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05.オーダー「ラフロイグ、トワイスアップで」①
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東海林が料理を注文し、アキが「お酒はどうするのー?」と軽い口調で応じていると、東海林と一緒に飲んでいた先ほど来店したばかりの男がスマホを手に足早にカウンターまで歩み寄って来た。
「すまん、東海林。橘さんから電話だ、長くなると思う」
男が手に持っているスマホの画面は明るく光っていて、電話が入っていることがすぐに理解出来る。
即電話を取らずに、わざわざ急ぎながらも東海林に言いに来た様子と「長くなると思う」の言葉に同じビジネスマンとして祥司は少し同情の気持ちを抱く。
どこの業界かは知らないが、ライフワークバランスなんてガン無視で呼び立てて来る仕事関係者というのは共通して存在するらしい。
「分かりました、気にしないでください。もし必要ならそのまま向かってもらっても構いませんから」
静かで柔らかな東海林の声が、耳の奥に染み入るように届く。
あからさまに騒ぎ立てる先ほどの奴らのような人間はそりゃたまにはいるが、基本的にはそれぞれが静かに会話をしながら酒を飲む場でもそれなりに音は生まれている。
そんな空間でも、東海林の声は心地よく祥司の鼓膜を揺らした。
「悪いな」
そう心底申し訳なさそうに言った男はスマホを耳に当てて、潜めた声で何かを言いながら店から出て行く。
その背中を見送って、アキが柔らかく笑いながら再度東海林を見た。
「どうする? お連れさん戻ってこれなそうならまだ作っても無いし、さっきの注文キャンセルも出来るわよ?」
アキの言葉に、東海林は重たそうな眼鏡の奥で瞬きをした。
そしてそんな東海林を見て、仲裁を終えて戻って来ていたケイが重ねる。
「お一人で飲むのがつまらないなら、カウンターに移動なさいますか?」
低いケイの声を聞いて、東海林は少しだけ間を置いた後すぐ傍の席にいる祥司を見ることもなく穏やかに頷いた。
「ではお言葉に甘えて、こちらに席を移動させて頂いても宜しいですか?」
「ええ、勿論! 座って待っててね、あっちのテーブルからささっと移動させて来るから」
言うが早いが迅速にトレーを持って歩き出したアキの背中に、東海林は申し訳なさそうに右の手のひらを反射的に開く。指が長い、大きな手だ。
「あ、私が自分で運びますよっ」
そう言って後を追おうとする東海林に、祥司は声を掛けた。
「東海林さん? 良かったら俺の隣にどうぞ。テーブルは片付けもありますから、アキさんに任せておいた方が良いと思いますよ」
「そ……そうですか、ね?」
「そうですよ。さあ、お好きな場所にお掛けください」
祥司とケイの二人にそう言われて、東海林は少し困り顔を浮かべながらも祥司から椅子を一つ空けてバーチェアに腰掛ける。
「もしドリンクがお決まりでしたら、先に用意します」
ケイの穏やかな言葉に、東海林はメニューを探すことも、何かを見ることもせずケイと真っすぐ視線を合わせたまま迷いもなく言った。
「ラフロイグ、トワイスアップでお願いします」
――は?
野暮ったい見た目にそぐわないスマートな注文方法に、祥司は一瞬自分が持っていたグラスを取り落とすところだった。
「すまん、東海林。橘さんから電話だ、長くなると思う」
男が手に持っているスマホの画面は明るく光っていて、電話が入っていることがすぐに理解出来る。
即電話を取らずに、わざわざ急ぎながらも東海林に言いに来た様子と「長くなると思う」の言葉に同じビジネスマンとして祥司は少し同情の気持ちを抱く。
どこの業界かは知らないが、ライフワークバランスなんてガン無視で呼び立てて来る仕事関係者というのは共通して存在するらしい。
「分かりました、気にしないでください。もし必要ならそのまま向かってもらっても構いませんから」
静かで柔らかな東海林の声が、耳の奥に染み入るように届く。
あからさまに騒ぎ立てる先ほどの奴らのような人間はそりゃたまにはいるが、基本的にはそれぞれが静かに会話をしながら酒を飲む場でもそれなりに音は生まれている。
そんな空間でも、東海林の声は心地よく祥司の鼓膜を揺らした。
「悪いな」
そう心底申し訳なさそうに言った男はスマホを耳に当てて、潜めた声で何かを言いながら店から出て行く。
その背中を見送って、アキが柔らかく笑いながら再度東海林を見た。
「どうする? お連れさん戻ってこれなそうならまだ作っても無いし、さっきの注文キャンセルも出来るわよ?」
アキの言葉に、東海林は重たそうな眼鏡の奥で瞬きをした。
そしてそんな東海林を見て、仲裁を終えて戻って来ていたケイが重ねる。
「お一人で飲むのがつまらないなら、カウンターに移動なさいますか?」
低いケイの声を聞いて、東海林は少しだけ間を置いた後すぐ傍の席にいる祥司を見ることもなく穏やかに頷いた。
「ではお言葉に甘えて、こちらに席を移動させて頂いても宜しいですか?」
「ええ、勿論! 座って待っててね、あっちのテーブルからささっと移動させて来るから」
言うが早いが迅速にトレーを持って歩き出したアキの背中に、東海林は申し訳なさそうに右の手のひらを反射的に開く。指が長い、大きな手だ。
「あ、私が自分で運びますよっ」
そう言って後を追おうとする東海林に、祥司は声を掛けた。
「東海林さん? 良かったら俺の隣にどうぞ。テーブルは片付けもありますから、アキさんに任せておいた方が良いと思いますよ」
「そ……そうですか、ね?」
「そうですよ。さあ、お好きな場所にお掛けください」
祥司とケイの二人にそう言われて、東海林は少し困り顔を浮かべながらも祥司から椅子を一つ空けてバーチェアに腰掛ける。
「もしドリンクがお決まりでしたら、先に用意します」
ケイの穏やかな言葉に、東海林はメニューを探すことも、何かを見ることもせずケイと真っすぐ視線を合わせたまま迷いもなく言った。
「ラフロイグ、トワイスアップでお願いします」
――は?
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