エイプリルフールなので存在しない記憶の話しようぜ

黒い白クマ

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「困ったことつったらやっぱアレかな、鳥にならないようにしてもらいたいよね。」

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「あんた保留にしたんでしょ、何にするの?」
「えぇー、そーだな……」
「なんか困ったこととかないの?」

もはやエイプリルフールの嘘なのかカズの弱みを引き出したいだけなのかは分からないが、ハイターが次のターゲットをカズに定めた。

「困ったことつったらやっぱアレかな、鳥にならないようにしてもらいたいよね。」
「鳥?」
「鳥ってbird、の鳥?」

ただそこは類友共。今度はカズのエイプリルフール話が始まるらしい。

「そう、え、ならん?みんなならんの?」
「いやカズも鳥になったことないだろ。」

榊原がコップを持って帰ってきた。相変わらずどいつもこいつも何を言ってるんだと言うお顔。

「あれ?見たこと無かった?」
「ネット上で魚卵になってるところしか知らん。」

カズの「カズ」は下の名前の「和弘(かずひろ)」のカズ、でこいつの大抵のハンドルネームは「かずのこ」。かずのこは鳥ではない、よな。え飛ぶんかアレ。

「いやいやもっと物理的な話よ。大抵は寝てる時とかガッコで座ってる時とかだから戻るまでほっときゃいいんだけど、この間街歩いてる時に鳥になっちゃってさ。」
「ついていけてないついていけてない、話のスピード感えぎぃて。」

もっと一個ずつ組み立ててくれ、と僕が首を振れば、カズはキョトンとした顔で首を捻る。

「なんだ、全人類共通の悩みだと思ってた。」
「見た事ねぇよ街中で鳥になるやつ。」
「大抵リラックスしてる時じゃないとならないからでしょ。」
「この家はリラックスに値しない……てコト?!」

ハイターがソファで溶けながら叫んだ。可愛くねぇちいかわだな。うん、全人類共通なら確実にハイターが鳥になっているところは見れそうなもんだね。

「誰かさんのせいで緊張感しかないけどなこのシェアハウス。」
「そこには同意するけども。」
「同意するんだ。」

カズの言葉に間髪入れずに頷けば、誰かさん、もといハイターが不満げに顔のパーツをキュッて中央に集めた。カズが構わずに続ける。

「やっぱ移動中だとさー、ほら、荷物とか困るじゃん?羽だと物持てないからさ。あれだけは何とかしたいよね。」
「マジで分かんないんだけど、鳥になるってどんな感じなの?サイズ感は?」
「こ……れくらい?高さは今の身長と変わんなくて。」
「でっっっか、ぜひ今リラックスしろモフるから。」
「そう言われて出来るかい!」

据わった目で榊原がカズの襟首を引っ掴んだ。同居人全員怖、近寄らんどこ。ずりずりと皆から距離を取ってから、ふと話を元に戻す。

「物持てないんだよね?服とか荷物とかどうなんの?」
「服は羽毛になるよ。つか触れてる布製のものがみんな羽毛になる。鞄が布だと最悪荷物全部ぶちまける羽目になる。」
「ワォ。」
「外でなることないから気にしてなかったんだけど、前筆箱が羽になっちゃって机がとっちらかって。だからエコバッグとか布製の鞄嫌いでさ。使わないでしょ?」
「確かにカズ布バック嫌いだよねー。」

理由は濡れやすいからだったはずだけど、という野暮なツッコミは飲み込む。

「靴は?」
「脱げた。マジでどう持ち歩くか困ったわ。とりあえず鞄の持ち手と靴二個を無理やり咥えるとか考えたんだけど、焦ってるうちに戻りはした。」

あれもう経験したくねーな、と話を締めくくったカズに、私達は顔を見合せた。

「飛べて便利では?」
「生まれつき鳥な訳じゃないから飛び方分からんのよな。ある日突然鳥になっても羽がかさばるだけでメリットはない。」

ハイターの質問にカズは首を振った。夢のない、と思わず私は呟いて眉をあげる。カズがそりゃそうよと肩を竦めた。

「アニメじゃねーんだから。」

いや嘘くらい夢を持てよ、夢を。

「じゃあいっそ飛び方を覚えようぜ。メリットを増やす。」
「逆に?」

近所の鳥見ながら飛び方覚えようぜ、なんて榊原が適当なことを言う。こういう時コイツは脳味噌を使わずに話している節がある。

「コントロールできるように悪魔に頼んだ方が良くない?鳥にならないようにするんじゃなくて。」

そういえば悪魔の話だったな。ハイターの言葉に、確かに、とカズと榊原が頷いた。いや待てよ?なら別に悪魔なんかに頼まなくても。

「……常にハイターと歩けば緊張感しかないんじゃね?」
「そんな解決方法ある???」

不満げなハイターを他所に、ならまぁ別のこと頼むか、とカズがカラリと笑った。
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