23 / 27
番外編
XYZ? ~永遠に貴方の~ その1
しおりを挟む
「んふふ。今日はわたしの番」
そう言いながら、俺の上で妖艶に笑う彼女は、控えめに言って最高だった。
「ユエにゃんユエにゃん何飲むにゃん?」
「ユエどのユエどの、これオススメなり」
「テメェらウゼぇ。美月から離れろ。
特に猫。その喋りキメぇってんだろが」
「うるさいにゃん! ユエにゃん監禁してた変態ヤロウがっ! 独り占めすんなっゴラァ!」
「あぁ? 寝言は寝てから言えよこのクソ猫がぁ!」
「……お客様方? 他のお客様のご迷惑ですのでお静かに。
これ以上騒がれるようでしたら、退店をお願いいたしますが?」
カウンターの向こうにいた熊からの圧がすごい。
氷を砕く為に持っていた筈のアイスピックがいつこちらに向けられてもおかしくないので、猫と二人押し黙った。
「ふふっ。こっちの世界でも二人は仲良いのね」
「「良くない」にゃん!」
ふふっと微笑む美月は可愛いが、言ってる事は可愛くない。
「こちらにメニューもございます。好きなお味をお伝えいただければ、こちらでご用意いたしますよ?」
バーに来るのは初めてだと言っていた美月を慮ってか、熊が羅針盤のロゴが箔押しされた革張りのメニューを美月に渡す。
ワクワクとした表情でそれを開く美月はとりあえず可愛い。
「いたっ?!」
同じことを思っていそうな猫の脛を、皆が見てないカウンターの下で蹴っておくのも忘れない。
「うーん、名前だけじゃ……。あ! 紅茶がある! これにしようかな?」
美月が指さしたカクテルを見て、僅かに頬が引きつる。
そんな俺の様子に目ざとく気づいたコロが、美月の服の袖をツンツンと引っ張って美月の意識を向けさせた。
「ユエどのは紅茶が好きなりか?」
「そうなの。珈琲に拘ってるカフェの店員なのに、実は紅茶党で……」
美月が少しだけ罪悪感を乗せた笑みを浮かべる。
「だから、紅茶のお酒ってだけで美味しそう! 熊吉さん、『ロングアイランドアイスティー』ください!」
ニコニコと微笑みながら熊にそう告げる美月の肩にポンと手を乗せる。
「あー、美月? 残念な知らせと悪い知らせがあるんだが、どちらから聞きたい?」
「えぇー? そういう時って、フツー良い知らせと悪い知らせなんじゃないの?」
「まぁ、その辺美月次第か?
まず、残念な知らせだ。『ロングアイランドアイスティー』には紅茶は入ってない」
俺の言葉にぽかんとする美月。
そんな表情も可愛いナリと呟くコロを睨むのを忘れない。
「えぇ? アイスティーなのに??」
「そう。ついでに悪い知らせなんだが、紅茶の入ってない『ロングアイランドアイスティー』に何が入ってるかというと……。なんか色んな酒をぶち込んでアイスティー色にしたヤツだ。
酒に弱い奴にはあんまりオススメしない」
美月が酒を飲み慣れてない事を承知の上でそう告げると、美月の肩が明らかに落ちてしょぼんとする。
「そうなんだぁ……」
「ユエ? 紅茶が好きならこちらなどいかがですか?」
明らかに落ち込んだ美月の前に、熊が一つの酒瓶を置いた。
遮光性の高いこげ茶のボトルにはオレンジ色の装飾と白字のロゴが踊っている。
「熊吉さん、こちらは?」
「これは紅茶のリキュールです。
牛乳で割ればミルクティーの味に、炭酸とレモンで割ればしゅわっとした飲み口のレモンティーになりますよ?」
熊の言葉に、ぱぁと美月の表情が輝く。
あの世界での『満月の魔女』の時に浮かべていた表情とも、こちらの世界で再会した時に浮かべていた、どこか諦念を含んだ表情とも異なるそれに、こちらまで頬が緩む。
「……だらしない顔にゃんねー。やれやれにゃん」
ぼそりと美月に聞こえないよう落とされた猫の呟きには、再びカウンター下での攻防で制裁を加える。
「わぁ! じゃあミルクティーでおねがいします!」
武骨な熊の手があっという間に一つのカクテルを作り上げる。
そっと美月の前にサーブされたそれを見て、美月がにこやかに礼を告げる。
他のメンバーの前にも酒が用意され、熊にも一杯奢る。
今日はあの世界が崩壊して以降初めて、美月を含めたクラン・ローズデヴァンの主力メンバーが集まった、再会を喜ぶ夜……になるはずだった。
そう言いながら、俺の上で妖艶に笑う彼女は、控えめに言って最高だった。
「ユエにゃんユエにゃん何飲むにゃん?」
「ユエどのユエどの、これオススメなり」
「テメェらウゼぇ。美月から離れろ。
特に猫。その喋りキメぇってんだろが」
「うるさいにゃん! ユエにゃん監禁してた変態ヤロウがっ! 独り占めすんなっゴラァ!」
「あぁ? 寝言は寝てから言えよこのクソ猫がぁ!」
「……お客様方? 他のお客様のご迷惑ですのでお静かに。
これ以上騒がれるようでしたら、退店をお願いいたしますが?」
カウンターの向こうにいた熊からの圧がすごい。
氷を砕く為に持っていた筈のアイスピックがいつこちらに向けられてもおかしくないので、猫と二人押し黙った。
「ふふっ。こっちの世界でも二人は仲良いのね」
「「良くない」にゃん!」
ふふっと微笑む美月は可愛いが、言ってる事は可愛くない。
「こちらにメニューもございます。好きなお味をお伝えいただければ、こちらでご用意いたしますよ?」
バーに来るのは初めてだと言っていた美月を慮ってか、熊が羅針盤のロゴが箔押しされた革張りのメニューを美月に渡す。
ワクワクとした表情でそれを開く美月はとりあえず可愛い。
「いたっ?!」
同じことを思っていそうな猫の脛を、皆が見てないカウンターの下で蹴っておくのも忘れない。
「うーん、名前だけじゃ……。あ! 紅茶がある! これにしようかな?」
美月が指さしたカクテルを見て、僅かに頬が引きつる。
そんな俺の様子に目ざとく気づいたコロが、美月の服の袖をツンツンと引っ張って美月の意識を向けさせた。
「ユエどのは紅茶が好きなりか?」
「そうなの。珈琲に拘ってるカフェの店員なのに、実は紅茶党で……」
美月が少しだけ罪悪感を乗せた笑みを浮かべる。
「だから、紅茶のお酒ってだけで美味しそう! 熊吉さん、『ロングアイランドアイスティー』ください!」
ニコニコと微笑みながら熊にそう告げる美月の肩にポンと手を乗せる。
「あー、美月? 残念な知らせと悪い知らせがあるんだが、どちらから聞きたい?」
「えぇー? そういう時って、フツー良い知らせと悪い知らせなんじゃないの?」
「まぁ、その辺美月次第か?
まず、残念な知らせだ。『ロングアイランドアイスティー』には紅茶は入ってない」
俺の言葉にぽかんとする美月。
そんな表情も可愛いナリと呟くコロを睨むのを忘れない。
「えぇ? アイスティーなのに??」
「そう。ついでに悪い知らせなんだが、紅茶の入ってない『ロングアイランドアイスティー』に何が入ってるかというと……。なんか色んな酒をぶち込んでアイスティー色にしたヤツだ。
酒に弱い奴にはあんまりオススメしない」
美月が酒を飲み慣れてない事を承知の上でそう告げると、美月の肩が明らかに落ちてしょぼんとする。
「そうなんだぁ……」
「ユエ? 紅茶が好きならこちらなどいかがですか?」
明らかに落ち込んだ美月の前に、熊が一つの酒瓶を置いた。
遮光性の高いこげ茶のボトルにはオレンジ色の装飾と白字のロゴが踊っている。
「熊吉さん、こちらは?」
「これは紅茶のリキュールです。
牛乳で割ればミルクティーの味に、炭酸とレモンで割ればしゅわっとした飲み口のレモンティーになりますよ?」
熊の言葉に、ぱぁと美月の表情が輝く。
あの世界での『満月の魔女』の時に浮かべていた表情とも、こちらの世界で再会した時に浮かべていた、どこか諦念を含んだ表情とも異なるそれに、こちらまで頬が緩む。
「……だらしない顔にゃんねー。やれやれにゃん」
ぼそりと美月に聞こえないよう落とされた猫の呟きには、再びカウンター下での攻防で制裁を加える。
「わぁ! じゃあミルクティーでおねがいします!」
武骨な熊の手があっという間に一つのカクテルを作り上げる。
そっと美月の前にサーブされたそれを見て、美月がにこやかに礼を告げる。
他のメンバーの前にも酒が用意され、熊にも一杯奢る。
今日はあの世界が崩壊して以降初めて、美月を含めたクラン・ローズデヴァンの主力メンバーが集まった、再会を喜ぶ夜……になるはずだった。
24
あなたにおすすめの小説
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる