛いですねぇ」
女の子に抱き寄せられて肩に触れられても助けられた実感は湧かなかった。
王子と一緒にいた男爵令嬢も同じようなピンクの髪の毛で苛立ちが止まらず生意気な態度を取っていた。あの時に戻れるならルビーに最初に言う言葉は感謝の言葉だと理解している。
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