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第一章 醜いあひるの子
17 ジュリア改造計画
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伯爵夫人は、庭でシルビアとジュリアが描いた絵を見ながら、お茶を楽しんだ。娘のシルビアを監督しているミリアム先生は、真面目で、道徳心も強く、信頼できると思っていた。しかし、娘を社交界の華に育てるには、ファッション感覚や、殿方の気を惹くテクニックの教授などは期待できない。
ジュリアの自分の茶色のドレスを縫い直した服と、ひきつめた髪型は、すっきりしていると言えば聞こえが良いが、まるで未亡人みたいだと綺麗な眉を顰めた。
ヘレナでも麗しの伯爵夫人として有名なアナスタシアは、恵まれた容姿を優れたセンスで選んだドレスで飾り、優雅な立ち振舞いで際立たせているのだ。その優れた審美眼で、ジュリアは磨けば美人になれると感じた。
「あの娘はよく見ると、整った顔立ちをしているわ。あまりに痩せすぎているから、目ばかりが大きく見えて、バランスがとれないのよ。鼻筋はスッとしているし、頬骨も高いから、大人になれば個性的な美女になれる筈よ」
娘のシルビアとは違うタイプなので、互いに引き立てあうだろうとアナスタシアは考える。ベーカーヒル伯爵夫人としては、娘のシルビアにより良い結婚相手を見つけて遣らないといけない。素敵な殿方を引き寄せるには、華やかさを演出する必要があり、周りに違うタイプの美人を集めると効果的なのだ。
アナスタシアは、ケインズ夫人とミリアム先生を呼んで、ジュリアの改造計画を告げた。
「でも、ジュリアさんは……」
ケインズ夫人は、ジュリアは女中としての給料を前借りして、家族に仕送りしたいと思っているのにと、伯爵夫人の改装計画には無理があるのではないかと考えた。
「あの格好で、王宮には行かせられないわ。後見人としてのセンスを疑われますもの」
ケインズ夫人だけでなく、家族教師のミリアムも、ジュリアが王宮に行くと聞いて驚いた。
「ルーファス王子様と共に精霊使いの修行をしなくてはいけないのですよ。王宮以外の何処で修行をすると思っていたのですか? ああ、ジュリアには侍女が必要ね! セドリックが王宮に付き添うでしょうが、あの子は精霊使いの修行だけでなく、武術や学問もルーファス王子様としています。ジュリアを屋敷に先に帰らすこともあるでしょうから」
ケインズ夫人は、ルーファス王子様と一緒に修行するなら、ジュリアの昔気質の節約精神など構ってられないと考え直す。みっともない格好で王宮に行かせたら、ベーカーヒル伯爵家の恥になる。
「奥様、でもジュリアの礼儀作法では、まだ王宮へは行かせられませんわ」
それはアナスタシアも感じていた。
「確かに、私と同席するのも、緊張していましたものね。しかし、ジュリアは王宮に行かなくてはいけないのです。ミリアム先生、至急に最低限の礼儀作法を叩き込んで下さい」
雇い主の伯爵夫人の命令に逆らうわけにはいかない。こうして、ジュリアの改造計画は実施されることになった。
「ええっ! ルーシーが私の侍女なのですか?」
ケインズ夫人に、ルーシーが不満なら、他のメイドが良いですか? と聞かれて、ぶるんぶるんと首を振った。
「ルーシーが嫌なのではなく、私には侍女など必要ありません」
とんでもない! と拒否するジュリアに、ケインズ夫人は王宮に未婚の令嬢が行くのに侍女も付き添わないなんて、許されないと説教をする。
「令嬢と言われても、サリンジャー師が仰ってるだけですし……それに、認めてくれるかもわからないし……」
遠慮するジュリアに、これは伯爵夫人の命令ですと言い切った。
ケインズ夫人はドレスについては、ジュリアの意思は無視して、ルーシーに任せることにした。
「いずれは、ジュリアの祖父のゲチスバーモンド伯爵が引き取りに来られるのでしょう。それまでに、伯爵令嬢に相応しくさせなくては!」
ジュリアの侍女になるルーシーには、伯爵令嬢として接させようとケインズ夫人は出自を告げた。
「ええっ! ジュリアさんは伯爵令嬢なのですか? ゲチスバーグの農家の娘だと言ってましたけど……」
「貴女がお仕えしたくないと言うなら、他のメイドに侍女になって貰っても良いのですよ」
ルーシーは余計な詮索は止めて、侍女になります! と返事をする。
ジュリアの部屋で、ルーシーは茶色の服と、ひきつめた髪型を見て、前途多難だと溜め息をつきたくなった。
「先ずは、髪型をどうにかしなくてはね」
「ルーシー? これじぁ、いけないの?」
メイドなら、きっちりとした髪型でも間違いではないが、それにしてもババくさいと、ドレッサーの前に座らせる。
「この服は、急いで縫い直したから、愛想がないのよ。なのに、こんなにひきつめた髪型では、オールドミスみたいだわ」
口ではぽんぽん言うが、髪を丁寧にブラッシングして、艶をださす。
「あら? こうしてみたら、ダークブロンドなのね。ちゃんと手入れすれば、綺麗な髪になるわ」
サイドの髪を上にあげて、服の余り布で作った茶色のリボンで止める。
「ほら、こうすれば年相応に見えるわ」
ジュリアは髪型一つで、ほんの少し可愛くなったような気がする。
「ありがとう」と、喜ぶジュリアだったが、夕食の席でお人形のように可愛いシルビアを見ると、不公平な神様を恨みたくなった。
ミリアム先生は、シルビアを見て視線を落としたジュリアに、自分も同じ思いをしたことがあるので、少し同情する。
『ジュリアは常にシルビアお嬢様の引き立て役になるかもしれないわ』
貴重な精霊使いとしての才能があることより、若い女の子であるジュリアは、シルビアお嬢様みたいな容姿に恵まれたら良かったと、夕食を食べながら悲しくなった。
ジュリアの自分の茶色のドレスを縫い直した服と、ひきつめた髪型は、すっきりしていると言えば聞こえが良いが、まるで未亡人みたいだと綺麗な眉を顰めた。
ヘレナでも麗しの伯爵夫人として有名なアナスタシアは、恵まれた容姿を優れたセンスで選んだドレスで飾り、優雅な立ち振舞いで際立たせているのだ。その優れた審美眼で、ジュリアは磨けば美人になれると感じた。
「あの娘はよく見ると、整った顔立ちをしているわ。あまりに痩せすぎているから、目ばかりが大きく見えて、バランスがとれないのよ。鼻筋はスッとしているし、頬骨も高いから、大人になれば個性的な美女になれる筈よ」
娘のシルビアとは違うタイプなので、互いに引き立てあうだろうとアナスタシアは考える。ベーカーヒル伯爵夫人としては、娘のシルビアにより良い結婚相手を見つけて遣らないといけない。素敵な殿方を引き寄せるには、華やかさを演出する必要があり、周りに違うタイプの美人を集めると効果的なのだ。
アナスタシアは、ケインズ夫人とミリアム先生を呼んで、ジュリアの改造計画を告げた。
「でも、ジュリアさんは……」
ケインズ夫人は、ジュリアは女中としての給料を前借りして、家族に仕送りしたいと思っているのにと、伯爵夫人の改装計画には無理があるのではないかと考えた。
「あの格好で、王宮には行かせられないわ。後見人としてのセンスを疑われますもの」
ケインズ夫人だけでなく、家族教師のミリアムも、ジュリアが王宮に行くと聞いて驚いた。
「ルーファス王子様と共に精霊使いの修行をしなくてはいけないのですよ。王宮以外の何処で修行をすると思っていたのですか? ああ、ジュリアには侍女が必要ね! セドリックが王宮に付き添うでしょうが、あの子は精霊使いの修行だけでなく、武術や学問もルーファス王子様としています。ジュリアを屋敷に先に帰らすこともあるでしょうから」
ケインズ夫人は、ルーファス王子様と一緒に修行するなら、ジュリアの昔気質の節約精神など構ってられないと考え直す。みっともない格好で王宮に行かせたら、ベーカーヒル伯爵家の恥になる。
「奥様、でもジュリアの礼儀作法では、まだ王宮へは行かせられませんわ」
それはアナスタシアも感じていた。
「確かに、私と同席するのも、緊張していましたものね。しかし、ジュリアは王宮に行かなくてはいけないのです。ミリアム先生、至急に最低限の礼儀作法を叩き込んで下さい」
雇い主の伯爵夫人の命令に逆らうわけにはいかない。こうして、ジュリアの改造計画は実施されることになった。
「ええっ! ルーシーが私の侍女なのですか?」
ケインズ夫人に、ルーシーが不満なら、他のメイドが良いですか? と聞かれて、ぶるんぶるんと首を振った。
「ルーシーが嫌なのではなく、私には侍女など必要ありません」
とんでもない! と拒否するジュリアに、ケインズ夫人は王宮に未婚の令嬢が行くのに侍女も付き添わないなんて、許されないと説教をする。
「令嬢と言われても、サリンジャー師が仰ってるだけですし……それに、認めてくれるかもわからないし……」
遠慮するジュリアに、これは伯爵夫人の命令ですと言い切った。
ケインズ夫人はドレスについては、ジュリアの意思は無視して、ルーシーに任せることにした。
「いずれは、ジュリアの祖父のゲチスバーモンド伯爵が引き取りに来られるのでしょう。それまでに、伯爵令嬢に相応しくさせなくては!」
ジュリアの侍女になるルーシーには、伯爵令嬢として接させようとケインズ夫人は出自を告げた。
「ええっ! ジュリアさんは伯爵令嬢なのですか? ゲチスバーグの農家の娘だと言ってましたけど……」
「貴女がお仕えしたくないと言うなら、他のメイドに侍女になって貰っても良いのですよ」
ルーシーは余計な詮索は止めて、侍女になります! と返事をする。
ジュリアの部屋で、ルーシーは茶色の服と、ひきつめた髪型を見て、前途多難だと溜め息をつきたくなった。
「先ずは、髪型をどうにかしなくてはね」
「ルーシー? これじぁ、いけないの?」
メイドなら、きっちりとした髪型でも間違いではないが、それにしてもババくさいと、ドレッサーの前に座らせる。
「この服は、急いで縫い直したから、愛想がないのよ。なのに、こんなにひきつめた髪型では、オールドミスみたいだわ」
口ではぽんぽん言うが、髪を丁寧にブラッシングして、艶をださす。
「あら? こうしてみたら、ダークブロンドなのね。ちゃんと手入れすれば、綺麗な髪になるわ」
サイドの髪を上にあげて、服の余り布で作った茶色のリボンで止める。
「ほら、こうすれば年相応に見えるわ」
ジュリアは髪型一つで、ほんの少し可愛くなったような気がする。
「ありがとう」と、喜ぶジュリアだったが、夕食の席でお人形のように可愛いシルビアを見ると、不公平な神様を恨みたくなった。
ミリアム先生は、シルビアを見て視線を落としたジュリアに、自分も同じ思いをしたことがあるので、少し同情する。
『ジュリアは常にシルビアお嬢様の引き立て役になるかもしれないわ』
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