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第十章 ローラン王国
14 古文書
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エドアルドが帰国した時にグレゴリウスが嫉妬して大喧嘩になったが、ジークフリートに諭されて謝ると、ユーリも寂しさからの八つ当たりだったと反省していたので直ぐに仲直りする。
「良かったですね、直ぐに仲直りできて。明日からはユーリを独占できるのに、何を落ち込んでいるのですか?」
基本的にモガーナもユーリも早寝早起きで、夕食後サロンで少し過ごすと部屋に下がる。残されたメンバーの本を読み漁るアレックスとビクター夫妻は図書室に引きこもり、グレゴリウス達はサロンで話している。
「ユーリは、エドアルドにキスされても平手打ちしないんだ……」
ああ、そこですかと、全員が溜め息をつく。仲直りしたもののグレゴリウスは、自分はキスするたびに平手打ちされているのにと落ち込んでいたのだ。
「まぁ、たかだかキスですから」
慰めになってないとフランツさえも思ったが、ジークフリートもかなり不利だと感じていた。
「グレゴリウスはユーリが本当に好きなのか? 変わった趣味だな~。他に皇太子妃に相応しいお淑やかな令嬢もいるだろうに、考え直したらどうだ? 子どもの頃の刷り込みを、恋と勘違いしてるのではないか?」
変人のヘルメスの言葉は、ユーリが前に言っていたのと妙に似てるなと、フランツは感心する。
「奥方に逃げられた伯父上に、言われたくないです。ユーリはお転婆だし、何をしでかすか解らないから目も離せないし、乱暴だし、喧嘩ぱやいのに泣き虫で……とにかく優しいのです。本当に好きなんです!」
欠点だらけのユーリに惚れていると断言する甥に、お手上げだなとヘルメスは思う。
「一つ言っておくが、シェリルに逃げられたのではないぞ。実家に行って、帰って来てないだけだからな!」
それを奥方に逃げられたと言うのでしょうと、グレゴリウスもジークフリートもフランツも思ったが、面倒くさいので反論はしなかったが、たまたまサロンに酒を取りに来たビクターは口にして大議論になる。変人達の議論に巻き込まれないように、グレゴリウス達はさっさと部屋に引き上げる。
次の日から、ユーリはグレゴリウスにも竜心石の真名を使うやり方を教えたが、エドアルドの時の経験を生かして、少しづつにしたので疲れたはしたが発熱はしなかった。
ホッとしたユーリだったが、看病して欲しかったなとグレゴリウスは愚痴り、病弱だったフィリップを知っているヘルメスに拳骨を貰う。
「健康なのを愚痴るなんて、許されないぞ」
変人のヘルメスだが、医者としては優秀だとジークフリートは見直す。
「そろそろユングフラウに帰ってくるようにと国王陛下からも、外務相からも、指令がありました。皇太子殿下も、フランツも、そろそろ帰り時ですよ」
グレゴリウスはユーリがまだトラウマを引きずっているし、復讐などを考えているのではと心配で去りがたかったが、お祖父様の命令には逆らえない。
「注意しておきますが、別れ際にキスなどしないで下さいよ」
ジークフリートに念押しされたグレゴリウスは、酷いよと恨みがましく言ったが、男性恐怖症気味のユーリを思いやってキスを諦めるのだと自分を誤魔化す。キスして平手打ちされたら、ダメージが取り返しがつかないだろうと、ジークフリートが考えての忠告だとは理解できていたが、認めたくないグレゴリウスだ。
グレゴリウスとフランツがジークフリートとユングフラウに帰ると、フォン・フォレストは変人達の巣になってしまう。
ヘルメスは輸血する際に、予め血液の型を調べておけば時間が短縮になると考えて、大規模の実験をユングフラウ大学の学長に協力を願い出ていたが、どうも変人のイメージが定着していて、学生の血を集めるのを許されない。
「ユーリはらこういう無理を通すのが上手そうだ。国王陛下や、竜騎士隊長に、口添えして欲しい。1万人単位で血を集めて、輸血のシステムを確立したいのだけど、学長は聞く耳を持たないのだ」
ユーリは前世で血液型の知識が有ったので、ヘルメスの輸血には絶対に調査が必要だとわかっていた。
「ロシュフォード卿の考えていらっしゃる通りだと思うわ。それに戦争になったら、血液がいっぱいいるから、保存方法を考えなくては駄目ね。ビクター様はユングフラウ大学の教授なのでしょ、学長に協力をお願いして下さらないかしら」
「変人のビクターが口添えなどしたら、絶対に学長は許可しないよ。竜騎士隊長のアリスト卿に協力して貰ってもいいが、竜騎士は人数がしれているからなぁ。若いピチピチの血液の方が良いと思うんだ」
サロンで本を読んでいたアレックスとビクターは、そりゃヘルメスがピチピチの血液を欲しがったら怪し過ぎるだろうと、この件には口出ししない。
「確かに輸血するのは若い人の血液の方が、健康的で良いかもしれないわ。でも、血液型を調べたり、分類するなら年は関係ないと思うの。竜騎士や陸軍や海軍は、戦争で負傷する可能性が高いのだから、協力して貰って血液型を調べておけば一石二鳥だわ」
ユーリは自分の言うことを理解してくれるのに、何故他の人は誤解するのだろうと愚痴る。
「そりゃ、ユーリが変人だからだよ」
変人のアレックスに言われたくないとユーリは思ったが、前世の記憶があるのは変わってるのかなと考えて抗議は控える。
医師のヘルメスもユングフラウに帰ると、ビクター夫妻とアレックスだけになり、ユーリは本格的に真名についての研究を始める。
「旧館の図書室は寒いわ~。埃は夏にビクター様やビクトリア様が過ごしていたから、掃除させたみたいだけど、気になる本を新館の図書室に運びましょう」
1冊の真名についての研究本が見つかり、アレックスは狂喜乱舞したが、新館で読んでみると大した内容ではなくガッカリする。
「もっと探せば、真名の研究本も見つかるかもしれない!」
意気込んで旧館に急ぐアレックスとビクターに、ユーリとビクトリアは呆れる。
「そんなに真名の研究本なんて、転がってないと思うわ」
ユーリもアレックス達が来る前から探してみていたので、期待薄だなと感じる。
「やはり楽な道は見つかりそうに無いわね。ちょっと期待していたのだけど、魔法本がそもそも出回ってるわけないわね」
かなり朧気になっている前世に使っていた漢字を思い出して、真名を見つけるしか無いのかしらと気が遠くなりそうだ。
真名を見て読むのと、書くのとではかなり難易度が違うとか、癒し系というキャッチコピーを覚えていて良かったわとか、ブツブツ言いつつながら漢字を思い付くまま書き殴っているユーリを、不思議そうにビクトリアは眺める。
「あっ、何をするのですか……」
ユーリは本を読んでいるものと思っていたビクトリアに、漢字を書いていた紙を取り上げられて驚く。
「これは真名なの? 全く読めないわ」
ユーリは面倒なことになったなぁと溜め息をつく。
「これが真名かどうかはわかりません。でも、思い付くままに書いてみたのです」
この方法では使える真名を見つけるのは難しそうだと溜め息をつきかけて、何か閃きかけたユーリは新しい紙に、できたら便利そうな事を書き出す。
「う~ん……治療は『癒』でしょ。あと、呼びかけ、呼びよせ、風、緑、念写……結界……」
ビクトリアは思い付くままに書き出しているユーリのやり方は、非効率だと考える。
「貴女は、まずは使えたら便利な事を書いて、それに関する漢字を書き出して、真名を見つけようとしてるの? もう少し整理してやった方が効率的ではないかしら」
ビクトリアはユーリからペンを取り上げると新しい紙に、月、火、水、木、金、土、日と書いた。
「こうして、春、夏、秋、冬、誕生、成長、死、と系統だって考えていかなきゃ。自然を構成する要素や事例を書き出し、それに関連する言葉を書き加えていくのよ。そうだわ、辞書に当てはめていけば!」
ユーリは辞書全部は無理だと泣きそうになったが、確かに自分の思い付くまま書き出すよりは、理路整然していると感心する。
「ビクトリア様、そちらの項目作りはお任せしますわ。それに相当する漢字を思い出して書いてみますわ」
アレックスとビクターが寒さに耐えられなくなって、図書室に暖を取りに帰って来た時にはかなり作業は進んでいた。
「ユーリ! 私達に内緒で面白そうな事を始めて、酷いじゃないですか」
アレックスはユーリが書いている紙を見て、何をしているのか直ぐに理解して怒り出す。
「やっぱり、真名を知っているのでしょう! 教えて下さい」
ユーリは困ってしまう。
「あ~もう、何度も言ったでしょう。私は真名は知らないのよ。今、必死で漢字を思い出して、真名に当てはまるものを見つけようとしてるだけなの」
アレックスが引き下がらないのを、ビクトリアが止める。
「アレックス、本当にユーリは真名を知らないのよ。なんでも漢字とかを思い出して、真名を見つけようとしているわ。真名について知りたいなら、協力しなさいよ。アレックスが協力するなら、私は読書に戻るわ。まだ読んでない本が、沢山あるのですもの」
それからはアレックスは系統立てた真名の発見を手伝ってくれるようになったが、ユーリは漢字が書けないのに自分でも呆れてしまう。
「前世の記憶が、どんどん失われていってるわ。二十歳過ぎれば只の人と言うのは、この事かしら……」
アレックスとビクターに基本的な言葉を系統立てて書き出して貰ったが、肝心のユーリは書けなくてなかなか真名の研究は進まない。
「読むのはできそうなのよね~。やはり古文書を探すしか無いわね」
ユーリは旧館の地下にはなるべくなら近づきたくなかったが、アレックスとビクターなら平気かしらと考える。
「古文書を探すしかないって……まさか一週間も黙っていたのですか!」
怒り狂うアレックスに、ユーリは言い訳をする。
「だって古文書が、あるかどうかもわからないのよ。きっとネズミにかじられているわ。何代も前のフォン・フォレストの領主の手記に、旧館の地下に昔の本がしまってあると書いてあったの。だから、それが古文書なのか、エロ本なのかもわからないし、ただの紙屑かも知れないわ。それに地下なんて、何十年も人が入って無いのよ。きっとネズミや虫がいるわ! 私は虫が大大嫌いなの、アレックス様とビクター様で探してきて……」
睨みつけている二人に段々と小さくなりながら言い訳したが、案内しろ! と首根っこをつかまれて旧館に連れていかれる。アレックス達は旧館の図書室には通い慣れているが、複雑な造りなので他の通路には足を踏み入れてなかった。
「確かこちらだったかな~? え~と、違ったわ」
方向音痴のユーリは、旧館の中を迷いながら、地下室への階段を探す。
「貴女の屋敷でしょう! 何故、迷うのか理解できませんね」
アレックスが苛立つので、ユーリは余計に慌ててしまい、何度も同じ通路を行ったり来たりしたが、やっと地下室への階段を見つけ出した。
「ここだわ、でも薄気味悪いわ~」
渋るユーリを地下室に引っ張って行くと、そこは食料庫や、ワイン蔵、牢屋の跡があったが、書籍が入った箱らしき物はなかった。
「やはり無駄足だったわね。埃もすごいし、黴臭いわ、早く上に帰りましょう」
ユーリは急かしたが、アレックスとビクターは地下室の隅々を蝋燭の灯りで照らして、何か手掛かりはないかと調べる。
「この食料庫はおかしいぞ、外側と内側が合わない」
ビクターは食料庫の外を歩き、中を歩いて測ると、隠し部屋があると騒ぐ。
「石壁の厚みで、内側が小さいのよ」
ユーリは足元をネズミが通り過ぎたのでキャ~キャ~騒ぎながら、早く上に帰ろうと急かしたが、変人コンビは聞く耳を持たない。
「ここだ! ここに隠し部屋が有るんだ」
執念で金属の取っ手を見つけ出したビクターとアレックスは、必死で引っ張ったがびくともしない。
「そこをどいて、結界がかかっているのかも……解けるかしら?」
「この為にユーリを連れて来たんだ。ご先祖様の結界なら、解けるだろう」
ユーリはフォン・フォレストはお祖母様のテリトリーなので、上手く解けるかなと不安だったが、パチンと音がすると結界は解けて、取っ手を引っ張ると壁が動いた。
「うッ、黴臭いわ~」
ユーリもアレックスもビクターも、淀んだ空気に顔を背ける。
「黴は書物の敵なのに!」
アレックスはライシャワー教授と発掘調査に慣れていたので、黴にも怯まず隠し部屋に入る。
「これは凄いかもしれないぞ」
部屋の壁には棚が作ってあり、古びた本が何冊か並んでいた。
「また、ガッカリするかもよ。ご先祖様のエロ本の隠し場所だったら、恥ずかしいわ~」
アレックスは古びた羊皮紙の本を一冊手に取ると、蝋燭の灯りで開いて確かめる。
「これは……古代の魔法王国シンの本だ。手書きで、あ~! 何を書いてあるのかわからない!」
次々と本を手に取ると中の文字が読めないと叫びながらも興奮する二人だったが、ユーリは真名の秘密を探る為の古文書が見つかって迷う。
「アレックス様、ビクター様、これを世に出して良いのかしら。ゲオルク王を見て思ったのよ、魔法王国シンが滅びたのは、旧帝国のせいじゃなく自ら滅びたのではないかと。魔法に頼り過ぎては、いけないのかも知れないわ」
アレックスは何故ユーリが自分を呼んで、ライシャワー教授を呼ばなかったのか理解した。
「貴女は、真名を世間に広めたくないのですね。だから、ライシャワー教授は呼ばなかったのですね。私やビクターが知識欲は有っても、名誉は求めてないから協力させたのですね」
ユーリはハッキリと考えてアレックスを呼んだわけではなかったが、言われてみればそうかもしれないと思う。
「真名は、使い方を間違えると恐ろしいと思うの。ましてや、ゲオルク王には絶対に知られたくないわ。私は……復讐を諦めないと駄目なのに……真名を使ってゲオルク王を殺そうとしていたのかもしれないわ」
ユーリは自分が真名を調べようとした心の奥底には、ゲオルクに対する憎しみがあったのだと気づいた。
「貴女が復讐を諦めた時に、この古文書を読んで貰いますよ。滅びた魔法王国シンは、待ってくれるでしょう」
アレックスは、真名について知りたいと心の奥底から願っていたが、ユーリが真名を使って復讐する姿は見たくないと考えるだけの良心は持っていた。だがそう言いつつも、アレックスは此処は保存場所として最低だと文句をつけて、さっさと旧館の図書室に本を移動させる。
「早く、古文書を読める精神状態になって下さいよ。その時には、絶対に私を呼んで下さいね。戦争でゲオルク王が死んだら、ラッキーなんですけどね~」
ちゃっかりとユーリが書きなぐった漢字の紙を上着にしまい込むと、ユングフラウとニューパロマを行き来している竜騎士を捕まえてカザリア王国にアレックスは帰って行った。
フォン・フォレストのお客様は、ビクターとビクトリアだけになった。ユーリはイリスを海に連れて行ったり、フランツやユージーンから教養不足だと言われていたので、ビクトリアに面白そうな本を教わって読書したりして過ごす。
モガーナは、ユーリが少しずつ精神的に落ち着いて来たのを喜んだ。皇太子達に結界を教えたり、真名を研究しようとしたり、その行動の奥底にはゲオルク王への復讐心が見え隠れしていたが、アレックス達と発見した古文書を読まないと決意した頃から、元のユーリにかえってきた感じがした。
ユーリがフォン・フォレストで癒されていた頃、ユージーンはユングフラウで精神的ダメージを引きずったまま、ローラン王国との外交戦争に突入していた。
「良かったですね、直ぐに仲直りできて。明日からはユーリを独占できるのに、何を落ち込んでいるのですか?」
基本的にモガーナもユーリも早寝早起きで、夕食後サロンで少し過ごすと部屋に下がる。残されたメンバーの本を読み漁るアレックスとビクター夫妻は図書室に引きこもり、グレゴリウス達はサロンで話している。
「ユーリは、エドアルドにキスされても平手打ちしないんだ……」
ああ、そこですかと、全員が溜め息をつく。仲直りしたもののグレゴリウスは、自分はキスするたびに平手打ちされているのにと落ち込んでいたのだ。
「まぁ、たかだかキスですから」
慰めになってないとフランツさえも思ったが、ジークフリートもかなり不利だと感じていた。
「グレゴリウスはユーリが本当に好きなのか? 変わった趣味だな~。他に皇太子妃に相応しいお淑やかな令嬢もいるだろうに、考え直したらどうだ? 子どもの頃の刷り込みを、恋と勘違いしてるのではないか?」
変人のヘルメスの言葉は、ユーリが前に言っていたのと妙に似てるなと、フランツは感心する。
「奥方に逃げられた伯父上に、言われたくないです。ユーリはお転婆だし、何をしでかすか解らないから目も離せないし、乱暴だし、喧嘩ぱやいのに泣き虫で……とにかく優しいのです。本当に好きなんです!」
欠点だらけのユーリに惚れていると断言する甥に、お手上げだなとヘルメスは思う。
「一つ言っておくが、シェリルに逃げられたのではないぞ。実家に行って、帰って来てないだけだからな!」
それを奥方に逃げられたと言うのでしょうと、グレゴリウスもジークフリートもフランツも思ったが、面倒くさいので反論はしなかったが、たまたまサロンに酒を取りに来たビクターは口にして大議論になる。変人達の議論に巻き込まれないように、グレゴリウス達はさっさと部屋に引き上げる。
次の日から、ユーリはグレゴリウスにも竜心石の真名を使うやり方を教えたが、エドアルドの時の経験を生かして、少しづつにしたので疲れたはしたが発熱はしなかった。
ホッとしたユーリだったが、看病して欲しかったなとグレゴリウスは愚痴り、病弱だったフィリップを知っているヘルメスに拳骨を貰う。
「健康なのを愚痴るなんて、許されないぞ」
変人のヘルメスだが、医者としては優秀だとジークフリートは見直す。
「そろそろユングフラウに帰ってくるようにと国王陛下からも、外務相からも、指令がありました。皇太子殿下も、フランツも、そろそろ帰り時ですよ」
グレゴリウスはユーリがまだトラウマを引きずっているし、復讐などを考えているのではと心配で去りがたかったが、お祖父様の命令には逆らえない。
「注意しておきますが、別れ際にキスなどしないで下さいよ」
ジークフリートに念押しされたグレゴリウスは、酷いよと恨みがましく言ったが、男性恐怖症気味のユーリを思いやってキスを諦めるのだと自分を誤魔化す。キスして平手打ちされたら、ダメージが取り返しがつかないだろうと、ジークフリートが考えての忠告だとは理解できていたが、認めたくないグレゴリウスだ。
グレゴリウスとフランツがジークフリートとユングフラウに帰ると、フォン・フォレストは変人達の巣になってしまう。
ヘルメスは輸血する際に、予め血液の型を調べておけば時間が短縮になると考えて、大規模の実験をユングフラウ大学の学長に協力を願い出ていたが、どうも変人のイメージが定着していて、学生の血を集めるのを許されない。
「ユーリはらこういう無理を通すのが上手そうだ。国王陛下や、竜騎士隊長に、口添えして欲しい。1万人単位で血を集めて、輸血のシステムを確立したいのだけど、学長は聞く耳を持たないのだ」
ユーリは前世で血液型の知識が有ったので、ヘルメスの輸血には絶対に調査が必要だとわかっていた。
「ロシュフォード卿の考えていらっしゃる通りだと思うわ。それに戦争になったら、血液がいっぱいいるから、保存方法を考えなくては駄目ね。ビクター様はユングフラウ大学の教授なのでしょ、学長に協力をお願いして下さらないかしら」
「変人のビクターが口添えなどしたら、絶対に学長は許可しないよ。竜騎士隊長のアリスト卿に協力して貰ってもいいが、竜騎士は人数がしれているからなぁ。若いピチピチの血液の方が良いと思うんだ」
サロンで本を読んでいたアレックスとビクターは、そりゃヘルメスがピチピチの血液を欲しがったら怪し過ぎるだろうと、この件には口出ししない。
「確かに輸血するのは若い人の血液の方が、健康的で良いかもしれないわ。でも、血液型を調べたり、分類するなら年は関係ないと思うの。竜騎士や陸軍や海軍は、戦争で負傷する可能性が高いのだから、協力して貰って血液型を調べておけば一石二鳥だわ」
ユーリは自分の言うことを理解してくれるのに、何故他の人は誤解するのだろうと愚痴る。
「そりゃ、ユーリが変人だからだよ」
変人のアレックスに言われたくないとユーリは思ったが、前世の記憶があるのは変わってるのかなと考えて抗議は控える。
医師のヘルメスもユングフラウに帰ると、ビクター夫妻とアレックスだけになり、ユーリは本格的に真名についての研究を始める。
「旧館の図書室は寒いわ~。埃は夏にビクター様やビクトリア様が過ごしていたから、掃除させたみたいだけど、気になる本を新館の図書室に運びましょう」
1冊の真名についての研究本が見つかり、アレックスは狂喜乱舞したが、新館で読んでみると大した内容ではなくガッカリする。
「もっと探せば、真名の研究本も見つかるかもしれない!」
意気込んで旧館に急ぐアレックスとビクターに、ユーリとビクトリアは呆れる。
「そんなに真名の研究本なんて、転がってないと思うわ」
ユーリもアレックス達が来る前から探してみていたので、期待薄だなと感じる。
「やはり楽な道は見つかりそうに無いわね。ちょっと期待していたのだけど、魔法本がそもそも出回ってるわけないわね」
かなり朧気になっている前世に使っていた漢字を思い出して、真名を見つけるしか無いのかしらと気が遠くなりそうだ。
真名を見て読むのと、書くのとではかなり難易度が違うとか、癒し系というキャッチコピーを覚えていて良かったわとか、ブツブツ言いつつながら漢字を思い付くまま書き殴っているユーリを、不思議そうにビクトリアは眺める。
「あっ、何をするのですか……」
ユーリは本を読んでいるものと思っていたビクトリアに、漢字を書いていた紙を取り上げられて驚く。
「これは真名なの? 全く読めないわ」
ユーリは面倒なことになったなぁと溜め息をつく。
「これが真名かどうかはわかりません。でも、思い付くままに書いてみたのです」
この方法では使える真名を見つけるのは難しそうだと溜め息をつきかけて、何か閃きかけたユーリは新しい紙に、できたら便利そうな事を書き出す。
「う~ん……治療は『癒』でしょ。あと、呼びかけ、呼びよせ、風、緑、念写……結界……」
ビクトリアは思い付くままに書き出しているユーリのやり方は、非効率だと考える。
「貴女は、まずは使えたら便利な事を書いて、それに関する漢字を書き出して、真名を見つけようとしてるの? もう少し整理してやった方が効率的ではないかしら」
ビクトリアはユーリからペンを取り上げると新しい紙に、月、火、水、木、金、土、日と書いた。
「こうして、春、夏、秋、冬、誕生、成長、死、と系統だって考えていかなきゃ。自然を構成する要素や事例を書き出し、それに関連する言葉を書き加えていくのよ。そうだわ、辞書に当てはめていけば!」
ユーリは辞書全部は無理だと泣きそうになったが、確かに自分の思い付くまま書き出すよりは、理路整然していると感心する。
「ビクトリア様、そちらの項目作りはお任せしますわ。それに相当する漢字を思い出して書いてみますわ」
アレックスとビクターが寒さに耐えられなくなって、図書室に暖を取りに帰って来た時にはかなり作業は進んでいた。
「ユーリ! 私達に内緒で面白そうな事を始めて、酷いじゃないですか」
アレックスはユーリが書いている紙を見て、何をしているのか直ぐに理解して怒り出す。
「やっぱり、真名を知っているのでしょう! 教えて下さい」
ユーリは困ってしまう。
「あ~もう、何度も言ったでしょう。私は真名は知らないのよ。今、必死で漢字を思い出して、真名に当てはまるものを見つけようとしてるだけなの」
アレックスが引き下がらないのを、ビクトリアが止める。
「アレックス、本当にユーリは真名を知らないのよ。なんでも漢字とかを思い出して、真名を見つけようとしているわ。真名について知りたいなら、協力しなさいよ。アレックスが協力するなら、私は読書に戻るわ。まだ読んでない本が、沢山あるのですもの」
それからはアレックスは系統立てた真名の発見を手伝ってくれるようになったが、ユーリは漢字が書けないのに自分でも呆れてしまう。
「前世の記憶が、どんどん失われていってるわ。二十歳過ぎれば只の人と言うのは、この事かしら……」
アレックスとビクターに基本的な言葉を系統立てて書き出して貰ったが、肝心のユーリは書けなくてなかなか真名の研究は進まない。
「読むのはできそうなのよね~。やはり古文書を探すしか無いわね」
ユーリは旧館の地下にはなるべくなら近づきたくなかったが、アレックスとビクターなら平気かしらと考える。
「古文書を探すしかないって……まさか一週間も黙っていたのですか!」
怒り狂うアレックスに、ユーリは言い訳をする。
「だって古文書が、あるかどうかもわからないのよ。きっとネズミにかじられているわ。何代も前のフォン・フォレストの領主の手記に、旧館の地下に昔の本がしまってあると書いてあったの。だから、それが古文書なのか、エロ本なのかもわからないし、ただの紙屑かも知れないわ。それに地下なんて、何十年も人が入って無いのよ。きっとネズミや虫がいるわ! 私は虫が大大嫌いなの、アレックス様とビクター様で探してきて……」
睨みつけている二人に段々と小さくなりながら言い訳したが、案内しろ! と首根っこをつかまれて旧館に連れていかれる。アレックス達は旧館の図書室には通い慣れているが、複雑な造りなので他の通路には足を踏み入れてなかった。
「確かこちらだったかな~? え~と、違ったわ」
方向音痴のユーリは、旧館の中を迷いながら、地下室への階段を探す。
「貴女の屋敷でしょう! 何故、迷うのか理解できませんね」
アレックスが苛立つので、ユーリは余計に慌ててしまい、何度も同じ通路を行ったり来たりしたが、やっと地下室への階段を見つけ出した。
「ここだわ、でも薄気味悪いわ~」
渋るユーリを地下室に引っ張って行くと、そこは食料庫や、ワイン蔵、牢屋の跡があったが、書籍が入った箱らしき物はなかった。
「やはり無駄足だったわね。埃もすごいし、黴臭いわ、早く上に帰りましょう」
ユーリは急かしたが、アレックスとビクターは地下室の隅々を蝋燭の灯りで照らして、何か手掛かりはないかと調べる。
「この食料庫はおかしいぞ、外側と内側が合わない」
ビクターは食料庫の外を歩き、中を歩いて測ると、隠し部屋があると騒ぐ。
「石壁の厚みで、内側が小さいのよ」
ユーリは足元をネズミが通り過ぎたのでキャ~キャ~騒ぎながら、早く上に帰ろうと急かしたが、変人コンビは聞く耳を持たない。
「ここだ! ここに隠し部屋が有るんだ」
執念で金属の取っ手を見つけ出したビクターとアレックスは、必死で引っ張ったがびくともしない。
「そこをどいて、結界がかかっているのかも……解けるかしら?」
「この為にユーリを連れて来たんだ。ご先祖様の結界なら、解けるだろう」
ユーリはフォン・フォレストはお祖母様のテリトリーなので、上手く解けるかなと不安だったが、パチンと音がすると結界は解けて、取っ手を引っ張ると壁が動いた。
「うッ、黴臭いわ~」
ユーリもアレックスもビクターも、淀んだ空気に顔を背ける。
「黴は書物の敵なのに!」
アレックスはライシャワー教授と発掘調査に慣れていたので、黴にも怯まず隠し部屋に入る。
「これは凄いかもしれないぞ」
部屋の壁には棚が作ってあり、古びた本が何冊か並んでいた。
「また、ガッカリするかもよ。ご先祖様のエロ本の隠し場所だったら、恥ずかしいわ~」
アレックスは古びた羊皮紙の本を一冊手に取ると、蝋燭の灯りで開いて確かめる。
「これは……古代の魔法王国シンの本だ。手書きで、あ~! 何を書いてあるのかわからない!」
次々と本を手に取ると中の文字が読めないと叫びながらも興奮する二人だったが、ユーリは真名の秘密を探る為の古文書が見つかって迷う。
「アレックス様、ビクター様、これを世に出して良いのかしら。ゲオルク王を見て思ったのよ、魔法王国シンが滅びたのは、旧帝国のせいじゃなく自ら滅びたのではないかと。魔法に頼り過ぎては、いけないのかも知れないわ」
アレックスは何故ユーリが自分を呼んで、ライシャワー教授を呼ばなかったのか理解した。
「貴女は、真名を世間に広めたくないのですね。だから、ライシャワー教授は呼ばなかったのですね。私やビクターが知識欲は有っても、名誉は求めてないから協力させたのですね」
ユーリはハッキリと考えてアレックスを呼んだわけではなかったが、言われてみればそうかもしれないと思う。
「真名は、使い方を間違えると恐ろしいと思うの。ましてや、ゲオルク王には絶対に知られたくないわ。私は……復讐を諦めないと駄目なのに……真名を使ってゲオルク王を殺そうとしていたのかもしれないわ」
ユーリは自分が真名を調べようとした心の奥底には、ゲオルクに対する憎しみがあったのだと気づいた。
「貴女が復讐を諦めた時に、この古文書を読んで貰いますよ。滅びた魔法王国シンは、待ってくれるでしょう」
アレックスは、真名について知りたいと心の奥底から願っていたが、ユーリが真名を使って復讐する姿は見たくないと考えるだけの良心は持っていた。だがそう言いつつも、アレックスは此処は保存場所として最低だと文句をつけて、さっさと旧館の図書室に本を移動させる。
「早く、古文書を読める精神状態になって下さいよ。その時には、絶対に私を呼んで下さいね。戦争でゲオルク王が死んだら、ラッキーなんですけどね~」
ちゃっかりとユーリが書きなぐった漢字の紙を上着にしまい込むと、ユングフラウとニューパロマを行き来している竜騎士を捕まえてカザリア王国にアレックスは帰って行った。
フォン・フォレストのお客様は、ビクターとビクトリアだけになった。ユーリはイリスを海に連れて行ったり、フランツやユージーンから教養不足だと言われていたので、ビクトリアに面白そうな本を教わって読書したりして過ごす。
モガーナは、ユーリが少しずつ精神的に落ち着いて来たのを喜んだ。皇太子達に結界を教えたり、真名を研究しようとしたり、その行動の奥底にはゲオルク王への復讐心が見え隠れしていたが、アレックス達と発見した古文書を読まないと決意した頃から、元のユーリにかえってきた感じがした。
ユーリがフォン・フォレストで癒されていた頃、ユージーンはユングフラウで精神的ダメージを引きずったまま、ローラン王国との外交戦争に突入していた。
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