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第55話 タナーリとの激闘②
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生み出した【混沌封滅結界】によってかなり瘴気は抑えられている。だがそんな中でも二体のタナーリは平然としている。
『支配者よ、ここは我が出ましょう』
『うむ』
恐怖の看守が一歩前へ踏み出る。その背の触手が地面を叩きつけ、血飛沫のように瘴気が舞った。
『これで我らを抑えられると思ったら大間違いだ。ここからが本当の地獄だと思え!』
滑らかな仮面のような顔をしたブラッド・ドレッドが低い声で警告する。その身体は瞬時に真っ赤に染まり、背中の触手がそれぞれ揺れている。血管が浮き立ち全身いきり立っている。
恐怖心を煽ろうとしているのか。その姿はまさに【恐怖の看守】と呼ぶにふさわしい風貌である。だが私は全く動じない。怖いはずなのに……少し、憧れすら覚える。この世界に来るまでの、あの頃の私なら、声も出せずに逃げていたのに。
不意にブラッド・ドレッドの体表がズブズブと膨れ上がり、血管が黒く脈動して不気味に光る。
『絶望は供物、恐怖は糧――全て我が血脈に繋がれ!』
何かを吸収しているのだろうか。身体が少し大きくなったようだ。
「何かするつもりか、だが遅いな」
『ほざけ! 逃れられぬぞ、恐怖は生の影だ……! 食らえ、血脈縛鎖』
やはり恐怖を拡散しているようだ。すると地面に赤黒い血溜まりが滲み、そこから無数の鎖がズルズルと這い出てくる。鎖の表面は脈動し、生きているかのように私に襲いかかってくる。
「遅い。『地獄の業火』」
だが全弾に黒い炎を浴びせて相殺し、攻撃を無力化する。それでもブラッド・ドレッド背中の触手をしきりに動かし煽ってくる。口が裂け、無数の牙と血の舌が覗く。
『血の裂声。キエエエエエエッ!!』
いきなり高音の絶叫を発してくる。物理的な衝撃波も含み、周囲の地面が割れる。だが対策を施した私の身体には影響を及ぼすに至らない。
「よし、あの魔法を使うか。師匠の課題通りに――」
ブラッド・ドレッドの呪術は精神耐性魔法の効果によって私の前で弾けて消えていくが、視界に赤黒い瞳が無数に浮かび、幻覚空間を作り出そうとする。
激しい脈打ち音が耳鳴りのようにかすかに響くが、私は無視して呪文を唱え始める。
「混沌の淵より流れし血脈よ――我が理の楔にて、その奔流を封ぜん」
周囲に渦巻く紫黒の混沌霧を手で掴み取り、胸に取り込む。一瞬混沌の効果で頭がぼーっとなるが、【聖女の呪い】が体の中で発動し、吸収した混沌が新たなエネルギーに変換される。
「秩序の名を刻み、渦を穿ち、闇を浚えよ。今こそ断て、『混沌吸転の術』!」」
魔法は発動し、混沌が私の魔力を増幅させて全身を駆け巡る。
『バカな……恐怖は……恐怖だけは……残さねば……ギャアアアアア!!!』
周囲から魔素が消滅し、ブラッド・ドレインの肉体はみるみる朽ちていく。
だがしばらくすると奴の【恐怖の核】が出現する。
「核だけは残るか……だが、もう揺るがない!」
混沌吸転の術の効果で赤黒い血肉が霧散していく。
しかし、恐怖の残滓が怨嗟の声を上げてなおも形を取り戻そうとする――
私は集中して呪文を唱え始める。
「『秩序刻印』、そして――『聖なる鎮魂歌』!」
銀白の刻印が核を縛り、聖なる光がその残滓を焼き尽くす。こうして恐怖の看守ブラッド・ドレッドは完全に消滅した。
「ふぅ、何とかやれた。回りくどかったがな……」
単に消滅させるだけならもっと楽なやり方がいくらでもあった。やっぱり師匠は鬼だ……
その時、目の前の支配者の肩が小さく震えた。
『バカな……恐怖の看守が……この程度で……!』
私達の戦闘を見守っていた十二本木の支配者が、信じられないという表情で私を見て言い放った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【まめちしき】
【ブラッド・ドレッド(Blood Dread)】……上位タナーリ / 恐怖の看守。体は人型だが、皮膚は半透明で内部を流れる赤黒い血管が脈打つたびに光る。背中からは血の触手が多数生えており、鞭のようにうねって獲物を捕らえる。顔は仮面のように滑らかで、口が裂けると血の霧を吐く。血を恐怖で煮えたぎらせて霊魂を弱め、儀式の供物に適した状態にする。吸血と恐怖支配を合わせ持ち、血液を媒介に精神汚染を行う。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
恐怖の看守ブラッド・ドレッド戦、いかがでしたか?
正直、主人公の成長を描きながら、相手の不気味さをどう演出するか悩みました。
でも、あの触手とか血脈とか、攻撃や魔法を書いているうちに楽しくなってしまって……
気付けば文字数が増えて次の話と分ける事にしました。
まだまだ彼の戦いは続きます。
次はどんな混沌が待っているのか、良ければお付き合いください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「面白いかも!」「続きが読みたい!」「陰ながら応援してるよ!」
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作者の励みになり、何よりの執筆のモチベーションになります!
『支配者よ、ここは我が出ましょう』
『うむ』
恐怖の看守が一歩前へ踏み出る。その背の触手が地面を叩きつけ、血飛沫のように瘴気が舞った。
『これで我らを抑えられると思ったら大間違いだ。ここからが本当の地獄だと思え!』
滑らかな仮面のような顔をしたブラッド・ドレッドが低い声で警告する。その身体は瞬時に真っ赤に染まり、背中の触手がそれぞれ揺れている。血管が浮き立ち全身いきり立っている。
恐怖心を煽ろうとしているのか。その姿はまさに【恐怖の看守】と呼ぶにふさわしい風貌である。だが私は全く動じない。怖いはずなのに……少し、憧れすら覚える。この世界に来るまでの、あの頃の私なら、声も出せずに逃げていたのに。
不意にブラッド・ドレッドの体表がズブズブと膨れ上がり、血管が黒く脈動して不気味に光る。
『絶望は供物、恐怖は糧――全て我が血脈に繋がれ!』
何かを吸収しているのだろうか。身体が少し大きくなったようだ。
「何かするつもりか、だが遅いな」
『ほざけ! 逃れられぬぞ、恐怖は生の影だ……! 食らえ、血脈縛鎖』
やはり恐怖を拡散しているようだ。すると地面に赤黒い血溜まりが滲み、そこから無数の鎖がズルズルと這い出てくる。鎖の表面は脈動し、生きているかのように私に襲いかかってくる。
「遅い。『地獄の業火』」
だが全弾に黒い炎を浴びせて相殺し、攻撃を無力化する。それでもブラッド・ドレッド背中の触手をしきりに動かし煽ってくる。口が裂け、無数の牙と血の舌が覗く。
『血の裂声。キエエエエエエッ!!』
いきなり高音の絶叫を発してくる。物理的な衝撃波も含み、周囲の地面が割れる。だが対策を施した私の身体には影響を及ぼすに至らない。
「よし、あの魔法を使うか。師匠の課題通りに――」
ブラッド・ドレッドの呪術は精神耐性魔法の効果によって私の前で弾けて消えていくが、視界に赤黒い瞳が無数に浮かび、幻覚空間を作り出そうとする。
激しい脈打ち音が耳鳴りのようにかすかに響くが、私は無視して呪文を唱え始める。
「混沌の淵より流れし血脈よ――我が理の楔にて、その奔流を封ぜん」
周囲に渦巻く紫黒の混沌霧を手で掴み取り、胸に取り込む。一瞬混沌の効果で頭がぼーっとなるが、【聖女の呪い】が体の中で発動し、吸収した混沌が新たなエネルギーに変換される。
「秩序の名を刻み、渦を穿ち、闇を浚えよ。今こそ断て、『混沌吸転の術』!」」
魔法は発動し、混沌が私の魔力を増幅させて全身を駆け巡る。
『バカな……恐怖は……恐怖だけは……残さねば……ギャアアアアア!!!』
周囲から魔素が消滅し、ブラッド・ドレインの肉体はみるみる朽ちていく。
だがしばらくすると奴の【恐怖の核】が出現する。
「核だけは残るか……だが、もう揺るがない!」
混沌吸転の術の効果で赤黒い血肉が霧散していく。
しかし、恐怖の残滓が怨嗟の声を上げてなおも形を取り戻そうとする――
私は集中して呪文を唱え始める。
「『秩序刻印』、そして――『聖なる鎮魂歌』!」
銀白の刻印が核を縛り、聖なる光がその残滓を焼き尽くす。こうして恐怖の看守ブラッド・ドレッドは完全に消滅した。
「ふぅ、何とかやれた。回りくどかったがな……」
単に消滅させるだけならもっと楽なやり方がいくらでもあった。やっぱり師匠は鬼だ……
その時、目の前の支配者の肩が小さく震えた。
『バカな……恐怖の看守が……この程度で……!』
私達の戦闘を見守っていた十二本木の支配者が、信じられないという表情で私を見て言い放った。
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【まめちしき】
【ブラッド・ドレッド(Blood Dread)】……上位タナーリ / 恐怖の看守。体は人型だが、皮膚は半透明で内部を流れる赤黒い血管が脈打つたびに光る。背中からは血の触手が多数生えており、鞭のようにうねって獲物を捕らえる。顔は仮面のように滑らかで、口が裂けると血の霧を吐く。血を恐怖で煮えたぎらせて霊魂を弱め、儀式の供物に適した状態にする。吸血と恐怖支配を合わせ持ち、血液を媒介に精神汚染を行う。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
恐怖の看守ブラッド・ドレッド戦、いかがでしたか?
正直、主人公の成長を描きながら、相手の不気味さをどう演出するか悩みました。
でも、あの触手とか血脈とか、攻撃や魔法を書いているうちに楽しくなってしまって……
気付けば文字数が増えて次の話と分ける事にしました。
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