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15.「欲しいと思ってくれたのなら、いつでも」①
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「結構本格的に混んで来たので、俺はそろそろ帰ろうと思います」
今までよりも少しだけ深い話題でひとしきり東海林と会話をした後、時計を見た祥司がそう切り出すと同じように自分の腕時計を見た東海林も頷く。
「そうですね、私もそうします」
東海林が頷いたタイミングで祥司が出した会計の合図に気付いたアキが、少し足早に近寄って来る。
基本ケイとアキの二人で回していることがほとんどな店なので、流石に少し忙しそうだ。
「今日は全然話せなくてごめんね~!」
「気にしないでください、いつも俺が捕まえてばかりなんですから」
伝票を確認して、少しだけ移動してからレジの作業に移るアキの言葉に祥司が返すと、荷物を持って同じく移動してきた東海林も笑う。
「ええ、今日はお陰様で祥司さんとの親交を深めることが出来ました。とても楽しかったので、また来させていただきますね」
「やだぁー、ホントにイイお客様たちだわ! はい、これお釣り」
会話をしながらでも絶対にミスをしないアキの動作にこっそり感心しながらそれぞれの会計を終えた二人は、同時に店の外に出た。
先ほど「給料日直後の金曜日の夜」と言ったことが正解だったと一目で分かるほど、いつもの道には人が多い。
そう遅い時間ではないのに既に出来上がっている人間もちらほらいるようで、その人波を縫って駅までのいつもの道を歩くのは少し気が進まない。
そう思った祥司は、恐らく似たようなことを考えて通りを眺めている東海林に向かって切り出す。
「人が多いですよね……。東海林さん、もし良かったら裏に抜け道があるんです。距離的には少ししか変わらないんですけど、人の数は断然少ないんですよ」
そう言った祥司を見て、東海林は嬉しそうに笑った。
「良いんですか? 常連さんの特権の『秘密』の抜け道を教えて頂いても」
「ははは。この店に通って長いので、俺もアキさんから教えてもらったから知っているだけですけどね」
東海林が発した“秘密”という部分に何故か少しだけ意図的な声色の変化を感じ取った祥司が気付かないフリで笑うと、東海林はそれに対して何か反応を示すことなく佇んでいる。
「行きましょうか、こっちです」
「はい、お願いします」
そう言って二人は歩き出す。
裏の抜け道、と言うととても狭い建物の間をギリギリ通るような道幅を想像するかもしれないが、大きめの通りから一つ入っただけなので明るさもある程度は確保されているから、普通に通行する分には全く問題ない。
「これは、本当に快適な抜け道ですね」
「でしょう? たまに酔っ払いと鉢合わせるくらいで、それさえなければ実に快適ですよ」
祥司の悪戯っぽい言葉に、東海林が小さく声を上げて笑う。
「すぐそこの細い場所が十字路みたいになっていて、そこさえ気を付ければ他は今歩いている道が続いている感じです」
「そうですか」
祥司が少し先の薄暗い先を指差すと、東海林が頷く。
そして二人雑談をしながら歩いていると先ほど祥司が宣言した細い十字路に辿り着いた。
「ここで――」
「っと」
ここですね、と東海林が口を開いたのと同じタイミングでドンッと東海林が誰かとぶつかって、カシャンという軽い音がした。
そしてその反動で、隣を歩いていた祥司にも衝撃が来る。
言ったそばから? と祥司が少し驚いて視線を上げると、ぶつかって来た相手はとんでもなく酒臭い二十代前半の男だった。
その容姿を一目見ただけで、祥司は自分と同類だと即座に気付き色んな意味で心配になる。
「だ――」
「大丈夫ですか?」
祥司より先に東海林が落ち着いた声を掛けると、食って掛かって来ると思った男は思ったよりも素直だった。
「ごめんねー、ごめんなさーい! おれ、ちょっとだけ飲みすぎちゃってさぁ」
「それは大変ですね」
あくまでも穏やかな声で対応する東海林に、酔った男は気をよくした風で続ける。
「お兄さん、優しいね! 良かったらおれと飲まない?」
今までよりも少しだけ深い話題でひとしきり東海林と会話をした後、時計を見た祥司がそう切り出すと同じように自分の腕時計を見た東海林も頷く。
「そうですね、私もそうします」
東海林が頷いたタイミングで祥司が出した会計の合図に気付いたアキが、少し足早に近寄って来る。
基本ケイとアキの二人で回していることがほとんどな店なので、流石に少し忙しそうだ。
「今日は全然話せなくてごめんね~!」
「気にしないでください、いつも俺が捕まえてばかりなんですから」
伝票を確認して、少しだけ移動してからレジの作業に移るアキの言葉に祥司が返すと、荷物を持って同じく移動してきた東海林も笑う。
「ええ、今日はお陰様で祥司さんとの親交を深めることが出来ました。とても楽しかったので、また来させていただきますね」
「やだぁー、ホントにイイお客様たちだわ! はい、これお釣り」
会話をしながらでも絶対にミスをしないアキの動作にこっそり感心しながらそれぞれの会計を終えた二人は、同時に店の外に出た。
先ほど「給料日直後の金曜日の夜」と言ったことが正解だったと一目で分かるほど、いつもの道には人が多い。
そう遅い時間ではないのに既に出来上がっている人間もちらほらいるようで、その人波を縫って駅までのいつもの道を歩くのは少し気が進まない。
そう思った祥司は、恐らく似たようなことを考えて通りを眺めている東海林に向かって切り出す。
「人が多いですよね……。東海林さん、もし良かったら裏に抜け道があるんです。距離的には少ししか変わらないんですけど、人の数は断然少ないんですよ」
そう言った祥司を見て、東海林は嬉しそうに笑った。
「良いんですか? 常連さんの特権の『秘密』の抜け道を教えて頂いても」
「ははは。この店に通って長いので、俺もアキさんから教えてもらったから知っているだけですけどね」
東海林が発した“秘密”という部分に何故か少しだけ意図的な声色の変化を感じ取った祥司が気付かないフリで笑うと、東海林はそれに対して何か反応を示すことなく佇んでいる。
「行きましょうか、こっちです」
「はい、お願いします」
そう言って二人は歩き出す。
裏の抜け道、と言うととても狭い建物の間をギリギリ通るような道幅を想像するかもしれないが、大きめの通りから一つ入っただけなので明るさもある程度は確保されているから、普通に通行する分には全く問題ない。
「これは、本当に快適な抜け道ですね」
「でしょう? たまに酔っ払いと鉢合わせるくらいで、それさえなければ実に快適ですよ」
祥司の悪戯っぽい言葉に、東海林が小さく声を上げて笑う。
「すぐそこの細い場所が十字路みたいになっていて、そこさえ気を付ければ他は今歩いている道が続いている感じです」
「そうですか」
祥司が少し先の薄暗い先を指差すと、東海林が頷く。
そして二人雑談をしながら歩いていると先ほど祥司が宣言した細い十字路に辿り着いた。
「ここで――」
「っと」
ここですね、と東海林が口を開いたのと同じタイミングでドンッと東海林が誰かとぶつかって、カシャンという軽い音がした。
そしてその反動で、隣を歩いていた祥司にも衝撃が来る。
言ったそばから? と祥司が少し驚いて視線を上げると、ぶつかって来た相手はとんでもなく酒臭い二十代前半の男だった。
その容姿を一目見ただけで、祥司は自分と同類だと即座に気付き色んな意味で心配になる。
「だ――」
「大丈夫ですか?」
祥司より先に東海林が落ち着いた声を掛けると、食って掛かって来ると思った男は思ったよりも素直だった。
「ごめんねー、ごめんなさーい! おれ、ちょっとだけ飲みすぎちゃってさぁ」
「それは大変ですね」
あくまでも穏やかな声で対応する東海林に、酔った男は気をよくした風で続ける。
「お兄さん、優しいね! 良かったらおれと飲まない?」
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